NEED FOR SPEED:Legend Of The Lan 作:天羽々矢
クラナガンまでの距離・・・4,504km
リュウの現在の走行順位・・・195位
リュウの作戦通り、やはりインターステイト601は通勤車両でごった返しており、それに閊えた他のレーサーのマシンをパスし順位を上げる事ができた。
そして601を通り160号ハイウェイを駆け抜けアヴローラ・ナショナルパークへ突入する。
リュウのすぐ前方では8台のマシンがひしめき合っている。
手前から、
シルバーの初代フォルクスワーゲン・ゴルフⅠ GTI、
白黒ツートンカラーのトヨタ・カローラレビンGT-S(AE86)、
WRCブルーの2009年式スバル・インプレッサWRX STI、
マットブラックのロータス・エキシージ S Mk-2、
ディープブルーのアウディ・Ur-クワトロB2、
イエローの初代マツダ・ロードスター(NA6C)、
モスグリーンの日産・200SX(S13)、
ミッドナイトパープルのBMW・E30型M3スポーツエヴォリューション、
この8台だ。
だがただ競い合うだけの方がまだマシだっただろう。この先の集団は我先にと言わんばかりに車体をぶつけて強引に進路を確保しようとしている者が多い。
〈気を付けて!その先はレースが荒れてるよ!〉
「分かった、ありがとう!」
タブレットから流れるユーノからの忠告に感謝しつつもシルバーロック150位以内という狭き門を通る為に荒れている車列に挑む。
――――――――――――――――――――
リュウがナショナルパークに入る少し前・・・
はやての頼みでクラナガンの地上本部に足を運んでいた青年、ギルバート・ドレイク。
そして彼を案内するはやてと共になのは達六課メンバーが待つ会議室に入る。
「お待たせみんな、助っ人を連れてきたで」
「助っ人?」
はやての事情を知らないなのは達は当然はやての言葉に困惑するが、入ってきてとはやてに促され会議室に入室してきたギルバートを見ると、六課副隊長陣である八神家の面子は納得したような表情をする。
「はやてと他の面子の中には知ってる奴もいると思うが、知らない奴らの為に一応自己紹介はさせてもらう・・・」
元機動六課全員に一応の自己紹介を始めるギルバート。
その後にはやて主催でギルバートを交え今後の方針を決める会議を始める。
「今回の任務は無理に魔法を使おうとすればリュウに怪我をさせてまう。せやから車と運転技術が重要になってくる。けど残念な事に今この場でその条件に当てはまっとるのはフェイトちゃんとギルバート君しかおらへん」
「車?ま、待ってよはやて、アタシらスポーツカーなんて運転した事ないよ?良くてパトカー位だし・・・」
「私もです、主はやて・・・」
「わ、私もですはやてちゃん・・・」
「私は普段この姿故、運転する機会という物が・・・」
はやてのその言葉に上から2本の三つ編みが特徴の赤髪の少女“ヴィータ”、濃い目のピンクの髪をポニーテールに纏めた凛々しい風貌の女性“シグナム”、金髪ショートボブのおっとりした雰囲気の女性“シャマル”、青い毛皮の大柄な狼“ザフィーラ”が順に返答するがどこか恐る恐るといった様子だ。
しかし当然と言えば当然である。機動六課は確かにエース揃いの精鋭部隊だ。だがそれは魔法戦に限定した場合の話であり、こと車の知識や運転に関してはリュウやギルバートを始めとしたストリートレーサー達に大きく後れを取っているのが現状である。
しかしその言葉を聞いてもはやての表情には不適な自信が見て取れる。
「大丈夫、車は管理局が今まで押収してきた中から好きなの選べるし、改造についてもシャーリーとマリエルさん、そしてギルバート君がおるから心配ないんよ」
「あぁ。こういった改造は日頃からよくやってる、大丈夫だ」
はやての言葉に相槌を打つかのようにギルバートは六課メンバー達からの視線を一身に受けつつも、さも当然のように返した。
「あて、じゃあその改造の前にまずは車のチョイスやね、リイン?」
「はいです!」
はやてが自分の右肩に乗っている少し青みがかった銀髪と垂れ気味な濃青色の瞳を持った目の30㎝程の少女“リインフォース
「これがここ10年間で管理局が押収した車全部ですぅ」
説明するリインと圧倒されている六課メンバーを他所にはやてが口を開く。
