イシからの始まり   作:delin

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製鉄は人数がいないと無謀

「皆の者、聞いてほしい。

昨日、ルリを治せるやもしれぬ薬を作る方法を知っている者が訪れたのだ。

眉唾だと思うであろう、わしも初めはそう思った。

それゆえわしはその者と腹を割って話し合った。

そうしたところ、表面こそ悪童じみておるが中身は誠実な青年であると確信した。

これはわしの娘を救ってほしいというただの我儘である。

そのために、皆にかの者に協力してほしい。

強制は決してせぬ、おぬしら自身で決めてくれ」

 

今コクヨウさんが村の皆を集めて私たちの説明としている。

ここから千空が説得して必要な人手を集められるようにしているところだ。

朝、クロムがコクヨウさんにルリさんの事を話したと言った時は結構驚いた。

お陰でコクヨウさんの演説内容を一部修正する羽目になったが……、

まあこの方が結果的に良いものになったから良しとしよう。

 

「初めまして、俺がその作り方を知っている千空だ。

知っているが、俺らだけじゃとてもじゃねえが手が足りねえ。

なんで、手を貸してもいいってやつを募集中だ。

手伝ってもいいってやつは俺か村長かクロム、コハク、後この桜子に言ってくれ」

 

人手は欲しいけど手伝いの報酬がまだ出せないから、

まずは自主的に言い出してくれる人を探すのである。

まあ、案の定反応は芳しくない。

 

「村長、門番の役目を担う者として聞いておきたい。

その者たちが余所者にも関わらずこの村の中にいること、それはルール違反ではないのですか?」

「金狼か、確かに余所者は村に入れぬ事がルール。

だが、それは余所者は昔に村から追放された犯罪者であるという前提から成り立つルールだ。

この者たちが村で犯罪を犯したことがないのは明白だな?

それゆえ、わしが特例として客扱いで招いておる。

ゆえにルール違反とは言えん」

 

つまりルールの適用範囲外だからルール違反じゃないですよってことだ。

白じゃないけど灰色な判定である。

しかし、判定するのは村長。

これは合法なのだ(強弁)

 

「……わかりました」

 

見るからに不満そうだな金狼君。

すまんがそんな目で見られてもこちらも引けないのだ。

ここで追い出されたら本当に二度と入れないってなっても不思議じゃない。

そうなったら確実にルリさんは助けられない。

連鎖して百物語を千空に語れる者がいなくなり、白金の場所は行方不明だ。

それは文明復興への道が、下手すると閉ざされかねない大事件だ。

故に、ここで村の協力ないし黙認は必須である。

大義は我にあり、とばかりに堂々としているしかないのだ。

 

「話は終わりでいいんだよなあ村長よお。

なら、後は好きにさせてもらうぜ」

「マグマか。ああ、構わん。手伝うもよし、手伝わぬもよしだ。

先にも言ったがわしはこの件は強制せぬし、手伝っても優遇などはせぬ。

ルール違反ではないとは言ったが、ルールに従っているとも言えぬ故な。

村長としてわしの最後のわがままである、故にわしは皆に願うしか出来ぬ」

 

マグマのこの反応はほぼ予想通り。

しかし、漫画でも思ったのだがこんな他人なんぞどうでもいい、

という態度で皆がついてくると思っているのだろうか?

……思っているんだろうな。

何故かこういう暴力的な輩に着いて行きたがる人種はなくならない。

次は自分の番では、とか不安に思わないのだろうか。

そうマグマに着いて行くマントルを見て思った。

 

「スイカはね、スイカはね、お手伝いしたいんだよ。

いつも誰のお役にも立てないから、困ってる人がいたら助けたいんだよ」

 

お、スイカちゃんだ。

とりあえずこれで一人確保。

他は……、反応が本当に芳しくないな。

いや、手伝ってもいいけど信用できんの? 村長騙されてない? って感じか。

 

「何か一つ餌があれば行けそうではあるんだけど……」

「しゃーねえ、今出せるもんがねえから直球でのお願いだ。

今いる奴だけでやれることやってくしかねえ」

 

そこらへんを集めるのもこのメンバーの仕事かー。

製鉄は無理ってのが目に見えてるからやりたくないんだけど……。

いや、人手なきゃ無理だって。

 

「まずは砂鉄集めだ、ラッキーなことにクロムの奴が磁石集めてやがった。

これで砂をかき混ぜて比重の軽い奴捨ててっつー作業が省略できる」

「磁石なしで砂鉄集めとかそれだけで何か月仕事……。

ありがとうクロム、本当にありがとう……」

「お、おう。なんかよくわかんねえけど役に立ったならよかったぜ」

 

クロムコレクションに本気の感謝をささげて川に向かって出発である。

砂鉄集めは一日もあれば大体の量をとれると思うので問題はその後なんだが。

 

