NEED FOR SPEED:Legend Of The Lan 作:天羽々矢
クラナガンまでの距離・・・4,373km
リュウの現在の走行順位・・・172位
とんだ足止めを食らいつつも無事乗り切り、リュウは第1関門であるシルバーロックが位置する地帯“フォーチュンバレー”に入った。
乾いた大地に聳えるこの地にはシルバーロックはもちろん、更に東へと進むハイウェイといった重要な交通路が存在する。
その乾いた大地に奔るハイウェイをリュウのR34GT-Rが前の車列を追いつつ駆け抜ける・・・かのように見えているが当の本人はというと、
「はむ、んぐっ、んぐっ・・・」
左手に持つサンドイッチを頬張り右手に持つペットボトルのスポーツドリンクで口を潤すという、軽い食事を取っていた。
その間のGT-Rの運転は、リュウが練成した魔力糸の疑似回路がウルスとGT-Rのセンターコンソール間に繋がっておりウルスによる自動運転となっていた。
“腹が減っては戦はできぬ”ならぬ“腹が減ってはレースはできぬ”。今の彼の姿はまさにそんな風だった。
〈飛ばして。150位以内でシルバーロックに入れないよ〉
そんな彼の様子を知ってか否かタブレットでテレビ通話中のユーノがそんな事を言う。
それに対しリュウはペットボトルの口を自分の口から離してボトルホルダーに置き、袋に一緒に入っていた手拭きで軽く手を拭いた後にハンドルを再び握って魔力糸を解除。GT-Rの運転に戻る。
〈それとリュウ・・・〉
「何?」
まだ何かあるのか、と言いたげにリュウが問うが、
〈・・・カジノは禁止だからね?〉
ユーノの言葉は彼なりに緊張を解そうと考えたジョークであった。
そのジョークを聞き、リュウは不本意ながらも少し笑ってしまうがおかげで気が少し楽になったような気分だった。
「思いつきもしなかったな」
そんなジョークにリュウも笑みを浮かべながらそう答えると、すぐに表情を引き締めGT-Rを加速させる。
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同時刻、管理局本局第4ドッグ・・・
係留されている次元航行艦“ヴォルフラム”の格納庫内でM.P.D.T.Fなる高速機動部隊に編入されたなのは等元機動六課メンバーは重い面持ちで何かを待っていた。
その理由は、はやてが頼んだ六課メンバーの追跡用車両が何台か届くからである。
“何台か”というのは車の改造に協力していたギルバートから全員分の車を仕上げるには圧倒的に時間が足りず、仕上がった分だけでも持ってくると事前に聞いていたからである。
「・・・来たみたいやね」
はやてが小さく呟くと、格納庫に2台の車が入ってきた。
1台は黒塗りのエンツォフェラーリ。これは既にフェイトが乗っている為彼女が運転する車だという事はすぐ分かった。
もう1台はというと、大型のキャリアカーであり荷台には何台か車を載せている。その数は7台程だろうか。フェイトのエンツォも合わせれば8台である。
キャリアカーのドアが開くと中からギルバートともう1人、茶髪のセミロングに丸眼鏡が目立つ女性士官“シャリオ・フィニーノ”である。
「悪いなはやて、早く仕上げられるなんて大口叩いておきながら間に合わせられなくて・・・」
「大丈夫、気にしてへんよ。むしろ短い時間で8台も揃えてくれてありがとな」
全員分を間に合わせる事ができなかったことに対しギルバートが謝罪するが、はやては気にもしていおらずむしろこの短時間で8台も仕上げてくれた事に素直に感謝していた。
「大丈夫です、どの子も最高の車に仕上げてますよ!」
嬉々とした様子ではやてに伝えるシャーリーは手元のタブレットを操作する。
するとキャリアカーのスロープが下りると同時に積載されている7台の車のエンジンが自動で次々とスタートし順々にスロープを降りて六課メンバーの前まで進むと自動でエンジンを停止、大人しくなった。
「うわぁ・・・何かSF映画みたい・・・」
なのははそんな車達を見て小さく呟く。
そしてギルバートとタブレットを見ながらのシャリオが口を開く。
「まだ全部じゃないとはいえ今は時間が惜しい。調整が終わったのだけこうして持ってきた、皆が今回使う車だ」
「え~っと、すでに全車にはストリートレーサー達に対抗できるエンジンや駆動系、サスペンション回りとかを強化した他、皆さんの運転技能を補う為に全車に“D.C.S”、“
「D.C.S・・・?」
