NEED FOR SPEED:Legend Of The Lan 作:天羽々矢
クラナガンまでの距離・・・4,053km
リュウの現在の走行順位・・・149位
太陽が沈み空に少し朱みが残る中、シルバーロック市内のバリオと呼ばれる低所得者街にてレーサーと管理局との大規模なカーチェイスが繰り広げられていた。
[現在ストリートレースが進行中、詳細を送る!]
リュウを始めとする第1関門を突破したレーサー達は管理局を逃れながらもレースを継続。現在リュウは148位の黒のランボルギーニ・ミウラSVをロックオンしていた。
[もっと応援を。大至急!]
[了解。そこから北へ2ブロック先にいる!]
未だに激しく点滅し管理局の無線を傍受し続けるクリスタル型デバイスから聞こえる管理局無線を後目にリュウ達はバリオの町を駆け抜ける。
だが、ここでリュウにとってまたしても聞きたくなかった声が聞こえだす。
[こちらライトニング1、現在ライトニング2、3、4、5と共にそちらへ向かってます!]
傍受デバイスから聞こえてきた女性の声、これもリュウにとっては聞き覚えのあり、今この状況では聞きたくない声に分類される物であった。
「今度はフェイト執務官か、クソッ・・・!!」
R34の車内でハンドルを握るリュウは小さく悪態をつく。
背後からはなのは達スターズ分隊が、この先にはフェイト率いるライトニング分隊が待ち構えている。
まさか一昔前に同じ部隊で過ごしてきた仲間が、管理局を抜けた自分を捕まえようとしてくるとは何という皮肉だろうか。
リュウを含めたレーサー達はバリオを出てレイクサイド・ドライブという幹線道路に出る。が・・・遂にそこで姿を見せた。
[見つけた!こちらライトニング1、目標を確認!ライトニング2から5へ。ここで絶対にリュウを止めるよ!]
[ライトニング2、了解した!]
[ライトニング3了解!行くぞストラーダ!]
[ライトニング4、了解です!]
[ライトニング5了解!絶対止めるわ!]
傍受デバイスから聞こえたのはライトニング分隊の面々ともう1人。隊長であるフェイトと副隊長のシグナム、そしてフォワードのエリオとキャロ、もう1人は後方で医療に就いていたシャマルだ。
リュウのR34が道路に合流したのを確認すると、フェイトが操る黒いエンツォフェラーリとシグナムとヴィータが乗るジャガー・XJ220、エリオの赤いRX-7(FD3S)、キャロのピンクの3代目ジェッタ、シャマルのライムグリーンのポルシェ・959が一斉にサイレンを鳴らし追跡に参加する。
「リュウお願い、今すぐ止まって!私たちが絶対に助けるから!」
背後から迫る黒いエンツォからスピーカー越しにフェイトの悲痛そうな声が聞こえ、それにリュウは心を痛めるもここで止まる訳には行かず、停止勧告を無視し逃走を続ける。
[10-73を要請します!]
[了解、10-73準備!モニターで確認を!]
レーサー達は再びバリオに戻り管理局の追跡を撒こうとするも既に目の前には構築済みのバリケードが存在しそれに驚いたレーサーの何台かは停車し逮捕、リタイアとなった。
その中でありながらも、リュウは冷静さを失わず的確にバリケードに開けられている突破口を突いて突破していき再度レイクサイド・ドライブへ。今度は来た道を戻っていくようなコースを走っていく。
[仕方ねぇ!なのは、はやて!アタシとザフィーラで直接リュウを止める!]
[なっ、無茶だヴィータ!危険すぎる!]
[もうこれしかねぇ!何とか止めてやるから!]
痺れを切らしたヴィータが無謀とも言える提案をし、それを危険だとシグナムは止めようとするがヴィータは止まろうとはしない。
なのはとヴォルフラムで指揮を執るはやても決断には少し時間を要したがこういう時のヴィータは言い出したら止まらない事は知っているためにやむなく決断する。
[了解、許可します!せやけどリュウに怪我させたらあかんよ!]
[ヴィータちゃん、ザフィーラさん、気を付けて!]
[おう!絶対止めてやる!]
[心得た!]
