完結までエタらないように頑張りますのでこれからもよろしくお付き合いお願いします。
桜子と別れた龍水が向かったのは千空のいるラボ。
ラボといっても旧世界で想像される物とは違い、ほぼただの小屋であるが。
そこで龍水が見たものは大量に設計図を書いてゆく千空とそれを見て大興奮するカセキであった。
「どういう状況だこれは?」
「うん? 確か……龍水、じゃったっけ? どうしたのこんな所に? ワシらに何か用事?」
「いや、六分儀を作って貰おうと思って、な」
実際には千空の動向を見て、期待できるかどうかの予想材料とするつもりであったが……。
値踏みしにきたと言われて気にしない人間は少数派だ、正直に言うのは避け、表向きの理由を話す事にした。
「六分儀? ああ、桜子から座標情報買ったのか。俺の手作りの奴があるが……海でも使うからどうせなら精度のいいモンが欲しいな。すぐに探しに出ねえなら一日ありゃそこそこぐらいのモンはできると思うぜ、どうだ?」
「ふうむ、先にその手作りの物を見せてもらえるか? 使い物になるならばそれを使えばいい話だしな」
龍水がそう答えると若干残念そうな顔で腰の袋から六分儀を放る千空。
受け取って早速物をチェックし始める龍水。
「フゥン、まあ確かに本格的に航海するには不安な代物だな。大雑把に自分の位置を知ることぐらいは出来ようが……特定の座標に行きたいとなると、な」
「お! なら新しい六分儀作るか? さっきも言った通り明日ぐらいにゃ渡せるぜ」
「現金な事だな、売りつけられるのがそんなに嬉しいか?」
龍水の言葉に怪訝な顔をする千空だったが、少し考えて思い出したような声を上げた。
「ああ、そういや石油買わなきゃダメだったな。作るの楽しすぎて忘れてたわ」
「重要な事じゃないの、それ? 桜子ちゃんとかゲン辺りすっごく必死になって考えてなかった?」
「あの二人がいんなら大丈夫だろ、今必要なもんあったら言ってくるだろうしな。そもそも物作りに集中してろっつったのはあいつらだし、こうしてる事に問題なんぞねえさ」
「その態度は横着からか? それとも信頼からか?」
「はっ、口先で信頼っつうだけで信じる奴はいねえだろ。それを知りたきゃしっかり見極めてきな、元々それが目的だったんだろ?」
態度に出したつもりはないし、当然口にもしていない本当の目的を言い当てられる。
常人であったら気後れぐらいするのだろうが、生憎そんな可愛げのある男ではなかった。
むしろこれは期待できそうだと笑みを深める。
「ではお言葉に甘えて見極めさせてもらおうか、俺の期待を裏切ってくれるなよ?」
「安心しろよ、既にこのストーンワールドで生まれた連中に、一生かかっても見られなかったモン嫌って言うほど見せるって約束してんだ。テメエの期待以上のモンも一緒に見せてやるよ」
そう言って笑顔で握手を交わす二人。
尚、側から見ていたカセキによると二頭の肉食獣が牽制しあっているようにしか見えなかったとの事。
だが、数時間後には意気投合する二人を見て、これは大丈夫、親友同士になれそうだとも言ったと言う。
さて、今さらではあるがこの日の各人の行動予定を説明しよう。
まず桜子は戸籍等の作成、千空らは必要な道具の制作、自由行動なのが龍水とゲン、杠チームは服用の布作成及び原材料集め、ニッキーは村の子供達に歌のレッスンを施し、フランソワは希望者への料理教室、そして戦闘メンバーと手隙の村人、杠チーム以外の復活者達は広場に集まっていた。
そして色々と動き回っていたゲンが広場へと来たのはちょうど大きな歓声が上がった所であった。
広場は復活者達の住宅地のすぐ近くにあり、先日千空が演説した場所でもある。
今日は復活者達と村人達の親睦を深める目的で色々やろうと言う話であったが……、
「これどうしたの羽京ちゃん? なんかゴイスーな盛り上がりだけど」
「ああ、ゲン。もう少し早く来てればいい場面が見れたのに惜しかったね」
