この堅実クルセイダーに決断を。   作:ぶたはこ

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3話

「いらっしゃい。おや、ゆんゆんじゃないか?…その金髪の男は!?」

「違います。結婚相手とかじゃないです。その誤解を解くために連れてきました」

 

 本当に昼間から入って良いのかと心配するほどの外観と名前を持つ酒場『サキュバス・ランジェリー』。その扉を開けてすぐ、その主人らしき人物とゆんゆんの一瞬の会話だ。…本当に里全体に広まってしまってるんだな。

 

「そうなのかい?折角次期族長になったんだからいい機会だと思うんだがなぁ。おーい、ゆんゆんが来てるぞー」

「はーい」

 

 主人が店の中に声を掛けると、元気な女の子の声が返ってきた。その声の主は入り口付近までやって来て俺達を一瞥すると。

 

「我が名はねりまき、紅魔族一の酒場の娘!いずれこの店の女将になる者!その人がカズマさんの言っていた金髪の人だね!もう一人の仮面の人はどうしたのさ!?こうして連れてきたって事は親父さんにも報告するつもりなんだよね?いやーあのゆんゆんが同級生では一番初めに結婚するだなんて信じらんないよ。披露宴の料理は私も作ると思うからさ、すんごい御馳走用意してあげるね!」

 

 めぐみんやゆんゆん、先ほどの二人とも違う実に賑やかな感じの女の子だな。

 あまりの勢いに俺達は何も返せずにいたが、ゆんゆんはその女の子に詰め寄ると。

 

「だから違うって言ってるでしょー!最初にカズマさんから話を聞いたねりまきさんがそんなんだから、噂が一気に広まったんじゃない!」

「えー…でもカズマは否定しなかったし」

 

 ねりまきと呼ばれた女の子は不満そうに口を尖らせている。

 なるほど、彼女こそ今回の騒ぎの大元の片割れなのか。話好きそうな雰囲気に加え場所が酒場だからな、さぞかし噂は拡散した事だろう。というか…さっきいきなり叫んだ紅魔族一がどうのこうのというのは、確かカズマのところのめぐみんが同じような事を言っていた気がするな。紅魔族では流行っているんだろうか?現に店の主人が「しまった…タイミングを逃した」などと呟いている。

 

「てめぇが元凶かこの野郎。つーかさっきの奴らも言ってたけど仮面の人ってバニルの旦那の事か?あの人が事情話したところで来てくれるとは思わねぇけど…ゆんゆん、一応声は掛けたんだよな?」

「はい…あっさり断られましたけどね。ただバニルさんが言うには、ダストさんとそのパーティーの人達を連れて行くのが問題解決には近道だと教えてくれたので」

「ちっ!例の力を使いやがったな。何が私利私欲に使わないだ、しっかり面倒事回避に使ってるじゃねぇか」

 

 バニルというのは以前アクセルの街の近くで騒動を起こした魔王軍の元幹部の事で、一度カズマ達のパーティーに討伐されている。しかし、残機が一つ減ったという理由で復活したというふざけた存在だ。

 復活した後は魔王軍に加担する事も無く、アルバイトに勤しんだりギルドで相談屋をやったりしてアクセルの街で過ごしている。ちなみに彼も最近ダストと一緒に居る所を見かける人物の一人だ。

 ちなみに以前一緒にアルカンレティアまで旅行にも行ったこともある。あまり話さなかったから分からないが、なんか温泉とか慰安とかの目的じゃなかったようだ。あんな街に温泉以外の目的でついてくるなんて元魔王軍という事を差し引いても物好きな人物だ。

 

「カズマが適当な事言いふらしたのも悪いけど、そんな二人と付き合いを続けてたゆんゆんにも責任あるような気がしてきたなぁ…。前に友達がどうとか言ってたけど、相手は選んだ方が良いと思うよ?」

「…リーン、それは結構なブーメラン発言だぞ」

 

