イシからの始まり   作:delin

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政治的な所は話半分で読み流して下さい。
間違ってる可能性は大いにあります。


クロムよりチョロくないか? byコハク

明けて翌日、さっそく製鉄の準備に取りかかろうとしたのだが天気はあいにくの雨。

雷雨にまでなってくれる事を祈りつつ屋内でできる作業をする事にした。

 

「で、理想は明文化できた?」

「昨日今日では難しいね、うん、今日は君の考える特に学ぶべき事を教えてくれないか?」

「私のおススメ教えたらそれに引っ張られそうだけどね、まあそれしかないか。

マグマはどう強くなりたいかは出てきた?」

「そりゃあオメエ、当然最強に決まってんだろうが」

 

ため息一つ、だから明文化しろと言ってるだろうに。

 

「どういう最強かって聞いてんの。脚を止めての殴り合いか、脚も使っての機動戦か、それとも必ず相手を殺す殺人の方向かとかね」

 

例をちょっと挙げて見せて反応を見る。

こら、分からないって顔で思考停止するな。

 

「最強って言っても種類があるの。相手を殺すだけだったら肉体の力は要らないけど、違うんでしょ?

貴方が目指すのはどういう自分かって言うのを聞いてるの、分かった?」

「お、おう。ただ最強ってだけじゃなく、どうなりたいかだな。ちょっと待ってろ、考えてみるからよ」

「技とかは分かんないから、司、お願い」

「実践形式のみになるけど、うん、やってみるよ」

 

マグマが黙って考え込み始めたので、司の要望の歴史の授業である。

 

「じゃあ、最初に政治形態の大雑把な分け方から行くね。

石化前であったそれらは大体三種類、細かく分けていくとキリがないからこれでいくわね。

一つは、日本やアメリカの民主主義、もう一つはロシアや中国の共産主義、最後がサウジアラビアなどの独裁主義。

この中でどれが一番民衆に優しいか、分かる?」

 

悩むそぶりも見せず即答する司。

 

「それは当然民主主義だろう?」

 

まあ日本の教育受けてたらそう思うよね。

 

「外れ、条件次第だけど独裁主義が一番民衆には優しいの。甘いと言い換えるべきかもしれないけどね」

 

おお、面食らってる、面食らってる。

 

「意地の悪い質問だったけど、基本的な考えを知りたかったからなの、ごめんね。

つまり司は、自分の意思で自分の事を決めるのが一番と思ってるって事よね?」

「うん、その通りだ。だけど、当たり前の話じゃないのかい?

誰だって知らぬ間に自分の運命を決められたくはないんだから」

 

それにしては老人の運命を勝手に決めようとしてたなお前。

いや、心変わりする前の事をツッコむのはやめよう、底意地が悪すぎる。

 

「思考するってすごく疲れる事よ、慣れていても、ね。

民衆と呼ばれるほど集まった人間は、現在が楽であればそれでいいっていう方向に流れがちなの。

だから、完璧な指導者様に、最高の道を考えてもらいたがるの」

「信じたくはないね、だけど理解できる気はするよ」

「理想の社会を考える時は人間は、まあ生き物全般に言えるんだけど、楽なのが好きな怠け者だって思っていた方がいいわ」

 

実際私も辛いより楽な方が好きだしね。

そこまで話したところで戸を叩く音が聞こえた。

出てみれば金狼達のお母さんの白金さんじゃないか。

 

「ごめんなさいね、教えるのに忙しい所押しかけちゃって。

つみれの作り方でもう一度聞きたい事があるのよ、少し時間もらえる?」

 

えーと、二人とも今は考えをまとめてる最中っぽいよね。

そう思って、二人の方を見ればマグマは手を振ってあっち行けの意思表示。

司も静かに頷いて行っても大丈夫と示してくれた。

 

「それじゃあ、ちょっと行ってくるね。戻って来るまでに言った事考えといて、特にマグマ」

 

そう言って雨の中笠だけ被って白金さんのお宅まで行ってくるのだった。

 

 

桜子が出て行った後、マグマは大きく息を吐きぼやいた。

 

「なんなんだあの態度の変わりようは、いくらなんでもおかしいだろうがよ」

「君への認識が敵から教え子に変わったせいだろうね」

 

そういう司自身も教え子認識になったのだろう、桜子の態度が柔らかいものに変わっている。

 

「村の人達にスゴイスゴイと持ち上げられてたろう? その時だろうね、認識が変わったのは」

「あれだけでか、あの程度の賞賛なんぞあいつの知識があればいくらでも得られるだろうが。

一体どんな育てられ方したんだってんだよ」

 

うんざりといった感じでマグマが言う。

しかし、司は思う、そもそも育てられたのだろうか?

