戦の鉄則   作:並木佑輔

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第24話 風焔相搏つ

かつて魔界がまだ滅んでいなかった頃、ある一人の妖怪は飢えていた。

 

血に、肉に、骨に、力に、野望に、ただひたすらに飢えていた。

 

その者は、他の妖怪や鬼、吸血鬼達との戦いを何度も繰り返し、己の満たされぬ飢餓、野心と常に向き合っていた。

 

そして時は流れ、「始祖」の能力が何者かに奪われ魔界の均衡が保てず滅亡をただ待つことしか出来ない妖怪達を、一人の妖怪は導き、人間達の住む世界を支配し、全ての妖怪達に安寧をもたらし、妖怪社会を創り上げ、妖怪達を束ねるべく「羅刹一座」という組織を立ち上げた。

 

その者の名は「バサラ」。

 

「羅刹一座」のリーダーであり、妖怪の滅亡の危機を救った、大妖怪の中の大妖怪である。

 

そんな偉大な大妖怪の前に今、「最大の試練」が立ち塞がっていた。

 

大妖怪である自分とは比べ物にならない程取るに足らないちっぽけな隻腕の人間の少年に牙を剝かれた。

 

その上敬意を表されたバサラは、それに応えるべく隻腕の少年を完膚なきまでに叩き潰す事を決意し、この地下戦闘訓練場をも破壊しかねない程の狂風を発し、眼前の敵に向かっていった。

 

全てを捻じ切る狂風と、生命が燃え尽きるその時まで絶対に消えない真紅の焔が今激しくぶつかり合い、地下戦闘訓練場が破壊され、両雄は地上へと上がった。

 

風と焔、二つの強大な力は拮抗し、刹那の油断すら許されない程の激しい戦いが繰り広げられていた。

 

だがしかし、徐々に人志の力が弱まり、焔が消えかかっていく。

 

「気炎万丈」は対象を完全に燃やし尽くすまで絶対に消えない炎で、極めて強力ながらもまだ未完成であり、状態を長く維持すると自滅しかねない。

 

バサラはその事に気付きながらも、初めて自分をここまで本気にさせたただ一人の人間として敬意を表し、自滅より先に己自身の手で始末する事を選んだ。

 

人志は、己の生命が燃え尽きる前にバサラとの因縁に決着を着けるべく、更に火力を上げた。

 

「気炎万丈“焔”!!」

 

“焔”で火力を底上げして攻めに行く人志に対して、バサラはそれに対抗できる程の絶大な風でぶつけて相殺しようとした。

 

「狂刃風牙乱舞!!」

 

「気炎万丈“炎威”!!」

 

互いに強力な必殺技を繰り出し激しく衝突し、両者共に吹っ飛ばされた。

 

二人の強さはほぼ互角…。

 

だが、人志には「気炎万丈」を維持する時間がもう残っていない。

 

人志はそれを自覚して、次の攻撃に全てを懸ける所存であった。

 

それはバサラも同じであり、己の長年の悲願、野望である「真なる妖怪の世界」をこの手で創り出す為に、次こそ目の前の忌々しい障害を打ち砕かんと動き出した。

 

それぞれの胸の内に秘めた思いと野望の為に、二人は互いに最後の一撃を繰り出した。

 

「天魔・風神裂斬!!!」

 

「気炎万丈“焔天華”!!!」

 

風神が如き全てを切り裂く怒涛の烈風と、紅蓮に燃ゆる猛火の華が激しく背競り合い、その衝突は、この妖魔帝国本部全体に及ぶ程凄まじいものであった。

 

激しい背競り合いの中、最初は互角ではあったが、徐々に人志が圧していった。炎は風を受けると更に激しく燃え上がる。

 

バサラの全てを切り裂く暴風が、人志の炎をより大きくさせてしまったのだ。

 

紅蓮に燃ゆる猛火の華がバサラの全てを燃やし尽くし、死闘の結果、人志に軍配が上がった。

 

遂に宿敵との因縁に決着を着けた人志は、視界が霞みボロボロになりながらも、まだ戦っている戦友達の事や、樹と陽菜の事を思い、一歩ずつ前に進み続けた。

 

しかし、バサラは瀕死ながらもまだ生きており、今一度最後の力を振り絞り、人志の背後に烈風を放とうとしていた。

 

(最後に嗤うのは…俺達妖怪だ…!!)

 

だが、烈風を放つ前に燃え尽きてしまい、バサラはその五千年の生涯を終えた。

 

陽菜奪還を懸けた妖魔帝国本部での死闘がいよいよ終わりに近づいている中、怪童とヒノマルの戦いは激化の一途を辿っていた。

 

だが、鬼神と謳われる怪物と人の子の皮を被った怪物の死闘も、決着が近づいてきた。

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