おれっ娘、ときどきダンジョン   作:センセンシャル!!

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性癖を垂れ流すだけなので初投稿です。


序文
頭の軽いタイプのおれっ娘を愛でたい


「決めた! おれ、ダンジョンで食ってく!」

 

 ファミレスにて、一緒に進路を考えていた幼馴染の彼女は、名案だとばかりに言った。

 後先考えない発言は今に始まったことじゃない。お決まりのパターンに、僕はあきれのため息を返した。

 

「ダンジョンで食べてくって、簡単に言うけどさ。まず資格だとか装備だとか、準備にいっぱいお金がかかるんだよ。そんなお金あるの?」

「相変わらず小難しいこと考えてるやつだな。そんなもん、足りなくなったらその場で考えればいいんだよ!」

 

 お金を稼ぐために相談をしているというのに、何故無駄に消費するという発想になるんだろう。ダンジョンアタッカーを目指すにしても、まずは運転資金を稼ぐ手段を考えるべきだ。

 

「そんなんじゃすぐに借金で首が回らなくなるよ。失敗するアタッカーの典型例じゃないか」

「じゃあどうしろって言うんだよ。お前が教えてくれた会社の面接、全部落ちちゃったぞ」

「……面接官の質問にはなんて答えたの?」

「「おれを雇ったら全力で働いてやる」って」

 

 あかん。まったく取り繕ってない、いつもの彼女だ。よっぽど変わった会社でもない限り、一言目で「お帰りください」だ。

 僕はちゃんと教えたのに。一人称は「私」にして、女の子の言葉遣いじゃないと印象が悪くなるって。

 

「そんな寒い真似ができるかよ。おれの素を見て落とすようなところなら、働きたいと思わねーよ」

「素で働いてる人なんてほとんどいないよ。僕だって、ある程度は取り繕ってるんだから」

 

 僕はそんなに尖った性格をしているつもりはないけど、どうしても「あ、ここはこう答えないと普通じゃないな」ってときがある。人の個性っていうのは、そういうものだと思う。

 僕のことはどうでもいい。今はこの幼馴染のことだ。僕が就職して早3ヶ月、いまだにニートしてる彼女に職を与えないと。

 

「まあ聞けよ。おれだって何も考えないでダンジョンアタッカーなんて言ってるわけじゃないんだぜ?」

「……いいよ、聞いてあげる。それで僕が納得できなかったら、ちゃんと他の方法を考えてね」

「おう、いいぜ。絶対納得するから!」

 

 そういうと彼女はコホンと咳払いをし。

 

 

 

「おれとお前で、パーティを組むんだよ!」

 

 グーでいっといた。

 

 

 

「……いってー。なんでだよー。いい考えだろー?」

「あのね。僕は会社員なんだよ、会社員。ダンジョンに潜ってる時間の余裕なんかあるわけないでしょ」

 

 そこそこの競争を潜り抜けて入社の権利を得たのだ。給料だってそこそこいい。やりがいだってそこそこある。それを捨てるなんてとんでもない。

 企業に所属してダンジョンアタッカーやってる人もいるけど、それはそういう企業の人だったり、あるいはプロとして契約してやってる人だ。

 間違っても、商社の平社員をやりながらダンジョンアタッカーなんてできるもんじゃない。分身でもしろと?

 

「なんだよー。昔はおれと一緒にダンジョン潜るって言ってただろー」

「子供のときの話でしょ。何年経ってると思ってるのさ。僕はそういうの、中学で卒業しました」

「つまんねー男だなー。そんなんだから20歳にもなって童貞なんだよ」

「君だって処女でしょ」

 

 はあ、と二人そろってため息をつく。お互い恋人には恵まれなかったよね……。同性の友人は多かったのに。

 

「けどさー。おれの剣技と、お前の魔法が合わされば、絶対いいセン行けると思うぜ。お前がちゃんと魔法を磨き続けてたのは知ってるんだぜ」

「いや、まあ、あって困るもんじゃないし、日課だったからね」

 

 子供の頃は約束を真に受けて、魔法の訓練を欠かさなかったんだよね。そのせいで高校以降もやらないと落ち着かなくなっちゃって、結局今も続けちゃってるし。

 おかげで僕の同僚からの呼び名は「魔法使い」だ。……僕はまだ20歳なんだけど。

 

「おれも、女連中の遊びはなーんか性に合わなくてさ。剣ばっか振ってたから、実戦経験はないけど、そこそこの腕にはなってるはずだぜ」

「なんで剣術部に入らなかったかね、君は。そんなに自信があるなら、全国大会とか行けたかもしれないのに。それこそ、プロの剣術選手ってのもあるでしょ?」

「体験入部はしたんだぜ? だけどそういう試合形式って、やっぱ違ったんだよ。おれは、お前と一緒にダンジョンに潜るために剣を鍛えたんだから」

 