「さて、それじゃフェイト先生にギルバート先生、どうぞお選びくださいな!」
「オッケー、えっと・・・」
「待ってくれはやて、俺が選ぶ必要性あるか?」
はやての言葉にフェイトは早速車両の選定を始めるが、ギルバートも含まれている事に本人が戸惑っている。
「せやよ?何せ現職さんやし、やっぱここはプロの意見は大事やからなぁ」
「それに、私だけじゃ分かんない事もあるしね・・・」
どうやら自己紹介の時はやてが暇を見つけては連絡を取っていたというはやてからの補足を聞いて他のメンバー達からも随分と信用されてしまったらしい。
それにギルバートも大人しく折れ、フェイトと共に車両の選択を始める。
「えぇっと・・・37番に423番・・・シグナムには2056番かな・・・、なのはには・・・」
「待った、それなら3527の方がいい」
「え、そう?・・・じゃあ530番にしてそれから・・・」
――――――――――――――――――――
少しの間議論を重ね、ギルバートとフェイトは遂に車両の選択とメンバー割り振りを決め終える。
「それじゃこれから運輸局に連絡して押収車をシャーリーとマリエルさんの所に運んで改造してもらうから、皆は自分の体調管理とデバイスのチェックを怠らんようにね」
「そんじゃ、この辺で解散や。車が届くんは1番早くて今日の夜、遅くても明日の昼頃には届ける言うてくれとるから。みんな、絶対に他の部署が捕まえるよりも先にリュウを助け出すよ!」
『はいっ!!』
フェイトとはやての言葉に六課メンバーとN2R一同は敬礼しながら威勢良く返事し会議室を後にしていく。
だが少しの時間も惜しいこの状況だ。ギルバートは会議室に残ってはやてに問う。
「はやて、そのシャーリーとマリエルさんって人のところに案内してくれないか?俺も手伝った方が早く仕上げられる」
「・・・ほんま、おおきになギルバート君」
ギルバートの意を聞いたはやては感謝を述べ、デスクに置いてある自分のタブレットを持つと、ギルバートを連れシャーリーとマリエルがいる工場へ彼を案内する。
(待ってろよリュウ、絶対助けてやるからな・・・!)
工場に向かう道中、ギルバートは心の内でリュウに対しそう呟いた。
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その頃、アヴローラ・ナショナルパーク・・・
「・・・今だっ!」
前を走るホンダ・S2000(AP1)がオーバースピードで右ヘアピンコーナーのアウト側に膨らんでいったのを見逃さず、リュウはR34のアクセルを思い切り踏み込む。
すぐさまツインターボが動作してブーストがかかり力強い立ち上がり加速を見せS2000をパス。
ナショナルパークに差し掛かった時は195位だった順位も現在は181位までジャンプアップに成功した。
次の車列までは2kmあるかないかと言った具合だろう。緩やかな左コーナーを抜けトンネルに差し掛かった、その時だ。
《後方より車両1台、急速接近!》
「何っ!?」
相棒のデバイス、ウルスからの警告に耳を傾ける間も無く、リュウの視界の左側から1台の青い車が猛スピードで自分と自分のすぐ目の前を走っていた一般車を追い越していった。
それに驚いた一般車がクラクションを鳴らしながら慌ててハンドルを切った為にバランスが崩れるがリュウは即座に最低限のステアリング操作で一般車を回避し、先ほど追い抜いていった車と車列を追いかける。
あの一瞬だったとはいえ、ボディはかなり特徴があった。
何処か丸みを帯びておりセンターに配置したコックピットで表面積を減らし空気抵抗を低減する、ますで航空機かF1レースカーのような風貌と後付けとは言えその存在を更に引き立てる大型のリアウィング。何処のブランドの車か特定はそう難しくなかった。
「くっ!ウルス、あのイカれたマクラーレンに乗ってる奴は!?」
リュウはすぐさま相棒に自分を追い抜いた車、マクラーレンのドライバーの情報を要求する。
《現在検索中・・・検索完了しました!》
検索を終えウルスがタブレットに情報を表示する。
「なっ・・・!?」
その情報を見たリュウは言葉を無くした。
そのマクラーレンのドライバーは、自分にとって宿敵であり憎むべき怨敵でもある者だったからだ。
【NAME:
【MACHINE:
【RUN POSITION:181】
ED:Blast My Desire/m.o.v.e