教えてください、お願いします。
朝になって早速大樹君の復活のために洞窟まで移動である。
「大樹君の分しかまだアルコール出来てないけどどうするの?」
「んなもん体力バカに集めさせるに決まってんじゃねーか、俺とおめーの二人掛りよりあいつ一人の方が100億倍あつまるからな」
「いくら何でも大げさでしょ、体力お化けらしいっていうのは漫画情報で知ってるけど」
「クックック、そのあたりは見てのお楽しみだな」
さすがに80Kmを5時間はただの漫画表現でしかないと思うんだけど……
そんな会話を交わしている間に洞窟まで到着である。
起こす前に硝酸がかからない位置まで引っ張ったり、硝酸を溜める容器を移動させたりした後復活液をかける。
「つばめの時と同じでちょいと反応に時間がかかんな。
まだ検証が足りねーが表面の風化部分を浸透して未風化部分にまで達っしねーとカスケードしねーんだろうな」
ピシリ、ピシリと石の割れる音が少しずつでもしはじめると、
そこからは一気に全身に波及していく。
「俺が目覚めてから3か月と3日、寝坊のし過ぎだデカブツ」
「おおおおおお!! 破った!! 破ったぞついにー!!!」
叫びながら全身についている石辺を吹っ飛ばしていく大樹君。
「よーやっと、お目覚めだなデカブツ。どんだけ寝てんだてめー」
「おお、千空! お前が助けてくれたんだな!! ありがとう!」
そういいながら千空に抱き着こうとして蹴られる大樹君。
「素っ裸で抱き着こうとすんな! 殺すぞ! とっとと服着ろ!」
「はい、大樹君の服。サイズは千空が覚えていたから大丈夫なはずよ」
「ああ、ありがと……おおおおお!」
横から声をかけられて初めて私の存在に気付いたらしい。
大樹君はすごい勢いで岩の陰に隠れてしまった。
「なにを恥ずかしがってんだデカブツ、このストーンワールドじゃ全裸だろうが半裸だろうが誰も気にしねえよ」
「そうそう、大樹君のブツは平均の1.3倍くらいはありそうだから誇っていいって」
「てめーも何を言い出してんだ」
「何って、ナニ? 大樹君のは多分臨戦状態だとカーマスートラでいうところの雄牛を超えて馬だと思うから行為に及ぶときはよく相手と自分のを濡らして…」
「その話題を続けんなセクハラもやし!
デカブツ! てめーもとっとと服を着やがれ!!」
「わ、わかった。すぐに着るからすまんが少し時間をくれ!」
ごつんと結構いい音を出して殴られてしまった。
一応親切心のつもりだったんだけど、という意思を込めて千空を涙目状態でにらむが逆に睨み返されてくぎを刺された。
「これ関係の話題はめんどくせーことにしかならねーんだから以後ぜってー禁止な!」
「性関連の教育は重要事項じゃない! 断固抗議するわ!」
「てめーが教師である必要がねーだろーが!
これ以上ややこしくすんなってんだよ!」
そんな言い合いしてたところで服を着終わった大樹君が戻って改めて仕切り直しである。
「とりあえずだ、ありがとう千空。
おかげで破ることができた感謝するぞ。で、こちらの人は?」
「初めまして、大木大樹君だよね?
千空から色々聞いてるよ。私は吉野桜子、桜子でいいよ」
顔が赤い状態で再度感謝を口にする大樹君に向けて笑顔で手を差し出しながら自己紹介する。
「よろしくだ桜子。俺の方も大樹で大丈夫だ」
がっちり握手して思ったが本当に力強いな彼、ちょっと手が痛かった。
「軽く自己紹介が終わったら、デカブツにゃ早速一仕事してもらうぞ」
「おう! なんだ、体力仕事なら任せてくれ」
「あれ? 拠点に戻って、やってもらいたいことを説明するんじゃなかったの?」
確か当初の予定ではこのまま拠点に戻って朝食&現状説明だったはずでは?
