現在絶賛お説教タイムです。
正座しっぱなしでちょっと脚が痺れてきました。
私自身体重が大した事ないからか前世の記憶より痺れるのが遅いですね。
なんの慰めにもなりませんが。
「反省したの桜子ちゃん!」
「はい! もう危ない目に遭うような事はいたしません!」
意識を逸らすと即バレるのは何故なんでしょうか?
姿勢も視線も変わっていないはずなのに。
「さーくーらーこーちゃーん?」
「ごめんなさい、お話に集中します!」
「まあ、大分時間も経っているし集中力も切れるころ合いなんだろう。
そうだ、村での生活がどんな感じかを教えてくれるか、桜子」
大樹が救い主に見えるぐらい素晴らしい話題変更!
お説教ずっとは本当に辛かったの、特に杠が半分涙目で怒ってくるのが一番効く。
石化前の教師からの説教は完全スルー出来てたんだけどなあ。
怒る人が違うとこれほど違うとか、びっくりです。
おっと、考えを切り替えてっと。
うーむ、村の生活でこことの違いかあ、
「とりあえず食が魚がメインというか、それだけになりがちなところかな。
山菜とかも採ったりしないし、肉ですらほぼゼロ」
「む? こちらは肉が多いのか?」
「槍使いの氷月って人、司と同格だってさ」
「なるほど、狩りの獲物には困らんなそれは」
だからこそ、『優秀な者のみを残す』なんて野望持っちゃったんだろうけどね。
「後、意外と小物類が充実してるのよね。
髪留めとか、包丁とか、まな板もあったし、洗濯板まであったのは驚きだったわ」
「包丁まであったの?」
「もちろん青銅製だけどね、ほぼ全て村の職人のカセキお爺ちゃんが作ってたはずよ。
確かそのコハクの盾とかナイフとかもカセキさんの作品じゃなかった?」
「うむ、父上が御前試合で優勝した時の賞品だったらしい。
幼い頃私が父上が持っていたこれをねだってな、父上から譲ってもらったのだ」
「そっか、お父さんからの贈り物なんだ。大事にしてるんだね」
「うむ、だが盾は盾だからな、『お前の身を守る為には遠慮なく使い捨てなさい』と言われているのだ。
だから、私はいざとなったら捨てる覚悟でこの盾を持ち歩いているのだ」
あー、だから漫画でギアに改造する時なんの躊躇いもなかったんだな。
打たれ続けていつか消耗品の定めとして壊れるよりかはギアになる方が長く持つと。
簡単に壊しそうなの二人もいたからな、司と氷月っていう規格外どもが。
「いいお父さんなんだね」
「うむ、自慢の父だ」
その言葉コクヨウさんに聞かせたらむせび泣くぞ。
杠も優しい表情でコハク見てるし、もちろん大樹も……?
少し羨ましそう? あれ、なんかあったっけ……!
そうだよ、大樹って両親亡くしてるじゃん!
ああ、でも話題をいきなり変えるのも変だし、どうしよう。
「さて、すまんが俺はまた食料集めに行ってくる。戻って来たらまた話を聞かせてくれ」
ああ! 大樹に気を遣わせた!
私が大樹の様子に気づいた事に気づいて、困ってるって分かっちゃうんだ!
意外と気遣いの人だよね大樹って、杠が惚れるのも当然だわ。
だが、空気を読まずぶった切らせてもらう。
千空がいない今がチャンスなのだ。
「待って大樹。貴方に確認しときたい事があるの」
「む? なんだ桜子。俺に分かる話ならばなんでも答えるぞ」
ん? 今なんでもって言った?
謎のネタが浮かんだが気分はほぼそんな感じで爆弾を放り込む。
「村でね、貴方と同じくらいの年の男子が子供の作り方教わってなかったの。大樹、貴方はちゃんと知ってる?」
フオオオとでも叫びそうな表情で三人が固まった。
「さ、桜子ちゃん、一体何を」
「桜子、さすがに男子に向かって、ソレはどうなのだ」
「杠は大丈夫だと思うの、旧世界の私達ぐらいの女子ってそういう話題ぐらい出るだろうから。
ただ、ね。大樹って千空とだけ一緒の事が多かったでしょう、きっと。
千空自身そういう事に興味持つタイプじゃないし、大樹はもっと知らないと思ったの、違う?」
顔を真っ赤にして口をパクパクと開け閉めする大樹。
だが私が一切ふざけた調子のない真剣な様子に気づいたのだろう。
深呼吸をゆっくりした後、覚悟を決めた顔でしっかりと答えてくれた。
「そうだな、そういう事は全く知らん。学校での保健の授業ぐらいだ俺の知識は」
「うん、ありがとう、答えてくれて。冬の間は村の近くで冬ごもりしようって話になってるから、その間に村の大人の男の人に聞いておいて」
「うむ、分かった」
短く了承の返事をして真っ赤な顔のまま飛び出して行く大樹。
その後ろ姿を見送ってしばらくの後、コハクが恐る恐る訪ねて来た。
「なあ、桜子。なぜ今、大樹に聞いたのだ?」
「千空がいると邪魔してくるから、いないタイミングで聞いときたかったの」
「クロムや千空に確認させるのではダメだったのか?」
うーん、杠に大樹はそういう知識がないっていう事を知っておいてほしかったって今言うのは野暮だなあ。
後、私がいなくなってる可能性がこの後あるんです、なんてとてもじゃないが言えないしなあ。
「てへっ」
結論としてテヘペロで誤魔化す事にした。
「桜子ちゃん、ちょっと女性としての恥じらいについてお話があります」
結果は杠の雷再来である。
杠が再度お説教モード入っちゃったー!
