・どうやってそんなに集めたの?
「ねえクロム、こんな純度の高い金ってどうやって集めたの?」
クロムの倉庫の中で整理中ふと疑問に思って尋ねてみた。
「お? 気になる? 気になっちゃうか?」
ドヤ顔でクロムが自慢したげに反応する。
少しうざいがまあいいか、かなり気になるし。
今後の事に影響はなさそうだけど。
「その中にあるおっきい固まりは森の中で掘り出した奴だな。
森の方はあんま大きな木が多くないとこでよお、あ、これはなんか埋まってんなってピンと来たんだ。
で、掘ってみりゃ案の常硬い四角い大きな石が埋まっててな。そういう石にゃ必ずって言っていいほど真四角な穴が空いてんだよ。
そこから更に下を掘ったらその固まりが出てきたってわけだ!」
四角い大きな石で、四角い穴が空いてる……。
「どこぞの金持ちの別荘だったんだなそこは、金塊があったなら地下室だったんじゃねえか?」
「だああー、知ってんのかよ!」
ああ、なるほど。地下室で金庫に入ってたから劣化しづらく、埋まってて空気に触れないから風化もしなかったと。
多分隠し財産だったろうからはしごで降りてたか、かなり浅かったか……多分後者だろうなあ。
「平地の奴は、多分だがサーバーとかの基盤に使われてた奴じゃねえか? それっぽい形の奴が少しあったろ」
「あ、ほんとだおはじきに近い形の奴ある」
「ちきしょー! 千空をズデンとさせられると思ったのによお」
「十分すごいんだけど、少なくとも私はよくこれだけの量を集められたなって驚いてるわ。
漫画で使用した量考えれば確かにこれだけあるだろうけど……、直接見ると壮観ね」
私の賞賛にまんざらでもない顔のクロムをよそに考え込む千空。
「考えこんじゃってどうしたの? 何か思いついた?」
「桜子、白金の工業用途ってどんなのがあったか思い出せるか?」
「? ちょっと待って、今思い出すから……、排気ガス用の触媒、燃料電池、PCのHD……え、HD?」
「都市鉱山って奴だな、最悪白金はそこから拾い出せるかもだぜ」
「待って待って、白金を取り出す方法ってどうだったっけ?」
「塩酸で貴金属の溶解、その時に同時にオスミウムを四酸化オスミウムで回収。
メチルイソブチルケトンで金を抽出したら鉛をLIX84Aで抽出して最後にアミンで抽出って手順だな。
で、それぞれ濃度の違う塩酸で逆抽出すっから塩酸の濃度違いを複数用意する必要もあると。
……いざとなったらだなこりゃ、やるべきことが多すぎて直接硝酸作りやった方が早い可能性まであんぞ」
さーっぱりわからん! 千空ってば何を言い出してるのかしら!?
ええ、何のことか全くわかりません! 専門用語のオンパレードじゃわかるわけないでしょ!
クロムだって何が何だか分かんないって顔してるじゃない!
「今一つ分かんねえけど、なんかの液体に溶かして取り出し溶かして取り出しってことでいいのか?」
「へっ、やるじゃねえかクロム。細かい所はちげえが大体はそれであってるぜ」
「最初に溶解って言ったじゃねえか、それで溶かすんじゃねえかなって思ったんだ」
え? なんでクロムがあっさりと多少でも理解してるの?
