NEED FOR SPEED:Legend Of The Lan 作:天羽々矢
「車から降りた、奴が降りた!」
「動くな!時空管理局だ!」
「貴様ぁ!跪けッ!」
「両手を頭の上に乗せるんだ、さぁ今すぐだッ!!」
武装局員達がデバイスを向けながら叫び、リュウは言われるがままに静かに膝を折って跪き両手を頭の後ろへ回す。
149位とギリギリでありながらザ・ラン第1関門突破を果たしたが、シルバーロック脱出を目前にしてタツミの卑劣な攻撃により逃走する事は叶わなくなってしまった。
これで全てお終いなのか、アダムの嘲笑を聞きながら破滅を待つしかないのか。
リュウがどんなに願おうとも決して現状が変わる事はない。愛車のGT-Rは既にご臨終、周囲には武装局員だけでなくなのはを始めとした元機動六課メンバー達、逃げ切れる可能性は、限りなくゼロに近い。
その光景を前に、悔しさか己の懺悔か、リュウは静かに涙を流した。
「リュウ、思いとどまってくれて嬉しいよ」
「泣かないでくださいリュウさん。もう大丈夫、僕たちが助けますから・・・」
程なくしてフェイトが子供をあやすような優しい声をかけ、エリオによってバインドという拘束魔法をかけられ縛り上げられると、リュウは大人しく身を預け近くに停車しているパトカーに乗せられようとする・・・
――――――――――――――――――――
場面は変わり、既にシルバーロック脱出を果たしハイウェイを疾走していくレーサー集団。
その最後尾に“彼”と彼の車の姿はあった。
白いボディにルーフにパトランプを取り付けパトカー然とした2014年式フォード・エクスプローラーとそのドライバーの青年、暁 哲也である。
そして哲也の傍受デバイスが点滅し管理局の無線を傍受する。
[各員へ、被疑者を確保しました]
被疑者というのは恐らくリュウの事だろう。哲也は独自で管理局との繋がりを持っており任せておけばまず問題はないだろう。そしてこのレースが終わった後で彼の無実の証拠を集めても十分に公判までには間に合う。
そう思っていた哲也だったが、そこで彼の傍受デバイスがノイズを拾ってしまった。
「あれ?何だこれ、故障か?」
インパネから傍受デバイスを取り外しデバイスを振って確かめる。
すると少ししてノイズは確かに消えたが、今度は別の無線が聞こえてきた。
[少将の思惑通り、機動六課の連中がリュウ・アステリオンを捕まえたとよ。あとは手筈通り俺達が身柄を引き取って少将んとこに連れてきゃ万事OKだな]
[あぁ、一瞬あのテツヤってガキがちょっかい出してくんじゃねぇかって思ったが意外とマヌケで助かったぜ。ちょっと良い奴ぶって頭下げりゃあっという間に信用したからな]
デバイスが傍受したからには管理局側の無線で間違いは無いだろうが、下衆いた口調の言葉に哲也は思わず耳を疑った。何より自分に手を貸すと言ってきた管理局がまさか自分をただ出し抜く為だけに善良人ぶっていたという事に腹を立てていた。しかし哲也の予想を大きく裏切る事態はそれだけではなかった。
[けどあのテツヤってガキ、本気で無実の証拠を揃えるかもしれねぇぞ?そん時は流石にマズいだろ?]
[何、もし証拠が本物だとしてもシドウ少将の十八番、握り潰しや捏造があるさ。少将は裁判員も抱き込んでるし一度身柄を抑えちまえばもうどう転ぼうg]
ガシャンッ!!
