NEED FOR SPEED:Legend Of The Lan   作:天羽々矢

3 / 16
OP:THE MEANING OF TRUTH/HIRO-X


Section02 悲劇

リュウはアダムのマスタングに同乗し、後ろからはフーカが運転するリュウのランエボⅨがついて来ている。

2台は1つの門をくぐり豪邸の敷地内に入っていく。

 

「まさかワシがリンネの家以外の豪邸に入る事になるとはのぉ・・・」

 

正面に見える豪邸を見てフーカがそう呟く。

友人であるリンネのベルリネッタ邸にはリンネと和解し家族も紹介してもらってからは何回か足を運んでいたがアダムのそれはリンネの物よりも大きく豪華であった。

2台が駐車スペースに停まり4人が集まりアダムに案内される。

 

「叔父の家だが大丈夫だ、今はヴァイセンに行ってる」

 

アダムが説明しながらガレージの前に3人を案内し、コートのポケットからリモコンを取り出しスイッチ操作をするとガレージのシャッターが開き出す。

 

「こいつらはクラナガンじゃ違法だ。97世界のヨーロッパとかいう地域の仕様だからミッドチルダ(こっち)じゃ登録できない」

 

そしてシャッターが完全に開くとそこには2台の車が鎮座していた。

 

エアロダイナミクス性能に優れていそうな低くて滑らかなボディラインと協力なダウンフォースを発生させそうな大型リアウィングと、どこかレーシングカー然とした綺麗なその姿にアダムを除く全員が息を呑んだ。

 

2台と言ったがそれはカラーリングの違いだけであり、1台はマットブラックに赤のアクセントが入った物で、もう1台はマットブルーとカーボンブラックを組み合わせた物になっている。

 

「リュウさんの本に載ってたフェラーリみたいだけど違う・・・」

 

呟くように言ったリンネの発言にアダムが答えた。

 

「“ケーニグセグ・アゲーラRS”。最高速度は457キロ」

 

アダムのその発言にリュウが軽く吹き出すが、今度はフーカが論するように言う。

 

「457じゃと?アダムの記録は行ってもせいぜい280じゃろ?」

 

その小馬鹿にするような発言に当然アダムは反応しフーカの方を向く。

 

「相変わらず失礼だな」

 

「フン、まぁ今日で決まるんじゃ。どっちがより漢かがのぉ」

 

フーカの発言にアダムは嘲笑し、ガレージの中へ。

戻ってきた時には右腕に箱を抱えていて中身はケーニグセグ社のロゴマークをしたキーである。

 

「2台とも同じアゲーラだ。特別にお前から選ばせてやる」

 

リュウに対しアダムは嘲笑するが憶する事なく箱の中からキーを取り出しロックを解除する。

リュウのキーに反応したのはマットブルーとカーボンブラックのアゲーラだ。

つまり残ったマットブラックとレッドアクセントのアゲーラはアダムが乗る事になる。

 

「695号線の橋がフィニッシュライン。先に橋を渡り切った方が勝ちだ」

 

アダムはキーを起動しアゲーラのロックを外しつつ今回のルールを説明する。

説明を終えるや否やアダムはケーニグセグ車の特徴である後端が上昇して前端が下降しつつ回転しながら外側に開く“ディヘドラル・シンクロ・ヘリックス・アクチュエーション・ドア”、通称ラプタードアを閉めアゲーラRSに乗り込む。

リュウも続いて乗り込もうとするが、その前にまずフーカとリンネの方を向き、その頭を軽く撫でる。

 

「行ってくる」

 

その一言を2人に伝えリュウもアゲーラに乗り込む。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

カラハン邸から出た2台のアゲーラRS。アダムのマットブラックの物が先頭でバトルが始まる。

リュウは最初こそアゲーラRSの5.0LV8ツインターボエンジンのパワーに驚いたもののすぐに思考を切り替え全力アタックを開始。

2台は連なったまま695号線に出る交差点を右折。その際スムーズに通過できたアダムに対しリュウは一般車のセダンに阻まれ立ち上がりで僅かにもたついてしまった。

何とか一般車を回避しハイウェイに乗る。その際にリュウの後方では飛び出してきたリュウのアゲーラを見て急ブレーキをかけたクーペにブレーキが間に合わなかったSUVがクーペの左側面に突っ込んだがリュウは少し見やったらすぐにまたアゲーラを加速させる。

