イシからの始まり   作:delin

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星空の下で

頭脳労働チーム集合という事で集まったのは千空、私、ゲン、司、羽京さんにクロムの6人だ。

氷月はどうしたのかというと、

 

「『一振りの槍でしかない者が多くを知らない方がいいでしょう』だ、そうよ」

「メンドくせえなあ、ったく。司、オメーがアイツに必要だと思った情報は後で話しといてくれ」

「わかった、だが、彼を責めないでくれるかい、千空。氷月は裏切った事がある自分が、集団の中心に近づくのはよくないと思っているだけなんだ」

「わーってるよそんなもん。だからこそメンドくせえんじゃねえか。ったく、誰も気にしやしねえっての」

 

そもそもそんなもん気にしてる場合じゃねえよ、などど愚痴りながら集まったメンバーを見渡す。

 

「んじゃあ聞いてくれ。人類最後の6人になっちまった、人類最新の宇宙飛行士達が残したありがたい情報だ、しっかり頭の中に刻んでくれ」

 

全員を見回し頷くのを見た後千空は話し始めた。

 

「まず石化現象の発生地点は南米の北部地方だ、そして宇宙飛行士達の着陸及び着水地点は本州の南辺りになる。

桜子、漫画で詳細な発生地点と宇宙飛行士達のいた場所の説明はあったか」

「うん、後者は地図にも載らないような小さな島だったから分かんないけど、前者は絵で描いてあったよ。それによるとブラジ……」

 

あれ? ブラジルじゃないぞ、絵で見るとブラジルより北に中心があるっぽいぞ。

これは、

 

「コロンビアかベネズエラかブラジルかな?そのあたりだと思うよ、うん」

「一瞬詰まった理由も言えや、な!?」

「違うの! 隠し事しようとしたんじゃなくて、勘違いしてた事に気づいたの!」

 

絵で見ればブラジルからは少し北の方だ、ってすぐにわかるのに何でブラジルだと思ってたんだろ?

……あ、前世が『南米って言えばブラジルだな』って思ってたからだ。

うわっちゃー、その辺何も疑問に思ってなかった。

 

「前世が南米=ブラジルだったからそのままだったみたい、千空が話聞いた後に話す事にしといて大正解だったね」

「なるほど、桜子の記憶なら間違いはないが、前世は桜子じゃないという事だね。

前世知識を利用する場合は気をつける必要があるね、これは」

「元々別世界線だから確認を怠るつもりはなかったがな、よりいっそう気をつけましょうでいいだろこの件は」

 

その千空の言葉がスイッチだったのか、次の話題にみんなで移り出す。

 

「しかし、南米か。あれだけ大規模な事が起きるものだから、大国のどこかだと思ってたんだけど……」

「どっちにしても船がいるねえ、それも太平洋横断可能な大きい奴が。……船大工できるっけ? カセキちゃんは」

「村の船は大体カセキの爺さんが作ってるぜ。あれよか大きい奴も作れるたあ思うけど、どんぐらいのが必要なんだ?」

「約一万キロを無理なく行けるぐらいの性能の船……かな」

「よく分かんねーけど、ヤベー距離だよな、それ」

「こっからあっちの拠点までのほんの百二十五倍ぐらい、大樹なら一月ぶっ通しでつくぐらいだ、大したことないと思えんだろ?」

「バカヤロウ! 体力魔人の大樹でもまる一月ぶっ通しじゃねえと無理ってことじゃねえか! ヤベーってレベルじゃねえぞ!!」

 

ちなみに全く止まらない計算で一月なので、多分四倍から六倍は余裕でかかると思う。

 

「作る船にしても材質はどうするんだい? 木材だけでは耐久性が厳しいと思うんだが」

「まあなあ、ちょうどいい大木とか見つかると思えねえしなあ。鉄で作ろうにもそんな量は見つかってねえし……、おい、桜子」

「地中レーダーで見つけてたよ、鉱山を」

「鉄量が全く足りてねえから喉から手が出るほどに欲しいなそいつは。必要なのは閃亜鉛鉱だな、他に必須なもんは?」

「真空管の回路にタングステンが、そうじゃないと焼き切れちゃってた」

「灰重石も必要っと、クロム! スカルン鉱床がありそうな洞窟は見つかったか?」

「妙に重い石が近くに転がってて、出てきてる小川が温めな洞窟だろ?

