イシからの始まり   作:delin

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作者は料理なんてしたことがないので描写が変でも見なかったことにしてください。


村の人々

予想以上の反響であった。

料理教室開催したのはとってきてもらった山百合の根を加工し終えた次の日なんだが……、

村の奥様方どころか女性全員集合してない? これ。

 

「白金、ベリー、あるみ婆、エン、珊瑚、あずら、孔雀、ダイア、ルビィ、サファイア、ガーネット、うむ、姉者とターコイズ以外である程度以上の年齢の女性は全員だな」

 

どれだけ焼き魚以外の料理に飢えてるんだこの村。

そこまでたくさん引き出しあるわけじゃないんだけど、まずこれからかな。

 

「まず、魚を三枚に下ろして……」

「桜子、魚は一匹しかいないぞ?」

 

そこから!? いや、コハクが知らないだけ……、じゃない。

皆何が何だかわからないって顔してやがる。

いや、たくさん恩が売れると思おう、うん、プラス思考、プラス思考。

 

「えーと、魚の真ん中の骨を取り除く事を三枚に下ろすっていうの。こういう風に、ね」

 

言いながら魚の頭を落とし、はらわたを捨て、おなかの真ん中から骨に沿って切り身にしてゆく。

逆側も同じように骨に沿って切ってあげれば三枚下ろしの完成だ。

 

「まずこの切り身の状態を作ります」

 

それで平鍋を温めつつ、次の作業に移る。

 

「次にこの山百合の球根を砕いて煮詰めた粉、片栗粉を小麦粉代わりにまぶします。

そしたら温めた平鍋に油をひいて、両面を焼きます」

 

本当は小麦粉とバターでやるムニエルのイメージなんだがそんなものないので、

 

「焼きあがったらポークソテーならぬフィッシュソテーです。

一匹だけだと全員に一口ずつくらいかな? 切り分けてくから食べてみてください」

 

恐る恐るみんな口に運んでいく、味付けほぼなし魚の味のみだから微妙かもしれない。

みんな食べたけど、反応がないなー、怖いなー、まずいって言われたらどうしよう……。

 

「「「「「「「「「「「「おいっしいー!!」」」」」」」」」」」」

 

……おおう、あまりの大声に意識が少し持っていかれた。

大好評のようで何よりだ。でもなぜ私はコハクに担ぎ上げられているのだろう。

 

「コハク、こんなにすごいこと知っててしかもかわいい子を独占なんてずるいわよ!」

「独占とかではなく、桜子は私と同い年だ。小さい子にするようにされては困るだけだぞ」

 

…? かわいいって? ああ、ちっちゃいからな。そういう意味でか。

もみくちゃにされないように避難させてくれたわけか、コハクにありがとうと言っとかなければ。

ここまで好評なら予定通りの作戦でよさそうだ。

 

「まだ料理法はあるんですけど、巫女様の薬作りのためにやらなきゃいけないことが多いんです。

なので、次回は未定になってしまいます、ごめんなさい」

 

案の定そんなー、だとかもっと知りたいーとかの声が上がったな、よしよし。

 

「薬作りのための作業が人手不足で私も手伝わなきゃいけないんです。

その作業は時間がかかるので手伝ってくれた人に今の料理をふるまうので……、

申し訳ないんですけど、料理教室はいつやれるか本当にわからないんですよ」

 

事実しか述べていない所がポイント。

作業を終わらせること自体を皆に共通のメリットにしてしまえば……、

 

「私も夫と息子たちと一緒に手伝うわ!」

「うちも家族総出でやるわよ! いいわね貴方たち!」

「もちろんよ、母さん」

「料理たくさん覚えればイケメン捕まえられるかしら?」

「とっても美味しかったから、また食べたーい」

「うちの息子はすごく食いしん坊だからいっくらでも使ってちょうだい、もちろん旦那もね」

「カーボを引っ張ってくるから、絶対次回も呼んでね!」

 

自主的に全力で手伝ってくれるって訳。

しかも、家庭の胃袋を握る奥様方を味方につければその家庭丸ごと味方にできる。

古来より女の支持を取り付けた奴は強いのである。

 

「皆さん、ありがとうございます。それじゃあ明日の朝から作業開始しますので、

手伝ってくれる人はクロムの倉庫前まで来てください」

 

これで、マンパワー大量ゲットである。

まずは、鉄製品。強力磁石もそうだが色々な道具が鉄があれば作れるのだ。

これぞ文明の進化! こっそりと髪用の鋏を作ってもらうのはきっと合法である。

 

 

「で、出来上がったのがこの数本の棒というわけか。見事に死屍累々だが、大丈夫なのか?」

「むしろ、一番やってたはずのテメエがなんでそんなピンピンしてんだよ、おい」

「ちょくちょく片栗粉作りに抜けていたし、優先的にソテーを食べさせてもらったからな。

美味しい食事と適度な運動と休憩というわけだ」

 