途中まで聞いた所で哲也は何とデバイスを握り潰そうとし、デバイスのコアに亀裂が入ってしまった。幸い傍受デバイスにはコアの破損でもある程度であれば自己修復する機能が備えられているため問題は無いだろう。
それよりも一番重要な問題は、哲也の希望が潰えてしまったという事だ。
たとえ哲也がリュウの無実の証拠を揃えたとしても、管理局少将で現六課メンバー達の司令官マサノリ・シドウの圧力により全て捻じ曲げられてしまう。そして先ほどの局員はそれを承知の上でリュウを拘束しようとしているのだ。
哲也は喜んで悪党の肩を持たんとする腐りきった管理局に、そしてそんな人でなし共を信用してしまった自分に対しどす黒い感情が蠢き、
「があぁぁぁぁぁぁッ!!!」
獣のような雄叫びと共に右手拳をクラクションに叩きつけた。
このままでは遅かれ早かれリュウは殺される。もう残された道は1つしかない。
決断にそう時間はかからなかった哲也は、中央分離帯が途切れた箇所でフルブレーキをかけ反転。来た道を戻っていく。
――――――――――――――――――――
リュウは全てに絶望したかのようにその瞳に光は宿っておらず、局員達に猛獣のような目で睨まれながらただ黙ってパトカーに乗せられようとしていた。
「頭に気を付けてね」
フェイトにそう促され、遂にリュウがパトカーの後部座席に乗り込もうとした、その時だ。
「注意しろ!別のコード6が向かってくるぞ!!」
誰か別の局員が叫んだ。
その車が徐々に鮮明に見えてくる。白い車体にパトランプと、パトカー然としたそれはフォード・エクスプローラー。だがリュウからは一瞬だがそのドライバー、暁 哲也の姿が見えた。
「・・・テツヤ・・・?」
静かに呟くが、今の彼は何かの構えを取っているように見えた。
そして哲也のエクスプローラーはサイドブレーキをかけ90度回ったしたところで姿勢をキープしながら迫ってくる。そしてそれ故にリュウからは哲也が何の構えを取っているのか理解し、それ故に戦慄したリュウが叫ぶ。
「全員、伏せろおぉぉぉぉッ!!」
リュウが叫ぶのとほぼ同タイミングで、なのは達の目前まで迫ったエクスプローラーの運転席で、遂に哲也がその右手拳を全力で振り抜いた・・・。
すると凄まじい衝撃波が発生しバリアジャケットを纏っていた武装局員等はおろかなのは達やバリケードを構築するパトカーまでをも吹っ飛ばした。
ギリギリで伏せていたリュウとそれを抑えるエリオは何とか起き上がると周囲の惨状を見て唖然とした。
横転した車両や吹き飛んだダメージでジャケットが解除された局員がいる。
(テツヤのパンチが凄かったのは知ってたけど、本気だとここまで・・・!?)
自分の友人でありながら何て奴だと心の中では思ったが、周囲のパトカーやなのは達が吹っ飛んだおかげで守りがかなり薄くなった。そしてそれはリュウに再び希望の灯を灯したのである。それと同じようにリュウの瞳に光が戻った。
(・・・ありがとうテツヤ、大きな借りを作っちゃったな)
心の中で親友に呆れつつも、同時に感謝した。
今の状況であればまだ手元にある相棒ウルスと力を合わせれば突破できるかもしれない。
突然の事態に理解が追い付かないフェイト達に気取られぬようウルスに目配せすると、相棒は理解したかのように一瞬だが発光した。その様子にリュウは小さく微笑むと、
⦅エリオごめん、これが終わったら気が済むまで殴っていいから!⦆
「え?・・・ぐぁっ!?」
すぐ背後にいるエリオに念話を発した直後に頭突きを叩き込んだ。直撃を喰らったエリオは大きくよろめき後ずさり。
「ウルスッ!」
《Decording!!》
リュウがウルスに叫ぶと同時にウルスがバインドの魔力結合を瞬時に解読し脆い箇所にピンポイントでリュウ自身の魔力を流す事でバインドを破壊。この世で最も固いと言われるダイヤモンドにも脆い箇所があるように、強固な拘束魔法にも必ず急所は存在しリュウとウルスはその解読ができるに限らず、JS事件においては最後の最後まで残ったスカリエッティの部下ナンバーズの4番目“クアットロ”でさえも舌を巻いた程の電子戦魔法の才を開花させた程だ。それ程までに2人の信頼は厚い。
バインドを破ったリュウはエリオの腹部の下に潜り肩で担ぐように持ち上げてエリオを近くのパトカーに叩きつけそして続けざまに今度は地面に叩きつけると近くの路地裏に向け駆け出した。
「あぁマズい!リュウが逃げる!!」
「何!?貴様ぁ、待てッ!!」
だがそれに奇跡的に無傷だったギルバートが叫び、他の局員とフォワード隊メンバー達が追ってきた。
「貴様ぁ、大人しくしろッ!!止まらなければこの場で撃ち殺すぞッ!!」
「お願いリュウ待って!!」
「待ってと言われて待つ訳ないだろ!」
背後から聞こえる局員の怒号とスバルの声を後目にリュウは目の前にある重ねて立てかけられた荷役台を引き倒す。
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
