イシからの始まり   作:delin

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『Dr.STONE』について語り……きれない!

あまりの衝撃に私が目と口で三つの丸を作っている内にさらに言葉を続ける千空。

 

「あの光が来た時人類はほぼ全員石化したってのは現在の状況からまず間違いねえ。

だが、宇宙ではどうだ? ちょうどその頃にISSで作業中の奴らが居たはずだぜ、確か5人か6人だったな」

「ま、待ってくれ千空。地球全土を覆うであろう程のものだよねあれは。

ISSの高度は確か400km程度、地球の直径から見たら誤差の範囲内じゃないか。

なのに、ありえるのかい? たまたま避けられる程度の範囲だったなんて事が」

「あー、まあな。だから俺もISSは燃料切れで大気圏に突っ込んで燃え尽きたと思ってた、乗組員ごとな。

だがな、透過できねえもんもあるってなったら話は別だ。もしオゾン層を透過すんのが不可能だったら?

大気中にしか走れなかったりしたら? 真空を通るのが出来なかったとしたら……ISSが無事だった可能性が出てくんだよ」

 

仮定に仮定を重ねる形になるがな、と自嘲気味に笑う千空に絶句。

そこまでの推理を、おそらくさっきの私の反応から導き出すなんて。

 

「後は明らかに白人の血が混ざってる村人だとか、名字の文化がないのに名字を聞かれたりだとか。

極めつけはあれだな、この村は石神村っつうんだと。因みにISSの乗組員唯一の日本人の名前が石神百夜で俺の親父な。

ここまで揃えば状況証拠としては十分だろ」

 

どっから聞いた&誰から聞かれたのおぉぉぉ!

思わず頭を抱えて下を向く私。

 

「つまり、この村は3700年続いているという事かい?」

「いや、それはどうだろうな。俺がいた東京とここは陸続きだ、楽勝で歩いて行ける範囲だろうよ。

その状況で百夜が俺を探しに来ねえってのは考えづらい。推測だが多分海外、少なくとも海の向こうだろうよ。

んでもって白金の在り処はそこ、宝箱ってのは宇宙船ソユーズだと思うが……合ってるか?」

「千空、誰も話についていけていない。すまないが一つずつ順番に理由を説明してくれ」

 

頭を全開で回転させているのだろうクロムがさっきから目をグルグルさせている。

司と羽京も繋がりが今一つのようだし、カセキに至っては考え放棄してるっぽい。

ゲンはさっきの村が宇宙飛行士たちの子孫発言時から両手を上げて降参のポーズ。

当たり前の反応だ、知ってる私でもなぜそう言えるのかさっぱりなのだから。

 

「あん? しょうがねえなぁ、んじゃ一つずつ順番に説明すっぞ。

まずISS乗組員の生存の可能性はわかるな? で、地球に帰還すんだろ。

宇宙飛行士ってのは超絶エリートの集団だ、そこは問題ねえだろうよ。

だが地上からのサポートなしで日本へピンポイントは無理だ。

って事は何処か、多分ユーラシア大陸の北部だろうが着陸しやすいとこに行くだろ。

そっから少しずつ広がってここまで来た、ってのが一番考えやすい。

で、村に伝わる百物語で白金が宝箱に入ってるって話な訳だが、その時一番頑丈であろう物は?

そりゃ宇宙船ソユーズだろうよってわけだ」

 

開いた口がふさがらないとはこの事か。

わずかなヒントだけでここまで近づいてくるか、普通。

千空が普通かって言われたら全力で首を横にふるが……、にしたってコレはない。

プレゼントを渡す前に中身を当てられた気分だ。

 

「ゲン、ちょっと情報を無闇に出さない方法教えてくれない?

あっという間に正解に近づかれて怖いんだけど、私」

「千空ちゃん並みの人はちょーっと見た事も聞いた事もないからねえ。

多少怖がっても仕方がないよね、俺でよければ教えられる範囲で教えるよ」

「おい、合ってんのかどうなのかぐらい言えよ」

「……さっきも言ったけどルリさんを治してから。答え合わせはその後にして」

 

とにかくこの件はこれ以上答えたくない。

どれだけばれてしまうのか怖すぎる。

 