 幼馴染からの不意打ちウインクにドキリとする。……いかんいかん、見た目に惑わされるな。この子はあれだぞ、「ガハハ」ってオッサンみたいに笑うような子だぞ。

 コホンと咳払いをして気を取り直す。彼女はいたずらが成功したように笑っていた。

 

「まったく……それなら、ダンジョン以外に剣を活かせるような職業を探したほうがいいかな」

「えー。なんでそうなるんだよー」

「言っとくけど、ダンジョンアタッカーだけで食べていけるのって、ほんとにごくわずかだからね? ほとんどの人たちは浅い層の探索や採集だけ、深層まで潜るのは5%って言われてるんだよ?」

「だったら、おれたちがその5%になればいいだけだって。行ける行ける!」

 

 行けるわけないでしょ。その5%の人たちがどれだけ時間をかけて準備して潜ってるか知らないのか、この子は。

 はあ……相変わらず「こう」って決めたらテコでも動かないんだよなぁ。面倒だけど、他に方法はないか。

 

「わかったよ。一回、君とパーティを組んであげる。来週の日曜日に資格取りに行って、再来週の日曜日にお試しダンジョンアタック。費用は僕が出すから」

「へへ、やったぜ! おれとお前の伝説の幕開けだな!」

 

 開かないよ。現実を見せて君を諦めさせるのが目的なんだから。どうしてこんなことになるんだか。……この子と幼馴染だったのが運の尽きか。

 

 まあ、でも。

 

「よーし! そうと決まったら、久々にお互いの腕を見せ合おうぜ! お前の魔法がどれだけ上達してるのか、見てやるよ!」

「はいはい。ここのお会計しとくから、君は先に外に出てな」

 

 こうやってこの子と「遊ぶ」のも、中学生のとき以来かな。そう考えたら、たまには悪くないかもしれない。

 

 

 

 僕たちの母校の裏山にて、適当な大岩に光弾の魔法をぶつける。弾は岩を砕くことなく、貫通して消滅した。小さな穴の周りにはひび割れひとつない。

 

「とまあ、今はこんな感じかな。……どうしたの?」

「いや、お前……アホだろ」

 

 僕の魔法を見た彼女は、目を点にして失礼な感想を述べた。これでもそれなりに自信はあるというのに。

 

「別にけなしたわけじゃねーよ。どんだけ精度上げてんだって話だよ。控え目に言って変態だろ」

「本当に失礼だな、君は。僕は魔力量が多い方じゃないんだから、精度で勝負するのは当然の判断じゃないか」

「限度ってもんがあるだろ、限度ってもんが。……あー、やりづれえ」

 

 今度は彼女が見せる番だ。彼女は長い赤髪を結わえ、動きやすいようにする。一旦家に寄って取ってきた木製の短刀を二つ、構える。

 

「じゃ……いくぞっ」

 

 気合いの吐息とともに、彼女は双剣を振るう。非常に素早く、もし僕が目の前に立っていたら、何が起こったのかわからないうちに昏倒させられるだろう。

 一発だけではない。二撃、三撃と、気が付けば十を超える剣閃が虚空を薙いだ。離れているから何とか数えられたけど、気を抜いたら見落としてしまう。

 開始からわずか10秒で50の剣を振り抜いたところで、彼女はピタリと動きを止めた。

 

「ふぅー……どうだったよ」

「いや、大したものだと思うよ。豪語してただけはある。僕が相手をしたら、多分魔法を撃つ前にやられちゃうんじゃないかな」

「へへ、まあな。やっぱ筋力じゃ男にはかなわないから、素早さを磨いたんだ」

 

 うん、正しい判断だと思う。あれだけの素早い剣なら、ちゃんとした武器を持てば攻撃力も十分だ。男の戦士にだって負けないだろう。

 彼女が前衛となってかく乱し、僕が後ろから狙い澄ました魔法を撃つ。魔物との戦闘時はそんなスタイルになりそう……あれ、これ割と理想的なパーティ構成なのでは?

 

「いやいやいや……」

「? なにしてんだ?」

 

 何でもないと返し、自戒する。調子に乗って失敗するのは、いつもの僕のパターンだ。高校のときもそれでフラれたじゃないか。……少し優しくされただけで調子に乗る、それが男の子という生き物なのです。

 お試しとは言えダンジョンアタック。魔物との戦闘は発生するだろうし、どれだけ弱い魔物が相手でも危険はある。しかも、僕一人ではなくこの子が一緒なのだ。怪我をさせないためにも、油断をするわけにはいかない。

 当日までにちゃんと下調べをして、一切の危険がないようにしなければならない。そう、僕の戦いは既に始まっているのだ。

 

