四葉 真夜の娘のおしごと   作:KIRAMERO

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1週間振りになります。ここ最近はまたストックを作っていたのでその前のストックを出します。ただこれで初投稿時にストックしていたものは尽きたのでこれからは不定期にだしていきます。


伊豆での攻防と経済人としての沙夜

 

 

2097年5月26日伊豆の四葉家の別荘には6人の姿があった。四葉家次期当主婚約者司波 達也、四葉家次期当主司波 深雪、深雪の護衛の桜井 水波、十文字家当主十文字 克人、七草家ご令嬢七草 真由美、真由美に連れてこられた渡辺 摩利。この6人の話し合いは決裂し達也と克人が近くにある閉鎖されたゴルフ場へと移動していった。すると沙夜がマークしていた国防軍情報部防諜第三課の遠山つかさ(十山 つかさ)が移動を始めたのと同時に私も動き出そうとした時私の他にも誰かがいるのか木がゴソゴソし始めた。

 

「あんた、誰?」

 

「貴女こそ」

 

「私は千葉 エリカ。それで誰なの、深雪達の居場所の近くにいるっていうことは四葉家の人なの?」

 

「私は夜々 翼と申します。以後お見知りおきを」

 

「あっそ、それで貴女も今日国防軍がここですることについては知っていたのね?」

 

「ええ、もちろん」

 

「それなら手伝ってもらっていいかしら。貴女の正体が誰かは気になるけど今はそんな暇無いから」

 

「わかりました。それで私は何をしたらよろしいでしょう?」

 

「とりあえずここら辺にいる国防軍の奴らを捕まえてくれないかしら」

 

「わかりました」

 

その会話以降西城 レオンハルト、吉田 幹比古、柴田 美月、光井 ほのか、北山 雫と挨拶を交わした沙夜(翼)は次々と国防軍の士官を捕まえていき後は十山 つかさのみとなった。そしてエリカがつかさと一対一の状況に追い込んだ。

 

「さて、あんたは残り1人ね」

 

「千葉エリカさん?」

 

「ええ、そうよ」

 

「私は国防軍曹長遠山 つかさ」

 

「あっ、そっ」

 

「千葉エリカさん。私たちは任務の最中だったのですけど」

 

「ふーん、それで?」

 

「それを妨害した貴女には、ちょっと思いつくだけで暴行、傷害、公務執行妨害、銃刀法違反、これだけの容疑が成立するんですけど」

 

「あんたたちさ、少しは学習しなよ」

 

「どういうことでしょう」

 

「たとえ国防軍の士卒でも、基地や演習場の外で武器を携行するには許可と届け出が必要なのよ。あんたたちは包括認可対象外の銃器を無届けで持ち歩いている。銃刀法違反はあんたたちの方なんだけど」

 

「……高校生なのに、詳しいんですね」

 

「あんたたち、この前も無許可で演習と称して武器を振り回していたでしょ? 警察は随分とお冠よ」

 

「しかし貴女は、警察官ではないでしょう?」

 

「林の外のあいつらは現役の警官よ。しかも、達也くんに助けてもらった事があるやつの部下たちだから、軍の権威とかを笠に着て逃げようとしても無駄よ。それにあんた、分かってて言ってるでしょう」

 

「魔法師犯罪に対処する為、警察は民間の魔法師に協力を求める事が出来る。結構有名な特例よ。あたしたち魔法師の間じゃね」

 

その言葉につかさが笑みを浮かべる。その笑顔には、感情と呼べるものが宿っていなかった。

 

「というわけで、大人しくお縄につきなさい。痛い目は見たくないでしょ?」

 

 

エリカがそう言い終えた瞬間、つかさは自分を魔法障壁で包んだ。間髪入れず、移動魔法を発動する。対象は自分自身。エリカは慌てず、自分目掛けて飛んでくるつかさの身体を横にステップして躱し、その胴を薙いだ。

済んだ音を立てて、刀が折れる。エリカの打ち込みとつかさの障壁に、刃引きした刀身が耐えられなかったのだ。つかさをそのまま、山の奥へ逃走を図るが、その前にレオが立ちはだかった。つかさが空中でショルダータックルの体勢を作り、レオが地面を踏みしめ半身になってそれを迎え撃つ。つかさの障壁とレオの肉体が衝突した。レオは微動だにせず、つかさは後方に弾き返される。それにより、移動魔法の効力が切れた。