「いいから他の質問ないの!? ないならこれで終わる!」

「なに怒ってんだ、オメー。まあ、俺からはそれだけだから別にいいがよ」

「ねえねえ千空ちゃん、お父さんからのプレゼントをもらう前に中身当てちゃって怒られた事ない?」

「当てた事はあっけど百夜は凹んだだけだったぜ、すぐに戻ったしな」

「うん、でさあ、サプライズをしようとしてたんじゃない? 彼女。

それがあっさりばれちゃったら怒っても不思議ないんじゃない?」

「メンドくせえなあ、おい。とりあえずこれ以上は聞かねえって、それでいいだろ?」

「……分かった、それでいいよ」

 

口をへの字にしながらも了承する。

すっごく悔しいが仕方ない、千空がすごいのは分かってたのに口裏合わせをし忘れたのが敗因だ。

後はクロムかカセキが作ったものでも聞いてくるかな。

と思っていたら司が真剣な表情で聞いてきた。

 

「……桜子、その本では俺はどう描かれていたか教えて欲しい」

 

絶対落ち込むから話すのにかなりの躊躇があるんだけど……。

 

「司が現実にやった事じゃないんだから、必要以上に気にしないって約束できる?

私はもう貴方の事を仲間の一人と思ってる、沈み込んでる姿は見たくないんだからね」

 

ちょっと照れてそっぽ向きながら言ったがこれは私の本心だ。

あの時いた皆んなと村の人達は私にとって大切な仲間たちだと思っている。

面と向かっては中々言えないが。

 

「ありがとう、うん、だけど俺が知るべきだと思うんだ。

いや、違うね。知っておきたいんだ、どんな風に過ちを犯す可能性があったのかを」

 

司が少し表情を和らげて感謝と決意を述べる。

だが自傷行為に近いものがある、だからついついクロムがツッコムのも無理ないだろう。

 

「真面目か! わざわざ自分で傷口えぐる事ねーだろよ。なあ、千空もそう思うだろ」

「ああ、合理的とは言えねえな。だが、司自身が先に進むのに必要だと感じたならしょうがねえだろ」

 

むう、千空は本当に皆んなを信じているなあ。

この少しモヤッとする感じはいつぞやの友達への独占欲だろう。

そう判断して話を始めるのであった。

 

 

「司が望むならいいけど、辛かったら言ってね。まずは大きく変化したあの海岸での話からね。

漫画ではあの時はそのまま引いたのよ、ただし復活液の存在が話し合い当初は知らなかったの。

だけど話が終わったぐらいに大樹が杠分の復活液の材料溜まったぞーって言いながら来ちゃってね。

硝酸が湧く洞窟の位置と引き換えに時間を稼いだ千空は杠を目覚めさせて、大樹と杠に逃げるか一緒に戦うかを聞いたの」

「「「「「「戦う(だろ)(だろうね)(よなあ)(じゃろ)(でしょ)(と思うけど)」」」」」」

 

うーん、全会一致、私も同意見だけど。

でも、千空なら聞かずにはいられないだろうなあ。

 

「まあ秒で選んだんだけど、そこで司が戻って来たの。大人の石像を破壊したカケラを持ちながら。

当然大樹は止める為に挑む……って言うか立ち塞がろうとするんだけどね、一発耐えるので精一杯。

こりゃダメだってなった千空はさあどうするのか?」

「火薬作り」

 

だから即次の話を当ててくるのはやめて頂きたい。

 

「正解、その材料を手に入れるため箱根に来たってわけ」

「そんでもって村人に会って村に来たわけだな!」

「そうそう、でルリさんの薬作りが始まるわけ」

 

よっしゃ! ナイスだクロム! これで肝心な部分を喋らずに済む。

が、そうは問屋が卸さない。

 

「桜子、意図的に話を省かないでくれ。復活液の作り方を知らない俺が諦めるはずがない。

そこで火薬を作り上げ、俺が追いついたんじゃないか? だが火薬だけでは俺を止めるのは難しい。

桜子、君がどうしてこの辺りを話そうとしなかったのか?

それは作り方の為に三人の内誰かが俺の手によって傷つけられたからだ、違うかい?」

「その三人なら多分俺だろうな、司の現実での当初の理想そのままなんだろ?

大きい変化がそこってんならそのはずだ。で、それなら一番排除する必要があるのは俺だろ」

「それでは薬作りを始める事もできないだろう? 大樹か……杠だと思うよ、君をかばってね」

「それだったら逃げられねえだろ、大樹や杠が死んでんなら話は別だがな。殺しまでするか?」

「あの頃の俺だったらやるだろうね。大樹がその身を呈して俺を止める、その後死んだと思わせる事ができれば千空は逃げ切れる筈だ」

「火薬作ったならまず交渉から入ると思うがなあ、それで決裂してってか?

