誤字って何度チェックしても残っていやがりますね(泣
サブタイ麻の中のよもぎにしようかと思ったけど、
絶対こっちの方がわかりやすいのでこちらに
ちなみにサブタイに続きを入れるとしたら
”だが、学んだことに貴賤はない”
三人は拠点に戻るため森の中を歩いていたが、
その雰囲気はとても暗いものだった。
いや、訂正しよう。
三人の間の雰囲気でなく約一名、桜子の発する雰囲気が最悪なのだ。
例えるなら処刑場に連れていかれる囚人、火葬場に向かう遺族のようであった。
「千空、もう少し彼女どうにかできないかい?」
重苦しさに耐えかねて司が千空に尋ねる。
誤解なきように言っておくと、これは司の精神が弱いせいではない。
桜子の視線は少し前を歩く司に対しずっと注がれているのだ。
その目はまるで親を殺した犯人、ただし過失が一切ないため責めるに責められない。
そんな相手に対する『どうして』という問いかけの目なのだ。
まだ『この殺人者』と罵られた方がましだろう。
怒りや敵意なら撥ね退ければいい、司も元となる感情こそ違えどその類は多く受けてきた。
だが、悲しみからの何故という視線など初めての経験なのだ。
「今俺が何か言っても火が付くだけだぞ?悪いがそっちでどうにかしてくれ」
千空の返事は素っ気ない、いや彼自身も困ってはいるのだが。
足音を表すならまず間違いなくトボトボと表現される様子の桜子の歩みは遅い。
このままでは比喩抜きで日が暮れる。
そうなれば実験は明日に持ち越しになりかねず、最悪桜子の癇癪もう一度である。
司もそれが分かっているから千空に期待したのだが……
「泣きそうなガキンチョを慰めんのなんざやったこともねえし、やれる気もしねえよ」
げんなりとした表情で拒否されてしまった。
千空は子供の頃から周りとは違っていた。
養父である百夜からすら内心ガキの貫禄じゃねーなと思われるほどである。
当然のことながら周りからは浮く。
桜子との違いは大樹の存在であろう。
大樹がいたから子供たちの輪の中からはじかれずに済んだのだ。
つまり子供相手の経験…年下との経験は皆無に近い。
そのあたりの経験に関してはむしろ妹がいた司の方があるほどである。
「ならせめて彼女が乗ってくるような話題を教えてくれ、俺にだってそんな経験ろくにないんだ」
「今のアイツが乗りそうな話題なんぞ知るか!
普段だったら歴史関連が多いって覚えてるがよ…」
ちなみにここまで彼ら二人小声で話しているが、桜子に全て丸聞こえである。
彼女だって今の自分の雰囲気や態度が最悪だと分かっているのだ。
でも無理なのだ。
これから千空が、初めての友達で、
自分が世界でたった独りの異物ではないということを教えてくれて、
さらに他の友達まで作ってくれた千空が死ぬかもしれない。
そう考えるだけで心に暗く重いものがたまっていくのだ。
もちろん千空が選んだ道だというのは分かっている。
だが、それでもそうなった原因である司への八つ当たりに似た感情が止められないのだ。
「あー、桜子。歴史が好きなのかい? どの辺りの時代が一番好きなのかな」
お前は娘との会話に困っている父親か!