「待って杠! 恥じらいならまずはコハクに言って! コハクはこの格好でバク宙したり、ハイキックしたりするの! 先にそれを注意するべきよ!」
「なああ! 私を巻き込むんじゃない桜子! それとこれとは別の話だろう!」
「恥じらいっていうなら間違ってないでしょ! 性関係の知識もなく司の嫁になってもいいとか言い出すし」
「それは確かに言ったが……、そういう話題をいきなり出すのは違うだろう!」
ドン! と床を叩く音が響いた。
いや、実際は『トン』っていうぐらいだったかもしれない。
けど、私達二人の耳には何よりも大きく響いたのだ。
「桜子ちゃん、コハクちゃん、そこに正座」
「「は、はい」」
少し俯く程度なのに杠の目元がなぜか私達には全く見えない。
その気迫に二人して即正座をせざるを得なかった。
なお、お説教は二時間程度で終わったが、受けている最中は永遠にも感じられた事をここに記す。
普段温厚な人を怒らせると我慢してしまう分爆発力が高い、私覚えた。
明けて翌日、ようやく他の人たちと顔合わせである。
何か無駄に時間をかけているような気がする、もう少し効率よく時間使う方じゃなかったか私?
「いやあ、やっとお話しできるねえ。初めまして、俺は浅霧幻。フランクにゲンでいいよ」
「はい、初めまして。メンバトは少しだけ見たことありますのでお顔は拝見しています」
「あら、うれしいねえ。ちなみに何回の見たの?」
「初めから見たわけでなく、チラッと見ただけなので、ごめんなさい。
でも確かビリヤード選手が出ていた回ですね、2巡目で全て当てていた回です」
「それは第8回だねえ、あっさり勝ちすぎだってあまり視聴率良くなかったんだよねえ、その回。
あまり人気のない回でも見てくれる人はいるんだねえ、けっこー感激よ、ジーマーで」
ちなみにそんな回は存在しない。
8時の方で見られないように人気のない場所でってとこか。
私のセリフはチラッとのとことビリヤードのとこで氷月を2回見てるのであいつを警戒してる、と多分伝わってるはず。
「ゲン、こっちにも話させな。あんたが桜子だね、三人から話は聞いてるよ。
なんでも、記憶力が良くて大抵のことは知ってるんだって? その知識で色々よろしく頼むよ。
あたしは花田仁姫、気軽にニッキーって呼んでおくれ」
「はい、よろしくお願いします、ニッキーさん」
「さんは要らないよ、こっちこそよろしくね」
握手をしたが、やはりゴリラの系譜。手がいたい。
「アタシは記者の北東西南よ、よろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
北東西さん……ええい、心の中ですらやりづらい、下の名前で呼ばせてもらおう。
南さんか、この人司が好きなんだろうけど、なんていうかファンとして、チャンピオンの司が好きって印象なんだよな。
コハクか南さんかどっちかというとコハクを応援したいんだよね、司の幸せ的に。
司はあのチャンピオン時代いい思い出なさそうだしなあ。
そのあたり跳び越えてくれないと、この人応援できないんだよなあ。
「次は僕かな? はじめまして西園寺羽京って言うんだ。
これでも自衛隊員だったからね、遠慮なく頼ってほしい」
「はい、その時が来たら遠慮なく頼りますね。よろしくお願いします」
こういう風に言うって事はゲン側か羽京さん。
潜水艦のソナー要員だったはずだから、耳すごくいいんだよねこの人。
しかし索敵出来る人を引き込むとは、分かってるね、ゲン。
「紅葉ほむら、よろしく……」
「よろしくお願いしますね」
で、氷月の狂信者ほむらさんですね。
どうでもいいけどこの人身長ひっくいな、私より数センチ高い程度じゃないか。
そして、来たぞ。ラスボスみたいな威圧感を纏って、絶対強者の自信を持って。
「そして私が司君がいない間のまとめ役を務めている氷月です。
司君を変えた君と千空君には是非会ってみたいと思っていたんですよ」
「変わったのは彼自らですよ、千空はともかく私なんてとてもとても。
まとめ役お疲れ様です、千空達の相談で冬を越すまでは村の近くで冬ごもりをしようだそうです。
私がこちらにくる用事が済んだらみんなで動けるようにお願いします」
さあ、タイムリミットは伝えたぞ。
ここからどう動くか、それとも動かないのか。
しっかり見極めないと、ね。
その後コハクにほむらを名目としては新体操の動きを見せてもらう形で見張ってもらい、私はゲンと羽京さんとの話し合いである。
「昨日ソッコー杠ちゃん達にお説教食らってたけどさ、危機感バイヤーで足らなくない?」
開幕お説教から来るとは予想外です。
「氷月をなぜ警戒できたかも聞きたいけど、正直来てほしくなかったね僕らとしては」
しかも二人共から。
「だって、作れる人がいないなら原料を村の方に持ってきてもいいじゃないですか。
要であるはずの司をわざわざ動かそうとするなんて、怪しすぎるでしょ?
