四葉 真夜の娘のおしごと   作:KIRAMERO

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もうそろそろストックは無くなるのでそこからは不定期になります


四葉 沙夜としての立場、ゆらり揺らめく世界情勢

沙夜が南の楽園でバカンスを楽しんでいる頃四葉家本邸の食堂には真夜、達也、深雪を初めとした四葉の次世代を担う中枢メンバーが集められていた。

 

「本日、皆様に集まっていただいのは沙夜のことでお話しておきたいことがあるからです。沙夜は現在師族会議四葉家代表代理の任に付いていますが今後の四葉家に沙夜がどう関わっていくかをお話するためにお呼びしました」

 

「沙夜様のですか?」

 

「ええ。皆さん私の次は深雪さんに決まったでしょう?それなのに沙夜は今後どうするのか、皆さんは分家当主としての道がありますがそれに比べ沙夜は直系の子、それなのに沙夜には何の役職も無いというのはおかしいでしょうからここで私の考えることをお話したいと思ってお呼びしました」

 

「その肝心の沙夜様は一体何処におられるのでしょうか?」

 

「沙夜は今プライベートで東南アジア同盟の中のタイに滞在しています」

 

「何故そのようなところに?」

 

「沙夜にとって数年ぶりのバカンスで滞在しています。…そうね皆さんにも言っておきましょうか、沙夜の表の活動内容を」

 

「表の活動内容?」

 

「ええ、くれぐれもご内密にお願いしますが沙夜は四葉家の魔法師である前に日本でも名前の知られた存在です。皆さんも聞いたことはあるのでは無いでしょうか、風早 似衣菜という名前を」

 

「「「「!?」」」」

 

それから約3週間のバカンスを終えた沙夜は今日も変わらず経済界の大物と(変な意味ではないが)一夜を過ごして翌朝に自宅へと帰っていった。帰ってから沙夜はニュースを付けると衝撃的な内容が流れていた。それはニジェール・デルタ地域における大亜連合軍の戦略級魔法「霹靂塔」の使用だった。確かに最近は大亜連合軍がフランス軍の無人兵器に押されているという話はあったがこうもあっさりと戦略級魔法の使用を認めるのは異例だった。そして注目を集めたのは戦略級魔法の使用ではなく術者だった。元々大亜連合は戦略級魔法師「震天将軍」劉雲徳(リュウ・ウンドー)を公表していたが今回公開されたのは劉麗蕾(リウ・リーレイ)まだ14歳でありそんな子が国家公認戦略級魔法師になったのは幾ら徹夜明けの沙夜でさえも驚きが眠気より勝った。それからといったもの沙夜はすぐに真夜に連絡を取った。この1件に関しては師族会議の代表代理でしかない沙夜より十師族当主である真夜の方が対処法は分かっているからだ。とりあえず真夜としてはこの件に関しては静観するということだった。沙夜もそれに同意しその日は沙夜は休息をとった。

 

翌日さらに事態は深刻化していった。今度はゲリラ軍が達也が発明した「アクティブ・エアー・マイン」を使用したのだ。この発表により魔法大学は情報管理体制の杜撰さを問われたが情報管理体制は徹底されていたと主張し、ゲリラ軍の行動を牽制した。後日、九校戦運営委員会は今年の開催を見送った。私としてはビジネスという観点からは少し不満はあるもののそれ以外の面からは運営委員会の発表に賛同だった。情報管理体制は万全を期すものでありそれをやらないという選択肢はない。確かに今の魔法科高校生にとっては酷であるがそれは致し方ないというのが今の沙夜の中にはあった。

 

