電脳戦隊バーチャマン 作:憶 常昌
~ 今までのあらすじ ~
サイファー、テムジン、ストライカー、ライデン、そしてフェイイェン・ザ・ナイト。表向きはごく普通の大学生の彼ら五人、しかしてその実態は地球を守る正義の味方、電脳戦隊バーチャマンだったのだ!!
本編。
「隠れていることはわかっているんだ! 出てこい!」
まわりを見回して、断髪の美女サイファーが叫ぶ。
古代の建造物の立ち並ぶとある遺跡、その中の一つの広場。彼らは、地球の平和を脅かす悪の組織の幹部を追って、ここへたどりついたのだった。
「あっ、あそこ!」
どー見ても大学生には見えないピンクの髪の少女フェイイェンが指差す、その先には。
「ホーッホッホッホッホ! まんまとおびき出されたわね! ここがお前たちの墓場となるのよ!」
中央のひときわ高い遺跡の上に乗り、高笑いする赤紫の影。彼女こそ、彼らが追っていた悪の女幹部エンジェランである。その傍らには、「死神」の異名をもつ彼女の側近、スペシネフが影のように付き従っていた。
「やっておしまい!」
エンジェランの号令で、どこからかわいて出る無数の戦闘兵たち! テムジンとライデンに良く似た姿の彼ら、カラーリングは、もちろん白。
「行くぞ、みんな!」
「おう!」
サイファーの掛け声で、いっせいに手首に……いや、背中につけた装置を作動させる五人!
『V・コンバート!』
彼らの体が、輝く光に包まれる!
説明しよう!
天災もとい天才科学者バル=バドス博士の発明した「V・コンバーター」を作動させることにより、彼らは電脳戦隊バーチャマンへと変身するのだ!
「バーチャレッド!」
「バーチャブルー!」
「バーチャグリーン!」
「バーチャブラック!」
「バーチャピンク!」
『電脳戦隊、バーチャマン!』
声ハモらせてポーズをキメる五人。よく恥ずかしくないな。……いや、サイファーのみ恥ずかしそうだ。装甲だけじゃなく顔も赤い。
ちなみに、ライデンのみRNAカラーである。
気迫に押されて、さざなみのように一歩退く戦闘兵たち。
「ええい、なにをためらっているの! 相手はたった五人よ!」
が、エンジェランの一声で、彼らは数を頼みに攻勢に転ずる。ウンカのごとく押し寄せる白い影!
「ふっ、貴様らごときにやられる俺たちじゃあないぜ」
不敵に笑ってランチャーを構えるグリーンことストライカー! 無言で地を駆けるブラック、剛戦士ライデン!
サーベルが閃き、ライフルが唸る。爆炎が舞い、閃光が疾る!
そして、無数のハートが乱れ飛んだ後には、立っている戦闘兵たちは一体とていなかった。まあ、所詮ザコはザコ。
「次はお前の番だ、降りてこい!」
びしりとライフルをエンジェランに突きつけ、見栄を切るブルー、テムジン。
「ふ……。さすがにこやつら程度では相手にならないわね……。ならば……」
「なーによ、もったいつけちゃってぇ。オバサンくさぁーい」
エンジェランの言葉をさえぎって、まくしたてたのはやっぱりピンク、フェイイェンだった。口を開けたついでにキャンディーを一つぽいとほうり込む。……って、その袋どこから出した?
「おば……!!」
さすがにというか、さもありなんというか、絶句するエンジェラン。ややあって、額に特大の青筋がくっきりと浮かぶ。
「こっ……このっ……このこのこのこのこの」
「どしたのー? 言語感覚おかしくなっちゃったぁ? あはは、やっぱりオバサンね」
だめおしの一言。
スペシネフには、彼女の血管の切れる音が聞こえたような気がした。
「……出ておいで、ミサイル魔神グリス=ボック!」
「ま゛っ」
さっと杖を振りかぶって叫ぶエンジェランの声に応えて、どこからか現れる異形の影。
「……いつも思うんだけどさ」
「どうした?」
つぶやくテムジンに、問うサイファー。
「どうして、あのスカートは見えそうで見えないんだろう?」
「お前は寝ていろ」
さくっ。
大真面目で首をひねっていたテムジンにサイファーがサーベルでつっこみを入れているあいだに、間合いをとるグリスボック。
「まず、その小娘から塵にしておしまい!」
「ま゛っ」
エンジェランから命令が飛ぶが早いか、いきなり核を撃つグリス!
「えっ? あー、まってまってちょっとまって!」
キャンディーの袋を抱えたまま、しぱたしぱたと慌てるフェイイェン。……だから、どっから出したんだよそれ。
「散れ!」
サイファーの声で、すかさずその場を離れる五人、いや、四人。
おや?
