戦の鉄則   作:並木佑輔

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第21話 帰らぬ日々、戻らぬ思い出

今から十年前、陽菜は幼い頃自分の隠された能力を狙う妖怪達に襲われ、両親を亡くした。

 

陽菜は妖怪達から逃げ続けたのだが捕まり、殺されかけた。

 

そこに、一人の少年が現れ殺されかけている少女を救い、妖怪達を己の拳で全力で叩き潰した。

 

それが、怪童との出会いであった。

 

「…お前…親はどうした…?」

 

「…お母さんとお父さんは…妖怪に殺された…今は、私だけ……。」

 

「俺についてこい…戦士として、命に代えても俺がお前を守り通す…。」

 

それからしばらく時を経て、陽菜を守る為に妖怪達との戦いに明け暮れていた怪童の身体に限界が生じ、道半ばで倒れてしまう。

 

陽菜は、意識を失い倒れてしまった怪童を放ってはおけず、涙を流しながら他の誰かに強く助けを求めた。

 

そしてそこに、養護施設「カモミール」の設立者であり、“守天豪傑”の一人でもある橘茜と、人志という少年がその助けに馳せ参じ、二人を救助した。

 

その後、陽菜と怪童の二人は養護施設「カモミール」で暮らすことになり、人志や子供達と親睦を深め合いながら学び暮らしてきた。

 

人志、陽菜、怪童の三人は特に仲が良く、授業が終わった後の休憩時間や昼休みの合間に自分達の将来の夢や目標についてをよく語り合った。

 

そんなかげかえのない日々の記憶を思い出しながら、陽菜は三人で撮った写真を手に取り見ていた。

 

そんな中、大妖怪・オロチとの死闘を制した樹と愛菜の前に謎の少年が現れた。

 

その少年は、過去に樹を霊能力者の道へと誘った、樹にとっての恩人であり一番の親友である和真であった。

 

樹は、変わり果てたかつての親友を前にして、言葉に出来ずにいた。

 

「よお樹!お前、随分見ねえ間に立派になったな。」

 

「…か…和真…何で君がこんなところに…!?」

 

和真は、猛毒に侵されて苦しんでいる愛菜を人質に取り、樹に交渉を持ちかけた。

 

「なあ、こういうのはどうだ樹?俺はこいつの毒を治す解毒剤を持っている。お前も大切な仲間を失いたくねえだろ?こいつの命が惜しければ、俺のところに来い。そうすればこいつの命は助かる。」

 

愛菜の猛毒を治す解毒剤を手に、着々と交渉を進める和真。

 

親友である和真に突然愛菜を人質に交渉を持ち込まれた樹は、一体どうすればいいのかわからずにいた。

 

「さあどうする樹?早いとこ決断を済まさねえと、こいつは直に死んじまうぞ?」

 

苦渋の末、樹は愛菜を救う為に和真に従う事を決意した。

 

「よおし、それでいい。」

 

樹が和真の要求を呑んだと思われた次の瞬間、樹は咄嗟に錬成した木の種を和真にぶつけ、内部から鋭利な木々で突き破らせ解毒剤を奪取した。

 

「が…あ…ああ…!!樹…何故だ…!?」

 

「和真は…決してお前のような化け物なんかじゃない!!こんなもので、僕を欺けると思うな!!」

 

解毒剤を奪取する事に成功した樹は、すぐに愛菜に飲ませて解毒し救出した。

 

その後、樹はオロチとの死闘で傷つき意識を失っている愛菜を、本部内の比較的安全な場所に木の結界を張ってそこに彼女を休ませた。

 

「愛菜さん…今はゆっくり休んでいてください…あとは僕がやります!必ず陽菜さんを奪還して、全員生きて帰る為に!!」

 

そう言い放った樹は、再び陽菜奪還に赴いた。

 

ところが、愛菜は意識を取り戻し、次の瞬間樹の木の結界を破壊して飛び出てきた。

 

「え!!?ちょ、愛菜さん!!?」

 

「おい樹ィ…お前何かっこつけて一人で先行こうとしてんだよ…!!」

 

「そ…そんなかっこつけてなんか…いやそんなことより、駄目ですよ今は安静にしてなきゃ!!解毒してまだ間もないし、さっきの戦いでの傷も…!!」

 

「それはお前も同じことだろう…?」

 

「…!!」

 

「一人で背負い込もうとするな!それでお前が死んじまったら元も子もないだろうが!!長寿館で人志達と修行した日々を思い出せ!!この戦いは、みんなで協力しなきゃ絶対に勝てない戦いなんだよ!!」

 

「……」

 

「でも、あたしの事を助けてくれてありがとう…。また一つ誰かに借りを作っちまったね…

今度は、あたしの番だ…!!」

 

「愛菜さん…」

 

「急ごう樹!早いとこ陽菜ちゃんを奪い返して、この戦いを終わらせよう!!」

 

「…はい!!」

 

二人は再び陽菜奪還に向かった。

 

一方、人志はオニタケとの死闘で意識を失い、瀕死の重傷から回復し目覚めた。

 

そこは、妖魔帝国本部から少し離れた所で伊達に連れてこられ、さっきまで治療を受けていたのだ。

 

「ようやく目覚めたか…」

 

「伊達さん…ここは…?それに、みんなは…」

 