それからまた後日沙夜にとってそして四葉にとってもある重大な出来事がUSNAから届いた。まだ何の手回しも出来ていないそんな国際プロジェクト「ディオーネー計画」。魔法技術を用いて木星圈のエネルギー源を用いて金星をテラフォーミングしようとするという計画だ。この「ディオーネー計画」に必要な人材としてこの計画を発表したNSA(USNA国家科学局)のエドワード・クラークは10人の名前を上げた。自身の他に世界2大魔法工学メーカーの社長「マクシミリアン・デバイス」のポール・マクシミリアン、「ローゼン・マギクラフト」のヘル・ローゼン。これら3人の科学者の他に魔法学の権威として有名で国家公認戦略級魔法師でもある「イグナイター」イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフやウィリアム・マクロードにも協力が求められた。しかしこれだけならば四葉や沙夜も注目はしてもそこまで重大な出来事として捉えなかっただろう。ただエドワード・クラークが呼びかけた人物の中に日本の魔法工学メーカー「FLT」所属のトーラス・シルバーが最後に大々的に取り上げられたのだ。しかも日本の高校生という点においても四葉や沙夜にとっては致命的なことだった。発表当日沙夜は朝から商談の打ち合わせ等で多忙な予定をこの発表を受けて当初の7割を終えたところで他の相手には後日またということを連絡して急遽自宅へと戻った。帰ってきた沙夜は「ディオーネー計画」について発表されたありとあらゆる情報を掻き集め資料を読んでいた。

 

「これは……まさか…達也も気付いてるでしょうけど大変なことになりそうね」

 

沙夜の言葉の通り達也は「ディオーネー計画」の真の意味に気がついていた。だだ達也にとっては傍迷惑な話であり真夜や沙夜、さらには深雪がいるにも関わらず海外にわざわざ行く必要すら感じていなかった。翌日学校にトーラス・シルバーの正体が知られた時はここまでするのかと思った程だ。

 

次の日曜日、深雪と水波は四葉の東京本部ビルに移り住んだ。元々は四葉家の戦闘員が宿舎として使っていたビルなので深雪や水波が来たところで全く問題なく使えるようになっている。そして達也は沙夜の伯母である四葉 深夜様が療養に使っていた伊豆の別荘へと引っ越した。真夜曰く「ほとぼりが冷めるまで伊豆にいてはどうか」ということに了承したらしい。沙夜もまだ小さい頃は母に連れられ伊豆にいた深夜様の元へと行ったことはあるが確かに世間からは外れたところにあるので世間から遠ざかるという点においては優れていると言えるだろう。

 

事態が動いたのは3日後新ソ連の国家公認戦略級魔法師「イグナイター」イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフが「ディオーネー計画」への参加を表明した。これには日本にいる魔法師全員が驚愕した出来事だった。新ソ連の国家公認戦略級魔法師が新ソ連の仮想敵国であるUSNAの国家科学局が発表した「ディオーネー計画」への参加を表明したのだ。世界から見ても衝撃的であり、日本にとっては1人参加を求められたが未だに表明していないその猶予が0になった瞬間でもあった。沙夜は移動中の車内で見ていたのだが向かっていた先から急遽四葉本邸へと向かった。

 

「お待たせ、それでわざわざ取り引き先から此方に来たのだから何かあるのよね?」

 

「ええ、これから緊急師族会議を行いたいそうなので少しの間書斎をお借りしてもよろしいでしょうか?」

 

「ええ、構わないわよ」

 

真夜はそう言うと沙夜は一礼してから母親が普段電話をする時に使っている部屋へと向かった。もちろん沙夜の自宅にもこのような類の部屋はあるのだがそこは現在沙夜の仕事関連の資料が大量にあり、見られてはいけないものもあるため真夜の書斎を借りることにしたのだ。既にオンライン会議には沙夜を除く各家当主がスタンバイしていた。

 

「お待たせしました」

 

『いえ、こちらこそお忙しい中お呼びだてしまい申し訳ありません』

 

『四葉殿、その節はお世話になりました』

 

「一条殿、お加減はよろしいのですか?」

 

『お陰様ですっかり回復しました』

 

『それはようございました。それで会長、私達をあつめられたのはどのような問題に対処なさるためにお呼びしたのでしょう』

 

そこから十三束 翡翠魔法協会会長から「ディオーネー計画」に関することを伝えられると話題はトーラス・シルバーの件に移っていった。

 

『四葉様、トーラス・シルバーの正体は貴女の弟君であられますよね?昨夜USNA大使館の職員から書状を受け取りそこに「今のところ氏名の公表は控えるのでトーラス・シルバーこと司波 達也氏に協力を要請したい」と』

 

『体のいい脅迫だな』

 

「実を言うと先日達也本人からこの事に関して第一高校の百山先生からも同様のことで相談を受けておりました。私達四葉家はこの事に関しては達也本人に任せたいと思います」

 

『四葉様から達也殿に働きかけることは無いと?』

 

「ええ、本人の一生に関わることですから。それで御用とはこれだけでしょうか?」

 