いや、片栗粉のために山百合を探しに行くことが休憩扱いは明らかにおかしい。

朝昼晩と三食でも誰も飽きた気配がないのはどういうわけなのか。

おかげで全員の腹を満たす分をずっと作り続ける羽目になったぞ。

途中から椿油だけじゃ無理だったから猪の油引いてたし、子だくさん家族のお母さんの苦労が一部分かった気がする。

 

「とにかく、こいつに漆塗って銅線を巻いてくぞ。

雷が来る前に作業全部終えなきゃなんねえ、のんびりすんのは後にすんぞ」

 

とは言っても空は快晴、ゆっくり待たなきゃいけないみたいだ。

 

「避雷針立てて、そいつの一番上にこの鉄棒を括りつけてくれ。

雷がそこに落ちりゃあめでたく強力磁石の完成だ」

 

漫画だと製鉄が終わったすぐ後に雷雨が来たが現実ではそんなご都合主義的なことは起こらなかった。

なので、私は次回の料理教室の準備である。

 

「千空達はどうするの?」

「ガラス作りの準備だな、クロムコレクションに水晶があったからそいつの産地に行ってくる。

ガラス窯作りは珪砂とってきた後にやるつもりだ」

「それはいいんだけど、司達への連絡どうしようか?」

 

まだ二週間経っていないが油断すれば時間はあっという間に過ぎてゆく。

少し余裕ができた今のうちにそこら辺の連絡方法考えておくべきだと思うのだ。

 

「つっても俺もオメーも離れられねえだろうが。最悪二ヶ月って言ってあんだから大丈夫じゃねえか?」

「地図書いて、手紙書いて届けてもらうぐらいかな。やれるとしたら」

 

まあ、マグマ対策として司か氷月つっこみたいんだよね。

漫画みたいに優勝した後離婚してもらえばいいんだし、その辺の説得は考えておこう。

小耳にはさんだところ御前試合は春らしいから焦る必要0なんだが。

いや、予想外は起こるもの。油断大敵、石橋を叩いて渡るぐらいの気持ちでいよう。

 

「あっちの様子も気になるし、コハクに行ってもらうのが一番かなって思うんだけどどうかな?」

「あの雌ライオンなら二日ぐらいで行けるか。んじゃ、手紙は俺が書くから地図を頼むわ」

 

これでなぜか私にべったりだったコハクが数日間いなくなるわけか。

その間に村のご長寿さんに聞いておきたいことを確認しておこう。

私の考えていることが外れていればいいんだけど……。

 

 

コハクに手紙を届けるのをお願いしたがなぜか私から離れることを渋っていたな。

一人だけになるなってなぜか何度もくぎ刺しされたけど、一体何が言いたかったんだろう。

まあ、大体奥様方の誰かがさばき方とか聞いてくるから大丈夫だろう。

 

「それでは第二回の料理教室を開催します。

まずは前回と同じく魚を三枚に下ろします、下ろしたら頭と骨は鍋に入れてください。

いれたら蓋をしてひたすら煮込みます」

 

第二回は鱒のつみれ汁である。

本当ならば前回これの予定だったのだがすり鉢がなかったため必死になって焼き上げたのだ。

乾燥時間よく足りたなと思うだろう、実は製鉄用の炉の近くに置いといたのだ。

千空が自前の計算力でちょうどいい位置を割り出してくれなかったら絶対無理だったと思う。

やっぱり塩と魚のみの味付けなのでどこまで喜んでもらえるか不安だが。

 

「切り身は皮ごとでも大丈夫ですが、今回は皮をはいでから使います。

はいだらこのすり鉢に入れてすりこ木ですりつぶしていきます」

 

骨ごとつみれにしてもよかったんだが出汁取りたかったし、皮入りより身だけの方がきれいかなと思ったのもあって練習の意味も込めて身だけをすりつぶしていく。

 

「すりつぶせたら片栗粉を少しずつ入れて丸めていきましょう。

全て丸め終わったら煮込んでいた骨と頭を取り出して捨てます。

捨てたら塩をお好みで入れて味を調整してください。

調整出来たら煮汁の中に丸めたすり身を入れて火が通るまで煮てください、火が通ったら完成です」

 

出汁の概念完全になくなってしまっていたのでこんな表現である。

今回もとても評判がよくほっとする。

みんなの気分がいいうちに気になってしまったことを確認してしまおう。

 

「この村って子供を産むとき他の人が手助けしたりするんですか?

するのだったら一番経験のある人にちょっと教えてほしいことがあるんですけど」

「子供産むとき? 大体女衆総出で手伝っているねえ。

赤ん坊を取り上げるのは一番慣れてる人がやるけど、今だったらあるみ婆かねえ」

「そうだねえ、今村で一番経験があるのは私だろうねえ。で、桜子ちゃんは何を聞きたいんだい?」

「ちょっと長くなるかもしれないのでお宅へ伺ってもいいですか? 座ってお話した方が体も楽でしょうし」

 

と、言うより私の想像が当たっているならなるべく知ってしまう人を少なくしたい。

 

「ああ、かまわないよ。それじゃ狭い家だけど案内しようかねえ」

 

 

「それで、聞きたいことってなんだい? あまり他の人に知られたくないんだろう?