エリカが滑らかな足取りでつかさに迫る。地割れが走り、木の根が所々露出している足場の悪さをまるで感じさせない、舗装された車道を走っているかのような安定した姿勢。右にも左にも躱せない。つかさはそう感じた。

彼女に出来るのは、障壁で身を守ることのみ。何時でも動けるように、障碍物に引っ掛からないように、つかさは身体に沿って障壁を構築した。

エリカが折れた刀を振り下ろす。その刀身は、つかさの身体ばかりか、魔法障壁にも届いていない。エリカが、折れた刀身の間合いを見誤ったのだ。ありえない幸運に、つかさはチャンスだ、と思った。

 エリカは刀を下ろした姿勢で残心を取っている。いや、居着いている。つかさの目にはそう見えた。彼女はエリカの横をすり抜けて逃げるべく、右足を踏み出した。

その膝が、力なく折れた。右足だけではない。左足にも、力が入らない。全身に力が入らない。つかさの身体が、地面に崩れ落ちる。エリカが残心を解いた。つかさが、その姿を見上げる。エリカが振るう折れた刀身の先に、陽炎のような想子の刃がついている事に、つかさはその時、漸く気が付いた。

 

「裏の秘剣、切影」

 

エリカがそう呟くと陽炎の刃が消えた。それを確認しながらつかさの意識は闇に消えていった。そしてエリカと沙夜(翼)は来ている皆と共に達也達がいる場所へと遠山 つかさをレオが持ち上げて進んでいった。

 

「達也くんは孤立なんてしないわよ」

 

手入れがされなくなって無秩序に木々が生い茂った山の中から、良く見知った四人の少年少女が下りてきた。エリカ、レオ、幹比古、ほのか、この場には顔を見せていないが、美月と雫も近くにいるに違いない。

 

「俺たちがいるからなぁ。それとこの人、十文字先輩の知り合いなんだろ?引き取ってもらえますか」

 

レオが恐れ気もなく克人の前に立ち、つかさを地面に下ろした。

 

「達也さんを孤立なんてさせません!」

 

「僕たちは達也の友人です。いえ、それだけじゃありません。僕は達也に、返しきれない恩がある。だから、例え達也が犯罪者になっても、絶対に見捨てたりはしません。僕は達也を孤立させたりしません」

 

「おいおい、幹比古。恩なんて関係ないだろ? ダチだから。これ以上の理由があるもんかよ」

 

苦笑いしながら幹比古が「そうだね」と応えると克人は地面に落ちていたつかさを抱えあげて達也の方へと顔を向けた。

 

「司波。お前はいい仲間を持っている。少し羨ましいぞ」

 

克人が背中を向け、別荘の前に止めたSUVへと歩き出す。

 

「お、おぃ!」

 

置いて行かれそうになった摩利と真由美は慌てて克人の背中を追いかけた。それを見送った達也は毒気を抜かれた顔で、飛び入りの友人たちの顔を見回す。

 

「随分と派手にやったようだな」

 

「大丈夫よ。合法だから。それに私達の他にもう1人いたんだけど何処か行っちゃったのかな」

 

「そういや、俺達の他に女の人がいたな」

 

「そうよ、確か名前は夜々 翼さん。少なくともほのかや雫よりかは魔法力、私とこいつのような戦闘力以上の実力を持ち合わせてたの。達也くん知らない?」

 

「いや、心当たりはない」

 

「私も心当たりは無いわ」

 

「じゃあ誰だったんだろう……」

 

「まぁ、その話はこれくらいにして皆寄っていってくれ」

 

達也は全員を別荘に案内することにした。だがそれは早々に打ち切られることになった。

 

「!?」

 

「達也様、如何なさいました?」

 

「別荘の中に誰かがいる……」

 

「え?」

 

「あら、もう終わったの?随分早かったのね」

 

「従姉様!?」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

「沙夜様……何故ここへ?」

 

「言ったでしょう、日曜に行くって。初めまして皆さん。師族会議四葉家代表代理で達也の姉の四葉 沙夜と申します」

 