『そうですが……』

 

「では私はこれにて失礼させていただきます。御機嫌よう」

 

そう言い残すと沙夜はオンライン会議から抜けた。それに追随するように六塚 温子、八代 雷蔵がオンライン会議から抜けた。沙夜にとって重要なのは魔法協会や十師族としてのメンツではなく四葉家は達也がトーラス・シルバーでは無いということだ。トーラス・シルバーとは個人の名前ではなく2人の技術者からなる団体名であり決して達也1人でこのトーラス・シルバーという名前を押し上げたわけではない。私もそのことはFLTの筆頭株主になる前から聞かされていた。そして表向きの関係性が実の姉弟になったことからも私は達也が外国主導の計画に参加するということについては否定的だった。

 

次の火曜日の夜に私の元へ母親である四葉 真夜から連絡があった。用件は今度の日曜に十文字殿が達也の元へと訪れるということだった。

 

「話はわかりました。それで私に電話を掛けてきたのですから余程のことがあってですよね?」

 

『その日に国防軍が達也の元へ襲撃する可能性が高くなったのよ。でも今国防軍と事を構えるのは得策じゃない。だとして私もそれを放っておくわけにはいかないのよ』

 

「お母様は私に国防軍の排除をしろ、と?」

 

『ええ、といっても達也さんのお友達も来るでしょうし彼らのお手伝いでもしてあげなさい。話は黒羽の方から通しておくから』

 

「わかりましたが私はどのような変装でいけばよろしいでしょうか?四葉 沙夜の姿で国防軍と対立しては四葉家が国防軍と対立すると思われます。かといって風早 似衣菜の姿で行けば正体が四葉家の関係者と思われます」

 

『そうねぇ……そのまま四葉 沙夜の姿ではなくて少し『疑身暗影』を使って深雪さんの付き人という設定で行きましょうか』

 

「わかりました。それでは日曜日に予定してたことはキャンセルしておきます」

 

『ごめんなさいね。貴女のお仕事の邪魔をしてしまって』

 

「いえ、緊急を要するものでは無いので幾らでも都合はつきます。それに親戚で四葉家次期当主の婚約者が騒動の中心にいますし何より閣下からも達也について少し言葉を頂いているので」

 

『あらあら、それは一大事ね』

 

「それでは私はこれで失礼します」

 

『ええ、おやすみなさい沙夜』

 

そこで通話は切れた。私は今回のことでお母様から伝えられたのは今週の日曜に十文字殿が達也の元におそらく前回の緊急師族会議の説得に訪れるということ。そしてその支援に四葉家としては出せないということが分かった。それでも公には出来ないものの私が行くことには否定しなかった。それは達也と深雪に対する私への信頼というものを確実にするためとも私は思えた。これからというものお母様が色々動かざるを得ない場面は少なからず出てくるが私にもやらなくてはならない場面も出てくるだろう。

 

次の日の夜達也と深雪はそれぞれ伊豆の別荘と調布にあるビルに黒羽姉弟を迎えていた。達也のところにはつい先日四葉本家から十文字家から日曜の都合を尋ねるメールが届いていた。この面会が単なる先輩・後輩という関係ではなく四葉家に対する十文字家の申し入れがあったということを意味している。

 

このメールが届いていた頃達也が住んでいた伊豆の別荘には黒羽 文弥がやってきていた。

 

「文弥と亜夜子が別行動しているとは珍しいな」

 

「姉さんも達也兄さんに会いたがっていましたが、命令ですから」

 

「そうか、どんな命令を伝えるために来たのか聞かせてくれ。わざわざその格好で来たのも命令の一部なんだろう?」

 

「僕は、その、顔を知られていますから」

 

「ああ、なるほど。今の俺に素顔で接触するのはマズいか。それで?」

 

「……この別荘が襲撃される可能性が高くなりました」

 

「国防軍か?」

 

「そうです」

 

ここで文弥は達也の別荘を訪れるためにしていた可愛らしいメイクを強ばらせていた。

 

「文弥、お前は命令を持ってきただけだ」

 

「…今回のことに……四葉家として…支援は出せないということです…」

 

「当然の判断だろうな」

 

「達也兄さんはそれでいいんですか!?」

 

