やっぱり、リーナってキャラ的には最高のキャラだと思うんです。
あの伊豆の襲撃から2日後USNAでは2つの場所で頭を悩ませている者がいた。ロサンゼルスのNSA本部でベゾブラゾフの司波 達也暗殺計画が失敗に終わったことによるベゾブラゾフとの連絡が不能に陥ったことに悩ませさせられているエドワード・クラーク、ニューメキシコ州にあるUSNA軍の魔法師部隊スターズ本部にある宿舎の自室にて先日のことについて思い悩んでいるアンジェリーナ・クドウ・シールズことUSNAの国家公認戦略級魔法師アンジー・シリウス。
何故両名が悩んでいるかというと先日の1件が発端になっている。前者はベゾブラゾフとのことや司波 達也のことについて、後者は同じく司波 達也のことについて考えていた。両者は同じ人物について考えていたがそれでも根本的なところが全然違っていた。
ところ代わり日本では先日の伊豆周辺を襲った出来事について世間は一部メディアは報じていたがそれでも日を追う事に少なくなっていた。国からの発表は相手国を不明として国際社会に抗議をするというものであり、特定の国に対しての抗議では無かったのもあるだろうがそれ以上に沙夜が関係していた。沙夜はまだ弱冠21歳ではあるものの経済界や財界にとても影響力を持つ。何時までも同じような報道をしていてもそれが視聴率とは繋がらないと考えている。その他にも沙夜は表の世界では魔法師擁護派として世間に知られている。そのためにただでさえ人間主義者が多いのに火に油を注ぐようなことは沙夜はしたくなかった。
それから何日か経ち、沙夜の体調も心身両面で万全の状態に戻りまた沙夜にとっての何時もの日常が戻っていた。沙夜が万全の状態に戻るまでに達也の身の回りでは色んなことが起こった。
1つ目は達也が東京へと戻ってきたこと。これに今日のように多少雨が降っていて関しては達也自身も変に郊外にいるよりも都会にいた方がベゾブラゾフに奇襲を受けにくいという点において戻ろうとしていた。
2つ目は達也が東京に戻ってきたのに合わせて再び一高に通い始めたということ。これには深雪が関係している。達也は一高の授業を免除されているが一高の生徒会メンバーの1人でもあるそれに深雪と水波が登下校中に襲われないとも限らないためである。
これ以外にも百家の十三束家の"レンジ・ゼロ"と向かい合ったりと色々なことがあった。
そして6月12日、この日は朝から雨が降っていて沙夜が現時点でいる立川、一高がある八王子周辺も道路が雨水に浸っていた。達也と沙夜、茉純の3人は朝起きた時から警戒心をマックスにしていた。以前四葉家本邸で達也が北海道侵攻の際にトゥマーン・ボンバと思わしき魔法を捕捉し、その詳細を聞いた時から茉純と達也だけはトゥマーン・ボンバを放つのに最適な条件が今日のような天気だということに気づいていた。この日、達也達が住んでいて調布にある四葉家のビルには早朝にも関わらず沙夜の付き人である四海 茉純が達也の元へと訪れていた。最初は深雪と水波も同席しようとしていたがそれは茉純による必死の説得により達也との一対一での対面となった。
「早朝にも関わらず、ありがとうございます」
「いえ、それでどういったご用件でしょうか」
「達也様も気づいているかとは思われますが、今日はトゥマーン・ボンバを打つにはうってつけです。前回は沙夜様が防ぎましたが今日、沙夜様は四葉家及び風早 似衣菜絡みの案件があり時間に関わらず防ぐことは不可能です。ですから深雪様、水波のことをよろしくお願いします」
「これは俺自身が蒔いた種ですので分かってはいます。ですが何故貴女が」
「私は四葉家のメイドとして、水波の先輩メイドとして貴方にお願いします。私のような一メイドが真夜様の息子である貴方にお願いするなど言語道断です。ですがお願いします」
「……分かりました。自分からも1つよろしいですか?」
「私に答えられる事でしたら」
「沙夜様にはガーディアンは付いていないことに理由はあるのでしょうか?」
「……沙夜様にガーディアンがいない理由は私にあります。私は元々沙夜様のガーディアンとして四葉家の中で生きていきました。ですが私はある事を発端に沙夜様を守ることは出来なくなりました。ですからどうか私に沙夜様のいない世界を作らないでください」
