星になったタシュケントちゃんとデバフのジェノくん。   作:光蜥蜴

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☘ー6話

 三田は死んだらしい。

 

 新聞にも載ることなく、事件性はなしと近隣とのトラブルの一件として片づけられていた。鉢に刺されて入院する事になった一般の男の記事にしないのは世の中にはもっと他に取り上げるネタがたくさんあるからだろうか?

 

与人「あの殺し屋、泉山光さんにも虐待防止策の報酬は払った。家の六匹の動物は全部、よそへ移したぜ」

 

ジェーナス「私は親子とか夫婦の絆のこと」

 

ジェーナス「強力な揺るぎない不変のモノだと思ってた」

 

与人「笑わせんな。だったら絶縁も離婚っつう言葉も生まれねえよ」

 

 夫婦の娯楽経営のボラ団体御用達の喫茶店、今日は私と与人の二人しかいなかった。

 

与人「俺の意見だが、子供は親を選べねえからあんなクソ親引いた時点で被害者だよ。むしろ今の俺が病んでねえだけ俺自身を褒めて欲しいもんだよ」

 

ジェーナス「いいえ、病んでいるわ」

 

与人「正直、お前を見てさ、艦娘って良くいえば純粋なだけで、悪くいえば世間知らずなだけなんだなって思ったぜ」

 

 与人はストローをすすり、オレンジジュースを飲む。

 

 この喫茶店は商売意識が低いので、今日はコーヒーが切れており、ジュースしかなかった。少しのサラダとバターが塗られた食パンと手作りのクッキーが皿の上に乗っている。

 

与人「俺一人でもジャーヴィスの鉄片を狙うけどよ、巻き毛ちゃんの選択肢は三つだ」

 

ジェーナス「もうこんがらがってきたわ……」

 

与人「一つ、俺に協力する。二つ、お前を再建造してその効果紋をアルヴィンから俺に移す。三つ、アルヴィン側のままで現状を続けていく。俺に付き合うのが一番良いと思う」

 

 三つの選択ってそうだったかしら?

 

「そいつはやめときな。ジェーナスちゃんならもっと良い男の子が絶対にいるから」

 

与人「うるせえババアが。割って入ってくるんじゃねえ、殺すぞ」

 

 端的に会話を聞いたのか、店主が見当違いのアドバイスを送ってくる。

 いわれずとも、二十歳超えて引き籠りで革命家といって親の殺人の片棒を担ぐ男の子をボーイフレンドの目で見るのは無理だ。「あはは……」と苦笑いで返しておく。

 

 もしも与人に協力するのなら効果紋を移す方法が最も成功する道のように思えるが、それは背水の陣というやつだ。その明確な裏切り行為をアルヴィンは絶対に許さない。失敗すれば恐らく私は無事では済まない。失敗に保険をかけるのなら今のままでの協力だ。

 

 はあ、とため息が漏れる。

 私、損得勘定で動くだけの嫌な子になってきてない?

 

ジェーナス「そもそも作戦はあるの?」

 

与人「力づくで鉄片のありかを吐き出させる」

 

ジェーナス「アルヴィンの幸運と私の不運を全く考慮していないわね。アルヴィンの幸運バフが私にかかっている状態なら成功の目はあるけど、それでも偶然の要素はアルヴィンに味方すると思う。計画は偶然の介入する余地もないほど緻密である必要があるわ」

 

 与人に協力して成功する未来が最も望ましくはある。

 しかし、バフが解除されたのならばことごとく偶然はアルヴィンに味方するだろう。

 そもそも私の裏切りを考慮していないアルヴィンではない。なにかしら自衛の手段をジャヴィの鉄片以外にも持っていると思うのだ。

 

 こういう悪戯的な考えはジャヴィのほうが得意なんだけどね。私はどちらかというとジャヴィの無邪気な暴走をたしなめる役回りだった。過去を思って幸せな気分になる時点で私も心の皺は増えていっているのかな、と浸っていると、

 

朝霜「開いているよな。邪魔すっぞ」

 

 

2

 

 

朝霜「その巻き毛とあほみてえな口の開き方、あたいのほうが当たったか」ずかずかと歩いてきて、「夕雲型の朝霜だ。お前が日本預かりになってた時に会ったことあるよな?」

 