「今国防軍と事を構えることは得策じゃない。十師族の内部抗争とは訳が違う。今回のことで一族丸ごと地下生活を強いられるのは収支が明らかにマイナスだ。それにだ来るというならば1人で全員を返り討ちにすればいいだけ。幸いにもスーツ、バイク、トーラス、トライデント、ランスヘッドもある。「今果心」や「大天狗」クラスは話が別だが、そうでないなら後れを取るつもりは無い」

 

伊豆の別荘で達也と文弥が話し合っている時深雪も東京で文弥の双子の姉である亜夜子を迎えていた。

 

「今日の私は単なるメッセンジャーです、深雪お姉様。近日中に達也さんがお住いになっている別荘が国防軍によって襲撃される可能性が高くなりました」

 

「そうですか」

 

「驚かれませんのね」

 

「普通に予想は出来ますから。私は国防軍を信用していませんので」

 

「達也さんが独立魔装大隊に籍を置かれているのは信用しているからなのではと思いますが」

 

「そうね。でも親しくされている方がいると多少なり情に流されるものでしょう?達也様は完全に感情を失っているわけではありませんから」

 

「……日曜の詳細は国防軍の動向が掴め次第お知らせします。ですが私に出来るのはここまでです」

 

「……もっと分かりやすくお願いするわ」

 

「つまり本家も分家も情報以上の支援は出来無いということです」

 

「それが叔母様の決定なのね?」

 

「…はい。しかし四葉家としてでは無くあくまで一個人としてお力になってくださる方がいます。どうぞお入りください」

 

「失礼するわ」

 

「お、従姉様!?」

 

「久しぶりね、深雪ちゃん。亜夜子ちゃんもご苦労さま、後で送っていくから控え室で待っていてくださるかしら?」

 

「かしこまりました、沙夜姉様。それでは深雪お姉様、確かにお伝えしましたので」

 

そう言うと亜夜子は部屋を出て控え室へと姿を消していった。

 

「さて、国防軍が達也が住んでいる別荘を襲撃することは聞いたわね?それを聞いて貴女はどう思った?」

 

「私は元から国防軍を信用している訳では無いので」

 

「そうね。それは私も同じだからわかるわ。ところで貴女、今週の土曜に伊豆に行くつもりなのよね?」

 

「出来ればそうしたいです」

 

「私は日曜日に行くわ。だけど私は貴女達とは別に動いてるから私の事を見つけても決して私のビジネスネームと四葉 沙夜っていう名前を出さないでね」

 

「かしこまりました、従姉様」

 

「よし、それじゃあこれを渡しておくわね。何かあったら使いなさい」

 

「従姉様、これは?」

 

「それは達也に聞きなさい。達也ならこの魔法の起動式がどういうものかわかるでしょうから」

 

「かしこまりました、従姉様」

 

「それじゃあ私も失礼するわね、亜夜子ちゃんを待たせてるから」

 

「従姉様、本当にありがとうございます」

 

「いいのよ、可愛い従兄妹のためですもの。それと気をつけなさい、これは私の予測でしかないけど七草家のお嬢さんも来るそうですから」

 

「七草先輩が?」

 

「ええ、それじゃまた日曜日に会えたら会いましょう」

 

「はい。よろしくお願いします、従姉様」

 

そう言うと私は手を振って部屋を出て控え室に待っていた亜夜子ちゃんと合流するとそのまま四葉本家へと向かった。

 

四葉本家に着くと葉山さん先導の元夜遅くにも関わらずお母様は書斎にて私達のことを待ってくれていた。その数分後には達也の元へと行っていた文弥くんもやってきた。

 

「沙夜、文弥さん、亜夜子ちゃん今日はお疲れ様でした。達也さんと深雪さんにわかってもらえましたか?」

 

「…はい……」

「はい。ご当主さま」

 

「そう…それはよかったわ」

 

「ご当主様、私が達也達の手助けをして本当にいいのですか?」

 

「ええ、構わないわ。貴女は私達には出来ないことが出来るからというのもありますけど」

 

「沙夜様にしか出来ないこと?」

 

「私って2つの顔があるじゃない?その時に魔法を使ってるからね。貴方達にも教えてあげようか?」

 

「沙夜……貴女だけにしか扱えないのだからやめなさい」

 

「だって、ごめんね」

 

「い、いえ」

 