「空いてる時間は千空から色々習ったりしてるからなあ、全部までは無理だけどちったあ分かってるつもりだぜ」
「いつの間に……? あ、料理教室やってたりした時か」
「そういうこった、俺はもう天才科学使いのクロム様だぜ!」
マジで天才だなこいつ。
「ホント、周りみんな超人か天才ばっかで凡人は辛いなあ」
ため息とともに愚痴をこぼす。
「なあ千空、アレギャグなのか?」
「残念な事にアレは本気だ、大樹や杠と同じでド天然なんだよコイツは」
「千空って天然な奴を集めるフェロモンでも出してんのか?」
「……いつか調べてみるのも悪くねえな」
なぜか千空が疲れた顔をしていた、そんな秋のある日の話である。
・調味料が足らないし、食材も色々不足です。
「砂糖が欲しい!」
開口一番何を言いだしているのかと思うかもだが、本当に調味料の種類が足らないのだ。
「甘酢あんかけの甘みに蜂蜜使ってみたけど、やっぱり何か違うの!」
私の記憶と違うだけと言われてしまえばそれまでなんだが違和感あって落ち着かないのだ。
「甜菜は北海道でサトウキビは沖縄でしょ? さすがに無理があると思うけど」
「うう、なさそうなものを探してくれとは言えない……」
「十分美味しいのだから気にする事はないと思うぞ?」
南さんに諭されコハクになだめられるる私。
でも、できれば欲しいのだ。
「小麦が見つかってるから本当ならお菓子作りに入れるんですよ! 砂糖がないとダメなんです!」
「それは重要な問題ね、総出で探してもらいましょう」
「なぜそこまでの情熱を見せるのか私には分からないんだが」
甘いものを食べる機会があまりないからかコハクの反応は今一つだ。
だが、こう言えば分かってくれるに違いない。
「アケビや柿、ブドウとか食べられないようなもの、って言えば分かってくれる?」
「なるほど? 要は好物を食べたいとかそういう事か?」
「ええい、伝わってないー!」
くそう、本格的に甘いものを食べた事がないからイマイチ理解できていないんだ。
「こういう時は探索のプロに頼るのが一番!」
そんなわけでクロムの所にまで来たのだ。
「柿ってこの形の奴か、食ったら口の中グワ〜ってなったから食えねえぞ。
アケビはなんか黒っぽいのが多くて虫みたいだったから食ってねえなあ」
ぱっと見確かにいも虫っぽいからしょうがないか。
柿も渋柿にかかった後じゃあ手出さないよね。
「じゃあブドウは?」
「大樹が全部摘んでったぞ」
「……後で種だけ回収して日当たりのいい辺りに撒いとかなきゃ。
それとも挿し木で栽培開始した方がいいかなあ?
アルコールはいくらあっても足らないだろうし、ブドウは種からだと実がなりにくいらしいし」
とと、思考がそれかけてる。
「アケビは食べて美味しく、種から油も取れて一石二鳥なの。アケビがよくなってる場所は分かる?」
「どっこらへんだったかな、ちょっと思い出すから待ってくれ」
クロムがアケビの場所を思い出すのを待つ間軽く雑談に興じる。
「砂糖が欲しいのは料理の範囲を広げるためだったのに、いつのまにか甘味を求める話になってるわね」
「だってサトウキビも甜菜も無理だったら砂糖は手に入らないし。
代わりに甘いものを求めても致し方ない事なんですよ」
「サトウキビとか甜菜ってなんだ?」
「ああ、この絵の右がサトウキビで左が甜菜だそうだ」
さっき描いて見せた絵を手に取って悩み出すクロム。
まあ、似たようなものなら見たことあるかもしれないが、さすがにどちらもないだろう。
「なあ、こっちの甜菜って根っこが途中太くて先っぽのほう細くなってる奴か?」
え、私確かワザワザ掘り出して見ないだろうと思って葉っぱだけしか描いてないはず。
「もしそうなら見た覚えあるぜ、確か小高い丘の上で見たはずだ」
「高い場所……あああ! 標高高ければ平均気温も低いからか!」
もしかすると甜菜が確保できて来年には砂糖が採れるかも!
「ふふふふふ、その場所にすぐ案内して、クロム!」
「なんだよその不気味な笑い声は、案内すんのは別にいいけどどんなテンションだよ」
「砂糖とやらの話からか? 相当上手いもののようで南も大分テンションが違うように見えるぞ」
「女には甘いものが必要なの。桜子はちょっと舞い上がりすぎだけど、その気持ちだけはわかるわ」
さあ、美味しい料理とお菓子のために甜菜確保に出発だ!