「ああっ!? テムジン!」
さっきまで彼らがいた場所に、超特大のキノコ雲が上がる。
つっこみを入れられたまま寝ていたテムジンは、フェイより一足先に塵になった。……いや、ぴくぴくしているから、まだ生きてはいるらしい。
「貴様! よくもテムジンを!」
叫ぶサイファー。お前さんのせいじゃないのか?
「ま゛っ」
何を考えているのか、何も考えてないのか、ミサイルをどかどか撃ちまくるグリスボック。指令どおり、その大半はフェイに降りそそいでいるが、彼女はわきゃわきゃ走り回りながらしっかり全弾かわしていた。……キャンディーを口に入れる余裕もあるようだから、攻撃を引き付けているという意味では立派なものだが、なんかねえ……。
「くそっ! キャノン砲も届かないぜ!」
「焦るなグリーン! まずは動きを封じるんだ! ブラック、頼む!」
「おお!」
サイファーの声に応え、電磁ネットを展開するライデン。命中とはいかなかったものの、さすがにミサイル魔神の足が止まる。
「行くぞ!」
その隙に一気に間合いを詰めるサイファーとストライカー。
「見境なく爆弾ばらまきおって! 環境破壊は許さんぞっ!」
なにか違うぞ、ストライカー。そもそも人のことが言えるのか?
「ま゛っ?」
「食らえ、必殺、ハイパータックルっ!」
その身を炎に包んで突撃するストライカー。だが……
「グリーン!? ばか、まだ早い!」
サイファーの指摘は正しい。あっさりそれをかわすグリスボック。
「あ? あら~っ!?」
方向制御のできないまま、あらぬ方向へすっとんでいくストライカー。「べちっ」とか音が聞こえる。……まあ、タフだから大丈夫だろう。
「ちくしょー、この野郎! じっとしてろ!」
ムチャ言うな。
赤くなった鼻を押さえて突っかかるストライカー。が、相手は巨体の割にすばやい。サイファーはミサイルを警戒して空中高速機動が発揮できず、ストライカーと連携してもいまいち攻撃が当たらない。足の遅いライデンは完全に置いていかれている。フェイイェンは……どーやらやる気がないらしい。そんなにキャンディー好きか。
そうこうするうちに、少し疲れの見えたサイファーの目の前に、狙いすましたミサイルが迫る!
「!? しまっ……!」
思わず目を閉じそうになった瞬間。
一条の閃光が、ミサイルを吹き散らした。
ライデンではない。彼のレーザーなら、太すぎてサイファーまで焼いている。
と、すると。
「テムジン! 大丈夫なのか!?」
いつのまに復活したのか、ビームライフルを構えて立つテムジン。
「はっはっは、あの程度で倒れるほど俺はやわじゃないぜ!」
ひざが笑ってるぞ、おい。
が、今の攻撃はちょうどグリス=ボックの進路をもふさいでいた。一瞬、動きが鈍る。
「よし、決めるぞ! ブラック!」
サイファーの声に、今度こそ電磁ネットがミサイル魔神を貫く!
「ま゛っ!?」
「ピンク!」
「まぁっかせてぇ!」
さらに、ソードから撃ち出されたハートが命中する!
「ま゛あぁぁぁぁぁあっ?」
そして残り三人が宙に跳ぶ!
『おおおおおっ! 必殺! トリプルバーチャクラーッシュ!!!!!』
説明せねばなるまい!
トリプルバーチャクラッシュとは、電磁ネットとハートビームで動きを止めたところへ、S.L.C.ダイヴ、サーフィンラム、ハイパータックルを3方向から叩き込む、バーチャマン最強の必殺技である!
「ま゛あああああああああああっ!!!!」
断末魔の叫びをあげるグリス=ボック!
ちゅどーん。
かくして、一つの悪の芽は滅びた。が、しかし。
「よーし、今度こそお前の番だっ! って、あれ?」
「あ~、いない! 逃げられたあ!」
そう、さっきまでいたはずの遺跡の上から、いつのまにか悪の女幹部エンジェランと側近スペシネフの姿は消えていた。二人とも実に逃げ足が速い。
「くぅっ……今回も逃したか……。しかし、次こそ必ず……」
悔しがるサイファー。
「まあまあ、焦りなさんな、リーダー」
お前が言っても説得力ないぞ、ストライカー。
「慌てても良いことはないぞ。我々の戦いはまだまだ続くのだ」
あさっての方角を見ながらどっしり構えて言うライデン。酔ってるね、こいつも。
「ね~、おいしいもの食べにいこーよ。おなかすいちゃった!」
君にはそれしかないのか、フェイイェン。キャンディーおいしそうだな。
「う~ん、今回もやっぱり見えそうで見えなかったな」
テムジンはまた寝た。気絶したとも言う。
そう、ブラックの言葉どおり、戦いはまだ始まったばかり。
悪の総帥タングラムを倒すまで、彼らに安息の日々はない!
戦え、電脳戦隊バーチャマン! 行け、五人の戦士たちよ!
つづく!