戦の鉄則   作:並木佑輔

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第16話 決行

人志達の前に突如として現れた四人の妖怪達。

 

その者達は、羅刹一座の大妖怪・バサラが仕向けた刺客であった。

 

『バサラ様の命により、そこの隻腕の霊能力者の身柄をこちらに渡してもらう…』

 

『な…何故人志さんが…?』

 

『大方、陽菜の能力の秘密を暴く為だろうよ…

それに、渡せと言われてそう易々と手放す訳には行かねえからな。』

 

『そうか…では、力尽くで奪うのみ…』

 

刺客達は、人志の身柄を捕縛する為、すぐさま臨戦態勢をとった。

 

『本来なら伊達さんとの実戦をする予定だったが、仕方ない

俺達の鍛錬の成果、お前らで試させてもらうぞ。』

 

『よっしゃ!!速攻でぶっ飛ばしてやらあ!!』

 

人志、樹、愛菜の三人は、四人の内三人の刺客達を相手取り、三対三のチーム戦を開始した。

 

まず最初に愛菜が地面に手を突っ込み、地盤をひっくり返した。

 

刺客達が驚き、すぐに回避した後、愛菜は樹の血で作り出した巨大な大木に触れて硬度と強度を倍に強化させて振り回した。

 

一人は間一髪で回避できたが、あとの二人は間に合わずにやられてしまった。

 

まだまだこれだけでは終わらず、人志が雷の性質変化で瞬時に刺客の背後に回り、すぐさま炎に性質変化させて強力な一撃を喰らわせて倒した。

 

『やった!!僕達三人で勝てた!!』

 

『おうよ!これぞ鍛錬の成果ってやつだ!!

やったな人志!!』

 

『ああ!』

 

三人の戦いを見て、伊達は著しい成長を感じ取った。

 

『よそ見をしていていいのか?』

 

刺客は伊達に猛攻を仕掛けたが、伊達は危なげなく全て受け流した。

 

『そうだな…これから先の大事な仕事を完遂する為にも、速攻で終わらせなきゃな…』

 

一方その頃、けもの道でバサラが仕向けたもう一人の刺客の襲撃を受けた凍哉は、一瞬で氷漬けにして勝負を終わらせたのであった。

 

『な…何て強さだ…

これが氷華の一族の力…なのか…』

 

『俺以外にもバサラはお前のような者を刺客として送っているんだろう…?

全て洗いざらい吐け。』

 

『せ…隻腕の…霊能力者と…貴様の身柄を捕縛せよと…バサラ様から直々の命令で…』

 

敵の狙いを全て洗いざらい吐かせた凍哉は、刺客を塵にして、人志がいる長寿館に向かった。

 

残った刺客と一対一の戦いに赴く伊達は、危なげなく優勢に立っていた。

 

『ハァ…ハァ…流石は守天豪傑最後の生き残り…生半には殺れないな…』

 

『して…どうするつもりだ?

このままじゃお前、全滅だぜ?』

 

『…そうだな…このままじゃ確実に全滅する…

それだけは絶対避けなくてはならない…

バサラ様の野望を果たす為にも…必ず!!』

 

そう言い放った刺客は、自身の能力で人志達にやられた三人を吸収し、異形の化け物へと姿を変えた。

 

『何としてでも為し遂げなければならない…

あのお方の為にも!

この妖怪社会の発展の為にも!!』

 

刺客は無数の触手で襲い掛かり、人志達は触手の攻撃を掻い潜る。

 

だが、樹と愛菜が刺客の触手に捕われ、人質に取られてしまう。

 

『この二人の命が惜しければ、今すぐその隻腕の小僧の身柄を俺に寄越せ!!

さもなくば今この場で殺す!!』

 

『樹!!愛菜!!』

 

『まずいなこれは…』

 

大切な仲間を人質に取られてどうする事も出来ない人志と伊達。

 

痺れを切らした刺客は、樹と愛菜を触手で握り潰す事に決定した。

 

『やめろォォォ!!』

 

しかしその時、樹と愛菜を捕らえている触手が何者かの仕業で凍らされ塵と化し、二人が救われた。

 

『こ…!この力…まさか!!?』

 

氷華の一族の末裔・凍哉が、人志達の前に颯爽と現れた。

 

『凍哉!!』

 

『何とか助かったけど…あいつ誰?』

 

『あ…あれが、人志さんの言っていた、あの氷華の一族の…』

 

刺客は塵にされた触手を再生させ、凍哉に向かって攻撃を仕掛けてきた。

 

そんな中、凍哉は冷静に、表情一つ変えずにこう言い放った。

 

『俺の視界から消えろ…』

 

その言葉を耳にした人志と伊達は、刺客の近くにいる樹と愛菜を凍哉の視界に映らないようにすぐに後ろに回った。

 

その後、凍哉は雪華の眼を開眼し、眼前の異形の化け物を華のように凍り付かせ、塵にした。

 

無数の氷の花びら舞い散る様を見て、人志達は見入ってしまっていた。

 

『凍哉!何故、俺達を?』

 

『羅刹一座の大妖怪がお前を狙っていると、もう一人の刺客から聞いてここに来た…。』

 

『…ありがとう、凍哉。』

 

『…礼を言われる筋合いはない…』

 

『いや、お前の助けが無かったら…今頃は…』

 

『あ、あの…僕らを助けてくれて、ありがとうございます!

