あれから、初心者殺しが帰ってくる気配はなく、俺達は順調に山道を上っていた。
テイラーがいうにはそろそろゴブリンが発見された地点に着くらしい。
「カズマどうだ敵感知に何か反応はあるか?」
「この山道をおりたあたりに反応があるぞ。それもかなりの数だ」
「いっぱいいるっていうならゴブリンだな。よし、いくぞ」
「ちなみにゴブリンって基本はどんだけいるんだ?」
そんなカズマの様子にリーンも少し不安になる。
「ね、ねぇそんなにいるの?様子見をしてからいこうよ」
「大丈夫だって、ゴブリンなんて所詮雑魚だ」
「最悪、俺が遠くから狙撃してやるよ」
しかし、テイラーとキースはそんなリーンを知らんぷりだ。
「ま、まぁバサラもいるしな。大丈夫だろ」
カズマもテイラーとキースの言葉を聞いて不安が消える。
「そうだな。最悪機竜を出せばいいからな離脱だってできる」
ということでゴブリン達のもとへと着いたのだが・・・
「「ちょっ、多ッ」」
なんとゴブリンは三十以上いたのだ。
テイラーとキースはその多さに思わず叫んでしまう。
「だから様子見しようっていったじゃん」
「いや、多いっていっても十やそこらだろ。こんないるなんて」
俺とカズマを除いた三人は悲壮な顔をしながら攻撃の準備を始める。
するとゴブリンの放った矢がリーンに向かって飛んでくる。
「きゃあっ」
誰もが矢が刺さると思った・・・しかし、その矢はリーンに刺さることはなかった。
「大丈夫か?」
俺はリーンに当たる直前で機攻殻剣を抜刀し飛んできた矢を切り落とした。
「あ、ありがとう」
「いえいえ、カズマあれやれ」
「アレって、ああぁ、あれか。オッケー《クリエイト・ウォーター》」
カズマが初級魔法を唱えると同時にカズマの掌から水が噴き出る。
その水は坂をまんべんなく濡らす。
「からのぉ~《フリーズ》」
そして、びしょびしょになった坂に向かってカズマは氷の初級魔法を放つ。
案の定、坂は凍り坂を上ってきていたゴブリン達はつるつる滑っていた。
「テイラー、この足場でも上ってきた奴らは俺達でしばくぞ」
「お、おう」
「リーンは防御魔法で飛んでくる矢を防いでくれ」
「わかったわ」
「キースはそのままゴブリン達を狙撃してくれ」
「おうよ」
カズマは持っていた剣を手に取り、素早くテイラーたちに的確な指示を送る。
「バサラも俺達と一緒に登ってきた奴をしばいてくれ」
「はいよリーダー」
パーティメンバーは違うが、いつものように指示を出すカズマに返事をする。
「くっくっく、なんだよあの魔法。聞いたことねぇよ! つかなんで初級魔法が一番活躍してんだよ」
「ほんとだよッ! 私なんて魔法学校では初級魔法なんて習得するだけ無駄だって言われたのに・・・なのに何よアレ」
「うひゃっひゃひゃひゃひゃ、こんな楽なゴブリン退治はじめてだぜ」
カズマの魔法のおかげで危なげなくゴブリンを討伐出来た俺達は先ほどの戦闘の話題を話していた。
「おい、戦闘終わったんだから荷物よこせよ。最弱職の冒険者は荷物持ちが基本だろ」
俺の隣でいつも以上に意地の悪いながらも楽し気な笑みを浮かべるカズマを見て俺も少しツボる。
「わ、悪かった。いや、これからは最弱職だからって馬鹿にしないから」
「ほんと、ごめんねカズマッ」
「おいカズマ。お前はMVPなんだから俺に荷物をよこせ」
そんなやりとりを見て俺はさらにツボる。
「あれれ、バサラ君はカズマと違って活躍してないよねぇ~」
すると、カズマの荷物を受け取ったキースは俺に話しかけてくる。
「そうだな、いやぁ~カズマの魔法のおかげで楽だった」
「それにゴブリンの討伐数って一番少ないよね?」
ニヤニヤしながらキースは追い打ちをかける。
「ぐはっ」