「まあこの大歓声を聞けばそうだろうと思うけど、何があったのか教えてもらっていい?」
教えてとは言ったがゲンにはなんとなく予想ができていた。
なぜなら視線の先、広場に集まった皆の円陣の真ん中ではやられたという表情の司と、勝ち誇るコハクの姿があったからだ。
「まあ、君の想像通りだよ。コハクが司に一撃を入れて、時間切れまで逃げ切った所さ」
「なるほどねえ、司ちゃんが判定負けとはいえ負けた所なんて聞いたことないもんねえ」
そりゃ盛り上がるか、と納得するゲン。
だが、今度は別の不安が出てくる。
「ポット出にしか見えないコハクちゃんに負けちゃったりして大丈夫? 司ちゃんのカリスマ傷ついたりしない?」
「それは大丈夫だと思うよ? だってコハクちゃんが20人目の挑戦者だったからね」
「さらに言うならその試合内容もけちの付け所のない圧勝ばかり、あれを見て侮る者は相当の大物か愚物だろうな」
羽京と二人で話しているところに口をはさんできたのはガッチリとした体格の男。
この人は確か……
「えーっと、海上自衛隊の後藤さん、だっけ?」
「そうそう、寮で一緒に暮らしてた僕の先輩さ。ちなみにお祖父さんが陸将だったらしいよ、後藤さん自身もこの若さで三等海佐だしエリートの一族だね」
そう紹介されるとゲンに無言で敬礼をした後、羽京に向き直る後藤。
「羽京、それらはもはや関係ない。俺たちが仕えていた、守るべき国はもうないのだ。そこでの階級など無意味でしかない」
その物言いに苦笑するしかない二人。
目線のみで『かなりお堅い人?』とゲンが問えばそっと頷いて肯定する羽京。
「でも珍しいですね、先輩が紹介の前に話に入ってくるって。やっぱり試合の興奮冷めやらずに、ってところですか?」
ゆっくりと頷いて肯定する後藤にゲンが続けて質問する。
「圧勝ばかりだって言ってたけど、そっちの試合内容はどうだったの?」
やはりこれにも頷くだけで答える後藤に羽京が少し慌てて否定を入れる。
「あの内容で圧勝って言われたら司が困りますよ、秒殺されなかったの復活者側だと先輩だけなんですから」
「……だが、手も足も出なかった事は事実だ」
秒殺って、と半ば呆れながらもさらに詳しく聞いていく。
「他の人の試合内容はどうだったのよ? かなり凄かったみたいだけど……」
「凄まじかったよ、ほぼ一撃で仕留めてたしね。二撃以上かけたのって、先輩以外だと金狼とコハクちゃんだけじゃなかったっけ」
「それはまた……、挑んだ方が弱かった訳でもないんでしょ?」
「もちろんだ、以前であったら彼相手でもこのルールで判定勝ちをもぎ取れる可能性のある者達ばかりであった。だが、彼はどうやら一皮剥けたようでな、皆あっさりと負けてしまった」
司ちゃん強くなったんだねえ、などと呑気に言って見せるゲン。
視線の先では何やら司がコハクに言われたのか困った顔で両手をあげて降参の意を示している姿が見える。
ただでさえ強かった司がさらに強くなった上に親しみやすさも手に入れて最強に見えるといった所だろうか。
尚、ここまでの会話を周りに聞かせるためのものであったのだと羽京が気づいたのは、マグマや金狼に頭を下げて挨拶する復活者組を多数見た時であった。
「司ちゃんのカリスマに傷がつくと本気で困るからねえ、ま、マグマちゃん達が強さを示してくれたから必要なかったわけだけど」
その件を後日訊ねた時に飄々とそう答えるゲンの姿を見て、彼が敵に回ることがなくて本当に良かったと羽京は心から思ったという。
なぜ司が降参の意を示していたか? それを説明するには少々時間を遡る必要がある。
試合の直後、司の方はコハクとの試合結果に少々怫然としていた。
なぜなら視界の片隅にはニヤニヤ顔のマグマ、そして正面には全開の笑顔のコハクがいるからだ。
いや、彼女の笑っている顔は嫌いではない。ないが、少し勝ち誇りすぎではないだろうか?