全く聞き覚えの無い単語にフェイト、ギルバート、改造を担当したシャリオを除いた六課メンバー全員が微かに首を傾げる。
その様子を後目にシャリオは言葉を続ける。
「はい、知っての通り今のなのはさん達の運転技能ではリュウやギルバートさん達ストリートレーサーに対抗するには厳しいという事なので、デバイスがそれらを補う形でサポートしてくれます。ある程度であれば自律走行もできますよ」
「・・・やっぱり、何かSF映画みたい。なんだっけ、そんな感じの車が出てくるの・・・」
シャリオの解説になのははまた小さく呟き、何かを思い浮かべるような雰囲気である。
そんななのはは放っておき、シャリオはまず車の紹介を始める。
「まずなのはさんの車はこれですね、“日産・GT-R”です。各地上部隊のハイウェイパトロール隊でも配備されている由緒正しいスーパーカーです!」
「より正確には、日産のワークスチーム“
ギルバートが細かい解説を挟みながらもシャリオが示したのはブリリアントホワイトパールのボディにフロントバンパーとボンネットに施された両脇に赤い細ラインが入っている青のダブルストライプのバイナル、ボディ両側にはなのはの飛行魔法“
「GT-Rって、プロのレースにも参加してたあの・・・確かに何か凄く速そう」
車に無知ななのはでもGT-Rのブランドは流石に知っていたようで、小さく呟きながらもその顔には笑みが浮かんでいた。
「次にスバルはこの車に乗ってね~。“フォード・エスコートRSコスワース”。これも実際にモータースポーツで大活躍した子だよ」
「う・・・うわぁ、何これ、カッコいいじゃないですか!?」
次にシャリオが示したのはスバルの搭乗車。
ラピスラズリブルーのボディにボンネット、ルーフ、トランクはスカイブルーというツートンカラーの“フォード・エスコートRSコスワース”。
残念ながらこの車の最大の特徴とも言える2段式リアスポイラーは装備されていないが、代わりにWRCで実際に使用されたモデルと同じような形のオーソドックスなリアウィングが付いている。
「すっごい・・・すっごくイイですっ!!」
目を輝かせながら声を荒げるスバルにシャリオは満足気に頷くかに思えたが、その表情はどこか残念そうだ。
「本当はもっとカッコいいのを見せてあげたかったんだけどねぇ~・・・」
「エスコートコスワース自体がレア物なんだ、本人が良いって言ってるんだからいいだろ」
残念そうに呟くシャリオにギルバートがツッコんだ。
ツッコまれたシャリオは嘘くさい咳払いをすると、気を取り直して車紹介を続ける。
「次はティアナのだけど、この子がいいかな」
そう言ってシャリオが選択したのは、
その攻撃的なデザインにティアナは少し威圧されていた。
「・・・何と言うか・・・凄い気迫ですね、ただこうして眺めてるだけなのに・・・」
「すご~い!ティアの車も凄くカッコいい!!ねぇねぇあたしのと交換しようよぉ~」
「うっさい!遊びでやる訳じゃないんだから・・・」
いつものコンビの漫才のようなやり取りはさておき、シャリオはまだ口を閉じない。
「次にエリオとキャロの車はこれだよ~」
そう良い次にシャリオが選択したのは2台。
ピンクのボディに細ラインが入った白のレーシングストライプ、車体両サイドにはキャロのデバイスであるケリュケイオンの使用時に生じるフィンを模した白い羽根のバイナルを施し、
赤いボディに車体両サイドに前輪部から後部にかけ広がっていくような白いチェッカーバイナル、RE雨宮製FACER N-1(02MODEL)、UNDER SWEEP CARBON、CANARD-PRO CARBON、スリークライト、GT-AD KIT-Ⅱボディキット、REAR SPOILER GTⅡ(Dry Carbon)、DIFFUSER PRO-Carbon、ツインドルフィンマフラー、
「こ、こんな凄そうな車・・・あ、でもちょっと可愛いかな?」
「運転した事あるのはジープくらいだし、スポーツカーなんてテレビや雑誌で見かけるくらいしか無かったからなぁ・・・こんなレースカーみたいな凄い車、僕とストラーダでもやれるんでしょうか・・・?」
「大丈夫、似合ってるよエリオ君!」
「そ、そう・・・?」
キャロのどこかズレた励ましの言葉にエリオは戸惑いながらも返す。
「え~次はシグナム副隊長とヴィータ副隊長の使う車ですが・・・」
シャリオが別のマシンを選択して口を開きかけると、ヴィータとシグナムがふと口を開いた。