「……分かりました」
「ありがとうございます。では私はこれで。沙夜様には私が貴方に会ったことは秘密にしておいてください」
茉純はそう言うと達也と話していた部屋を出て、まだ寝ているだろう沙夜の元へと帰っていった。茉純が帰ると部屋に深雪と水波が入ってきた。
「…達也様、四海さんはどのような用件で来られたのですか」
「もしトゥマーン・ボンバが発動されるようなら今日、沙夜様は俺達を守ることは出来ないそうだ。何でも四葉家及び風早 似衣菜絡みの案件があるらしい」
「そうでしたか……」
「…達也兄様…茉純さんはそれ以外に何か仰っていませんでしたか?」
「水波ちゃん?」
「……確かに四海さんからは水波の事を案ずる話はあった。何か四海さんとあったのか?」
「少し前の話になりますが、私がまだ四葉家にいた頃……」
〜数年前の四葉家本邸にて〜
私の名前は桜井 水波。四葉家にメイドとして仕える1人です。私は主人である四葉 真夜様から将来的に次期当主となる人のガーディアンになるために訓練を受けています。今はそんな訓練の休み時間ですが私は今半ば強制的に横にされています。
「お疲れ様〜水波ちゃん」
「し、四海さん。えっと……この状況は…」
「んー?」
「……四海さんは戻らなくてもいいんですか?」
「私はいいの。白川夫人からも今日貴女は水波の傍に付いていなさいって言われたから。それに私は四葉家にいる単なるメイドだけどさちょっとだけ扱いが特別なんだ」
「え?」
「私さ、前に不慮の事故でちょっと怪我しちゃってお医者さんから過度な魔法戦闘と戦闘は避けるべきだって言われてね。それからはずっと魔法工学技師になるために勉強してる傍らこうやって水波ちゃんのように将来的にガーディアンになる人のサポートをしてるの」
「……四海さん……」
「だから水波ちゃんにはさ、そんなことが無いようにって思ってるからさこんなことしてるの」
〜回想 終わり〜
「そうか……そんなことがあったのか…」
「達也様……」
「四海さんのことも気になるがそれよりも今日も学校だ。深雪、水波お前達のことは俺が守る」
その言葉をきっかけに達也達は学校へと登校した。そして達也と茉純が思った通りベゾブラゾフは学校にいるタイミングでしかも今日という日に再び達也を襲撃することにしていた。
時刻は間もなく日本時間で正午を迎えようとしていた。新ソ連沿岸州は日本の標準時から1時間進んでいるため昼食時だがベゾブラゾフは食卓に目もくれず目の前のことに集中していた。前回の反省を踏まえ『アルガン』は『イグローク』が分子間結合力中和魔法により気化してもダメージを受けないように改良してある。また『アルガン』を繋いだ新シベリア鉄道の列車は、ウラジオストクの郊外ではなくその北方のウスリークス郊外に停めてある。前回の地理データを基に攻撃されない為の用心でもある。
連れてきた『イグローク』も前回の二体に対して、今回は五体。残された『イグローク』を全てこの作戦に投入する構えを取っていた。フォーメーションは発動用の外付け演算装置として『イグローク』を二体、ファイアウォール用を一体、予備を二体。USNAのスターズを相手にした時も、これほどの大盤振る舞いはしていなかった。それだけベゾブラゾフが、前回の雪辱を果たすべく今回のミッションに入れ込んでいる証拠だった。ようは達也の攻撃に怯えて、大型CAD『アルガン』を搭載した列車車両から転がり落ちるように逃げ出した。あの記憶が、ベゾブラゾフのプライドを苛んでいる。あの屈辱は、必ずや果たさ無ければならなかった。放置している程に、段々頭がおかしくなる。それがベゾブラゾフの実感だった。そして、あの忌まわしい恥辱を忘れる為の唯一の道は、司波達也を葬り去る事だ。それがベゾブラゾフの意識に住み着いた妄執だった。
コンソールに情報部から回ってきたデータを呼び出す。司波達也は現在、第一高校にいる。核融合炉プラントを企画するほどの頭脳の持ち主が高校で何を学習するのか、ベゾブラゾフにはさっぱり分からないし時間の無駄としか思えない。
しかし学習面の意味は別にして、第一高校の内部に籠っているのは厄介だった。頑丈な鉄筋コンクリートの建物は、衝撃波で破壊するのが難しい。旧世紀のコンクリートではなく、第三次世界大戦中に開発された高強度の物だから尚更だ。
