森を出て、サキュバス・ランジェリーを目指して歩く。途中出会った人達に「昨日の今日で仲良くなったわねー」みたいにからかわれ、これはダストの二の舞だなと少々後の展開が怖くなった。何故かまんざらもなさそうにしていたねりまきだが、その顔は酒場のドアを開けた瞬間絶望に染まる事となる。
「本当に申し訳ない!うちのバカ娘がとんだご迷惑を!」
昨日よりも激しい拳骨で悶えてるねりまきの横で、親父さんに土下座で謝られる。
「いえいえ、俺も理解した上で承諾した事です。本人もちゃんと反省していると思うので勘弁してあげてください」
予想通りの事とは言え、間近で見る親父さんの雷は中々にハードなものだった。その家の教育方針に口出しはしないが、ねりまきならちゃんと反省はしてるし罰も受けた。助け舟を出しておいてやろう。
「…分かりました。普通ならば許される事では無いですが、テイラーさんに免じて今回だけは不問とします。こら!いつまで寝っ転がってんだ!お前も謝らんか!」
「ご、ごめんなさい」
なんとか正座の姿勢を取り、ねりまきも土下座の謝罪をする。こういう時ってどの辺りで切り上げるのかが難しいんだよな。もう一つ助け舟を出してやりたいが…そうだ。
「じゃあねりまき、早速だが朝風呂と朝食の用意を頼む。徹夜で辛い所だろうけど…未来の紅魔族一の女将なら完璧にこなしてくれるだろう?」
「はい!かしこまりました!少々お待ちください!」
ねりまきは嬉しそうに返事をすると。足早に店の奥に走っていった。
「テイラーさん、甘やかすとためになりませんよ」
「ははは。大丈夫、ねりまきならちゃんと分かってくれてますよ」
「…重ねて申し訳ありませんでした。そしてありがとうございました。テイラーさんが一緒で本当に助かりました」
当然の事だが、相当心配をしていたのだろう。俺の手を両手で握り、祈るように感謝をする親父さんの目にはわずかにだが涙が見えたような気がした。
「あいつがこんなに信頼を寄せるのも珍しい、テイラーさんが良ければ今後も気にかけてやってくれますか?」
「そうなんですか?まぁ…また来る時があれば勿論。この店は食事も酒も旨いですしね」
「紅魔族随一の酒場兼宿屋ですからな!今後ともご贔屓に、めいっぱいサービスさせて頂きますよ」
ねりまきが風呂の準備を終わらせるまで、俺は親父さんに昨日の事を説明した。親父さんの言う通り俺は甘いんだろう、追加で怒られそうな所は省いておく。その後風呂と食事を済ませた俺は、起きてきたダスト達と入れ替わりで少し寝る事にした。徹夜で戦うのはそう珍しい事では無いが、流石にいつもとは違い過ぎる。
「はぁ~…疲れた」
ベッドに横になると、徹夜した分の眠気が一気に襲い掛かってくる。色々考える間もなく、すぐに眠りに落ちていくだろう。
「ねりまきは…ちゃんと休めるかな?」
一応親父さんへの説明の時に、俺の分の仕事が終わったらねりまきを休ませてあげるように頼んでおいた。俺が起きた後…ダスト達と一緒に、また里の案内を…。