凍哉さん…って、呼んでいいのかな?』

 

『細かい事はあんま分かんないけど、助けてくれてありがとな!

あたしは愛菜!そんでこいつは樹!

よろしく!』

 

『恐らく陽菜の能力に関係するであろう人志や怪童、そしてお前の身柄を捕縛するよう、バサラの奴は刺客を送ったんだろう…

となると、陽菜は今頃…』

 

『…共に戦わせてくれないか…?』

 

『…いいのか…?』

 

『この先の戦いで、お前に救われた恩を返したい…

陽菜という少女の正体も探っておきたいしな…

それに、俺には最大の目標がある…

羅刹一座の大妖怪・"超越者“ヒスイ…同胞達を殺したあいつを、この眼で殺す為にな…。』

 

『…それが、あの時お前が言っていた復讐というやつか…。』

 

『…ああ。』

 

『…分かった。

伊達さん、凍哉を仲間に引き入れても構いませんよね?』

 

『勿論だ。

今は味方は多い方がいいしな。』

 

『ありがとうございます。』

 

『あ…あの…よろしくお願いします…凍哉さん。』

 

『よろしく頼むよ!凍哉!』

 

こうして、氷華の一族の末裔・凍哉が人志の仲間となった。

 

『しかし…どうしたもんかなあ…』

 

『どうしたんですか?愛菜さん』

 

『これから陽菜ちゃんの奪還をしに行く大事な戦いが待ってるけど、下の子供達の面倒見切れないし…

あの子達、大丈夫かな…』

 

『それなら心配はいらねえよ。

もうとっくにこの長寿館で引き取ってるからな。』

 

『え!?マジで!?』

 

愛菜は急いで長寿館に入って行った。

 

すると、妹の千尋と弟の蓮と剛が子供部屋にいた。

 

『あ!お姉ちゃん!!』

 

『ホントだ!姉ちゃんだ!!』

 

『お姉ちゃん!!』

 

三人の子供達は、長女の愛菜に勢いよく抱きついていった。

 

『ごめんよ…!

選定で必ず勝ってくるって約束守れなくって…!

本当にごめんよ…!』

 

『ううん!わたし達の事はもう大丈夫だよ!

これから大事なお仕事あるんでしょ?

お仕事頑張って、絶対生きて帰ってきてね!!』

 

『…うん!今度こそ約束をきちんと守るね!!』

 

愛菜が下の子供達との再会を喜んだ後、最後の仕上げとして合同訓練と、来たる戦いに向けて作戦会議をして寝床に入った。

 

そして十日目、人志達はいよいよ陽菜奪還に向けての出陣の準備をした。

 

『お前らは四人で先に行ってくれ

俺はこの後別件に出向く事になってる。』

 

『別件とは?』

 

『なに、そんなに時間は食わねえさ。』

 

『よし!!行くぞ!!!!』

 

『はい!!』

 

『…。』

 

『必ず陽菜を奪還して、全員生きて帰るぞ!!』

 

人志・樹・愛菜・凍哉の四人は、陽菜奪還の為に妖魔帝国本部に乗り込んだ。

 

伊達は、後藤博文を殺した妖怪の尻尾を掴む為に別行動を取った。

 

その頃、妖魔帝国本部の内部の実験室で陽菜は様々な実験を受け、悲鳴を上げていた。

 

実験の内容をモニタールームから見ていたバサラは、己の野望を果たす為に躍起になっていた。

 

『あともう少しだ…

あともう少しで、俺の野望は叶う…!』

 

バサラが一人ほくそ笑む一方、魔都東京の旧市街地の路地裏では、一人の人間の子供が妖怪に襲われて喰われそうになっていた。

 

するとそこに、一人の女性が現れた。

 

その女性は、長い黒髪に黒く淀んだ瞳をしていて、赤と黒の入り混じった色のドレスを見に纏った

妖艶で美しい女性であった。

 

その女性の容姿に見惚れた妖怪は、よだれを垂らしながら彼女を喰い殺そうと突っ込んでいった。

 

だが、不思議な事にその妖怪は謎の黒い炎に包まれて快楽に満ちた表情をして溶けて無くなってしまった。

 

すると、女性はさっきまで襲われそうになっていた子供に妖しい笑みを浮かべながら優しく手を差し伸べた。

 

『坊や…大丈夫?

怖かったわよね?もう安心していいのよ…

フフフ…』

 

『あ…ありがとう…ございます…。』

 

『坊や、一人なの?

近くにご両親は?』

 

『僕に、親はいません…。』

 

『そうなの、可哀想に…

でもこんな所に一人で来ちゃ駄目よ?

怖い妖怪に食べられちゃうから…

ねえ坊や、良かったら私の家に来ない?

私が面倒見てあげる…。』

 

『え…?い、いいんですか…?』

 

『ええ勿論。

じゃあ、行きましょう…。』

 

女性は、その親のいない子供を自分の家に連れ込んで、風呂で体を綺麗にしたり、ご飯を食べさせてあげた。

 

そして、女性は自分のベッドで子供と添い寝をした。

 

気持ちよく眠りについた子供を、女性は接吻をして、子供の生気と精気を余す事なく吸い取り、糧にした。

 

その女性は、かつて氷華の一族を滅ぼした羅刹一座の大妖怪、吸血鬼を超越した吸血鬼、ヒスイその者であった。

 

『ああ…感じるわ…

あの子の恨み、憎しみ、怒り…

また会える時が楽しみだわ…

凍哉くん…。』

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