その後エリカ達は順番に挨拶をしていくと沙夜はこれから用があるということで別荘を後にした。

 

これから用がある。それは沙夜が言ったことではあるが半分は嘘で半分は本当の事だ。確かにこれから沙夜は東京である人達に会わなければならないことになっていてこれは幾ら沙夜が風早 似衣菜、四葉 沙夜どちらの名前であっても反故にしたら大変なことになるのはわかっていた。しかしその待ち合わせの時間まで時間はありまだ2時間は伊豆にいても問題は無かったが達也や深雪それに水波のことを思い出てきたのである。

 

「沙夜様、お時間まで如何なさいますか?」

 

「様付けなんてしなくていいわよ。私と貴女の仲でしょ、茉純」

 

「ですが……」

 

「大丈夫よ、それくらいのことでお母様は貴女を呼びつけたりはしないから」

 

「そうですね。それで彼に渡した術式は使っていただけたのでしょうか?」

 

「それは分からないわ。だって私は千葉家のお嬢さん達と一緒にいたもの使ったかは分からないけどおそらく使わなかったと思うわ。既存の術式でも充分でしょうから。十文字殿や七草家のお嬢さんも達也の「再成」については横浜の時に知っているでしょうから」

 

「それでこの後はどうするのですか?FLTとしては達也様の「ESCAPES計画」は無視できることではないでしょう?」

 

「そこら辺は考えてあるわ。それでも1つ懸念材料があるとしたらエドワード・クラークとフリズ・スキャルヴね。おそらく彼らは達也がトーラス・シルバーだと思い込んで「ディオーネー計画」に招いたんでしょうけどそれを公表されると少し厄介ね」

 

「そうですね、では御自宅へお送り致します」

 

沙夜は伊豆の別荘を出ると立川にある自宅へと戻っていった。そこから約2時間国防軍と一戦交えたから色々身支度を行い時刻にして17時に今日沙夜が呼び寄せられた場所まで沙夜と茉純の2人で神楽坂にある料亭へと向かった。着くと既に今日の相手は到着しており沙夜は内心急ぎながら部屋へと女中の後を付いていった。

 

「お客様がお見えになりました」

 

「失礼します、遅れました。初めまして四葉 沙夜と申します」

 

「いや遅れて等はおらぬ、面をあげよ沙夜」

 

「こちらこそ初めまして、九重 八雲と言います」

 

「家の達也が何時もお世話になっております。私個人として「果心居士の再来」と言われる九重殿にお会い出来ることを嬉しく思います」

 

「ははっ、そんなに気にすることないよ。僕だって半年前まで日本中いや世界中の人々が知らなかった君と会えたことを嬉しく思うよ」

 

「そろそろ本題に入りたいんだがな」

 

「失礼しました、東道殿。私を呼び寄せたのはそれなりの理由があってのことでしょう?」

 

「ああ、先日沙夜から相談を受けていた「ESCAPES計画」のことだが条件付きで認めてやろう。四葉 達也にはこれからもこの国の抑止力として動いてもらうことだが、そこに関してはお主の付き人にも出来ることだろう?」

 

「茉純ちゃん、答えていいわよ」

 

「それでは失礼します。確かに私は戦略級魔法を作ることは出来ますが誰がその戦略級魔法を扱えるかまでは分かりません。この国にはまだ五輪殿の他に私が思っている中では2人ほどは分かりますが実際に使いこなすにはやってみなければ分かりません」

 

「確かにな。そこに関しては真夜に聞くと良い」

 

それから日付けが変わるまで沙夜と茉純、東道と八雲は達也や深雪それに沙夜と東道の経済話を中心に話して頃合いを見て解散となった。

 

次の日沙夜が懸念していた事が現実となった。「七賢人」と名乗るある人物がトーラス・シルバーの正体は司波 達也であると各情報機関を通じて公表したのだ。達也はこのことを知ると本家へ電話し本家でお話しをすることになりその後次の日に四葉のスポンサーである東道 青波と九重寺にて「ESCAPES計画」の許可を得ることが達也にとっての最大の使命となった。翌日指定された時間に行くとそこには九重寺の住職である九重 八雲、四葉のスポンサーである東道 青波。そしてFLTの最大株主であり国内の経済界において確固たる地位を築いている風早 似衣菜がそこにはいた。話し合いは特に何も起こらず東道 青波から許可をする代わりにこの国に対する抑止力になって欲しいと頼まれた。達也にとって既に要らない名声を得てしまっているのもありそれを了承した。その後FLTの最大株主である風早 似衣菜からも要望があった。