「とりあえず、今の僕と君の実力はわかったから、それに見合ったダンジョンを探しておくよ。君は来週までに資格試験の勉強をして、一発で合格できるようにすること」

「う、勉強か……。お前がおれの分の資格も取るとか、ダメかな」

「ダメに決まってるでしょ」

 

 どうやって取れと。僕に変装して受けろとでも? 女装とか勘弁してほしい。……嫌なことを思い出してしまう。

 

「な、なあ。おれに勉強教えてくれないか? お前、教えるのうまいじゃん」

「……君にダンジョンアタックの資格を取ってもらわないことには話にならないから、しょうがないか。でも、平日昼間は仕事があるから、僕が教えられるのは夜だけ。自分でも頑張るんだよ」

「わかってるって! へへ、これでなんとかなりそうだな」

 

 まったく、気楽なもんだ。僕だって資格試験の勉強はしなきゃいけないのに。……一回ダンジョンに潜らないことには、この子を諦めさせられないんだから、仕方ないか。

 

 それに……なんだかんだでわくわくしてるあたり、実は僕もダンジョンに潜ってみたかったのかな。この子と一緒に。

 

 

 

 

 

 それから一週間、僕と幼馴染のダンジョンアタック資格試験の勉強が始まった。

 

「そこ、違う。ライフポーションの正しい使い方は「患部に塗る」だよ。飲むのは「バフポーション」の方」

「だあああ! どっちもポーションじゃねえか! なんで使い方が違うだよおかしいだろそれよぉ!?」

「使い道が違うからだよ。ライフポーションは怪我の治癒が目的なんだから、直接塗った方が効果があるの」

「わけわかんねえよもう!」

 

 僕は仕事の合間に参考書を読み、理解し、夜は幼馴染の家で勉強会を開いた。

 

「「あなたはダンジョンで怪我をして助けを求めるアタッカーに出会いました。あなたがまずすべきことは何ですか?」 こんなもん1の「連れて帰る」に決まってんだろ」

「だからさぁ……そういうひっかけ問題には注意しろって言ってるでしょ。アタッカーの大前提は自己責任、だから3の「周囲の安全を確保する」だよ」

「なんっでだよ! その間にこの人死んじゃうかもしれないだろ!? この冷血! 陰険眼鏡!」

「……この説明、これで5度目なんだけど」

 

 僕は徐々にダンジョンアタッカーというものの実態を理解し、幼馴染に伝えた。彼女は、やはり理解は遅々として進まなかったが、それでも着実に知識を増やしていった。

 

「あー……もう間違えねえぞ。魔物を倒したら「素材のみ回収してすぐにその場を離れる」だろ」

「その通り。魔物の死骸目当てで他の魔物が集まってくるから、丸ごと回収なんてしたら大変なことになる。実際、それで事故も起きてるらしいしね」

「おーこわ。そいつらもこの試験突破してるはずだよな? バカなんじゃねーの」

「喉元過ぎれば暑さ忘れるってやつだよ。君も気をつけなよ?」

「どういう意味だよ!?」

 

 たまには勉強だけでなく、息抜きもはさみながら、僕たちは資格試験に備えた。

 

「くお~、ぶつかるぅ!」

「インド人を右に!」

「最近、君が娘の世話を見てくれるから助かるわ。娘も喜んでるし、これからもよろしくね」

「は、はぁ……???」

「母さんっ! 余計なことは言わなくていいんだよ!」

 

 彼女の家族とも談笑をして、そういえば昔はもっと頻繁に遊びにきてたな、なんて懐かしんだりもした。

 

 

 

 

 

 そうして迎えた、ダンジョンアタッカー資格試験当日。

 僕たちは、万全の準備をしてきた。この一週間、一日たりとも無駄にはしてこなかった。

 だから、きっと大丈夫だ。そう信じて、僕と彼女は、試験会場の門をくぐる。

 僕と幼馴染は、お互いに、不敵に笑い合った。子供の頃のように。

 

 

 

 

 

 そして。

 

「ダメでした……」

「あのさぁ……」

 

 試験には僕だけが合格し、彼女は落ちてしまいましたとさ、ちゃんちゃん。

 

 僕と彼女のダンジョンアタックは、まだ遠い。




主人公の魔法使い君とヒロインの双剣士ちゃんは、中学までは一緒に遊んでたけど高校でちょっぴり疎遠になってた、そんなイメージ。



Tips

ダンジョン
魔物の生存領域となっている場所。もろもろの理由により人類の居住には向いていない。
魔物から得られる素材やダンジョン内に自然生成される鉱物・植物の採集を行うのが、ダンジョンアタッカーの本来の仕事。最近ではレジャー感覚で楽しむ人もいるらしい。
出入りは専門の公務員によって厳しく管理されており、中に入るにはダンジョンアタッカー資格が必要。資格試験自体は難しいものではない。
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