まだ見つけられてねえけど、大体の場所は探したからあるとしたらあそこら辺だろって見当ついてるぜ」

「おし、見つかり次第取りに行くぞ。ついでに銅とかも見つけたら場所を大樹辺りに教えておいてくれ」

「あー、千空ちゃんもついていく感じ?」

「俺じゃねえとブツが分かんねえだろ。桜子やクロムならワンチャン行けるかもだが、クロムは連れてくの確定で俺ともやしの二択じゃ俺だろ」

「じゃあ、見つかっても年明けまでは待ってくれない? 元日の挨拶を千空ちゃんにやってもらうつもりだから」

「ああ? って、そりゃそうか、復活者の代表は俺だもんな。司にやらせたらそのまま司が代表って認識されちまうから……だな?」

「そゆこと、千空ちゃんは気にしないだろうけど司ちゃんは納得しないだろうし、氷月ちゃんもいい顔しないでしょ? ゴーザンちゃん達にもリーダーが誰か認識間違えないでほしいしね」

「挨拶の後すぐに出発すんのは構わねえんだな? じゃあ、クロムは年明けまで……後15日ぐらいまでに見つけられるように頑張ってくれ」

「8日後には電球使うからそれまでに一旦戻ってきてね」

「おうよ、しっかり見つけてくっから任せとけ!」

 

クロムの返事で大体話すべきことが終わったのだろう、千空がもう一度皆を見回す。

 

「おし、今日はもう遅いからな、これで終わっとくぞ。お疲れさんだ、明日からもよろしく頼むぜ」

 

そう声をかけて解散を促すとそれぞれの寝床に引き上げ始める面々。

その中私はみんなが立ち去るのをゆっくり待っていた。

無論、百夜さんの話をするためだ。

 

「んじゃ、行くか」

 

千空がそう言って外へと出ていく。ああ、外で星を見ながら聞くつもりなんだな。

薪とか火種とかチラッと見てたし、広場の真ん中あたりがちょうどよさそうだ。

千空が薪を持ったから私は火種っと。

 

「寒さにも大分強くなったよね、私も千空も」

「ゆっくりと寒くなってったからな、あの雑頭じゃ気づかねえぐらいによ」

「そうだねえ、この間なんて川で水浴びしようとして慌てて杠に引き留められてたよ」

「今の時期は井戸でやってるのに、それに気づかねえってどうなんだよ」

「先客がいたからじゃない? 村の人たちも大樹だったら止めないだろうし」

「あー、ホントいいから早くくっつけって思うわ」

「大樹らしいでしょ、周りからそういうお節介しなきゃ無理じゃない?」

「任せた」

「任されましょう」

 

千空とだと会話があっという間にながれるなあ。

他の人だとちょいちょい説明が必要だったりするからとても楽なんだよね。

やっぱり、千空は頭の回転が一段上だよね。

のちにこのような状態を他人から指摘された時、大変動揺する羽目になるのだが……、この時の私はそんなことは露知らずにすごしていたのだった。

 

 

「それにしてもみんな当たり前みたいに攻め込む気だね」

「一回起こったことだ、もう一回あるかもって思うのは自然だろうよ。

もう一度あったら人類は完全に絶滅だ、それだけは防がなきゃならねえ」

「人類に所属する以上は当然ってことかな? ま、一人だけじゃ生きていけないしね」

「宇宙いってそこで一人で生きてられんなら気にしなそうだなオメーは」

「昔ならね、今はもう無理だよ」

 

先程の情報共有時の皆の意識について軽く話しながら焚火を起こし座る場所を整える。

焚火を挟むようにして座る形は初めての時とおんなじだ。

思えばまだ半年程度しか経っていないのに随分と変わったものである。

復活直前の私に言っても全く信じないだろうなと思える。

 

「何をにやついてんだよ、百夜がどういう風に描かれていたかとっとと話せや」

「はーい、ISSに着いてからでいい?」

「ああ、それでいい。つってもそれ以前の描写なんぞ出てねえだろ?」

「うーん、千空の子供時代とかならいくつかあったかな。

科学実験用の器具をそろえるエピソードとか、宇宙飛行士試験の辺りのエピソードとか。

百夜さん着衣水泳が駄目で一回試験落ちちゃってるんでしょ? それを千空に話したとことか」

「ああ、電極スパルタスーツ作った時か……、懐かしいな、ありゃ結局役に立ちゃしなかったな。

ガキの頃の作品だ、失敗作作っても仕方ねえ。いい経験はさせてもらったけどよ」

 

自嘲気味に笑うけど、懐かしくていい思い出だと表情が語ってる。

ああ、そうだ、

 

「百夜さんが面接試験の時、どんなことを話したかは聞いてる?」

「いや、受かったとしか聞いてねえよ。なんだ、百夜の奴変な事でもしゃべりやがったか?」

 

この辺りのエピソードには百夜さんがどれだけ千空を誇りに思い、愛情を持っていたかわかるから私も大好きになった話だ。

 

「書かれてた事、そのままで話すね。

『千空が俺のために! あんな物まで作ってくれたんだ、そんなもん死んでも泳ぎ切るしかねー。

結果、現に私は今着衣水泳をクリアしてこうして面接までたどり着いている。

私は宇宙飛行士として必ず宇宙へ行く! そして科学の力になる! 今私が千空に返せることはそれだけです……!!』

……以上だよ」

 

ああ、空を見上げちゃった。

焚火の火で千空の顔が赤いのが火のせいかそれとも他の原因かは分かんないや。

 