銃を揃えて今度は司を殺しってのが目的か、クッソみてえな顛末だな、おい」

 

確かに大樹を殺されでもしたら、いくら千空でも復讐心を押さえられないかもしれない。

でもそんな救いのない『Dr.STONE』は嫌だ。

 

「そこまで暗い話じゃないから! 千空の知恵で上手く司に千空が死んだと思わせただけだから!」

「だったらとっととその方法を話せよ、司に対して変な遠慮してんじゃねえよ。

コイツだって碌でもない事態は覚悟してるっつーの」

 

むむう、と唸った後渋々ながらも話す事にする。

このままではものすごい誤解が起きてしまう。

不都合はないはずだがなんとなく気分的に嫌だ。

多分だが、私が千空の友達で『千空』のファンでもあるからだろう。

あの強い生き方に憧れたのだ、もちろん他の漫画の主人公たちも同様にであるが。

 

「あの実験よ。人生で一番時間が遅く感じる羽目になった、あの実験よ」

「なるほど、千空はその頸骨を砕くように誘導し復活液を使って戻った。

奇しくも現実と同じような事が起きていたわけか」

 

はあ、と額を押さえながら溜め息をつく司。

その司の言葉に考え込む千空。

 

「その話今言ったのが初めてだよな、お前だけしか知らないはずだな?」

「うん、そうだよ。貴方が気になってるのは観測により修正力が発生するかどうかでしょう?

多分起こりえないと思うわ、だってここまで違ったら修正なんて不可能だもの」

「んなに違いがあんのか?」

「そうよ、その後司は復活液の作り方を手に入れたことで、自分の理想である原始狩猟社会を作り上げてたし、千空は大樹と杠を司帝国にスパイとして送り込んで一人で村に行く形になったりしてるしで、全く想像つかないレベルで変わっているもの。

ここからどう修正できるのか逆に知りたいぐらいよ」

「あの二人がスパイって……やれるのかい? 目立たないようにしてる姿を想像できないんだけど」

「怪しくたってどこに情報漏らす先があんだよ、そんときゃ司は千空は死んでるって認識だぜ」

「それにこの場合草の者に近いからね、時が来るまでは普通に過ごしてるだけでいいわけだし。

後役に立つような話って何かあるかなあ、危険な場所に関しての話ぐらいかな?」

 

正直さっさと次の話題になってほしい。

司が何かを考え込むそぶりを見せてるから、いつ気づくかヒヤヒヤものである。

 

「危険な場所?」

「うん、とは言ってもさっき言った硫酸湖以外には洞窟の中での天然の落とし穴の話だけだけど」

「あー、雲母か。スカルン鉱床でも探してたのか?」

 

パッと出てくる貴方が怖い。

もはや笑うしかないな。

 

「洞窟の中がヤベーってのは知ってるけど、天然の落とし穴?」

「雲母っつー種類の岩石があんだがこれが素手で剥がせるぐらい脆いんだよ、でそれが中で崩れて穴だらけになる事があんだ。うっかりその穴の上に乗っちまえば天然の落とし穴様の発動って寸法だ」

「ヤベーじゃねーか、どこにあんだよその場所」

 

クロムよ、目が全力で言ってるぞ。『その石欲しい』ってな!

 

「具体的な場所は不明よ、ただ結構遠い場所だったみたいだけど」

「分かったぜ! そんな危険な場所は見つけとかなきゃヤベーよな! このクロム様に任せとけ!」

 

いや、危ない場所には近づくなよ。

 

「洞窟内を探索すんなら光源が必要だろ、硫酸ゲットすりゃ電気が貯められる。つまり……」

「あの光った奴をいつでも使えるようになんのか!? ヤベーじゃねえか! ぜってー硫酸ゲットしようぜ!」

「ククッ、焦んなよまずは銀の槍とガスマスクからだ。急がば回れっつってな、しっかり準備した方が結果的に早え事が多いんだよ」

「なるほどな、んじゃあ早速材料を教えてくれよ千空!」

「物作りならワシの出番じゃな? どんな物ができるのかワクワクしてきちゃったぞい!」

 

あー、ダメだ、すっかりそっちに意識持ってかれちゃってる。

これはもう止められないな、まだ細かな所話してないんだけど。

 