「待て、そう焦るな。お前は四人の中で最もダメージがでかい…今は自分の怪我を治すことに専念しろ

“これから始まる本当の戦い”に向けてな…。」

 

「…どういう事ですか?」

 

「まあ、横になりながら聞け。お前らが本部に乗り込んでいる間、俺はあるものを調べに探ってきたんだ…。妖怪が支配する前、この世界の人と妖怪達を導いた最高指導者 後藤博文を殺した妖怪についてと、“妖怪の始祖”についての事を…。」

 

「…妖怪の…始祖…?」

 

伊達は人志に、生前に後藤博文がよく使っていた研究室にて書き記された「始祖」についてのレポートを見せた。

 

その内容は、遥か古の時代、妖怪達が主に生息し日々戦いを繰り返している魔界にて、全ての妖怪の始祖がおり、幾千年もの間魔界を統治していた。

 

妖怪達は始祖を神と同等以上に崇め奉っていた。

 

始祖はその強大な能力(ちから)で魔界全土のありとあらゆるものを支配し均衡を保ち、全ての妖怪・鬼・吸血鬼達に富と力を与えたもうた。

 

しかし、その絶対的存在である始祖の能力(ちから)を奪おうと画策した者が現れ、始祖は能力(ちから)を半分以上奪われてしまった。

 

結果、魔界は始祖によって長年保たれた均衡を失い様々な厄災が降りかかり、とても住める環境ではなくなってしまい、妖怪達は人間が住む世界に移転した。

 

そのレポートの最後の一文にこう書かれていた。

 

あの能力(ちから)には絶対に触れてはならない

直ちに何とかしなければ、取り返しのつかない事になる…と。

 

「…その始祖と、陽菜の能力に何か関係する事でもあるんですか…?それと、後藤博文を殺した妖怪と始祖の能力(ちから)を奪った奴は、一体誰なんですか…?」

 

「詳しい事はまだ判明出来てねえが、これだけははっきり言える…

急がねえと、陽菜が殺されちまうかもしれねえって事はな…。」

 

「!!」

 

「準備が出来たらすぐにここを出るぞ。」

 

人志はすぐに準備を整え、伊達と共に陽菜奪還に急いで本部へ戻った。

 

だが、急いでいる二人の前に、羅刹一座の大妖怪・妖狐ミコモが立ちはだかった。

 

「クソ!こんなところで足止めを喰らうわけにはいかないのに!!」

 

「もう!そんなに焦らないで!せっかく目の前にこんなにも妖しく美しい妖狐がいるのよ?」

 

ミコモは人志と伊達にエネルギー弾で先制攻撃を仕掛けた。

 

それを伊達は全て払いのけ、人志に先に行くよう指示し、ミコモとの戦いに赴いた。

 

「あら?あの隻腕の坊やじゃなくて、貴方が私の相手をしてくれるの?いいわ、私貴方みたいな渋い殿方も好みなのよ♡」

 

陽菜の元へ急ぐ人志は、その途中でヒスイとの死闘を終えた凍哉と出くわした。

 

「…人志!!」

 

「凍哉!!お前、その傷…」

 

人志は傷ついた凍哉に生命エネルギーを分け与え回復させた。

 

「お前ほどの実力者がこれほどまでに追い詰められるとは…誰にやられたんだ?その首の噛み跡も。」

 

「俺の事はどうだっていい…すぐに追いつく…。それよりも、早く陽菜を…!!」

 

「…ああ、わかってる!!必ず陽菜を奪い返す!!今度こそ!!」

 

先に急ぐ人志達をよそに、本部内部の独房にて捕らわれている陽菜の前に、突如羅刹一座の大妖怪・ヒスイが現れた。

 

「ご機嫌よう陽菜ちゃん、気分は…言うまでもないわよね?バサラ君にあんなに酷い事されちゃったものね…可哀想に。」

 

ヒスイと初めて相まみえた陽菜は、選定で初めて凍哉と出会った時と同じようにノイズを起こした。

 

それだけではなく、陽菜はヒスイを見た途端強い拒絶感と恐怖と寒気を覚え、息が荒くなり全身が激しく震えていた。

 

ヒスイはそんな陽菜を見て、妖しい笑みを浮かべながら耳元で優しく囁いた。

 

「私が貴方の全てを解放してあげる…。」

 

ヒスイが陽菜に囁いた同時刻に、バサラが独房に入ってきた。

 

「あら、バサラ君!長い実験と調査、本当にお疲れ様でした。」

 

バサラは恐怖で身震いを起こしている陽菜を横目に見ながら、ヒスイを睨んだ。

 

「ヒスイ…てめえこの小娘に何をした?」

 

「あら、私はただ陽菜ちゃんに挨拶をしに来ただけよ?別に取って食おうなんてこれっぽっちも考えてないわ。」

 

「…てめえ…一体何を企んでいやがる…」

 

「フフフ…企むなんて滅相もないわ。

お仕事、頑張ってねバサラ君。」

 

妖しい笑みを浮かべながら、ヒスイは独房を去っていった。

 

その後バサラは、度重なる実験を経て陽菜の能力の秘密やその正体に近づきつつあり、遂に最終段階の実験を始めようとしていた。

 

魔界が滅び、全ての妖怪達が路頭に迷う中、彼らを率先して人間界を支配し、真なる妖怪の世界をこの手で創り上げるという野望を掲げて、バサラは行動を起こした。

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