先ほどまでツボっていたのが嘘かの様に俺は精神的ダメージを負う。
「お、おいキース」
「アハハ、悪い悪い。少しからかいたくなっただけなんだ。そうだ、カズマ。俺達のパーティにこないか?」
キースは俺をからかうのをやめたかと思いきや今度はカズマを勧誘する。
「おいやめとけ。カズマには帰る場所があるんだ・・・たく、なんでカズマが上級職ばっかりのパーティでリーダーやってるのかが分かったぜ」
こんな感じで和気あいあいとしながら草原まで戻ってきたところで俺達は思い出した。
ゴブリンなんかよりも、もっと注意を払わないといけない存在を・・・
「しょ、初心者殺しだ」
テイラーが冷汗をかきながら声を漏らす。
「ちょ、カズマッ逃げないの」
三人はすぐさま逃げ出そうとするが、俺とカズマはその場に立ち止まる。
「なぁバサラ。お前だったら初心者殺しとか余裕か?」
「まぁな」
「だったら、令呪を持って命じる初心者殺しを討伐しろ」
さっきの戦闘で調子に乗っているのか、カズマは俺に令呪を使うようだ。あっ、ちなみに俺はライダーだぞ。
「はいよカズマ、じゃなくてマスター」
俺もそんなカズマに乗ってマスターとカズマのことを呼んでやる。
「じゃあな子猫ちゃん」
一閃。かの新選組沖田総司の《無明三段突き》の如く、俺は縮地で初心者殺しとの距離を詰めて機攻殻剣を抜き、すれ違うと同時に首を落とす。
一瞬で初心者殺しの首は飛び、そこから赤黒い血が噴水のごとく噴き出す。
「さて、これで今回のMVPは俺だな」
「よくやったセイバー」
「ばっか、俺はセイバーじゃなくてライダーだ」
「「「・・・・・・」」」
とまぁ、楽しそうに会話する俺達を見て三人は言葉を失っているのだが、そんな三人を見てスッキリする。何がとはいわないが、強いて言うなら先ほど俺をからかった罰だな。
「「「いや、まじ調子乗ってすんませんした」」」
三人も先ほどのことを謝ってくれている。
「なぁ、バサラ。やっぱりパーティ移籍しね?」
カズマが俺にそんなことをいってくる。
普段のカズマの大変さをしっている俺だからカズマの気持ちはよくわかる。
借金駄女神、頭のおかしい爆裂娘、ドMクルセイダー
「しねぇよ」
「えぇ~」
「そんなこといってもだぁ~め」
「だ、だってよぉ。このパーティ・・・俺が憧れた冒険者そのものなんだよぉ」
「はいはい、アホなこといってねぇで帰るぞ」
そして、冒険者ギルドについたんだが・・・
「かじゅましゃんッ ばしゃらぁ~」
歯形やら何かわからないぬめぬめした液体まみれのアクアにアクアに背負われた白目をむいて気絶しているダクネス。そして、ダストに背負われている(おそらく魔力切れの)めぐみんの姿を見てなにもいえなくなる。
「聞いてくれ、俺が悪かった。なぁ、カズマ、俺が悪かったから」
ダストの話を纏めると、めぐみんがダストに爆裂魔法が使えるといって何もない草原に爆裂魔法を放ち、その音を聞きつけた初心者殺しが襲ってきて、ダクネスは鎧もつけずに突っ込みやられて、ダストとアクアもやられたらしい。
「よぉ~し、新しいパーティ結成にカンパーイ」
「「「カンパーイ」」」
そしてカズマを含めた三人は新しいパーティの結成を祝う。
今回の原因であるダストはというと・・・
「俺をもとのパーティに戻してくれえええええええ」という魂のの叫びがギルドに響きわたるだけだった。
流石に可哀想になり、心身ともにボロボロであろうダストからダクネスを引き受けたあと、俺はアクアと一緒にめぐみんとダクネスの介抱をする。
「ったく、大丈夫か?」
「いたがったよぉ」と涙を浮かべるアクアを見て撫でたくなる衝動に襲われるが、なんとかその衝動を抑え込んで二人が目覚めるまでジュースを飲んでいた。