与人「夕雲型か。俺は軍艦詳しくないけど知っているぜ。巻き毛のお仲間じゃねえの」

 

ジェーナス「かつてはね。今は志を共にしてないし、味方とは断定できないわよ」

 

朝霜「そのガキに効果紋がねえってことはアルヴィンから鞍替えした訳じゃなさそうだな」

 

ジェーナス「なにか用かしら」

 

朝霜「隣、失礼な」与人の隣に腰を下ろした。注文を取りに来た団体の人が「お友達かな?」と小さな子に対しての慈愛の目を向ける。「そんなとこ。サイダーくれ」

 

与人「割り込んでくるなよ。今、大事な話をしている最中だ」

 

朝霜「へえ、あたいらに関わってはいそうだな。悪ィけど、あたいらのことに関することだから聞いといて損はねえぜ」

 

 ならまあいいか、と与人は椅子の背もたれに深く腰を預ける。

 

 そして朝霜は要件の説明を始める。

 

 色々とぶっ飛んだ話だった。

 驚いたのは二点だ。まずエンチャント・ドラゴンの管理妖精を討伐したという事実だ。イギリスもあいつの戦火に巻き込まれたので、規格外の能力を持っているのはこの身で経験している。開いた口が塞がらない。

 

ジェーナス「タシュケントがいるのは知ってたけど……」

 

朝霜「知ってたのかよ」

 

ジェーナス「あの隕石砲、ここからでもよく見えたわ……」

 

朝霜「あー……」

 

与人「俺は知らねえ」

 

 あんな芸当ができる生物はタシュケント以外に知らなかった。その彼女でも管理妖精は倒せなかったので、恐らく彼女の建造主の効果紋が強力なのだろう。朝霜が「ジェノっていうんだけど、タシュケントじゃなくて、そいつがほぼ効果紋だけで倒したっぽい」

 

ジェーナス「そのコンビ現時点で最強じゃないの……?」

 

朝霜「さあな。タシュケントは最強じゃなくて無敵だっていってたけど」

 

 違いがよく分からない。

 

 その話を聞いて思ったのはその人はきっと悪い人ではないんだろうということだ。朝霜のしゃべっている顔を見れば、少なからず行為を持てる相手だということが、分かる。良い人でなくとも、普通の人が私の相棒だったのなら良かった。常々、そう思う。

 

朝霜「改装設計図には二つの使い道が判明してんだ」

 

 衝撃、だった。

 

 その改装図は溶鉱炉内臓型を解体する設計図、つまり、通常の解体方法、人間になる為の設計図というのは知っていた。だけど、その原理の説明、命という星の資材を使ったもう一つの魔法があるということは呆気に取られた。

 

朝霜「再構築する。溶鉱炉内臓型が生まれる前の状況まで、だ」

 

ジェーナス「あり得ない。あまりにも馬鹿げてる……!」

 

 机を叩いて、身を乗り出した。

 

ジェーナス「それってつまり私達が普通に解体できる艦娘状態に戻って、死んだ仲間も全員復活するけど、深海棲艦と戦いの毎日に戻るってことよね!」

 

ジェーナス「あの春川泰造でなくても、人間は絶対に炉の力を究明して、同じ歴史を繰り返すだけじゃないの!」

 

 どんな時代であれ、人間が好奇心と探求心を捨てたことがあるだろうか。朝霜がいう選択肢は刹那的快楽に身を委ねる狂気の沙汰だった。黒魔術で動物の餌に最愛の人をよみがえらせようとしている与人の父親と同じ次元の行為に思える。

 

朝霜「説明足らずだから待てって」

 

 運ばれてきた食パンを口に押し込むように入れる。

 

朝霜「イギリスがあたいらと同盟を結んだのは炉の力を究明した溶鉱炉内臓型の技術を盗む為っていうのはさすがにこっちも承知の上だよ。あたいも箝口令を敷かれていて口に出したら始末されるレベルの情報だけど、今ならもう構わねえし、教えるよ」

 

朝霜「春川のやつは変態だったからさ、深海棲艦の占拠海域が赤くなったり、光柱が現れたり、汚染の次元まで引き上げられた数値の特異現象の原因として関連づけてはいた。まあ、それが妖精の全ての源、星の命が固形化した物質だったってわけ」