 俺達もよく言われるからな『ダストはパーティーから外した方がいいんじゃないか?』って。

 

「とにかく、私達は一番の問題のお父さんの誤解を解いてくるから。ねりまきさんはここに来た人の誤解を解いて置いてくださいね」

「はいはい。そこの大きなお兄さんはやけに荷物が多いけど今日は泊っていくの?それなら部屋まで案内するけど?」

「そうだな、折角来たのだし観光もしていこうと思っている。とりあえず荷物を置かせて貰っていいか?」

「観光かー、ウチの里は結構見どころあると思うよ。じゃあ宿になってるのは二階ね、一緒に行こうか?」

 

 普通ならばお客相手にするような態度ではないのだが、不思議と不快感は感じない。

 彼女がまとっている空気というものだろうか?失礼というより人懐っこいという印象の方が強く感じられるのだ。

 

「あ、テイラー。あたしとダストの荷物も頼んでいいかな?その後はここで休むなり観光するなりしてていいからさ」

「え?」

 

 階段を上がるというところでリーンに呼び止められた。

 どっちにしても荷物は置きに行くのだから持っていくのは良いのだが、休んでいていいというのはどういう事だ?

 

「おいおい、キースだけじゃなくてテイラーも置いてく気かよ?」

「んー邪魔だとかそういう訳じゃ無くってさ、聞いた感じゆんゆんのお父さんが一番大変そうなんでしょ?実際関係無くても、あらかじめ知っていた男の他にも違う男が居たりしたら面倒になるんじゃない?」

「「あー…」」

 

 俺とダストの声が重なる。

 確かに、それならいっそリーンだけが付いて行った方が話がこじれなくて良いかもしれない。最悪、俺がバニルと勘違いでもされるという可能性もある。

 

「そうですね…お父さんが暴走したとき、守る人は一人の方が良いですし」

「マジで頼むぞ。というか暴走させない方向で頼む」

「任せときなさいって、それじゃ行ってくるね」

 

 二人の荷物を預かり、三人を見送る。結局俺とキースはただ観光に来ただけになってしまったな。

 

「ねえねえ、お兄さんはアクセルって街から来たんだよね?」

 

 二階への階段を上がり切ったところで、ねりまきという娘から声を掛けられた。

 

「あ…ああ。ゆんゆんやカズマ達と同じく、俺達もアクセルを拠点にして冒険者として活動しているぞ」

「ふんふん…けどさ、ゆんゆん達と知り合いでも紅魔の里は初めてでしょ?良かったらだけど…私が案内してあげよっか?」

「案内か…」

 

 先ほどの娘達の案内は断ったが、実際案内をして貰えるならして貰った方が良いに決まっている。こういった隠れ里的な所では立ち入り禁止の場所があったりする場合があるからな、これ以上余計な問題を起こすのも面倒だし素直に受け入れる方がだろう。

 それに…俺が了承するのを期待を込めた眼差しで待っているこの娘の提案を受けないのは、ものすごく罪悪感を掻き立てられる。砕けた調子でも不快感を感じない事といい、本当に良い性格をしているな。

 

「ではよろしく頼む、見て回る順番はとりあえず任せるよ」

「任せといて!紅魔の里は観光にも力を入れてるから外の人は満足する事間違い無しだよ!」

 

 彼女は親指を立てた拳を突き出しながら満面の笑顔でそう言った。

 要するに、この娘はまったく裏表の無い性格をしているのだろう。こういったタイプは今まで周りに居なかったら新鮮だな。

 いや…カズマもある意味そんな感じの性格をしているか?まぁ隠そうとしても隠しきれてないって所が違うけれど、安心して付き合えるという点では似ている気がする。

 彼女は早速「どこにいこうかなー」などと楽しそうに呟いている。歳は離れているとはいえ女の子と二人きり、正直苦手なシチュエーションではあるがこの分なら楽しく観光出来るかもしれない。

 

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