「文弥さんと亜夜子さんはもう帰って結構ですよ。沙夜はそうねぇ葉山さん後お願い出来ますか?」

 

「もちろんでございます、奧様」

 

「それじゃあ皆さん、おやすみなさい。最後に改めてお疲れ様でした」

 

「おやすみなさい、お母様」

「「おやすみなさいませ」」

 

私と黒羽姉弟は部屋を出て別れて私は葉山さん先導の元四葉家がある村の野外演習場へ黒羽姉弟は四高の近くにある自宅へと戻っていった。

 

それから2時間、私は本家直属の戦闘魔法師を相手に国防軍情報部防諜第三課を念頭に置いた実戦形式の演習を行ってもらった。ここで私が確認したかったのは「疑身暗影」を使いながら他の魔法を繰り出しおそらくいるであろう十山家の障壁魔法を打ち破れるかだ。「疑身暗影」を使う以上パラレル・キャストを行うことが必須事項になってくる。ただでさえ四葉家の魔法師として少なくないハンデを背負っている私にはパラレル・キャストは足枷になる可能性があったからだ。結果的にパラレル・キャストで「疑身暗影」を使いながらでも十山家の障壁魔法と同じくらいの強度と思われるであろう障壁は無効化することが出来たので私は一安心し、さすがにこれから四葉本家から立川にある自宅まで戻る気力も無かったため本邸内にある自室で一晩を過ごした。

 

土曜日、深雪と水波は沙夜に言っていた通りに伊豆にある達也の元へとやってきていた。水波の手には深雪と水波2人分の着替えと必要なものを入れたカバンそして1つのアタッシュケースを持ってきていた。ひとまず感動の再会を果たすとここまで深雪の運転手役を勤めていた兵庫が帰ると達也の案内の元別荘内へと入っていった。そこから色々とあったが今日という日ももう残り数時間となった夜達也と深雪はバルコニーで夜風に当たりながら向かい合って座っていた。

 

「達也様、明日十文字先輩はあの秘術をお使いになられるのでしょうか」

 

「あれは魔法師生命を早めるものだが使わないという選択肢というのは無いだろうな。十文字先輩はあの場面には居合わせていないはずだが七草先輩から俺のことについては少なからず情報は持っているだろうからな」

 

「そこに国防軍もというのは些かズルい気はしますが達也様なら大丈夫だと深雪は信じています」

 

「ああ、十文字先輩は兎も角国防軍の連中に負けるつもりは毛頭ない」

 

「その…その事に関して先日従姉様が私の元に来まして」

 

「沙夜様が?」

 

「え、ええ。それで明日こちらに来てくださるそうです。ですがあくまで四葉 沙夜としてこちらに来るのではなく私の付き人という名目でやってくるそうなので名前や風早 似衣菜とは呼ばないで欲しいと言われました」

 

「そうか、分かった。それで来た時から気になっていたんだがそのアタッシュケースには何が入っているんだ?」

 

「……そこに入っているのは魔法の起動式のようで従姉様は達也様なら分かると仰っていました。そしてその2日後、四葉の東京ビルにこのアタッシュケースにこの起動式が入ったメモリーを入れろと紅林さんから言い賜りまして」

 

「なるほど……これは…シルバー・ホーン トライデント∂みたいだが一体これは……」

 

「シルバー・ホーン トライデント∂?」

 

「ああ、以前FLTに沙夜様がやってきたことがあったんだ。その時に物は試しで沙夜様に性能テストをお願いしたんだ。その時に使ってもらったのがトライデント∂。前深雪にも言ったかもしれないが最初はシルバー・ホーン トライデントβ、γ、∂の3つを作る予定だったんだ。これはその∂バージョンの完成予想品だ」

 

「完成予想品があるということは牛山さん達はこれを完成させたのでしょうか?」

 

「おそらくそういうことだろう。しかしまだこれの完成には時間がかかるものなのだが……それで沙夜様から渡されたという魔法式を見てみるか」

 

達也と深雪そして水波はバルコニーから別荘の中へと入り魔法の調整部屋へと移動した。達也は沙夜から渡されたという魔法式を見ていた。

 

「達也様、一体どのような魔法なのでしょうか?」

 

「……驚いたな。俺が慶春会で見せた「バリオン・ランス」の上位互換の魔法式だ」

 

「上位互換ですか?」

 