そう心の中で突っ込むが一応答える。
「近代」
「近代か…俺はあまり詳しくは知らないな。
どういうところが好きなのかな」
はあ、と一回ため息をついて気分を無理にでも入れ替える桜子。
さすがに最低の気分のままでいるのに疲れたというのもあるが、二人がとても気を使ってくれているのに申し訳ないというのもある。
「近代こそが、人々が学ぶべき失敗を多く内包した時代だからよ」
「人々が学ぶべき…失敗?」
「そうよ、例えばフランス革命とか。
皇帝ナポレオンが誕生したの何年か知ってる?1804年よ、ちなみにフランス革命は1789年ね。
民主主義の金字塔みたいな印象持ってる人もいるけど、実態はただの集団ヒステリーからの国家転覆よ」
教科書にも載っている歴史の代表的な出来事に対して、あんまりな物言いに慣れていない司は思わず絶句する。
聞きなれている千空が司の代わりに反応した。
「ククッ、相変わらずの毒舌だな、おい。オメーにかかると歴史の授業がひでーことになるぞ。
たしか文化大革命が中華王朝交代の伝統行事で、東西冷戦が大やくざ同士の抗争だったか?」
「毒舌じゃなくて、物事を卑近なものに例えることで分かりやすくしてるだけ。
難しい言葉を使いたがる人が多いけど、誤解を恐れずわかりやすい物言いの方が理解を深めやすいの」
司がようやく衝撃から立ち直ったらしく、桜子に解説を求める。
「すまない、冷戦をそんな風に表現するのは初耳なんだが、どういう意味で言ってるんだい?」
「難しいことじゃないわよ。
国って、領土っていうシマを持ってて、そこから税っていう上がりをもらって、
国民っていう堅気の人たちを守るものだもの」
「そんな風に考えたことはなかったな、うん、面白い考えだね」
空気がやっと軽くなったことでほっとした雰囲気が出始める二人。
それがちょっと癪に障ったのか桜子の言葉に棘が生える。
「司が近代に詳しくないのなんて分かってたけどね、原始狩猟生活を理想の社会って言ってる時点で」
その棘に司も反応し言葉が固くなる。
「千空の実験には付き合うし、今すぐ君たちをどうこうするつもりもない。
うん、だけど俺にとって理想の社会が、自然とともに生きるものであることに変わりはないよ」
司が簡単に考えを変えるわけがないと分かっている桜子としても、その返答は予想通りのものであった。
だから、これは彼女にとってただの捨て台詞のつもりであった。
「ふんだ、せいぜいポル・ポトの二の舞にならないようにね!」
何のことだか分らない司に千空からのフォローが入る。
「そりゃ確かカンボジアの独裁者だったか?
愚民政策やってたってオメーから聞いた覚えがあるわ」
「そうよ、原始農村社会を目指して知識層を大虐殺!
さらに旱魃、疫病、それに加えて外貨獲得のための無理やりな食糧輸出で
たくさんの人が飢餓からの餓死者コース。
そのせいでカンボジアは13%から29%の人口を失ったらしいの」
愚民政策、知識層の排除その二つに司は血の気が引く思いであった。
「愚民政策は最悪よ、行き着く先は独裁者一人への負担の増大による過剰なストレス。
からの心神喪失、精神不安定による疑心暗鬼。
独裁者になる奴なんて芯が強い奴が多いからそれでも折れられない。
でも人をもう信じられないから粛清の嵐が吹くってわけ。
果ては腹心すら切り捨てようとしての裏切りからの破滅。
例を挙げればきりがないぐらいのありふれた話なのよね」
ケラケラと何でもないことのように笑う桜子。
しかし、司は自分の足元が崩れ去るような錯覚に陥っていた。
「社会指導者とかなるもんじゃねえってことだな、俺は科学研究さえできりゃあそれでいい…
って司、気分でもワリイのか?」
歩きながら振り向いた千空は驚いた声を上げる。
元々色白な司だが今は血の気が引き白いを通り越して青い。
「桜子、愚民政策について詳しく教えてくれないか?」
司の声がはっきりわかるほどに震えている。
そのことに驚きながら桜子が愚民政策の概要を話す。
「知性が人を幸せにするとは限らない、知らない方が幸せなこともある。
教育よりも幸せな生活にコストをかけましょう、っていうのが私の理解している概要だけど、
あの、司? 顔色がすごいことになっているけど、どうしたの」
『知性が人を幸せにするとは限らない』それは自分が考えていたことと同じだ。
復活者の選定は体力、武力そして知性が高すぎないことを基準にするつもりだった。
つまり自分、獅子王司は、
「独裁者の卵だったというわけか……、うん、
笑い話にもならない、悲劇を起こしたくなかっただけなのにね」
そのつぶやきに反応したのは桜子だ。
「え、待って司、貴方もしかして、愚民政策みたいなことやるつもりだった……?」
ひきつった顔で尋ねる桜子にただ頷くだけで答える司。
その反応に狼狽しながら食って掛かる桜子。
「な、何考えてんの! 知識の伝承こそが歴史の最も重要な、
人類を人類たらしめる最大のポイントだってのに本当に何考えてんの!