「ねえ、なんでその背負子を用意してるの?」
「桜子が行かねば探し物が本物かわからんだろう? だから一緒に行ってもらおうと思ってな」
「いやいや、私も歩いて行くから」
「崖登りすっからやめといた方がいいぞ、あの崖は桜子には無理だろ」
そう言ってクロムが鈍角を手で示す。
うん、背負子の角度だとただの崖だね、坂じゃないね。
行き帰りの双方に置いて私は終始コハクの背中にいた事をここに記す。
……絶対に車やバイクを作ってもらおうと決意する私であった。
・硫酸取り行くのは誰?
「とりあえず4人分あっから汲む奴と命綱持ってる奴で2:2に分かれんぞ」
そう千空が言い出した時点で素早く次の発言者になる、まず流れを持っていくのだ。
「引っ張る人はパワーだけじゃなく注意力や反射速度が必要だね。
汲む人はその点考慮して軽い人がいいのかな、力は要らないだろうけどバランスとるの上手い人のがいいね」
こう言えば当然みんなが思い浮かべるのは一人だ。
「なら一人はほむらに決まってるね、もう一人はどうすんだい?」
「ついでに欲しい素材があんだよ、だから」
「詳しく描いてほむらさんに渡しとくね、もう一人はやっぱりコハクじゃない?」
「おい、桜子」
自分が行くと言う前に理由を潰された事に千空が睨んでくるが今の私は動じない。
なぜなら、
「体重的な意味だとさすがに千空ちゃんのが上でしょ、欲しい素材についても桜子ちゃんの説明書でほむらちゃんなら理解してくれるだろうし。それとも他に千空ちゃんが行かなきゃいけない合理的な理由ある? あるんだったら教えてくれないかなあ?」
今回はゲンを味方に引き込んでいるからだ!
それだけじゃないぞ!
「千空、命の危険がある場所に誰かを送り出して、自分だけ安全な場所にいるのは抵抗があるのは分かる。
だが、常々お前が言う通りに今回も合理的に考えてくれ。本当に千空自身が行くのが一番合理的か?」
「ちっ、ああその通りここまで行かなくていい理由出されたら頷かざるをえねえよ」
大樹もこちら側なのだ!
さすがの千空もこの布陣には抵抗できないようである、今回は完全勝利!
「しかし、私やほむらならば毒ガスとやらに触れぬようにサッと汲んでこれるのではないか?」
「煙が向かってくるのを想像したんだろうがよ、むしろ器の中に水がたまってる状態だぞ。その中に手突っ込んで濡れずに済むのかって話だ」
「少量なら臭いだけですむけど、多量だと鼻がやられて気づく前に死んじゃうんだよね」
「たまってるとこを一気に吸ったらそれだけで一発即死だかんな、行くときゃ絶対槍先を前にして切っ先から目離すんじゃねえぞ」
「……器、…少量なら大丈夫……」
ん? クロムが考こんでる、何か思いついたのかな?