 

ジェーナス「理屈は、どうでもいいの。うんざりだわ」

 

 この身に抱え込んだ精神的苦痛に効く全ての薬は胃の中で単にあぶくとなっただけで効果はない。

 

 興味があるのは実現するのか、実際に試してみないと分からないという点だ。そこにおいて朝霜の話は高い代価を支払い、効能が出るかどうかわからないので、博打に過ぎない。

 

ジェーナス「本当にその過去の地点で世界を作り替えられるの?」

 

ジェーナス「100%の確証がないわ。なら、私達は人間改装設計図をパアにしてまで賭博する価値があるのか甚だ疑問よ。確かに私だってイギリスのみんなと一緒にいたいわ。けど、それは私の命や幸福を捨ててまで実現することではないと、思うの」

 

朝霜「そっか。ご立派だと思うぜ。じゃ、あたいらは敵同士だな」

 

 席を立とうとした朝霜の腕をつかんで、引き止める。

 

ジェーナス「あなたは、そう思わないの?」

 

朝霜「あァ? うっせえな」

 

 その一言のなにが癪に障ったのか、チンピラのような低レベルな威嚇をしてきた。

 

ジェーナス「なんで今ので怒るのよ……」

 

朝霜「どっちつかずな手前の態度につい」

 

朝霜「ならなんで今、お前はアルヴィンに従っているんだ。手前もしなくていい最悪な苦労をしているんじゃねえの。自分を犠牲にしておいてなにが私の命や幸福を犠牲にしてまで、だ?」

 

朝霜「手前はあたいと同じく思い出を過去に出来てねえだろうが」

 

 朝霜はパーカーのフードをかぶり、

 

朝霜「みんな未来で待ってるなら、なにがなんでもそこまで辿り着くんだ」

 

朝霜「一度目も二度目も悲劇にしてたまるか」

 

朝霜「その為の三度目だ」

 

朝霜「その為なら、あたいは手前だって沈めるぞ」

 

 今までと違って抑揚が強く、決意を感じる声音だ。邪魔するのなら誰だろうと潰す、と暗に伝えられているようでもある。たまにいる強くあれる駆逐艦の持つ威圧感だ。

 

朝霜「連絡先を置いておくよ。返事くれ」紙切れを乗せて受け取る、

 

ジェーナス「ねえ、ジャーヴィスの奪還には」と声をかける。

 

 今の事情を説明すると、朝霜は気だるげに頬杖をついて、

 

朝霜「悪ィが、無理」

 

ジェーナス「どうして。タシュケントが仲間なら人間一人くらいどうとでも」

 

朝霜「建造主は時間を犠牲にあたいらの目的に協力してくれている訳だ。相棒は生憎と一般人だよ。アルヴィンに目をつけられて追い込まれたらどうしてくれんだよ。あたいらは鎮守府所属じゃねえんだ。力を貸してもらうのが普通って考えは卒業しとけ」

 

朝霜「あたいらはお前が人に危害を加えないよう釘を刺しに来ただけで、別にお前を助けに来たヒーローじゃねえ。それともなんだ。人間は助け合って生きてゆくべきだってか。理論武装した主義主張が感情を吠えまくるこの素敵な世界でそれは難しいことだと思うぞ」

 

与人「おいパーカー女、さっきから訳の分からねえこといってんじゃねえぞ」

 

朝霜「うるせえクソガキが。効果紋を持ってから介入してこいや」

 

 裏拳で与人の鼻っ面を叩く。与人は間欠泉のような鼻血を吹いて、椅子ごとひっくりかえった。軽く叩いたのだろうが、その威力に与人は戸惑っている様子だ。

 

朝霜「腑抜け過ぎていてタシュケントは眉を潜めそうだし」

 

朝霜「手前は今の居場所で耐えて待ってろよ。近い内に未来に連れ出してやら」

 

 彼女の覚悟は分かった。

 

 倒れた与人が彼女の背中をニヤケながら見つめていた。

 

 

3

 

 

「ええ、ええ、チャンです。愛称ですが」

 

 少々の片言ではあるけれども、聞き取れはするし、会話も可能だった。戸間のいう護衛して欲しい記者と会った。南アジアのスリランカ出身らしい。「ニホンは、平和」さっきの光景を突き付けてやりたくなる。「平和じゃないわよ」少なくとも私の周りはね。