通信が終わるとXJ220と959の窓が開き、身軽な動きで紅のゴスロリドレス風のバリアジャケットを纏ったヴィータと紺の戦闘装束を纏い、筋骨隆々の青年の姿に変身したザフィーラがルーフ上に登り身を屈め姿勢を安定させる。
そしてXJ220と959が同時に加速しリュウのR34に迫る。
「く・・・!!」
傍受した無線を聞いたリュウは表情を歪めながらも何かこの状況を打開できる手は無いものかと周囲を見渡す。
その時丁度リュウの右前方を走行する故障車満載のセミトレーラー型キャリアカーを見つけた。もうこれしかない。
⦅先に謝っておきますヴィータ二尉、ザフィーラさん・・・ごめんなさい!⦆
「!?こいつは・・・」
「リュウの念話か!?」
リュウのR34から頭に直接響くようなリュウの声に2人は反応した。
これはリュウに限らず魔法に関する素質があれば誰でも使える“念話”という伝達魔法であり、我々の世界で俗に言う“テレパシー”のような物である。
リュウの念話が何に対しての謝罪か2人は分かりかねたが、次にリュウの起こしたアクションでそれを理解する。
リュウのR34がいきなり右に曲がったかと思えば、そのすぐ隣にいたキャリアカーに車体をぶつける。すると衝撃で荷台のロックが外れ積載されていた故障車が落下してくる。
「なっ!?」
「ちょっ!?」
丁度リュウに追いつくといった所で故障車の雪崩にシグナムとシャマルは驚き急ブレーキ、だが間に合わず落下した故障車と激突する。
「うおぉっ!!?」
「ぐおぉっ!!」
急ブレーキの衝撃を何とか堪えていたルーフ上の2人も事故の衝撃には耐えきれず振り落とされてしまった。それだけでなく後続の管理局パトカー達も落下した故障車やバランスを崩し横転したキャリアカー等で進路を塞がれた為に停車か迂回を余儀なくされる事になる。
その状況で故障車群をかわしたのはギルバートのチャージャーとフェイトのエンツォフェラーリ、この2人は持ち前のドライビングスキルが功を奏したという物だろう。他に突破できたのはエリオのFDとキャロのジェッタといった比較的小型な部類に入る車で大柄なGT-Rやスープラでは通り抜けできない。
[なのは大丈夫!?]
[うん、大丈夫!フェイトちゃん達は先に行って、後で追いつくから!]
足止めを食らったなのはを心配するフェイトとそれに問題無い事を伝えるなのはの声をデバイスが傍受。それを聞いたリュウはやむを得なかったとはいえなのは達への申し訳なさで悲痛な表情を浮かべるが止まってはいられない。
リュウはレイクサイド・ドライブを疾走し何ヶ所か構築されたバリケードも突破していく中で次々と他のレーサー達は管理局の強固な包囲網によりリタイアを余儀なくされている。リュウが確認できただけでももう10人以上は捕まっているだろう。
そんな中でリュウの前方に見覚えのあるマシンの背が見えてきた。
GTレースを彷彿させるボディキットに車体両サイドにギリシャ神話の巨鯨ケートス、ルーフに鯨の尾鰭のバイナルをあしらったメタリックブルーのトヨタ・80スープラ。
それはシルバーキャニオン・トレイルでリュウを潰そうと攻撃してきたタツミ・ウェイブのカストロール・トムス擬きの80スープラである。
――――――――――――――――――――
「・・・あの下民か、まだ残ってたか」
トムス・スープラのハンドルを握り、バックミラーに移ったシルバーのR34GT-Rを見てドライバーの青年、タツミ・ウェイブが呟いた。
その更に後方からは管理局のEM2型シビッククーペに紛れ覆面仕様の黒いエンツォフェラーリ、カーボンボンネットを装着した赤いFD3S、ピンクの3代目ジェッタ、そしてボンネットから突き出たスーパーチャージャーを装備した黒い69年式ダッジ・チャージャーが追ってきている。
「あの伝説の部隊を相手に・・・、下民にしてはよくやる・・・」
タツミはしつこく迫りくる機動六課の面々から逃げ続けているリュウに素直に少し関心していた。
だがすぐに運転に集中し、シフトレバーを5速から6速に入れスープラを加速。一般車を交わしつつシルバーロックを出る高速“ザ・ラストウェイ”にアクセスできる“ビリオネア通り”に繋がる道を直進していく。
[こちらライトニング1!バリケード設置はまだですか!?]
[こちらチャーリー4-6、ハイウェイ行の道路を封鎖しました!目標を追い込んでください!]
インパネに取り付けられたクリスタル型傍受デバイスが点滅しながら管理局の無線を傍受。だがタツミは冷静に、そして的確にハンドルを左に切り路地裏へと車体を滑り込ませる。そしてそのタツミの背後を走るリュウのR34GT-Rとそれを追うエンツォフェラーリとチャージャーも少し遅れて滑り込ませる形で路地裏へ。残りのシビッククーペは急ブレーキをかけ停車、FDとジェッタはオーバースピードによってスピンしオーバーランしたようだ。
[奴らは東に逃走し路地へ入った!]
[うわぁ!リュウさん凄すぎるよぉ~!?]
[うわわっ!?クソッ!ごめんなさいフェイトさん、ギルバートさん、後から追っかけます!それまでどうか!]
[OK、任せろ!]