「よし、今日の試合は私の勝ちだな司!」
「そうだね、約三分の試合だけど君の方が多く有効打を当てる事ができていたよ、うん」
あの一瞬で進路を変える技があそこまで厄介だったとは思わなかった。
おかげで最初の一回では避けきれず腕に一撃をもらってしまい、その後も捉えきれずにいる内に砂時計の砂が落ちきってしまったのだった。
「素晴らしい技を身につけたねコハク、悔しいけど今日の試合は俺の完敗だよ」
「ふふん! そうだろう、そうだろう! 今日勝ったのは私だぞ!」
勝った勝ったとはしゃぐコハクに再び怫然となる司。
「負け惜しみにしかならないのを承知の上で言わせてもらうけどね、もう三分あれば捉える自信あったよ」
だからそこまで勝ち誇るのはどうなんだい? そういうとコハクはキョトンとした顔をした後慌てて詰め寄って来た。
「待て待て待て! まさか試合前の約束をなかった事にするつもりではないだろうな! 流石に認められんぞそれは!」
「約束?」
今度は司がキョトンとする番であった、そしてその反応にコハクは激しく怒り始めた。
「言ったではないか、もしも自分に勝てればなんでも言う事を聞くと」
「いやいや、なんでもとは言ってないよ。多少以上の事は聞くと言ったが、できない事もあるのだし」
「つまり、多少程度なら良いのだな?」
ニヤリと笑うコハクに試合前の迂闊な発言を後悔する。
皆が挑みやすいように分かりやすく目の間にニンジンをぶら下げただけのつもりだったのだが……。
まさかコハクやマグマ、金狼までがやる気満々に自分にかかってくるとは思ってもみなかった。
コハクや金狼に関してはマグマが勝っていたから自分としても負けられないので挑みかかられるのはいい。
村最強という事で挑戦を受ける側だったマグマがこっちに来ようとしているのはいかがなものか……。
いや、今はそれはいいのだ、マグマよりコハクの無茶ぶりに対処しなければ。
「本当に多少程度で頼むよ、さっきも言ったが出来ない事は出来ないんだから」
「大丈夫だ、難しい事を要求するわけではない。何せ、君の判断一つで決められる程度の事だからな」
片目をつむって指を振りながら上機嫌でそうコハクは司の懸念に答える。
まさか、保留にしているどちらを選ぶかの話か?
自分の優柔不断が原因ではあるが、もしそうなら頭を下げてでも別の願いに変えてもらわなければならないだろう。
いよいよコハクが要求を口にする、知らず知らずのうちに緊張しゴクリと唾をのむ。
「明日あたりから、君は何人かを連れて探しに行くのだろう? 誰よりも大事と言った君の妹を。私もそのメンバーに加えて欲しい、それが私の願いだ」
一瞬呆けてしまう、彼女が来てくれれば心強い、素直にそう思うが……彼女が必須な事ではなかったから別の作業に回る予定であったはず。
「私がやる予定の事ならば気にする必要はないぞ、代わりにやってくれる人は見つけてあるからな」
コハクがいう代わりの人に心当たりが浮かぶ、まさかグルかと思いそちらに目を向ける。
審判をしていた氷月はそっぽを向き、マグマは笑みを深め、金狼は珍しくしてやったりな顔をしていた。
「根回しなんていつ覚えたんだい、確かこの後はマグマも挑んでくるし……最後はどうせ氷月が挑んでくる予定だろう?」
「ふふん、私だって色々学んでいるという事だ。で、私の願いはかなえてくれるのか?」
「未来を起こすのはこちらに戻ってからの予定だよ、顔を見たいのならそれを待ってもいいんじゃないかい?」
「それは違うぞ司。私は君の妹に会いたいと言っているのではない、君を妹に会わせたいといっているのだ」
黙って両手を上げ降参の意を示す、どうにも今回は勝てない流れらしい。
だが、悪い気分ではない。
コハクのはじけるような笑顔を見ながらそう思う司であった。
一周年記念&エイプリルフールってことでif書こうと途中まで書いてたけどお仕事疲れで間に合わず。
もし書き上げられたらこっそりどっかに置いときます。