 

「いくら何でもこの人数で製鉄は無謀だと思うの、私」

「俺も同意見だが、一ぺんは試さねえとな」

 

砂鉄集めはサクサクと終わったため次の製鉄の段階である。

サクサクと終わったといってももうすぐ日が暮れるが。

 

「とりあえず今日はもう日が落ちかけてるからな、

少人数でどの程度まで温度を上げられるか見るだけだ、悪いが付き合ってくれ」

「また記憶から温度の判別かー、目がちかちかするんだけどあれ」

「アルコールの蒸留の時散々世話になったが、また頼むわ」

 

もう慣れたからいいけど、割と大変だったんだぞあれ。

今度は温度全然違うから一から記憶することになるし、私が温度調節することもできない。

 

「失敗の記憶も大切だけど、一番重要なのは成功の記憶よ。

結局は人手増やす必要があるんだから最初から人手増やさない?」

「チッチッチ、わかってねえなあ、桜子。

失敗のデータこそ科学じゃ重要なんだよ、経済関連でテメエもいってたろうが。

しっかり成功納めるよりも失敗したものの方がいい教材になるってな」

 

まあ、軽くやるだけならいいかと思ったのだこの時は。

その結果がこの死屍累々の状態だよ!

私、無謀だって言ったよね?

 

「へ、桜子。いいか、男にはなあ退けねえ時ってもんがあるんだよ」

「クロム、それは分かるけどこれは明らかに引くべきタイミングだよ」

 

地面に突っ伏していたクロムが無駄にいい表情で言うので速攻でツッコむ。

 

「千空も、辞め時ってもんがあるでしょうが!

失敗がいい教訓になるからってやりすぎはよくないでしょうが!」

「面目ねえ。だが、これで失敗のデータは取れた。

後は人手揃えてその辺りを超えられるようにするだけだ」

「いいから、休みなさい。私もかなり眠いから一回皆寝てから再開。いいね!」

「「へーい」」

 

とりあえず空がもう白んでるしコハク起こして、スイカちゃんはクロムの倉庫に一緒に寝てもらって、

私は今日もコハクと一緒の寝床かな?

 

「ほら、コハク起きて、地面で寝ちゃ風邪ひくよ」

「…うみゅう、まだ眠い」

「寝るために動いた、動いた。男二人はスイカちゃんを連れてって―」

 

そうやってみんなを動かし、寝床に向かわせる。

ちょっとふらついてるコハクを支えながら、私も休むため寝床に向かった。

その姿をじっと遠くから見ている誰かに気づく事なく。

 

 

「人手確保が最優先だ」

「その方法を考えましょう」

 

みんなが起きたのは結局昼ごろだった。

なので倉庫前で魚を焼きながら作戦会議である。

 

「何か一押しあれば手伝ってくれそうな雰囲気だったけどね、

その一押しのアイディアが欲しいの。何か欲しいなって物ない?」

 

うーむと一同首をひねる。

そうしていると、スイカちゃんがぴょんっと立って言った。

 

「それならスイカが聞いてくるんだよ。

ただのスイカになれるからこっそりお話聞いたりは得意なんだよ」

 

そういうが早いかあっという間に頭の被り物の中に全身を収めてしまった。

……いや、どうやってるのそれ?

 

「すげえじゃねえかスイカ! そんなヤベー特技持ってるなんてよ!」

「うむ、私も知らなかった。すごいぞスイカ」

 

褒められ慣れてないんだろうな、それだけでスイカがすごく嬉しそう。

 

「よし、んじゃ名探偵スイカに情報収集を頼むわ。しっかり頼むぜ」

「うん、行ってくるんだよー!」

 

千空にも頼まれて張り切って飛び出していくスイカ。

 

「その間私たちは、やっぱり砂鉄集め?」

「いくらあっても困らねえからな、炉と並行して集めとくか」

 

そんなわけでスイカが戻るまでしばし物集め&炉づくりである。

 

 

「色々聞けたんだよ」

 

夜になって昼と同じく魚を焼いて食べながらスイカの報告会である。

 

「まずガーネット、サファイア、ルビィのキラキラ三姉妹だよ。

三人が欲しがっているのは、『彼氏』なんだよ」

「どうにもなりそうにねえな。いや、復活液で起こせばワンチャンあんのか?」

「適当なの起こすと、余所者なうえ、

私たちにも人格保証できない厄介者を起こす可能性があるからそれはやめようよ」

 

それぞれ欲しがっているのは強い男、イケメン、おごってくれる人。

欲望丸出しで人間って変わってないなと思わせる。

 

「司でも呼んでみる? 絶対あっちが忙しくてこれないだろうけど」

「司って誰だ?」

 

クロムの当然な疑問に少し言いづらそうな千空。

仕方ない、私が代わりに説明しよう。

 

「私と千空を殺すって脅迫をした元原始生活至上主義者よ」

 

ズッという音がしそうなほどの勢いで倒れ掛かる千空。

それ以上行くと焚火に頭ツッコむから危ないよ?