「ああ、バリオン・ランスは発動の工程の上で最後に「再成」を使わなければならないがこのバリオン・ランスの起動式にはその「再成」を組み込まずにバリオンを回収する工程が含まれている。こんな魔法があるなんて俺は全く知らなかった」

 

「従姉様はどのようにしてこのような術式を書き起こせたのでしょう?」

 

「分からない…だが沙夜様はFLTの筆頭株主ではあるが実際には四葉家が所有している中ではあまり動けないはず。対外的にトーラス・シルバーは世界一の評価を得てはいるがそこに依頼を出せば必ず俺や叔母上に情報は行くだろう」

 

「それでは一体何処で……」

 

「分からない……ただ沙夜様がずっと本家にいたならば紅林さんから魔法工学に関して何らかのことを教わっていれば出来ないことは無いと思うが……」

 

「…………」

 

プルルルル

 

このタイミングで不意に電話が鳴り達也と深雪は目を合わせ水波に目を向けた。水波はテレフォンを通話状態にした。

 

「もしもし」

 

『夜遅くにごめんなさいね』

 

「沙夜様……」

 

『深雪ちゃんと風間少佐、それに文弥くんを通じて知っていると思うけど明日そこに国防軍情報部が襲撃することになってるわ。当然そこには十文字殿や七草家のお嬢さんがいるから私は周囲にある森の中にこっそり隠れておくから貴方達は十文字殿達のことだけだけ考えていなさい』

 

「わかりました。沙夜様1つお聞きしたいことがあるのですがよろしいでしょうか?」

 

『何かしら?』

 

「深雪を通じて渡してもらったバリオン・ランスを改良したと思われる術式を見ましたが一体何処でこのような術式を?」

 

『…………私の友人に頼んだのよ。この魔法を達也以外が使うとなると「再成」が必要になるでしょう?その部分を他の魔法で補うことが出来ないかってね』

 

「……わかりました」

 

『誰がしたか聞かないのね。お母様から聞いてたよりも知りたがらないのね』

 

「知りたくはありますが、聞いてもよろしいので?」

 

『別に構わないわよ。この術式を作ったの私の付き人だしね』

 

「花菱さんでは無かったのですか?」

 

『兵庫さんは貴方達が四葉家の次期当主となったことで貴方達の付き人になりました。私の付き人には四海 茉純…いやミセス・kaguyaと呼んだ方が達也には分かるかな?』

 

「まさか……あのミセス・kaguyaですか?」

 

『その通りよ。だから貴方の機密漏洩は一切無いから安心してね』

 

「従姉様、そのミセス・kaguyaという方は一体……」

 

「ミセス・kaguyaはトーラス・シルバーと同じFLT所属のエンジニアの1人でトーラス・シルバーとは違い開発研究部の主要メンバーの1人だ。ある分野ではトーラス・シルバーよりも名声は高いし、今回のディオーネー計画においてもトーラス・シルバーだけじゃなくミセス・kaguyaも招待されるんじゃないかって思ってたほどだ」

 

『大体その説明で合ってるわ。その正体が最近私の付き人になった四海 茉純ちゃんなの。それとその起動式を使うのにそのシルバー・ホーン トライデント∂を使うといいみたいだよ』

 

「そうでしたか…」

 

『それじゃあ、もう切るわよ?明日の夜に会えたら会いましょう』

 

「はい、従姉様」

 

達也と深雪は沙夜からの電話を切ると改めて目の前に広がっている改良型の「バリオン・ランス」の術式を見ていた。そこには達也が開発した「バリオン・ランス」と同じような式が羅列してあったが所々違う部分があった。そしてもう1つ達也が気になったのが四海 茉純通称ミセス・kaguyaだ。ミセス・kaguyaの存在はFLT内でも偶に噂になっていた。曰くその姿は限られた人しか知らない、曰く彼女専用の個室が用意されてある等ミセス・kaguyaに関しての噂はFLT内だけでも大きな関心事になっていた。その後四葉家の伊豆の別荘で色々なことはあったが深雪と達也、水波は眠りについた。





如何でしたでしょうか?孤立編〜エスケープ編は少しだけしっかりやっていると思ってます。

評価をしてくださった方もありがとうございます

今回もご読了ありがとうございました。お気に入り登録、評価、感想よろしくお願いします。
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