 

チャン「戸間さんを信頼していない訳ではないのですが、護衛が可愛らしいお嬢さん。んー、アーユーブリティッシュ?」

 

ジェーナス「そうだけど、なんなのよ」

 

チャン「怒った顔もキュート。でも私の事情は物騒デース」

 

 名前も相まってうさんくさい中国人に見えるし、その語尾はあのバーニングなお姉様戦艦を思い出すわね。

 

 歩きがてらチャンはスリランカでマフィアのボスの逆鱗に触れた経緯の説明を始める。聞いたこともない陸の上の仕事の話だったので、少しだけ興味を惹いた。

 

チャン「スリランカでは鉱石の仕事は裏の者の生業で、そこに関連する闇取引をスッパ抜いたんです。ある程度、政治に関与してくるので、処刑宣告を受けました。怖いですよ」そういうわりに怯えている様子は微塵もなかった。「あいつの家、すごいですよ。三メートルの壁に覆われていて、その上には有刺鉄線、庭には護衛が数名、常駐してます」

 

ジェーナス「そのくらいなによ。私はもっと怖い奴らと戦ったことあるわ。それよりあなたはアルヴィン達を有利にするネタを持っているそうね」

 

チャン「そのマフィアからの市長の賄賂です。工場誘致の為の一環ですよ。その証拠を私は持ってます。情勢がよろしくないので、いくつか銀行の取引が止まっているので、証拠は凍結したまま。そこを掘り下げてフレームアップで今の市長はサヨウナラ」

 

チャン「その記事を完成させるまでの護衛をお頼み申し上げマース」

 

 今のところは刺客も見当たらないし、平和ね。

 辺りに怪しい者は特にいないけれど、護衛って神経がすり減るのよね。海での護衛任務は慣れたものだけれども、民間船一つにも必要以上に警戒しなければならない。過去には民間船に偽装した海賊船なんかとも出会ったこともあった。

 

 前を歩いてくる少年すら一般人を装った殺し屋じゃないかな、と疑う。

 

 あれ、あいつこっちをじろじろと見ているわね。

 

 明らかに暗そうなオーラを出している。ぱっと見た感じ、ダウナー系の冴えない青年だった。見られているのは珍しい外国人コンビだから、の可能性が高いかな、と思った直後、青年が足を止めて微笑んだ。

 

ジェノ「そこのイギリスのお嬢さん、少し時間を良いですか?」

 

 男がポケットから右手を抜こうとした。反射的にその腕をホールドして軽く投げ飛ばしてやった。男は仰向けに草むらの上に倒れる。息はしているから、後はもうどうにでもなるか。せめてもの情けとして抱えて近くのベンチに座らせておく。

 

「あー、ちょっと迷った間に。だから気をつけろっていったのになあ」

 

 ひょこっと十字路から苦笑いを浮かべた少女が出てきた。さらりとした美しい茶髪のセミロング、そして琥珀色の瞳の少女だ。「なによ」私は気が立っているのもあって、眼を飛ばした。少女はゆっくりと歩み寄ってくる。

 

「なに。あなたも私に? それとも隣の」

 

 髪をわしづかみにされる。「痛っ」と痛みを感じた時、空を仰いでいた。側頭部と背中が痛い。少女の手には千切れた私の髪が握られている。今日という日はなんなんだ、と舌打ちをかまして、すぐさま起き上がる。

 

ジェーナス「艦娘の……誰かしら?」

 

「こうして、こうか」少女はゴムを取り出して髪を二つ結びにセットする。「どう?」

 

ジェーナス「タシュ、ケント? 髪を降ろして私服姿だから気づかなかった……」

 

ジェーナス「チャンさんごめん、こいつが刺客なら私じゃ無理ね」

 

チャン「なんだかあなたも訳ありみたいですね」

 

タシュケント「事情は朝霜君から聞いてるよ。本当にたまたま君を見かけたから声をかけただけでそれ以上の意味はないよ。どうかがんばって耐え忍んでいてくれ。あたしと同志が近い内にそこから君を連れ出してイギリスのみんなと会わせてあげるさ」

 

タシュケント「ちなみにさっきのは同志がやれらた仕返しね」

 