で、それを言い出したのが誰かって聞けば武力最強格の人、裏切られたらアウトじゃないですか」
「そこまでわかっててなんで来ちゃったの?」
「もう少し慎重に動こうよ……」
心底呆れたって感じで言われたしまった。
なんかこちらに来てからお説教ばかりな気がする。
「君が迂闊なのが原因じゃない? 大樹ちゃんから聞いたよ千空ちゃんのグ・チ」
せ、千空め、砂抜きしてない蜆を食う羽目になったのそんなに根に持っていたのか。
それともクロスボウの矢が鼻をかすめた件か? それとも貝を鳥に持っていかれた件か?
「なんだか愚痴の心当たりが複数ありそうだね、自分が迂闊って自覚もありそうだ」
「ま、その自覚あって警戒してるなら一人になったり、うっかり氷月ちゃんにあったりもしないでしょ。あの子、コハクちゃんだっけ? 彼女から離れたりしなければ氷月ちゃんも動けないだろうし」
「そうします、杠にも怒られたし仕方ないですよね」
そう、仕方ないのだ、これだけの人から危ないことをするなって怒られたら。
ここに来た目的の一つである氷月の説得は後回しにしよう。
きっと、そうするのが正解なのだろう。
そうして私は初めて自分の行動予定を変える気になったのだった。
『今夜あの洞窟の前でお待ちしています』
ただし、わたしが変えるつもりになっただけではどうしようもないこともある。
氷月からの手紙が蒸留器の横にそっと置いてあり、その内容の一部が先ほどの文章だ。
そっかー、もうすでに原料の二つばれてるのか―。
書かれていたのはそれだけではない、全文がこれだ。
『桜子君へ
手紙にて失礼しますね、貴方と二人でお話がしたい。
そのためにも誰にも言わず、気づかれずに行動していただきたい。
でなければお友達の身の安全は保障しかねます。
ほむら君に手伝わせますのでコハクくんたちを撒いてから来てください。
今夜あの洞窟の前でお待ちしています。
後、書く必要もないと思いますが読み終えたら処分してくださいね。
他の誰かに読まれた場合もやはり保証できませんので。
氷月より』
そのためかー、杠に『今は服作りに集中していただきたい』って言ってたのはー。
万が一にでもこれを私以外に見せないためだったのね。
後、これ置いたの氷月自身だね、管槍の管が転がってるや。
もちろん予備の部品だろうけど、もうすでに全部知ってますよってか。
いや、作り方自体は分かってないんだろうけどな。
じゃなかったら私を待つ必要ないもんな。
でも多分実験はしたんだろうなあ、よく思い出してみると外で燕の石像が動いてるとこあるもんな。
そして、外を見るとしっかり大樹か杠を間合いの内に収めている氷月。
そっかー、最悪私だけさらって逃げればいいんだもんね。
で、脅迫のための人質は一人いれば十分だから、片方ただの脅しではない証明に使ってもOKと。
うん、ゲンに羽京、君ら司を行かせた時点でアウトだったぽいぞ。
いや、司も戻ってくれば問題はなかったのか君らの中では。
だが、司が守るべき相手ができてしまってたらやっぱりアウトだぞ。
そっち狙われたら守らざるを得ないからな今の奴は。
つまりあれか、私は殺されるかもしれない場所に、味方を振り切って、凄腕のソナーマンの監視をかいくぐってスニーキングミッションを成功させなければならないと。無茶じゃね?
なぜ、現在起きてる人類の中で、運動神経最下位の候補に挙がる私がこんなことをしなければならないのか?
割と自業自得な気がするのでやる方法を考えることに集中する私であった。
そりゃ(そうなるように動いたんだから)そう(なる)よ。
警戒がっちりしてたけど一歩上回られたゲン&羽京。
そこ、桜子の迂闊さが想像以上だっただけとか言わない!