 

「四葉 達也、貴方は先程「ESCAPES計画」ではプラントを海洋上に建設するという事でしたが目処は立っているのですか?」

 

「いえ……」

 

「はぁ……それじゃあ私達の方で場所は見繕ってあげましょう。後日代理人を通じて話を聞いてください」

 

「……わかりました」

 

その後達也は居住地である伊豆へと戻っていき、4人が話していた場所には九重 八雲、東道 青波、四葉 沙夜が残り達也が去ったところに沙夜の付き人である四海 茉純が入ってきて再び4人で話していた。九重 八雲が東道 青波に達也について聞いたりして時は過ぎていきやがて時刻は後1時間で日付けが変わりそうな時間になっていた。

 

「沙夜、先程四葉 達也に「ESCAPES計画」のプラント建設予定地について後日提示すると言っていたがアテはあるのか?」

 

「先日、お母様からこの度国防軍から払い下げられた巳焼島に四葉の研究拠点を置くという点は閣下にお話ししたと思いますがそこに置くのはどうかと思っています。まだお母様から了承を得たわけではありませんが私個人としては巳焼島が1番都合がいいと思っています」

 

「なるほど……」

 

「僕にそれを教えても良かったのかな?」

 

「構いませんよ。場所が九重寺ということからして無傷で帰れるとは思っていませんでしたから」

 

「それは心外だなぁ。それと1つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

 

「構いませんよ」

 

「沙夜さんが使ってた九島の秘術「仮装行列」に似た魔法はどう実現したんだい」

 

「それについては私からお話しますが、沙夜様がお使いになられている魔法は系統外魔法「疑身暗影」。現状では「仮装行列」よりは劣りますが九重様が気になっている九重の秘術は使っておりません。再現出来るものでもありませんので」

 

「つまり改良次第では「仮装行列」を超えるかもしれないと?」

 

「いいえ、その点は問題ありません。この術式は私でしか術式の作成が出来ず、使えるのは沙夜様だけですので」

 

その言葉以降八雲は「疑身暗影」のことについての追求を止め東道 青波へと目線を移しその後日付けが変わるくらいまで九重寺の奥の間で他愛もない話で盛り上がっていた。東道 青波と四葉 沙夜いや風早 似衣菜の四葉を裏で仕切るこの2人に九重 八雲は顔には見せないが戦々恐々と感じていた。

 

沙夜と茉純、東道 青波の3人は東京の立川にある沙夜の個人宅へとやってきていた。東道 青波がこの場所を訪れるのは初めてではない。むしろ沙夜を含めた四葉家の関係者を除いたら1番訪れる回数が多い方だ。東道 青波がここに来たのは単に一晩だけ泊まるだけであり東道は最早自分の家のように客間として使っている部屋へと入っていった。沙夜と茉純はその様子に苦笑いしながらも思い思いに過ごしていった。

翌日東道 青波は夜に赤坂にある料亭へとやってきていた。目的は日本の中でも有数のグループであるホクザングループ総帥北方 潮を迎えていた。その頃沙夜はFLTのCAD開発部門の研究施設を訪れトーラス・シルバーのトーラスの牛山と明日の発表について最終的な打ち合わせを行ってから本社へ訪れ開発本部長である達也の父親である司波 龍郎、代表取締役社長等との面会を重ねていった。

 

あらゆる事態を想定して迎えた5月31日FLTの発表会には表舞台には出ないものの念の為ということもあり沙夜も会見場の端の方で見守っていた。懸念はあったが流石というか達也の会話術は取材に来ていた記者たちの何段も上を行くものであり沙夜が心配していた事は杞憂に終わった。

 






お気に入り件数がもうそろそろで100件になりそうで追加してくださった皆様ありがとうございます。次の投稿は沙夜や茉純を含めたこの話の中での人物紹介にしたいと思っています。

今回もご読了ありがとうございました。お気に入り登録、評価、感想よろしくお願いします。
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