第1話 開戦の狼煙 前編
人間と妖怪が共存する世界。
そこにはたくさんの人々や妖怪達が生存競争しながらも、共に生きてきた。
そして、それらを平和へと導く1人の人間の最高指導者がいた。
名を"後藤博文”という。
だが、その指導者がある妖怪に殺され、人々は混乱を招き、遂には人間と妖怪の全面戦争が勃発した。
結果、圧倒的な戦力を持つ妖怪達の圧勝に終わり、これまで人間達が統率してきた社会から、人間達に代わって、妖怪達が統率、支配する社会へと変貌した。
この物語は、過酷な妖怪社会の中で様々な人間や妖怪がそれぞれの意志、思念、野望を抱き、次第に交差し、戦い、衝突しながらも惹かれ合う。
人間と妖怪達の生き様を描いた物語である。
2022年 戦後。
人間よりも遥かに高い能力を持つ妖怪達が世界の頂点に立ち実力・能力主義の社会となり、実力・能力を持たない人間達は食料となり淘汰される世界となった。
能力を持つ人間は職とそれなりの生活を保障され、ただ妖怪達に頭を下げ、媚び、ただひたすら命令に従い働く事を強いられるようになった。
そんな中、妖怪社会全体を震撼させる程の事件が起きた。
それは、たった1人の人間が妖怪を殺し回るという人間を遥かに凌駕する妖怪達にとっては考えられない程の不可思議な事件である。
その事件を調査するべく、人間の中でも少数ながら優れた能力を持つ『霊能力者』と妖怪達の共同捜査が始まった。
捜査に出向いた者達は、その妖怪連続殺人が起こる現場に赴いた。
「ここで間違いないだろうな?」
「ええ…間違いないと思います。」
「妖怪殺しの特徴はどんな感じだ?」
「特徴は、短い髪の少年で、身長は180〜190cm程の筋骨隆々の男で、''対象“を両手で空間ごと削り取る事が出来る能力を有しています。
遺体の殆どは、何かしら身体を削り取られた様な物になっていて、特に妖怪の中でも最上級種族の吸血鬼の削り取られた遺体には、本来再生能力を持っているのにも関わらず再生出来ておらず、そのまま息絶えてしまっているケースが多々あります。」
「…恐ろしい能力だな…。」
事件の内容に震撼し、沈黙する霊能力者と妖怪達。
しばらくして、現場からその妖怪殺しの目撃情報が来た。
「報告!現場から妖怪殺しらしき男が現れたようです!!」
「了解した。よし!直ちにその目撃場所に直行だ!!」
「了解!!」
「おい樹!!ボサッとするんじゃねえ置いてくぞォ!!」
「あ、は、はい!!」
「あの新入り、ちゃんと役に立てるんだろうな?」
「あいつも霊能力者の一員だが、いかんせん半人前で霊能力の基礎が全く固まってねえ…どうしても捜査に参加させて欲しいって頭下げてたから、仕方なく今回の捜査に連れて行ってやったが…」
目撃現場にたどり着いた捜査メンバー達。
そこに、その目撃情報と一致した男がいた。
「いたぞ!あいつだ!!」
「そこを動くな!妖怪殺し!!」
男は呼ばれた方に振り返った。
よく見てみると、その男は目撃情報とは何かしら異なる所があり、男は確かに短い髪をしていて身長は180〜190cm程だが、右腕を失くしていて、傍には1人の少女がいた。
(目撃情報と異なる…何かがおかしい…)
「妖怪殺しは見つけ次第始末しろと、あの"羅刹一座“の大妖怪様達直々の命令だからな…今日こそ貴様の命運はここで終わりだ!!」
「!?」
「人志!"羅刹一座“ってあの…!それに妖怪殺しって…!!」
「…ああ…間違いない…''あいつ”だ!!」
「覚悟しろ!!!!」
霊能力者と妖怪達は束になってその男に襲い掛かった。
「陽菜…下がっていろ…」
「う、うん…。」
男は少女に下がれと指示し、すぐさま戦闘態勢に応変した。
すると、その男からエネルギーのような物が放出され、身に纏い、自身に襲い掛かってくる霊能力者と妖怪達を次々となぎ倒していった。
「おのれ…!!」
「怯むな!!かかれ!!!!」
劣勢に立たされる捜査メンバー達。そこに待ったをかけた者がいた。
「待って下さい!!」
半人前の霊能力者である樹は、自身の血を媒介にして木を錬成する霊能力で戦闘を中止させた。
「何の真似だ小童!!」
「その人は妖怪殺しなんかじゃありません!!別人です!!その人の能力は、今僕らが探している妖怪殺しとは全く異なるタイプの能力です!」
何とか戦闘を制止させた樹は、妖怪殺しと誤解された人志と陽菜に迫られ、質問をされた。
「お前達の探しているその妖怪殺しは、''対象“を空間ごと削り取る能力を有する両手を持つ男の事か?」
「え、ええ…今のところ確認されている情報は、そんなところです…」
「私達はその人を探しているんです!教えて下さい!あの人は…''怪童“は今、何処にいるんですか!?」