 

「千空と桜子を殺そうとしたの! つまり司ってのは悪い人なんだよ!

あれ? でも呼ぶって桜子が言ったんだよ?」

「待て待て待て、何が何だか分かんねえ。

一から説明してくれ、頼むから!」

「うむ、殺すなどと穏やかではない話が出たんだ。

きっちり説明をしてくれ千空、桜子」

 

頭を痛そうに押さえる千空が私に向かって声をかける。

 

「オメー、あの件根に持ってやがったのか。そんな素振り見せなかっただろうが」

「私は事実を言っただけよ、ついでに根に持たないとか水に流すなんて言った覚えないし」

 

奴が余計な理想に燃えたりしなければ千空が命を賭ける事はなかったのだ。

さらに言うならまだ10日も経っていない。

悪感情を忘れるには少し短すぎる期間だ。

 

「あ、昨日ちょっと言ってたことか、千空?」

「ああ、そうだよ。ったく、仕方ねえ軽く説明すんぞ。

桜子、オメーは黙ってろ、いいな?」

「はーい」

 

ちょっと不満だが無駄に奴へのヘイトが高まるのもよくはない。

神輿を汚さないために少し我慢しよう。

 

 

「ふむ、つまり妹のことや自分と同じ立場の者たちのことを思うあまりの暴走か。

本質的には悪い人間ではなさそうだな」

「科学がヤベーからって、自分がヤベー事やってたら結局同じじゃねえか。

ちょっと俺には理解できねえ」

「つまり、いい人だけどうっかりやっちゃった人なんだよ?」

 

スイカが意外と鋭いこと言うな。

確かに表現としてぴったりな気がする。

 

「あー、ったく。盛大に横道にそれたじゃねえか。

そいつはいいから、スイカ。ほかになんか欲しがっている奴いねえのか」

「それなら村一番の食いしん坊のガンエンが新しい食事探してるんだよ」

「食事か、そういやこの村魚しか食ってねえ気がするな。

そこらへんどうなんだ、クロム、コハク」

「ああ、基本魚だな。礁のおっさんがたくさん魚とって皆に配ってんだ。

考えて見りゃ、おっさんのおかげで色々好きに動けてたのか俺」

「君たちとあった時の熊狩りも、姉者に少しでも食べてほしいからやったようなものだな。

基本、肉はたまのご馳走と思ってくれて間違いない」

 

えーと、漫画とかの記憶も合わせて思い出していくと、

あれ、もしかしてこの村って……

 

「ねえ、魚を煮るとかはしないの?」

「ニル? なんだ、それは」

「コハクは知らねえのか、スープとか作る時そうすんだよ」

 

まじか。

恐る恐る自分の想像が外れていることを祈りつつ訊ねる。

 

「山菜とか食べるときって……、どうしてるの?」

「草はそのまま食べられるもの以外食べないぞ、苦いから基本食べないが」

 

調理の基本から吹っ飛んじゃってたかー。

煮魚とか醤油無しだと、どうすればいいか分かんないし仕方ないのかなあ。

 

「魚の美味しい調理法とか、需要あるかなあ?

あるなら明日から私の知ってる調理法を村の奥様がたに伝えてくけど」

「あるのかどうか、私は分からん。明日聞いてみよう」

「聞いた後でいいから、ヤマユリを探してきてくれない?

特徴としては大きな6枚の花弁で香りも強いから分かりやすいと思うの。

見つけたら根っこごと持ってきて」

「構わないが、花をどうするのだ?」

「料理の材料に使うの、加工の必要があるから時間かかるけどね」

「よく分からんが、わかった。その花を根っこごと持ってこよう」

 

鱒はいたからそれで行けるとして、熊肉はまだ残ってたかな?

残ってたら試してみよう。

 

「なんかよくわかんねえけど、桜子がイキイキしてねえか?」

「やれる事があるとあんな感じだな、やるとなったらガッツリやる。合理的で結構じゃねえか」

 

明日からは人手集めの為にお料理教室だな。

まあ、素人レベルでしかないからどこまでやれるかはわかんないけど。

目標は奥さんの支持をゲットして、ご家庭の胃袋を掴む事。

人類全体の為、友達の為全力で頑張る。

そう心に決めた夜だった。




月曜投稿予定でした(白目
まあ、このまま置いときますがもしかしたら月曜投稿無理かも……
その時は木曜に投稿します。
ご容赦ください(平伏
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