 

リュウのアゲーラがアダムのアゲーラの背後に付き空気抵抗を低減させ車を加速させるスリップストリームの体勢になる。デジタルスピードメーターは既に260キロを示さんとばかりに増大していく。

 

だが今度は2人が次の交差点に差し掛かる瞬間にトレーラーハウスを牽引したピックアップトラックが交差点を直進しようと姿を見せた。

その出来事にアダムは衝突を回避しようとフルブレーキをかける。それに対しリュウはアダムと同じようにブレーキは踏むがステアリングを大きく右に切りアダムのアゲーラとトレーラーハウスを右大回りで回避する事で減速を最小限に止めアダムのアゲーラを追い越した。

それに対しアダムはトレーラーハウスとの激突を避ける為に1度完全に停車してしまった為リュウに再び接近するには多少の時間を要する。

その間にもリュウのアゲーラRSは徐々に加速していきメーターは300キロの大台に差し掛かるがアゲーラはそれではまだ足りないと言わんばかりに更に加速していく。

 

そしてやがれゴール地点である橋が見えて来た。

アダムのアゲーラも何とか再加速をしリュウのアゲーラに追い縋るべくリュウの背後に付きスリップストリームに入るが先行するリュウは既に後方のアダムをブロックする態勢に入っている。

そしてリュウの背後に付いたアダムはリュウを追い抜きにかかるがリュウはそれを被せるようにして進路を塞ぐ形でブロックする。

それをかわす為にアダムは左右に揺さぶりをかけるがリュウはそれに適切に対応していく。

 

「どけよ・・・!!」

 

進路を塞がれアダムはリュウのアゲーラを見ながら忌わしげに呟くが当然リュウに聞こえるはずもない。

橋に差しかかるまでは残り400メートルほど。だが今のスピードでは一瞬である。

 

「どうだレーザー、俺の勝ちだ!」

 

遂にリュウが先行のまま橋に差しかかる。それと同時にリュウの勝利は絶対の物となり、リュウ自身も勝利を確信した。

 

 

 

 

・・・その時だった。

 

アダムのアゲーラが急加速したと思ったらフロントバンパーをリュウのアゲーラの左リアにぶつけた。

メーターは330を示しており、その状態でミッドシップ後輪駆動であるアゲーラRSが駆動軸側であるリアを小突かれたらどうなるか想像に難しくないだろう。

直進していたアゲーラはあっという間にバランスを崩しスピンする。

リアを小突かれバランスを崩した事をすぐに察知したリュウは何とか体勢を立て直そうとステアリング操作をするも300キロ以上でのスピンはリュウの手にも余った。

それでもなおアダムはスピンするリュウのアゲーラの左側面を押し続ける。すると今度はリュウのアゲーラの右側面が跳ね上がり空中に放り上げられる。

 

《マスター!!》

 

「っ・・・!!」

 

ウルスからの声も遠のいて聞こえるような、全てがスローモーションのような感覚になる。

リュウのアゲーラは空中で回転しながらゆっくりと落下。地面に落ちると激しい金属音と共に転がっていく。

 

Protection(プロテクション)!!》

 

ウルスが咄嗟の自己判断でリュウに防御魔法を展開するがそれを無駄だと言わんばかりに今度は落下の衝撃で外に漏れ出たガソリンが激突時に発生した火花で引火しアゲーラが炎上する。そしてひとしきり回転した後にリュウは炎上するアゲーラ共々街頭を1本薙ぎ倒した後に橋から転落。

幸い橋の下は川で岸の水溜まりに落ちた事で火の勢いは弱まりタンクへの引火の心配は無さそうだが未だに燃えているアゲーラの中でリュウはアダムのアゲーラのエンジン音が遠ざかっていくのを聞いた。

 

そしてそれを最後に、リュウは自分の意識を手放した・・・。




ED:Blast My Desire/m.o.v.e

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。