星になったタシュケントちゃんとデバフのジェノくん。   作:光蜥蜴

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☘ー8話

 

ジェノ「その気があるのなら、来てくれるでしょ。一件落着かな」

 

ジェノ「収穫はあった」左手の効果紋に視線を落とした。

 

タシュケント「そっちの日進もどき君はまだ生きてるよ?」

 

 シェアとデバフの併合使用を試した。まずは深海日棲姫の身体能力を共有して、自分の感覚にしてから、自分を戦闘不能にする感覚で緻密なデバフをかけてゆく。タシュケントのアドバイスが効いた。このやり方ならスムーズで速い。

 

深海日棲姫「……待った」

 

ジェノ「深海日棲姫らしいけど、その可愛い姿は効果紋で日進さんに寄せてるンだよね」

 

深海日棲姫「出会ったのは奇遇でも、ワシを痛めつけて損するのはヌシじゃよ」

 

 あの仮面、顔文字みたいに表情が変化するらしい。

 

深海日棲姫「ヌシらみたいな怪物を知って無策な訳ないじゃろ」

 

 少し身構えたが、興味もあった。彼女が懐に入れた右手は長財布を取り出したが、デバフのせいか地面に落とした。「あっ」と意外と高音の可愛い声を出して拾って広げる。一枚のカードを取り出して、震えた手で掲げる。

 

 その手に持っているカードをまじまじと見つめる。

 

ジェノ「嘘だろ!」

 

 思わず、叫んだ。

 

ジェノ「僕の所属法人の会長の肩書きじゃないか!?」

 

ジェノ「いや、騙されないぞ。それ偽造したものだろ!」

 

深海日棲姫「肩書だけでほとんど顔を出さないからのう……」

 

深海日棲姫「ヌシ、今日付けで出世じゃ」懐からまたなにか取り出した。皺になっている紙切れは辞令所だった。「本付け付けでワシの秘書官に任命する。そのほうがこっちに時間をさけるじゃろ。安心せえ。賃金は変わらず支給する。悪くない話じゃろ?」

 

タシュケント「あっはっは! 深海棲艦が法人経営とか人生を謳歌してるね!」

 

ジェノ「本当だとしたら笑いごとじゃないよ!」

 

タシュケント「でもさ、よくよく考えれば春川泰造のような情報の塊がいる施設をこっち側の誰かが匿っていても不思議じゃない気がするけどね」

 

タシュケント「深海棲艦が福祉業者だなんてジョークきっついけど」

 

深海日棲姫「ちょっと悪徳坊主をだま、交渉して譲ってもらった法人がここまで大きくなるとは思わなんだが、寒河江、ヌシの性格には必殺よな。今のワシ、とってもかっこ悪いけど」

 

ジェノ「信じられない。深海棲艦が社会で成功してるだなんて……」

 

 無策じゃない、といった根拠はコレかよ。でも、よくよく考えてみればタシュケントのいう通り、情報の塊である春川のじいちゃんを誰かが囲っていても不思議じゃないか。

 

ジェノ「でも、本当にこっちで時間を使ってお給料もらえるのなら良い話か」

 

深海日棲姫「成立か。まず連絡を入れる」

 

 そういってスマホで連絡をかける。通話相手は施設長だ。電話番号も合ってるし、電話越しの声も同じだ。そのやり取りを聞けば、もう疑う余地はなかった。

 

深海日棲姫「力量は申し分なし。春川をかくまっていた甲斐があったというもの」

 

深海日棲姫「ほれ、ワシが仲間になりたそうにこっちを見ているぞ?」

 

タシュケント「聞くけど、君はこっちで建造された時は深海棲艦でそこから鉄片化して復活したことがある?」タシュケントはそう質問する。「深海棲艦はちょっと疑わしいよ。シェアの力を使って潔白証明させるのもアリだけど、喋っている感じ、他の方法にも賭けられそうだ。いちど、鉄片化させて再建造させる。それで日進君に戻れば仲間にしない?」

 

深海日棲姫「相変わらず容赦ないのう……多分、真っ白な日進さんには戻らんぞ?」

 

タシュケント「深海状態よりは道徳も良心も備わるからね」

 

 深海日棲姫は嗤って、「構わん」といった。

 

 その瞬間だ。タシュケントが右腕の艤装液から大槌を錬成し、頭部を振り下ろした。

 

 それを見届けた後に気付く。

 

 いつの間にか三田与人少年がいない。シェアの力であの効果紋を誰で烙印したのか調査しようと思ったのだが、逃走してしまったようだ。

 

 朝霜と連絡が取れなくなっている。

 

 拳銃を所持していた時点で艦娘といえど、彼女が与人に負ける可能性はある。ジェーナスと知り合いだったことも踏まえて、情報は知っていると見るべきだ。こんがらがってくる予想を整理する為に、近くの自販機に寄って、適当な炭酸を買う。

 

 いつの間にか悲鳴も止んで、日常が戻っている。なかったことになっている。素晴らしい改変能力ではあるが、現実改変のラインもよく分からないな。

 

ジェノ「完全に社会的になかったことになっているの?」

 

 という疑問が湧いたのはいつの間にかパトカーが数台到着していて、文化会館の裏道のほうに続く路地にキープアウトのベルトとコーンで規制されていたからだ。かといってタシュケントが深海日棲姫を殺した場面はまるで見えていないかのよう。

 

 歩いていくと、警官と視線が合う。「なにかあったんですか」と聞いてみる。

 

 返してはくれなかったけども、人が倒れている。スーツ姿の白髪のおじいちゃんが血だまりに倒れている。救急車で運ばないのかよ。殺人事件、なのかな。

 

 後から聞いた話だ。被害者は戸間という男らしい。

 

 

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