いい、中国が世界の中心の座を失ったのは慢心して腐るに任せていたからっていうのもあるけど最たるものは王朝交代時の伝統芸な前王朝のすべてを否定して消滅させるという愚行のせいでありそのせいで伝統と知識の継承を脈々と受け継いできた貴族層が存在する欧州に一時は全てを奪われたのよその欧州にしたってローマ帝国崩壊前と後の技術格差とかひどいなんてもんじゃないんだからねローマ時代の技術を超えられたってはっきり言えるのが近代に入って漸くって事実をなんで知らないのほかにも」
「長え」
ゴンっという音が響き渡るほどの勢いで殴られて桜子は強制停止させられた。
「いったーい! 何すんのよ、今大事なことを話してる最中なのに!」
「うるせえ、後にしろ、後に!
テメエの歩みが遅くてただでさえ遅れてんのにこれ以上遅らせんな!」
遅れを発生させている自覚は多々あったのでさすがに黙る桜子。
「今気づけたんなら問題なんぞねえだろうが。
司、オメーも気にすんじゃねえぞ、やってもないことにどうこう言うなんざ非合理の極みだ」
気に病む必要などないという千空だが、そうするには獅子王司という男は真面目過ぎた。
「だが、俺は…」
「司が理想の社会を放棄するならそれはそれでいいじゃない!
それより千空! こうなったら実験も必要ないでしょ!」
そして桜子は千空のことしか気にかけていなかった。
「却下だもやし、実験は100億%必要なんだよ。
司の妹の件だけじゃねえ、石化した奴を起こす際に持病持ちとかを、後に回す必要があるかどうかは調べとかなきゃまずいんだよ」
それは医療関連の技術に関する優先度にかかわる。
もし修復能力がそこまででないのならば優先順位がかなり上がるからだ。
「それで貴方が死んだら元も子もないでしょうが!
同じように首元に石化が残った人が出るまで実験中止すべきよ!」
「そこまで待ってたら倫理がどうのこうのってなって、実験なんぞできやしねえよ。
つうか、他人の命で人体実験なんぞできるか」
「そんなの秘密裏にやればいいだけでしょ!