[分かった、絶対ここで止める!]
デバイスが傍受し続ける無線を後目にタツミとリュウはほぼ同時にシフトを3速へ落とし交差点をドリフトしながら左折。
「・・・あのチャージャーは見たことはある、さしずめ管理局側の助っ人か、それにあのエンツォも下民にしては悪くない腕だ」
バックミラー越しに見えるチャージャーとエンツォを見て相変わらず落ち着いていながらも棘のある言葉を呟く。
そして次の丁字路を2台そろってドリフトしながら右折、ホテルやカジノ、飲食チェーン等がひしめく大通り“ビリオネア通り”に出た。
だがその2km前方には管理局のバリケードが。
しかしそれは果たしてバリケードと言えるのか、ただ単に余り物のフォード・トーラスポリスインターセプターを乱雑に並べただけだ。
「あれでバリケードだと?ふざけた真似を・・・!?」
あまりにも杜撰な管理局の動きにタツミは思わず少し憤った瞬間、そのバリケードの後方にライムグリーンの古代ベルカ式の魔法陣が出現し、そこからライムグリーンのポルシェ・959、白の日産・GT-R NISMO、紫とツートンのジャガー・XJ220、ラピスラズリブルーのフォード・エスコートRSコスワース、オレンジメタリックの80スープラが飛び出しバリケードをより強固な物にした。
「転移魔法か・・・!!」
タツミは一瞬動揺するがすぐに冷静さを取り戻し、バリケードの脆い箇所を探す。
そして見つけた、それは右側のモノレール駅とパトカーとの間に空いた箇所、もう1つは左側のパトカーと
カジノ店との間のスペース。
リュウとタツミで左右に分かれればお互いに突破はできるがそれではバリケードを解いた管理局がタツミをも捕えようと動く。ではどうすべきか。
・・・決まっている、
そう考えたタツミはスープラの車体を少し右へずらすと・・・
あろう事かすぐ左を走るリュウのR34の後部に思い切りぶつけに行ったではないか。
高速でぶつけられたR34は4駆であろうと立て直す事はできずバランスを崩しスピン。そのままバリケードに車体左側から突っ込んだ。
そしてタツミはそのすぐ右脇に空いたスペースを突破し、バリケードに突っ込んだR34を後目にスープラを悠然と走らせていく。
――――――――――――――――――――
「クソッ!!あいつ!!!」
バリケード突破を画策していたリュウは隠す様子もなく憎々し気に吐き捨てる。相手は言わずもがな、バリケードに差し掛かる直前でぶつかりに来たタツミである。
とにかく逃げなくては。すぐにぶつかった衝撃で止まったエンジンをかけようとリュウはセルを回すが、キュルキュルと鳴るだけでかかる様子が無い。
「おいまさか、ウソだろ・・・!?」
最悪の予感にリュウは思わずそう呟きもう1度セルを回すが、それでもキュルキュルと鳴るだけ。
それ即ち・・・エンジンのご臨終である。ただでさえここまで飛ばして走ってきて少なからずガタが来ていてもおかしくなかったが、激突した衝撃で完全に終わってしまったようだ。
エンジンが動かなければどんなスポーツカーでもガラクタと同じだ。つまり・・・リュウはもう逃げる事はできない。
そして、それを更に突きつけるかのようにスープラとGT-Rのスピーカーから声が響く。
「もう逃げられないわよリュウ!観念しなさい!」
「大人しく投降して!身の安全は私たちが保障します!」
そんなティアナとなのはからの声に、リュウは遂に諦めたかのようにシートにもたれかかる。
そして―――――現実に打ちひしがれたリュウは・・・諦観と絶望に染まりつつも決断した。
「・・・ウルス、俺はここで終わりみたいだ」
《私もご一緒しますマスター。私は貴方のデバイスですから》
「・・・ありがとう」
たとえそれがただのAIだったとしても、ウルスの言葉にリュウは少し救われたように感じた。
そしてリュウはゆっくりとドアを開けそこから両手を出し抵抗の意思は無い事を示し、そのままGT-Rから降りていく。
「車から降りた、奴が降りた!」
「動くな!時空管理局だ!」
「貴様ぁ!跪けッ!」
「両手を頭の上に乗せるんだ、さぁ今すぐだッ!!」
武装局員達にデバイスを向けられ叫ばれながらも、リュウは静かに膝を折って跪き、言われるがまま両手を頭の後ろに回す。
目の前で光る多数のパトランプの光景を見て、リュウは1人静かに涙を流した。
10/22 07:00 PM
リュウ・アステリオン、シルバーロック市内・ビリオネア通りにおいて身柄確保。
ED:無し
やっぱり端折りすぎ感がまだあるかなぁ・・・
参加枠は残り2枠。興味のある方はお早めに![https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=233938&uid=79933]