この素晴らしい機竜使いに祝福を!   作:ナカタカナ

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始まりの街アクセル

 

 俺が異世界に転生して一年が経った。

 

 俺が最初に転移していたのは遺跡だった。あの女神、機攻殻剣(ソードデバイス)だけ持たしてあとはポイッなんだぜ。ビックリだろ。食料もねぇし、水もねぇ。

 

 その後、なんとか水と食料を確保し、遺跡に挑んだところボロ負けした。

 

 俺が挑んだ遺跡はティアマトが封印されており、幸い気性が穏やかだったため、戦闘ではなく俺を鍛えるという方向へ出てくれた。

 

 一ヵ月ほどでなんとかティアマトの試練を乗り越えて認めてもらい。契約してもらった。

 

 こうして、俺の異世界生活が始まったのだが、それからは色々あった。

 

 遺跡を巡り旅をして数々の出会いがあった。

 

 俺が契約してきた竜はティアマト、テュポーン、ファフニール、リンドヴルム、ドレイク・・・

 

 とまぁ、こんな感じで契約してきたのだが、たまたま立ち寄った王都で魔王軍の襲撃があった。

 

 本来なら素通りしたかったのだが、なんでも魔王軍が拠点としているところが遺跡だったらしく、俺は王都で戦いに参加した。

 

 バハムートを纏って魔王軍を蹴散らしているといつの間にか《黒き英雄》と呼ばれていた。

 

 そこからは王都の騎士団に入れだの、貴族の近衛騎士になれだのなんだかんだあった。

 

 まぁ、すぐに旅に出たのだが。各地を回りちょっとした大会に出て無敗になったり、大会にでたときに仲良くなった人物がいっそのこと冒険者になればといったので俺は始まりの街アクセルへと向かった。

 

 「ここが、始まりの街アクセルか・・・」

 

 俺が回ってきた街と比べると平和そうな街だった。魔王軍との戦いから一番離れているということもあるのだろう。本当に穏やかな街だ。

 

 街を歩いていると冒険者ギルドと書いてある看板を見つけた。

 

 中に入ると酒場になっており、さっそく受付カウンターに向かった。

 

 「ようこそ、始まりの街アクセルへ。冒険者登録ですか?」

 

 「あぁ、そうだ、じゃなくてです」

 

 「では、登録費用の1000エリスをいただきます」

 

 俺は金髪の受付嬢ルナさんというのだが、その人にお金を払う。

 

 「では、ここに名前を記入してください。それでは、こちらの水晶に触れてください」

 

 この世界の文字でキリヒメ バサラと記入したあと、ルナさんが持ってきた水晶に手を振れる。

 

 「ッなんですかこの数値は筋力、敏捷、生命力・・・全部けた違いのステータスです。しかもスキルも発言しています。《竜との絆》なんてスキル初めて見ました。これならどの職業でもつけますよ。って、既に職業がありますね。機竜使い(ドラグナイト)ですか」

 

 「えっと、これで登録って終了ですか?」

 

 「はい、冒険者ギルド一同はあなたの活躍を期待しています」

 

 ギルドで登録を終えた俺は簡単なクエストを発注した。ジャイアントドードと呼ばれる巨大なカエルの討伐だ。

まぁ、この程度のモンスターなら機竜を使わなくても機攻殻剣(ソードデバイス)だけで戦えるだろう。

 

 と思って街の外に出たのだが・・・

 

 「ア、アクアァァァァァァァァァァァァァァァァ」

 

 「かじゅまさぁぁぁぁぁん、たすけてぇぇぇぇぇ」

 

 「はぁ、はぁ、カエルたちが私をエロい目で見てくる、はぁ、はぁ」

 

 「あのぉ~そろそろ助けてもらっていいですか?呑み込まれちゃいます」

 

 いかにもヤバそうなパーティーを見つけた。

 

 「助けた方がいいよな?というか、あの蒼い髪はアクアじゃねぇか」

 

 俺はすぐにワイバーンの機攻殻剣を手に取り、魔法使いっぽい格好をした少女を呑み込もうとしているカエルを切り裂く。狭いところでは機竜が使えないので一応剣術も使えるようにはしている。

 

 「だ、だれかしならねぇけど助かった」

 

 カエルを三匹ほど倒すとカズマと呼ばれていた少年が俺の方へと来た。

 

 「いや、気にするな。あんた転生者だろ?」

 

 「お、おうそうだが、あんたもそうなのか?」

 

 「あぁ、そこの女神に転生させてもらった。なんで女神なのにカエルに負けるんだよ」

 

 俺はカズマたちと街に戻ったのだが、その道中で色々と話を聞かせてもらった。

 

 なんでもカズマは転生特典にアクアを選んだそうなのだが、その非常に頭が弱いらしく、しかも戦闘もアンデッド戦以外では使えないと、他のパーティーメンバーも初心者らしく、クルセイダーなのに体力が低かったり、アークウィザードなのに魔力が少ないといった問題ありなメンバーらしい。

 

 まぁ、初心者だから仕方がないと思っている。

 

 「そこでなんだが、このとーりです。あなた様にパーティーメンバーに加わってもらいたいのです」

 

 「まぁ、俺も冒険者には今日なったところだし、なにもわからねぇからいいけど」

 

 「本当ですかッ。ありがとうございます」

 

 カズマが必死に頭を下げてきたので了承したのだが、このときの俺は知らなかった。

 

 誰が体力の低いクルセイダーだ?誰が魔力の少ないアークウィザードだ?誰がアンデッド戦以外では使えないアークプリーストだ?

 

 誰が予想できる耐久力だけは馬鹿みたいに高いドMクルセイダーに、爆裂魔法とかいう一発使ったら倒れてしまうような頭のおかしい爆裂娘に、水の女神どころか宴会芸の女神・・・いや、借金の女神でどいつもこいつもヤバい奴しかいないだなんて・・・誰が予想できる?

 

 そして、俺をだましたカズマよ。お前も同罪だからなッ

 

 


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