育児放棄、そういう言葉さえ浮かぶ、彼女の人慣れしていない様子には。

 

「褒められた事、認められた事、何回あったんだろうね」

 

司も幸せな子供時代を過ごした訳ではない。

だが、信じ合える妹は存在していたし、妹のために稼ぎ続けるという目的はあった。

だが、彼女には何もなかったのではないか?

そう思える程、千空の桜子への接し方は教え導こうとしているように感じる。

まるで小さな子供を守り育ているようにも見えるぐらいだ。

思い返せば昨日の話し合いの後の時も……、

 

 

話し合いが終わった後司の寝床をどうするかという話になったのだが、クロムの倉庫だけでは三人、クロムが村の中で寝るにしてもに司が寝るには狭すぎた。

千空もクロムと同じく村の中でという意見や、寝床を建てればいいなどの意見も出たが、そもそも司だけが村には入れないのは不便にすぎる。

という事で、村長のコクヨウに許可をもらいに行こうとコハクから提案があった。

反対する理由など誰もなかったので全員で村へと向かった。

そこで事件は起こった、マグマより後に起きたマントルが大声でマグマを探し回っていたのだ。

もちろんすぐにガーネットが姿を見たと声を上げたが、向かった先が昨夜マグマと対峙していた余所者の所だと分かり、より混乱は深まった。

トドメにその余所者達とマグマらが連れ立って村に向かっているではないか。

 

「マグマ様! と、あー! 昨日の余所者! なんで一緒にいるんですかー!」

「あん? マントル、なんだこの騒ぎは?」

「マグマ、貴様が新しい余所者とぶつかったとマントルが言っていたが、事実か?

事実ならば何故その者と同行しているのか、説明してもらおうか」

 

橋の手前で門番の金狼が仁王立ちでマグマに事情説明を要求する。

面倒な奴に捕まったという顔でマグマが話し出す。

 

「事実なんぞどうでもいいだろうが、なんでテメエに話さなきゃならねえんだ?

こいつらと一緒にいるのは、俺が強くなるのにこいつらが利用できるからだ。

それになんか文句でもあんのか、金狼」

 

訂正、挑発を始めた。

 

「マグマ、貴様、そのために知らない余所者を村に入れようとするつもりか!」

「そうだ、つったらどうすんだ?」

 

いきり立つ金狼にニヤニヤ笑いながらさらに挑発するマグマ。

その挑発に対し槍を構え、戦う姿勢を見せる金狼。

 

「知れた事、余所者は村に入れない、ルールはルールだ。それを守らせるだけだ!」

「ちょっ! 金狼! マグマだけでも無理なのに、あの余所者めっちゃ強そうなんだけど!

僕らだけで勝てるの!? あ、よく見るとコハクちゃんいるじゃん! マグマを止めてよコハクちゃん!」

「マグマ様、このマントルも加勢しますよー!」

 

門番として村のルールと村そのものを守ろうとする金狼。

マグマ第一のマントルは当然マグマ側だ。

一方、一緒に門番をしていた銀狼は司に対し完全に怖気付いていた。

その分だろうか、司とマグマの体に隠れる形になっていたコハクらを見つけた。

他にもクロム達もいるのだが女性に目がいってしまうのは彼の性質からだろう。

もう一人はなるべくマグマから距離を取るため、一番後ろにいたので気づかなくても仕方ないのだ。

 

「マグマ、金狼をからかってんじゃねえよ。

おい、金狼、俺らはその許可を取るためコクヨウのおっさん呼びに行くんだよ。

コハクだけでいいからとっとと通してくれよ」

「そうか、コハクだけなら問題ない。村人なら出入りは自由、それがルールだからな」

 

そう言って橋の前から退く金狼。

一連の流れを後ろから眺めていた千空が呆れ気味に司に説明する。

 

「堅っ苦しいな、相変わらず。悪い奴じゃねえんだが、ちょいと融通がきかねえんだ。

ま、ルールさえ守ってりゃ突っかかってこねえよ、こいつは」

「そうみたいだね、俺としては悪いどころか、うん、好ましく思えるよ」

 

言葉通り好感を持ったのだろう、そう口にする司の顔は軽い笑いが乗っている。

その司の雰囲気に銀狼は目に見えてホッとし、マントルは昨夜のものとの違いに戸惑った。

 

「では私は父上を呼んでくる、少し待っていてくれ」

 

そう言ってコハクがコクヨウを呼んで司に村に入る許可を出したまではよかったのだが、その後二人が一緒になって司を村に案内したのが間違いだった。

その様子をみた誰かが叫んだのだ、コハクが男を村長に紹介していると。

当然のことながら、あっという間に三人は村人に囲まれる羽目になった。

 

「これコハクじゃなくて俺が行くべきだったよな、気づけなくて悪いと感じるわ」

「こうなるの想像できなかった他全員の責任だから、気にしないでクロム。

村の娯楽なんて少ないんだからこうなって当たり前なのにね」

 