「必要ねーだろと思ってたんだがな、さっきのてめーらのやり取りでやっといた方がいいと思いなおしたわ。
川沿いに進んであのクスノキのとこまでいくぞ、話は歩きながらでもできっからな」
道中今何が必要で何をしてほしいかなどの説明をしたり、獅子王司の石像を発見したりしながら目的地まで移動である。
「おら、目的地に到着だ」
「千空ここはあの日の……」
「そういうこった。……おい、桜子。俺らはこの辺でちょい薪集めすっからついてこい」
事情も知っているし、彼の気持ちも想像できるので軽く頷いてついていく。
声が聞こえないくらいまで離れてからからかうように声をかけた。
「意外と優しいよね、千空って」
「一々気にしながらの作業じゃ効率悪りーからな、合理的に判断すりゃこうした方がいいって話だ。
それよかオメーが空気読めたってのの方が驚きだわ」
「さすがにわかるわよ、色々知ってるんだし」
かるいからかい返し程度では今の浮かれ気分の私に効果がないのだ。
「これで髪用シャンプーに着手できるんだもん、少し待つぐらいなんてことないわ」
「こだわんのなそこ」
「髪は女の命でしょ、一応女である自覚というか自負? みたいなものはあるの」
「本当一応程度だな、髪にこだわるよか大事な事があんだろ」
「女性的な魅力は気にしないけど、女と見られないのは嫌なのよ。我儘だとは思うけど」
男性から魅力的には見られたくないんだけど、女扱いはされたい微妙な機微は我ながら面倒くさいと思う。
それからしばらくは薪集めで時間を潰しながら大樹待ちである。
そう時間はかからず杠さんを横抱きにして戻ってきた。
……? はて、人一人ぐらいの重さがあったはずなのだがあの石像。
「すまない、待たせたか二人とも」
「いくらでも欲しいやつ集めてただけだからなんも問題ねーよ」
いや、今私の目の前で大問題が発生しているのだが。
「んじゃ、拠点にまで戻んぞ。あん? 桜子、何呆けてんだよ」
「目の前の光景がちょっと現実離れし過ぎてて脳が理解を拒否してるの」
女性らしい体型をした彼女の体重って多分50kg以下ぐらいあるはずで、さらに質量保存の法則に基づきあの石像は杠さんと同じ体重のはずで……
「ねえ、千空。聞いてもいい?」
「なんか気になった事でもあんのか」
「大樹って、本当に私と同じ人類?」
その言葉に二人は顔を見合わせて弾かれたように笑うのだった。
「いやー、久しぶりに笑ったぜあのセリフと呆けた顔にゃあよ」
「あんなに笑うことないでしょうが」
あれから千空の背負いかごを大樹が、私が持ってた荷物を千空が持ち拠点に帰還である。
「普通人一人分の重量物持って長距離移動なんて出来ないでしょうが!」
「そりゃ、あの体力バカを舐め過ぎだな。
大樹ならその状態でも10キロや20キロぐらいへでもねえ」
人類の規格外どもめ! 私の常識がおかしくなったらどうしてくれる。
今は杠さんの服を作っている最中で、その服を着せるのは当然ながら私である。
「今石像なんだから気にする事無いと思うんだけど、大樹って純朴よね」
「気にする事ねーってのは同意だがな、気にしねえのも雑頭らしくねえからこれでいいんだよ」
「今戻ったぞ! 果物類だが、これらで大丈夫か?」
早っ! そんなに時間経ってないはずなのにもうある程度の種類集めたの!?
「生ってそうな場所教えただけなのに、種類だけじゃなく量まで集めてるってのは驚きだわ」
「おう、近くに生っていたからな。少し集めておいた」
驚いてばかりではいられない、果実をつぶす準備を整えなくては。
つぶす用の容器を上の段に、底面の注ぎ口の下に果汁を受ける容器をおいておかなければならない。
土器なのでそこそこ重いのをえっちらおっちら運ぼうとしてたら大樹が手伝ってくれた。
「この二つを動かせばいいんだな。任せろ」
片手に一つずつ簡単に持つなよ、中身ありだと私は樽みたいに転がすようにしか動かせないんだぞ。
まあ、快くお礼を言っておくが今日だけでどれだけフィジカルに差があるの実感する羽目になるのやら。
「千空、もう一度確認しときたいんだけど、大樹って本当に人類? サイボーグとかじゃなくて?」
「いや、信じられねーのもわかるが、100億%人間だぜ。信じられねーのもわかるが」
私の目の前には大樹が集めた資材の山がある。
具体的には私と千空二人掛りで集める量の数倍ぐらいの量が。
「これで生活基盤を整えんのは大樹に任せられっから、俺らは文明を進めてくぞ」
「まずは炭酸カルシウムから? 貝殻はそこそこあるし」
「石鹸用にちょいちょいやってたが、これからモルタル用にも使うからまず貝集めからだな」
ここから文明再建の第一歩目、私の居場所がある世界、理想の社会へのスタート地点。
前途洋々、順風満帆、私の未来はバラ色だ!
そんな心地だった私に暗い影が迫ったのは酒造りがうまく出来た3週間後のことであった。