「んじゃあ俺は竹や革を持ってくるぜ!」

「その間にワシらはふぃるたー用のガラス作りじゃな。そりゃ、行くぞいおんしら」

「わーってるっての、引っ張んなカセキ」

「え? なんで私まで?」

「おんしも色々知っとんじゃろ? 作りながら教えてくれい!」

 

力強く引っ張られて抵抗できない私。

でも、きっと引っ張られなきゃついていけなかったと思うからありがたいと思う。

そうやってワーワー騒ぎながらガスマスク作りに突入するのであった。

尚、WHYマンの事を言いそびれた事を思い出し、慌てて伝えたのは夜になってからである。

 

 

四人が出ていった後もふさぎ込んでいる司にゲンは軽いノリのまま話しかけた。

 

「それで、司ちゃんの気づいちゃった事って?」

「意地の悪い言い方をしないでくれ、ゲン。君だって分かっているんだろう? 桜子が何を言わずにいたかを」

「うんうん、なら俺の言いたいことも分かってるんじゃない?」

 

いつもの薄っぺらい笑顔で言ってくるゲンに少しイラッとする。

そして、そんな風に自分の感情が動く事に喜びを感じるのだ。

きっと、漫画の中の自分は完全に心を殺していたのだろう。

そうやって……

 

「人殺しをし続けていたのだろうな、そう思うとどうしてもね」

「クロムちゃんも言ったけど真面目だねえ、けど現実にやってない事で気に病むってどうなの?

桜子ちゃんもそうなるのが嫌だから話さなかったんじゃない? 彼女の気持ちも汲んで上げてさあ、忘れちゃいなよそんな事」

 

ゲンがもっともな事を言うが司の表情は晴れない。

 

「だが、俺は少なくとも一人はこの手にかけているんだ。

それなのに、そんな男が彼らの仲間ヅラで側に居ていいのかと思ってしまうんだ」

 

暗い顔でそんな事を言う司に悪魔が誘惑するようなかおで嘲笑いながら問いかけるゲン。

 

「んじゃ質問、君は千空ちゃん達を裏切るの?」

「!! それだけはない!! 決して彼の信頼を裏切らないと俺は誓ったんだ!!!」

 

そればかりは認められないと叫ぶ司。

 

「……っキーンときたあぁ、初めてなぐらいの叫びだねえ。それが答えでいいんじゃない?

絶対に裏切らないなら仲間でしょ、胸張っていいと思うけどね俺は」

 

思わず耳を押さえたゲンは先程とうって変わって優しげな笑みを浮かべてそう言った。

そう諭すゲンの表情は今まで見たことがないようなもので、司はつい毒気を抜かれたようになってしまった。

 

「ま、もうちょっと不真面目になってもいいと思うよ。

少なくとも現実にはやってない、自分がやったかもしれないことを気にしない程度にはね」

 

そう言いながらその場を去っていくゲン。

呆然とその後姿を見送る司に今度は羽京が声をかけた。

 

「ゲンらしいやり方だからわかりづらいかもだけど、君を元気づけてたんだよあれは。

君が千空達の仲間であるように僕らも君の仲間なんだからね、落ち込んでいる姿、しかもどうしようもないことで悩む姿は見てられないってことさ」

「羽京……、俺はこの時代に来て本当に仲間に恵まれたね。

うん、確かに現実にはやっていないし、やらないように悪い例を知ることまでできたんだ。

後はそれを生かしていくだけ、そういう事なんだろうね」

 

完全に吹っ切れたわけではないだろうが気にしすぎるべきことではない。

そう、自分の中で納得ができたのだろう、司の表情は格段に良くなっている。

 

「そうそう、その意気だよ。さて、僕やゲンがどういう風に描かれていたかを聞きそびれちゃったからね。

彼女の手が空くまで村人と交流を深めたいんだけど、司に紹介をお願いできるかい?」

「ああ、俺でよければ。うん、村の人と俺も多少は親しくなれたんだ。君を紹介するぐらいはわけないさ」

 

また囚われてしまう前にと村人への紹介をお願いする羽京。

司の方もその気遣いが分かるのもあり二つ返事で了承した。

そして、村を回る間に司が妙にいじられキャラになりつつあるのを目の当たりにするのだった。

 

「うん、司。やっぱり君はもうちょっと不真面目になった方が生きやすいと思うよ?」

「そう、だね。努力するよ」

 

違う、そうじゃない。

彼の生来の生真面目さはなかなか変わりそうにはなく、つまり彼の苦労はまだまだ続くのであった。

 

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