倒れてきた荷役台で追手の何人かは転倒するが、スバルは持ち前の高い運動能力で台を飛び越え追いかけ続ける。
「クソッ・・・!」
追って来るスバルを見てリュウは軽く悪態をつくが尚も逃げに徹する。
しかしリュウとスバルでは能力に差があり、スバルはその差を着実に詰めていく。
だがリュウは右掌に魔力スフィアを形成し、スフィアを右腕と共に振るうとそこからロープ状に形成されたスフィアが放たれ80メートル程先のネオン看板に命中すると接着されリュウが地面を蹴ると、
「行けぇぇぇぇッ!!」
彼の身体が宙に引き上げられ映画の蜘蛛男顔負けのターザン移動を見せ、そしてすぐ目の前のフェンスを飛び越えていった。
「このっ!行くよマッハキャリバー!!」
《All light!》
スバルも負けじと相棒のインラインスケート型デバイス“マッハキャリバー”に声をかけるとすぐ右の壁を駆け上がりフェンスを越える。そしてすぐ前に未だ逃走を図るリュウの姿が見えた。
「止まれえぇぇぇぇッ!!」
一気に加速しリュウに掴みかかるスバルであったが、リュウの服の襟首を掴んだと思ったら彼の姿はまるで煙のように消えて行ってしまった。その光景にスバルは見覚えがあり驚愕した。
「これって・・・ティアのフェイクシルエット!?何でリュウが使えるの!?」
――――――――――――――――――――
「はぁっ、はぁっ・・・」
その頃、本物のリュウはスバルから逃げおおせ近くのブティックに裏口から入っていた。
店内にはカウンターに欠伸をして全くやる気の無い店員が1人いるだけで閑散とした雰囲気が漂っている。
「まさか、ティアナに教わったフェイクシルエットがこんな形で役に立つなんて・・・」
自分に呆れるな、と続けリュウは溜息をついた。それは機動六課が解散する少し前、どういう風の吹き回しかティアナがリュウに自分の幻術魔法の1つを教えると言い出し、遠慮したら胸倉を掴みながら凄まれた為に大人しくご教授賜った魔法がフェイクシルエットである。
自分には宝の持ち腐れであろうと、リュウ自身使う機会は無いと思っていたが、ティアナもこんな形で自分の教えた魔法が使われるとは夢にも思わなかっただろう。
とにかくまずは逃げ切る事が優先だ今の服装はとっくに割れてしまっている為別の服に着替えて一般人に成りすますしかない。今のリュウは口座はもちろんだがカードも凍結されて使用できないが幸い現金はある程度は持参出来ている。指名手配される前に口座から降ろしていたのが功を奏した。
リュウは適当に替えの服や下着を見繕ってレジに向かうが顔割れしないかが唯一の不安である。しかし店員は寝ぼけているのか特にリュウの事が気にせず無事支払いを終える事ができホッとした。
そしてトイレに入り数分後、カーキのカーゴパンツはそのままだが上着は黒いインナーシャツに赤いアクセントが入った白いロングコート、黒と赤の指ぬきグローブ、白いスニーカーに頭にかけたサングラスを乗せている姿になった。
《マスター、頭上のサングラス似合っていませんよ》
「うるさい、分かってるよ似合ってない事くらい・・・」
相棒からのヤジにむくれつつも早足でブティックを後にするリュウ。
だが店を出た直後、奥の車線を走行していたパトカーがリュウ目掛け突っ込んできた。
「うわっ!?」
咄嗟にパトカーを踏み台にしジャンプして回避するがバランスを崩して道路中央に転倒。パトカーはそのままブティックの出入り口に突っ込んだ。
それに車道の中央に倒れたリュウは一般車の往来に巻き込まれ身動きが取れない。だが更なる不運が襲う。
事故に気付いたトレーラーが急ブレーキをかけ、荷台が大きく横を向きあらゆる物を破壊しながらリュウに迫ってくる。
《マスター走って!!》
「分かってる!!」
ウルスが叫ぶや否やリュウはすぐに起き上がりトレーラーから逃れるべく全力疾走するがそれでもトレーラーはリュウに迫る。そしてトレーラーのタイヤが何かに引っかかったかトレーラーはリュウに向け倒れ込んできた。
《伏せて!!》
ウルスが叫ぶのとほぼ同タイミングでリュウがスライディングするかのように仰向けに滑り込みトレーラーの真下を抜けた。そしてトレーラーはリュウのすぐ目の前で横転した。
「はぁっ、はぁっ・・・!!」
さっきスバル達に追われたよりも息切れが激しくまさに生き絶え絶えといった様子であろう。
リュウの周りはまさに大惨事。沢山の事故車に横転したトレーラー、すぐに管理局が来てもおかしくない状態だ。
そしてリュウは少し息を整えた後にその場から逃げ去っていく。
――――――――――――――――――――
「リュウを取り逃がした?」
同時刻、シルバーロック郊外で待機していたヴォルフラム艦橋で現地のヴィータからの報告を聞いたはやては驚きを隠せなかった。
〈あぁごめんはやて。途中で邪魔が入って・・・!!〉