うちのお爺さんも今は近くにはいないから遠慮なく聞いておくれ」

 

流石の年の功である、私の意図が完全に見抜かれている。

 

「ありがとうございます、その、まずは生まれる赤子を取り上げる時手洗いなどはされていますか?」

「ああ、それは昔から口を酸っぱくして言われているねえ。

産気づいたって聞いて、狩りから戻ってきた旦那が叩き出されるのは恒例行事になっているぐらいさ。

赤ん坊に触るときは水浴びをしてからじゃないと許さないしねえ」

 

良かった、衛生観念はしっかり伝えてくれたみたいだ。

 

「素晴らしい習慣だと思います」

「聞きたいのは、それじゃないんだろう?

婆はあまり物を知らないから答えられるかわからないけど、不安なのはそこじゃないんだね?」

 

わかるよねえ、聞くのは正直怖い。

怖いけど、聞いておかなければならない。

最悪、村の人たち全員に、”村人”以外から伴侶を取ってもらわなければならない。

覚悟を決めてそのことを聞く。

 

「はい、生まれてくる赤子のうちどのくらいの割合で……、

まともでない子が、育ってもまともでない子供が出てきますか?」

 

あるみさんがとても悲しそうな表情に変わった。

私自身も同じような表情になっていることだろう。

 

「大昔の人の知識ってすごいんだねえ、そんなことまでお見通しかい?」

「……同じような事例が報告されてますから」

 

そう、漫画そのままな状況がこの現実でも起こっているのなら。

わずか6種類だけの血で完結してしまっているのだ、この村は。

3組の男女だけで始まったであろうこの村の血縁は、とっくの昔に限界を迎えているのだ。

詳細な家系図を作れば血の組み合わせが6×5=30種しか存在できないのだから、

まず間違いなく村人全員が五代もさかのぼれば血縁だと気づけるはずだ。

そして、血を濃くしすぎる弊害は生まれてくる子供に一番出てくる。

 

「十人生まれてきてまともな大人になるのは一人ぐらいかねえ」

 

3700年間近親婚以外不可能だったという事実から考えれば、いっそ奇跡といっていい割合だと思う。

そんなもの今この目の前の現実の前では慰めにもなりはしないが。

 

「言いにくいはずのことなのに、本当にありがとうございます」

「桜子ちゃん、泣かんでいいんだよ。あんたはなあんも悪くないんだから」

 

私の目からいつの間にか涙がこぼれていたらしい、まったく気づけなかった。

だって、悔しいじゃないか、後三千年早く、いやせめて千年、百年単位で早ければと思わずにはいられない。

一体何人の赤子が生まれる事も出来ずに命を失っただろう。

生まれても何もできずに死んでいったことだろう。

一体何万、何億の嘆きがあったのだろうか。

全て石化現象がなければ決して起こらなかった悲劇なのだ、それらすべては。

気づけば私はあるみさんにそっと抱きしめられていた。

 

「ありがとうねえ、この村の者のために泣いてくれて。本当にありがとうねえ」

「……新しい血が混じればもう、生まれてこれないなんてほとんどなくなるから、

も゛う゛だい゛じょう゛ぶだがら゛あ゛」

 

言葉の後半はもう意味ある声にならなかった。だって温かったのだこの村の人たちは。

みんな、みんな、訳が分からないって言われてきた私を受け入れてくれたのだ。

わずか数日間の交わりだったけど、いつの間にかこの村が大好きになっていたのだ。

だって、仕方ないじゃないか、私程度の料理であんなに喜んでくれたのだ。

焼く量が多すぎて焦げてしまった物でも香ばしくていいなんて笑ってくれたのだ。

製鉄作業で疲れているのにたくさん、たくさん助けてくれたのだ。

最初打算でしかなかった私なんかをあんなに慕ってくれてるのだ。

嫌いになんてなれるわけがないじゃないか、好きになるに決まってるじゃないか。

そんなみんなを助けられるかもしれないという誇らしさと、もっと早く助けたかったという悔しさで私の頭は完全にぐちゃぐちゃになってしまっていた。

どれだけ泣いていたのだろうか、いつの間にか外は真っ暗になってしまっていた。

 

「すみません、ご迷惑をおかけしました」

「いいんだよ、それより今日はここで泊っていかないかい?」

 

多分私の顔は大分酷いことになっているのだろう、そんなことまで言わせてしまった。

 

「ありがとうございます、でもコハクの部屋の整理もする約束なので。

お気持ちだけ頂いておきますね、なとりさんにも迷惑かけてしまいましたので」

「そうかい、またお話しにきておくれ。なんでもいいよ、婆も暇しているからねえ」

「はい、また来ます。今日はありがとうございました」

 

そうとだけいってお二人の家を出て行った。

そして、コハクの寝床を今日も借りるために歩いている途中のこと。

突然後ろから口を押さえられたかと思うと、あっという間に私は担ぎ上げられた。

想像もしていなかったのはあまりに迂闊と言えるだろう。

気づけば私は何者かに誘拐されてしまったのだった。

 

 




何気にDr.STONE最大の奇跡なのではと作者は思っています。>3700年続いた血縁

次話は視点代わって司達の話になります。
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