「次、ISSに着いてからの話は?」

「うん、打ち上げ前からかな? 歌姫のリリアンさんと仲良くなってたみたいなんだよね。

ISSに着いた時、リリアンさんが典型的な傲慢芸能人みたいな態度で入ってくるってネタやってたんだけどね、コテコテ過ぎて百夜さん我慢できずに噴き出しちゃってた」

「百夜だったらそりゃ噴くな、百夜は笑いのツボかなり浅かったからな。

漫才とかTVでやってる時間だとすっげーうるさかったの覚えてるわ」

「そうなんだ、そういえば百物語にもお笑いの話入ってるみたいだよ、百夜さんが考えたネタがいっぱいのお話が」

「夏に聞くにゃちょうどよさそうだな、体感温度がいい感じに下がってよ」

「百物語全部聞こうと思うと長すぎるからね、そこだけ後回しにしてればちょうどそのころになるかも。

で、百夜さんが噴き出したちゃったからリリアンさんもネタ晴らしして普段通りの丁寧な態度に改めたの。

それで緊張ほぐれた雰囲気になって、その後からかい交じりに百夜さんリリアンさんの歌を流してやろうぜっていったりしてたよ。

ほんとに流してたのかは分かんないけど、それのおかげかな? ISSに乗ってた宇宙飛行士の皆って仲のいい感じだったよ」

「悪ノリ大好きだったからな百夜の奴、そういうの大好物だろ」

「後は味噌汁を浮かばせて遊んでたり、栄養ゼリーだけでいいっていうシャミールさんにラーメン食べさせてたりとかしてた」

「おい、味噌汁を浮かばせてた時妙なセリフつけてたんじゃねえだろうな?」

「そうだけど、家でもやってたの?」

「何回か口に入れる寸前で寸劇やられたわ、無視して食ったが、鬱陶しいと思ったのはよく覚えてる」

 

親の悪ふざけする姿って子供には結構ダメージ来るのかな?

上向いてたのが額を押さえて下向いちゃった。

仕方ない、かっこいい場面を語ろうじゃないか。

 

「すぐに降りることを決めたのも石化現象の発生地点を割り出したのも百夜さんだよ、きっとみんなの精神的支柱でもあったんだと思う」

「ほーん、発生地点に関しちゃ意外だな。てっきり他の誰かが割り出したんだと思ってたぜ」

 

他の事には言及しないってことは、そうできるって信じてたってことでいいんだろうな。

わざわざ指摘したりしないけど強く信じてるんだ、百夜さんの、お父さんのことを。

ちょっとうらやましいかな、そういうのって。

 

「後は百物語のメッセージにあったことぐらいかな? それと宝箱の件ともう一つぐらい」

「宝箱はソユーズの事でそのもう一つってのは?」

「んー、もうちょっと話すのは後にしたいな。具体的には御前試合の後ぐらいで」

「それで危険な事やらかすんじゃねえだろうな?」

「ないよ、疑うなら後でゲンに聞いてもらって判断してもらってもいいし」

「俺に聞かせたくないってことでいいんだな? そいつは百夜の残したもん関連のエピソードだろ、がめるとかはねえと信じてやるからいつか必ず聞かせろ、いいな?」

「もちろん、その時が来たら絶対に話すから!」

「楽しみにしとくぜ、んじゃあもう寝るとすっか。明日以降も忙しい日が続くだろうからな」

 

そう言って立ち上がり焚火を消す用の水をとる千空。

あ、そういえば、

 

「リリアンさんの結婚相手とかメッセージに残ってた?」

「あ? 残ってねえが、それがどうしたってんだ?」

「多分百夜さんなんだよね、だからコハクとかは百夜さんとリリアンさんの子孫なの。

ニッキーさんに教えても大丈夫かな、千空はどう思う?」

「いきなり爆弾ぶっこんでくるオメーの言動はどうかと思うわ」

 

水下ろして頭抱えちゃった。

 

「その、なんかごめん」

「色々吹っ飛んだが……しんみりした気分を続けんのなんざ俺のキャラじゃねえから構わねえよ」

 

最後だけなんか締まらない結果になってしまった。

気まずくなって夜空を見上げる、一瞬だけ光る星が見えた。

 

「一瞬だけ光るってことは流れ星だよね?」

「星だったら瞬くだけで消えねえから、一瞬しか見えなかったのならそうだろうな」

「お願い言えばよかったな、文明再建できますようにって」

「自力で叶えることなんだからいいだろ、別に」

「そうだね、明日からもよろしくね。私の最初の友達」

「はっ、……ああ、よろしくだ。元ボッチのもやし女」

 

願うこともできなかった私の願いが叶ってるんだから千空の目標も絶対やり遂げられる。

だって千空はこんなにもたくさんの物を受け取れたんだから。

その一助になりたい、なってみせる。そう決めた、冬の日。

忘れることのない、私が記憶を持っていてよかったと心から思えた日。

満天の星空はきっと私たちを祝福してくれている、そう思えるほどきれいな空だった。

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