「なあ、風で散らしたりそもそもたまらない形に変えちゃダメなのか?」
……その発想はなかった、でも無茶だろう。
「吹き散らすってどうやってよ? 大きな板でも使うの?」
「ふっふっふ、そこはこのクロム様の発明が火をふくぜ」
ごそごそと何やら取り出してくるクロム。
これって……、
「どうだ! ぐるぐる回すだけで風がヤベーぐらいに吹きつける、名付けて千風機だぜ!」
「扇風機だな、よく思いついたもんだ」
「もうあったのかよチキショー!」
「むしろよく思いつけたって感じなんだけど」
まだギアも見てないはずなのに。
「発電機を見て思いついたんだよ、これに板くっつけりゃ風がヤベーぐらい出るんじゃねえかって」
うーむ、この発想の天才。
人類が何年かけてそれらを発明してきたと思っているのか。
千空もそれを見て行けると思ったらしくニヤリと笑いながら自分が行くと言い出す。
「大型化すりゃあいけるか……? 地形を確認しなきゃだな、よし! 汲む役は俺が行くぞ、そうすりゃ労力の無駄をなくせる」
「吹き散らしてから作業するつもりなんだろうけどダメよ。千空は中心人物なんだから、大人しく後ろで指示出ししてなさい」
当然私は止めに入る。
そうするとどうなるか? 論争の開始である。
「地形を覚えてどこ崩しゃあいいか誰が見んだよ、現地で見なきゃさすがにわかんねえぞ」
「私が行って描いてくればいいでしょ、採る素材も言ってくれれば大体わかるし」
「汲む役をオメーに任せる馬鹿がどこにいんだよ、いいから俺に行かせろってんだ」
「科学知識が吹き飛ぶ危険を犯せる訳ないでしょ、体重だと私が一番軽いからトントンよ」
「オメーがいりゃある程度はどうにかなんだろ? オストワルト法は教えとくからそれで納得しろ」
「それだって労力の無駄じゃない、それに汲む役の人を兼任しなければいいだけでしょ、コハクとほむらさんにやってもらって私は覚えておけばいいだけよ」
「だから、直接確認しねえと分からねえ部分もあんだよ。内部構造とか打診でチェックしてえし、どこが崩しやすいかも分かりゃやりやすいしな」
「掘ってからで十分でしょ! パワーチームの面々を見なさい! 自分の足元が空いたぐらいじゃどうともならないメンバーばっかりじゃない」
「わざわざ危険を犯させんのか? チェックできんならした方がいいに決まってんだろ!」
「そのチェックをするのにそれ以上の危険を犯しちゃ本末転倒だって言ってるの!」
いつまでも続きそうな論争にとうとう氷月が痺れを切らした。
「埒が明きそうにないですね、メンバーは私、ほむら君、コハク君、それとマグマ君で行きましょう。
地形のチェックはある程度私とほむら君が別々の方向から記載、それをもってどこを崩すか決めるという事で」
「俺でなくマグマを連れていく理由は?」
「司君、自分が千空君と並んで中心人物である自覚を持ちなさい。千空君が行けないのに君が許されるはずがないでしょう。そこの二人も行かせませんので不毛な言い争いを終えるように」
「「なんで俺(私)まで!」」
「黙らっしゃい、代えの利かない特殊技能持ちを失う危険性を理解できないとは言わせませんよ。
感傷だけで命を懸けられてはたまったものじゃありません、いいから双方ひっこんでなさい」
むうう、氷月の容赦ない物言いにおもわず黙ってしまう私と千空。
ゲンも大樹も助け舟出してくれないの、と期待を込めて視線を向けるが首を振られてしまう。
「俺が味方するって言ったのは千空ちゃんを行かせない事だけだよ。
君が行く手助けをするとは言った覚えがないねえ」
「桜子では汲む役は無理だろうし、千空が行かないのならば何もいう気はない。
もちろん他の人が死んでいいわけではないが、誰かが採りに行かねばならないからな」
うう、しょうがない。大人しく自分のすべき事だけをしよう。
「欲しい素材って湯の花でイイのよね、ここに描いといたけど」
「おう、これで合ってる。んじゃオメーら硫酸湖に落ちんじゃねえぞ」
結局私の千空を行かせないという目的は達成できたのだが勝った気がまるでしない。
千空は、と見ればおんなじような顔である。
なら今回も引き分けかな? なんて下らない事を考えつつ出発して行く四人を見送るのだった。
クロムピックアップ回といっておきながら実は作者が原作で疑問に思った事をこう解決したんじゃないかという想像を詰め込んだ回、砂糖は違うけど。