ジェーナス「ちょ、ちょっと待って!」

 

 立て続けに不幸に見舞われる中、唯一の希望と出会えたのだ。このまま見過ごすわけにはいかなかった。

 

ジェーナス「私の護衛の仕事を手伝って」

 

タシュケント「報酬は?」

 

タシュケント「それがなきゃ運値がもはや厄神と化した君への協力はね。同志からも派手なことは控えてくれって釘を刺されている身だしさ」

 

ジェーナス「い、いっておいてなんだけど、私があげられる報酬は」

 

チャン「あの、今時の少女は強いですね。ということにしておいたほうがいいですかね?」

 

タシュケント「そうだね」

 

タシュケント「ただジェーナス君の不運は楽観視できないからどうしたものか。失敗作の烙印を押された時からね、こいつが出撃した戦いで勝利した例がないほどだ。あたし達ががんばろうとも針の穴をいくつも通るような奇跡染みた不幸がやってくるだろうし」

 

 よくご存じで。

 

ジェーナス「でも私、勢作過程でアンツィオの艤装が使えるようになったから基礎値は運を除いて高いわ。陸の上で展開するような穏やかな装備じゃないけど」

 

タシュケント「あー、同志が起きないじゃないか。抱えるかな……」

 

チャン「ではホテルのほうへ移動しても? 四時間、あれば」

 

 ということで四人で移動することになった。

 

 空をカラスの群れが飛んでいる。

 

タシュケント「カラスだなんて幸先が悪いね」

 

 そうぼやいた時だ。

 

 撃鉄音が鳴った。

 

 え、と声が漏れた時、隣でチャンが倒れていた。

 

 狙撃されたの?

 

 辺りは大樹の繁みで遠くから狙撃できるような場所ではないのに、チャンの頭は吹き飛んでいる。辺りを見回してみた。私達以外に人影もなにもない。あり得ないでしょ。なにこれ。

 

タシュケント「待避!」

 

 脇に抱えられ、公園のトイレの中に連れ込まれた。

 

タシュケント「斬新な暗殺! 群れの中にカラスに擬態した艦載機がいたよ!」

 

 そんな馬鹿な。私も観たけど、艦載機なんか混じっていたらすぐに気づく。改めて空を見る。すると、群れの中の一羽が口が太陽光に反射しているのを見つけた。ゆっくりと空から降りてきて公園の照明のポールの上で羽休めした。口の中から砲口が見える。

 

ジェーナス「なにあれ……あのレベルの擬態艦載機だなんて」

 

タシュケント「なにかの効果紋でしょ。というか開始十秒で任務失敗だよ……」

 

 倒れているチャンに一匹の大きな犬が駆け寄った。

 

 口を広げて噛みつくようなしぐさをした直後だ。頭部が変化した。私の目にはワニに見える。ガブリと噛みついてブンブンと千切る肉食獣の仕草をする。すぐにチャンの首が、千切れた。噴水が飛び散る赤い噴水を呆然と見つめ続けた。一体なにが起きてるの。

 

タシュケント「多分、エンチャンターだね」

 

タシュケント「こんな奇天烈な現象、警察は機能するのかな」

 

 冷静に分析して、現実と照らし合わせている。すぐに通報の思考を回すっていうのが私からしたら信じられなかった。人が残虐に殺されたのよ。

 

 思えばこいつはいつもそうだ。戦場では熱くなるのに、被害については目を逸らすように統計的に一歩引いて見る。

 

タシュケント「追わないほうがいいかな。戦闘になったら一般の死体が増えそうだ」

 

ジェーナス「ごめんなさい。やっぱり、私は誰とも組めない」

 

ジェーナス「巻き込んじゃう……」

 

 そう告げる。

 

 幸運のバフを消されて、今日だけで関わった人が二人、死んだ。

 

 もうダメだ。心が折れた。私はバフの力がなければこのような最悪な不幸ばかりが襲いかかってきて、目的を達成できないどころか、人が巻き込まれてしまう。あのアルヴィンが用意した私の箱庭で、アルヴィンに従い続け、幸運の加護を受けるのが最善だ。

 

 走ってその場から逃げ出した。

 

 






しっかし、コロナになってから大変な世の中になりましたね……。
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