「落ち着きやヴィータ、みんなも。リュウはそう遠くへは逃げられへんよ。車を置いてったからな・・・とにかく私は地元管理局部隊と運輸局とコンタクト取って協力を仰いでみるから、ヴィータはなのはちゃんたちと一緒に空から捜索に当たってな?」
〈クソ・・・分かった!〉
悔し気ながらもそう返しヴィータは通信を切った。そしてはやてはシルバーロックの管理局部隊と運輸局に連絡を取ろうとインターホンのスイッチを押そうとした時、今度ははやて達の現在の司令官であるマサノリ・シドウ少将から掛かってきた。
「どういたしました、シドウ少将?」
〈八神二等陸佐、君を始めとした元機動六課の面々がいながら何だこの体たらくは?あの凶悪犯を取り逃がしたそうではないか?〉
どうやらリュウが逃げた事は既にシドウの耳に届いているらしい。明らかに怒気を孕ませた声がスピーカー越しに聞こえてくるがはやては何とか気を持ち直す。
「はい、ですけどそれは今回だけです。今度見つけた時は絶対に逃がしません」
〈私が君達を招集するのにどれだけ苦労したと思っているのかね?せめてその私の苦労に見合うだけの成果を上げてくれないと困るのだよ。次は吉報を期待しているぞ〉
シドウは言うだけ言って一方的に通話を切った。
はやては苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたままインターホンを戻し、目頭を押さえながら深いため息をついた。
――――――――――――――――――――
[司令部より各ユニットへ、被疑者を見失いました。これより緊急配備を発令します。付近の各員は巡回捜索に切り替え、それ以外のユニットは交通機関の封鎖及び主要道路への検問設置を行ってください]
[タンゴ3-2了解、捜索を開始する!]
[こちらスターズ1、上空より捜索を開始します!]
[ライトニング1、西区域にて捜索を始めます]
「・・・マズいな」
リュウの左手に握られている傍受デバイスが傍受した無線にリュウは冷や汗が止まらなかった。
リュウは現在、路地から路地へと縫うように進んで北へ2ブロック程離れた路地で身を潜めてつつ移動していた。愛車であるR34GT-Rは置いてきた以前にエンジンのご臨終によりもう走れない。そうなると取る手段は1つしかない。
「こうなれば、どこかで車を
自分の発言に自分で呆れるという、リュウは今の自分に辟易しているようだ。
「それに、借りるにしても何処へ行けばいいか・・・」
〈お困りかな?〉
リュウが静かに呟いた時、タブレットから澄んだ電子音と共にユーノからのテレビ電話が繋がった。
「ユーノ!ちょうど良かった。大至急新しい車が欲しいんだ、それも速い奴!」
〈今君がいるのはビリオネア通りだよね?それならカジノホテルで好きなのを選べるよ〉
「どうやって?」
当然だがリュウは車の窃盗なぞやった事は無い。だからこそユーノからの言葉にリュウは怪訝な表情を浮かべつつ問った。
〈シルバーロックのカジノホテルはみんなボーイが駐車場まで車を運転して運ぶんだ。その1人を捕まえてキーを奪えばいい。・・・まぁリュウの事だから気は進まないだろうしもう1つ方法はあるよ。どこかで捕まったレーサーの車を押収される前に乗り込んで発車するか・・・〉
「・・・ユーノ、後者の案採用」
移動しながらユーノの言葉に耳を傾けていたリュウが静かに、しかしはっきりと答えた。
〈それは何?犯罪者から奪う方が気が楽だから?〉
「同族嫌悪って言うのかなそれ?確かにそれもなくはないけど・・・」
画面の向こうにいるユーノに答えながらも建物の陰に身を隠すリュウ。
その視線の先には・・・逮捕されパトカーの後部席に座らされたストリートレーサーらしき人影があった。
「・・・ちょうど目の前で捕まった奴を見つけたから」
〈・・・OK。でも君まで捕まらないようにね?〉
「同じドジは踏まないよ。通信終わり」
ユーノからの通話を切るとリュウはさっそく行動を始める。
あくまで一般の観光客に成りすまし、逮捕されたレーサーとそれを押さえる管理局に近づいていく。そして押さえられたレーサーの車がはっきりした瞬間、リュウは思わず息をのんだ。
それは
ノーマルの6.2LのV8エンジンで最大466馬力、最大トルク64.2kg・m、車重1590kg。
・・・だが重要なのはそこではない。そのコルベットのリアに小さくだが
排気量を考えると少し不安はあるしリュウのR34には少し及ばないがレースに復帰するには十分なスペックだ。
決めた、あれを頂こう。
リュウは心中でそう呟きながら局員に気取られぬように物陰に隠れながらゆっくりと近づいていく。
そしてそのC7コルベットの持ち主でレーサーらしき人物がパトカーで連行され残ったもう1人の局員の男が押収記録を纏めているところだ。局員の目の前に白い魔力スフィアがひょっこりと現れ局員をおちょくるように周囲を浮遊する。
誰かのいたずらかと憤慨した局員はスフィアを追い払おうと躍起になりコルベットから意識が離れた。
(今だっ!)