だからといって『トゥマーン・ボンバ』は移動中の相手を狙うのには向いていない。二つの住まいは衛星写真から推測して、学校以上に頑丈だとみていた。さらに前回『トゥマーン・ボンバ』を完璧に止められたことについても細心の注意を払い、そしてベゾブラゾフは『アルガン』内にある『イグローク』を操るためのスイッチを操作した。
「(ご主人様、魔法発動の兆候を探知しました。発動点は一高直上二百メートルです)」
ピクシーから能動テレパシーで送られてきたメッセージに達也はこの時既に魔法式を複写して時間差で発動する「チェイン・キャスト」の発動をしっかり捉えていた。達也は立ち上がると懐から大型拳銃型のCADを引き抜いた。この時はまだ授業中でクラスメイトは驚きざわめくが達也は目もくれずシルバーホーン・カスタム 『トライデント』を真上に向けた。照準を固定させるとその瞬間『トライデント』の引き金を引いた。
その後、達也はベゾブラゾフからの攻撃を一切合切防ぎ、さらにおそらく『トゥマーン・ボンバ』を発動するのに必要であろう専用CADを分解した。それが終わると達也は席に再び座った。周りからは色々見られていたがそれを全て無視して。その後すぐにチャイムが鳴り、美月と共に食堂へ向かった。
この時、沙夜もとある場所で発動の瞬間を察知していたた。茉純から事前に伝えられていたが、それでもこれ程までに分かりやすいのかと感じていた。その夜、沙夜は誰一人連れずに九重寺を訪れていた。この時、沙夜が九重寺を訪れていることを茉純を含めた真夜以外の四葉家関係者は知らない。何故真夜が知っているのかは東道 青波自身が真夜に今日の夜、沙夜を借りると申し出があったためだ。
「お待たせしました。東道殿、九重殿」
「それほどは待っておらぬ。そこに座れ」
「ありがとうございます」
「沙夜さんは今回のことどう思うんだい?」
「新ソ連いやベゾブラゾフ、クラークにとっては有効手段だとは思います。彼らの目的はおそらくトーラス・シルバーの技術力ではなく達也の戦略級魔法を自分達の所に届かないところに隔離もしくは術式の無効化が目的でしょうから」
「なるほど。さすがは真夜の娘だけはあるな」
「恐れ入ります」
「明朝、政府が今回の件について公式発表するがそれについては」
「閣下の思うがままに」
「それなら良い」
その後少し話したら沙夜と東道 青波は九重寺を後にしてそれぞれの自宅へと帰っていった。沙夜はここまで1人で来ていて、夜も更けてきたので自宅まで東道に送ってもらった。
明朝、政府は第一高校の上空において発生した魔法についての公式見解を示した。外務省は大臣のコメントで新ソ連に対して未遂とはいえ侵略行為だと強く非難して、国際社会に新ソ連に対しての制裁を呼びかけた。さらに東道 青波の意を受けた産業省は外務省以上に踏み込んだものだった。産業大臣はあくまでもデータ観測に基づくと断りを入れながら、今回のことは新ソ連の『十三使徒』イーゴリ・アンドレイビッチ・ベゾブラゾフによるものだと発表した。この発表はベゾブラゾフが参加を表明している『ディオーネー計画』の平和的性格について深刻な懸念が生じ始めた。
達也はこの外務、産業両大臣の記者会見のニュースを朝食の席で見ていた。少なからず時期が経てば政治家もこういう考えを持つと思ってはいたがそれにしても早すぎると思ったが以前東道 青波、風早 似衣菜との話し合いをした時からこういうことになるのはある程度予測出来ていたが達也はその早さに驚きを隠せなかった。
その日の夜、達也達に思いがけない来客がやってきた。
「ハ、ハーイ……」
それはUSNAが対外的に誇るUSNA軍最強の魔法師部隊スターズの総隊長で戦略級魔法師のアンジー・シリウスもといアンジェリーナ・クドウ・シールズがエントランスに立っていた。そしてもう1人の人を達也達はまだ知らない。リーナの後ろにピッタリくっついているとても同い年には見えない小さな女の子がそこにはいた。
如何でしたでしょうか?次の話から原作的にはインベーション編に入っていきます。この話では水波の負傷が無いのでそこをどうしようかというのが悩みの種です。
今回もご読了ありがとうございました。お気に入り登録、感想、評価よろしくお願いします