司が何者なのかという疑問への説明役は千空の指名でマグマが行った。

いの一番に出た疑問のマグマとの対峙の件は余所者相手にマグマがいきなり襲ったせいと説明。

村人達が納得する中、マントルだけは他の誰が説明しても声を上げただろうと思える顔で話を聞いていた。

この辺りはマグマに説明役をやらせた千空の先見の明が光った形だろう。

まあ、マグマが説明役であったせいで、司の強さがより深く理解されたせいでもあるのだろう、この大騒ぎ状態は。

司がコハクとの関係が三日前に初めて会って、村まで案内してもらっただけという事実を村人たちに説明するのに非常に時間がかかったのは、コハクが全くその辺りを説明しなかったせいである。

曰く、

『何人もで説明してもわからなくなるだけだから司に全部任せる』

だそうで。

あれはただ単に面白がっているだけだろうな、というのは全員見解が一致するところである。

旧世界のファン相手とは勝手が違うのは司の考えが変わったせいだろうか?

目を白黒させながらの説明の後も根掘り葉掘りこの後どうするのか、寝床はどこで、など聞かれている中で、桜子から歴史などを教えてもらうと言ったら村の女性数名に桜子が囲まれた。

 

「桜子、あんたやっぱすごいわねえ。こんな立派な人にものを教えられるんだから」

「こんなにちっちゃいのにね」

「だから私は15だってば、身長は関係ないでしょう」

 

そういう桜子だが褒められて嬉しいのか頬が赤い。

それを見た女性陣により可愛いと構われる、するとますます頬が赤くなる。

というサイクルが生まれているところに千空が更なる燃料を投下した。

 

「後、マグマの特訓もこいつが見る事になってんだ。

料理を見る時間が減るかもだが、それは勘弁してやってくれ」

「ええっ! マグマに特訓つけられるの桜子!」

「待って、直接じゃないから、やり方教えるだけだから」

 

それに反応してさらに囲む女性陣が増える。

 

「桜子、マグマをしっかり見てやってよ。村一番のマグマがもっと強くなれるなんて素敵じゃない」

「うちのカーボも見てもらおうかしら? 桜子が忙しくなければだけど」

「あ、ごめんなさい、次の製鉄やったらちょっと私達の拠点に戻らなきゃいけないの。

だから、料理教室もしばらく後になっちゃうんだ」

「あー、仕方ないよね。桜子はほんと色々できるもん。引っ張りダコよね」

 

すでに外からは桜子の姿が見えない状態だ。

それだけ桜子が村人に受け入れられている証拠でもあるのだが。

その騒ぎは結局コクヨウが解散を指示するまで続いた。

 

 

あの時の千空は、村人に囲まれる桜子を満足そうに見ていた。

 

「やっと人並みに受け入れられたからだろうね、うん、この村に来れて良かった」

「分かんねえなあ、女に求めるもんなんぞガキ作れるかと家事できるかぐらいだろうが。

あんだけできりゃガキが難しくても嫁の貰い手ぐらいいんだろ」

 

一瞬眉をひそめる司だったが、常識の違いだと気づきそのあたり説明する。

 

「女性の幸せはそれだけじゃないと思うけどね、それは別の話か。

彼女が何故受け入れられなかった、という話だと俺にも分からない。

周りから浮いてしまっていた、それしか俺は知らないからね」

 

心底面倒くせえという顔でマグマがぼやく。

 

「俺には関係がねえからな、今やりやすいんならそれでいい。

俺の目的は、司、テメエをぶっ飛ばす事だからな」

 

後ろ半分は凶悪な顔で笑いながらだが。

司はその敵意を受けても微動だにせず、むしろ微笑んで言葉を返した。

 

「ああ、その方が彼女にとっても喜ばしいはずだよ。うん、安い同情なんかよりよっぽどね。

君は彼女を利用して自分が強くなる事だけ考えていればいい」

 

今の自分では司に歯牙にもかけられない、分かっていても不快ではある。

しかし、突っかかっても流されるだけなので、自分の求める強さの方向を決めるため深く思索に入るマグマだった。

 

 

「話は変わるんだが、君とぶつかったあの日から俺はコハクに遊ばれている気がするんだが」

「今更何言い出してんだテメエ、女どもに隙を見せた時点で諦めろ」

 

桜子が戻った時、何故か頭を抱える司と悩みすぎて頭痛を堪えるマグマの姿があったという。




司がなんか愉快なキャラ付けに……!
その、ファンとしてでなく友人付き合いは慣れてないイメージが自分の中になぜかあるんです。
それもこれも原作で『取り巻きは山ほどいるが大切な人間などいない』って言った司が悪いんだ!(責任転嫁)
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