決心したリュウが物陰から飛び出し素早く局員の背後に回ると首に腕を回し強く締め上げる。
局員は悲鳴を上げる間もなく局員は気を失い大人しくなった。
「殺しちゃったか・・・?」
《バイタル反応、生存を確認しました》
大人しくなった局員を見て思わず恐怖から鳥肌を立てるがウルスからの報告にリュウは一先ず胸をなでおろした。
リュウはすぐ局員の身体をまさぐり、懐からコルベットのキーを探し当てると、すぐにコルベットに乗車しエンジンスタートボタンを押し込むとヘネシーの手によってよパワーアップが施されたV8スーパーチャージドエンジンが咆える。
「首を洗って待ってろ、レーザー・・・!!」
リュウはハンドルを握りしめギアを1速へ。強くアクセルを踏み込むとそれに呼応しコルベットも急加速しレースへ復帰していく。
――――――――――――――――――――
時間はもう午前0時を回ろうとしている。
ザ・ラストウェイに別でアクセスできるブームビルのバイパス道路があり現在そこでは管理局による検問が実施されており多数の車による行列ができていた。
1台1台念入りにチェックされ、1台また1台と検問を抜けていく。だがそこで突然列の中程にいる車が突然威嚇するようにアイドリングを始めた。その車両の行動にその場にいる全局員がその車両を見据えた。
それは白いシボレー・C7型コルベット グランスポーツ。そのコルベットは近づいてくる局員に対しなおも威嚇するようなアイドリングを続ける。
「おい、車から降りろッ!?」
誰かがそう叫んだ瞬間、コルベットは派手なスキール音と共に急加速、対向車がいない対向車線に飛び出すと目の前に立つ局員に対しクラクションで威嚇しながら検問を強行突破していった。
「あの野郎ッ!!」
「クソッ!逃がすな追えぇッ!!」
局員らは急いで検問を撤去。停車させていたシビッククーペに乗り込みサイレンを鳴らして突破したコルベットを追いかけるも既にコルベットの姿を見失いつつあった。
「タンゴ4-6より司令部およびタスクフォース、検問を突破されました!至急応援願います!!」
[許可できませんタンゴ4-6。現在ユニットの大半が交通機関の封鎖解除に時間を有する為そちらへの増援派遣は不可能です]
〈んなっ・・・!?しまった、やられた!!タンゴ4-6、抜けていった車の車種は分かりますか!?〉
「あー、該当車両は白のC7型コルベット!繰り返す、該当車両は白のコルベット!あぁクソッ逃げられる!!」
〈了解しました、ここからは私たちは引き継ぎます!タンゴ4-6は撤収を!〉
「クソ・・・タンゴ4-6了解・・・、追跡を中断します。後はお願いします・・・」
司令部とはやてからの指示に局員は悔しさで表情を歪めながらもサイレンを止め追跡を打ち切った。
――――――――――――――――――――
その頃、再びハイウェイに戻った哲也は先に行った集団を追い上げるべくエクスプローラーを走らせていた。
するとタブレットに電子音と共に“大会新着情報”というインフォメーションが表示された。
【走行順位139位
Nissan Skyline GT-R Vspec(R34)→Chevrolet Corvette Grand Sports(C7)】
その表示を見て何とか親友を死の淵から救えた安堵からだろうか、哲也は笑みを浮かべた。
だが少しして表情を引き締め哲也は新たに決意を固める。
(ここからはもう、
決意を新たに哲也は前方の集団を追い上げるべくアクセルを強く踏みエクスプローラーを加速させる。
ED:真理の鏡 剣乃ように/鈴木このみ
(おまけ)
現時点までで登場したキャラクターのイメージCV
リュウ・アステリオン/入野自由
ウルス/嶋村侑・Arryn Zech
アダム・カラハン/中村悠一
ギャレット・カラハン/立木文彦
マサノリ・シドウ/池田秀一
ギルバート・ドレイク/細谷佳正
トモエ・シズマリ/石川由依
ローラ/高柳知葉
タツミ・ウェイブ/一色湊
暁 哲也/柿原徹也