「あ、知ってるぜこれ。フェイトのと同じ奴だろ?」
「うむ、確かフェラーリだったか?」
ヴィータとシグナムは自信がありそうな表情でそう答えるが、それに反応したのはギルバート。2人の答えに少し溜息をついた。
いきなり溜息をつかれた2人はムッとするが、その答えはすぐに帰ってきた。
「全然違うぞ2人共。そいつは“ジャガー・XJ220”。フェラーリとは全くの別物だからな?」
「そ、そうだったんだ・・・」
「う、うむ・・・すまん」
ギルバートからのツッコみともとれる返答に知ったかぶりをしてしまった2人は微かに顔を赤らめてしおらしくなってしまった。
件のマシンだが、純正のメタリックシルバーから変更されシグナムとヴィータを表すようなピンク寄りの紫と濃い赤のメタリックツートンという変わったボディカラーに仕上がっている。
「で、最後はシャマル先生とザフィーラの車ですが・・・」
そう言いシャリオが最後に選択したのは、ライムグリーンのボディにボンネット、ルーフ、エンジンフードはホワイトとうツートンカラー。実際の24時間レースでも使用された大型リアウィングが付けられレースカーの風格を漂わせるその車は“ポルシェ・959”。
「まぁ、何か凄そうな車ね」
「うむ、これならやれそうだな」
その959を見てシャマルとザフィーラも感心したようだ。
現段階での全ての車の紹介を終えたシャリオを見て、今度ははやてが口を開いた。
「ひとまず今はこれで全部という事やね。これより私たちはシルバーロックに向けて発進します!各員準備は怠らんように!」
『はいっ!!』
はやての言葉にメンバー達は敬礼を返し、一同を乗せたヴォルフラムはシルバーロックに向け出港した。
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同時刻、フォーチュンバレー・・・
フォーチュンバレージャンクション、今や無人のゴーストタウンと化しているこの町も今はザ・ランのコースとなっている。
そして丁度そこを走行している車列でのトップを争っている2台のマシン・・・。
先行するは車体両サイドにギリシャ神話に出てくる巨鯨ケートスを模したバイナル、ルーフには鯨の尾鰭のバイナルを施したメタリックブルーのトヨタ・スープラであるがただのスープラではない。
2001年までSUPER GTレースで活躍したあの“カストロール・トムス・スープラ”のレプリカモデルである。
そのトムス・スープラの後方にはルーフにパトランプを着けパトカー然とした白の2014年式5代目“フォード・エクスプローラー”である。
トムス・スープラは執拗に後方のエクスプローラーをブロックし、挙句の果てには前を走る一般車に幅寄せしてハンドルを切れさせ、エクスプローラーへのブロック手段として利用している始末である。
「・・・チッ、後ろのパトカーモドキ意外としつこいな・・・」
「クソッ、あのトムスモドキ野郎ふざけた真似ばっかしやがって!」
ほぼ同じタイミングで悪態をついたドライバー達。
トムス・スープラのドライバーは髪に白と黄色のメッシュを入れ、某仮面ライダーに出てきた物のような右耳に着けたデバイスとそれに一体化した眼鏡型ディスプレイを着用し、群青色のパーカーと紺カーキのカーゴパンツを身に着けたその青年は“タツミ・ウェイブ”。走行順位147位。
エクスプローラーのドライバーは赤髪に細く整った体系、黒いインナーシャツに白のジャンパー、青いジーンズを身に着けたリュウと同年位のその青年は“暁 哲也”。走行順位148位。
彼らはリュウと同じこのザ・ランの覇という1つの栄光を手にすべく走っているが、エクスプローラーのドライバー、哲也にはもう1つ別の目的がある、だがそれはまた別の機会に語るとしよう。
今の彼らは互いの行動に奮起しタツミからはそんな様子を伺えなくともヒートアップしている事だけは確か。
だからこそ2人はまだ気づいていない。・・・後方から追い上げるシルバーのR34GT-Rの存在を。
ED:Blast My Desire/m.o.v.e
今回は少しですが青龍騎士様とさすらいのエージェント様のキャラを出演させていただきました。
この場をお借りして青龍騎士様、さすらいのエージェント様、ありがとうございます!
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