歴史上いくらでもやられてきたことよ、人体実験なんて!」
「俺らはそれが禁止事項になった時代の人間なんだよ、過去に何があろうが昔の悪い真似をするわきゃねえだろ」
司はそんな風に言い争う二人を見て改めて思う。
(この言い争い、結局は二人とも友のためを思ってのものだ。
桜子は千空の命を、千空は今後の桜子達の安全のためにというだけ。
この世界になって、彼らに会えて本当に良かった。
実験を必ず成功させよう、彼らのためにも俺自身のためにも)
中止、中止と騒ぐ桜子にいい加減疲れたのだろう、千空が桜子に改めて提案する。
「最初っから大樹と杠のOKもらう予定だったんだ、あの二人が納得したら諦めろ、いいな?」
「絶対よ、どちらかでも認めなかったら中止だかんね。絶対だからね」
「ったく、無駄に時間がかかりやがる。
おい、司! このもやしぐらい持てるだろ、抱えて走ってくれ。
このままだと日が暮れちまうわ」
「うん、確かにこれ以上は日が暮れてしまうね。
分かった、君がついてこれるぐらいで走るとするよ。
そのぐらい余裕そうだしね」
「へっ?」
ヒョイと小脇に抱えられる桜子。
「舌を噛むから口を閉じておいてくれ」
そうとだけ言って桜子を抱えた司が走り出す。
千空がそれを追いかけ、後に残ったのは桜子の悲鳴だけだった。
「お帰りだ皆んな。っと、なぜ桜子はグッタリしているんだ?」
「あー、気にすんな。ちょっと疲れてるだけだ」
拠点の手前で降ろされたがそれまではジェットコースターもかくやという勢いで、不安定な状態で運ばれたのだ多少グロッキーなのは当然だろう。
「それよりもだ、大樹、大事な話がある。
杠とオメーの両方に聞かなきゃならねえが、杠はどこだ?」
「ああ、杠なら桜子が拠点を引っ越すかもと言っていたから、何を持って行くか選んでいるぞ」
その言葉に千空と司が桜子を見る。
明後日の方向を見ながら桜子は悪びれずに言った。
「なによ。私の予定では、三人で逃げてもらうつもりだったんだから当然の備えじゃない」
「本気で計算づくだったんだな、オメー」
呆れて物も言えないとはこの事だと言わんばかりの顔で千空が言う。
司も同感であるようだ。
「桜子、君は用意が良すぎないかい?
後学の為に秘訣を教えて欲しいぐらいだよ」
「…まだ秘密かな、しばらくは教えてあげない」
はぐらかすように言う桜子に肩を竦める千空。
二人の様子から千空はその秘訣を知っている。
そしてまだ喋る気はないということが司から分かる全てだ。
「なら、いつか教えて貰えるように、うん、努力するよ」
そんな三人の様子に大樹は満足そうに頷きながら言った。
「三人とも仲良くなったみたいだな。
少しピリピリしていた感じがあったから心配していたんだ。
解決したようでなによりだ」
お互いに警戒しあっていた事は確かだが三人とも大樹にそれが気取られているとは思っていなかった。
司は目を見開き、桜子はポカンと口を開け、そして千空は妙に納得した顔でそれぞれ反応を返した。
「大樹、いつから気づいてたの?」
「ライオンを司がどうにかしてくれてからだな。
そのあたりから千空が司を気にしていたから俺もよく見ていたんだ。
そうしたら、どうも司が千空を見る時とか、
桜子が司を見る時何というかな睨んでいるような感じだったんだ」
だから仲があまり良くないのかと思ったんだ。
そう告げる大樹に二人は絶句し千空だけが言葉を返した。
「ククッ、良く見てんじゃねえかデカブツ。
100億万点くれてやりてえところだが、生憎まだ解決しきった訳じゃねえんだ」
「そうなのか、もしや大事な話とはそれか?」
「そういうこった、なんで杠の奴を呼んできてくれ。
オメーら二人に聞いてもらわなきゃいけねえからな」
二つ返事で杠を呼びに行く大樹。
「うん、俺は彼の事も侮っていたみたいだね。
観察眼をもっと磨かなければ間違いを犯してしまいそうだ」
「大樹の奴は鋭いときゃ鋭いが、鈍い時はとことん鈍いからわからねえのも無理はねえよ。
それよか説明終わったらいよいよ実験の時間だ。ミスしねえよう頼むぜ」
「もちろん、うん、俺の全てを賭けて成功させてみせるよ」
杠を連れて大樹が戻ってくる。
地球という星の片隅、かつて日本と呼ばれた国があった場所で、
今人類の未来を左右する小さな小さな人体実験が、
その是非を問われようとしていた。
はい、実験までいけませんでした!
原因はわかってるんですよ。
あれも書いときたい、これも書いときたいを節操なしに詰め込むからこうなるんです。
反省したいと思います(次に生かすとは言ってない
Dr.STONEの小説第二弾「声はミライへ向けて」を読んだ時の衝撃よ……
羽京がさらっと知性~って言ってるけどそれ愚民政策じゃねーか!