戦の鉄則   作:並木佑輔

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第35話 完成

昔々、あるところに一人の人間の少女がいた。

 

その少女には両親はおらず、物心ついた時からとある屋敷の領主に買われ奴隷として仕えられていた。

 

その人の肉欲を満たす玩具として、少女はずっとこき使われてきた。

 

ところがある日の夜、数ある妖怪の中でも最上級に位置する種族・吸血鬼達の襲撃を受け、使用人達や領主は生き血を一滴残らず吸われ、吸血鬼と化してしまった。

 

血みどろになった屋敷の風景に吸血鬼と化し自我を失った屋敷の者達を前に、唯一生き残った少女は生まれて初めて恐怖という物に対面しひたすら逃げ惑っていた。

 

だが、逃げた先に吸血鬼の大群を率いる主導者と出くわし、逃げ場を完全に失った少女は吸血鬼達に生き血を一滴残らず吸い尽くされてしまった。

 

屋敷は完全に崩壊し、生存者も誰一人いなくなったと誰もが確信したその時、一人の少女が吸血鬼と化しゆっくりと立ち上がった。

 

そして、少女は股を濡らしながら同族である吸血鬼に馬乗りになって襲い掛かり、狂ったように口を愛撫しながら腰を振った。

 

吸血鬼は少女の中に精を余す事なく全てぶちまけ、口による愛撫で生を全て吸い尽くされ抜け殻と化してしまい、他の吸血鬼達はそれを見て少女に拭い去る事の出来ない恐怖を抱き始めた。

 

満たされない少女は渇きを、疼きを、あらゆる欲求を満たさんが為に吸血鬼達に襲い掛かり、一人残らず全てを吸い尽くした。

 

そして少女は、永遠に満たされない欲求を満たし続けるが為にあらゆるものを奪っては壊し吸い尽くしていき、遂には吸血鬼の弱点である太陽や流水を完全に克服していった。

 

やがて少女は、数多の妖怪・鬼・吸血鬼達から“超越者”と呼ばれ恐れられるようになった。

 

凍哉を奪還し、奪われた始祖の力を取り戻す為に闘志を燃やす人志達を前に、ヒスイは気分が高揚し妖しい笑みを見せ、喘ぐような吐息を発し腹を抱えながら怪しい行動を取った。

 

「ハア…ハア…ンッ…ハッ…ンアアアッ…!!」

 

すると、ヒスイは腹を膨らませ子を孕み、たくさんの赤ん坊をその場で出産した。

 

ヒスイの子宮から生まれ出た赤ん坊達は、常軌を逸した大きさをしており、吸血鬼のように鋭い歯牙を持って無邪気に不気味に笑っていた。

 

「気味の悪い空間の次はでかい赤ん坊か…とことん趣味の悪い奴だな…凍哉がトラウマになるのも頷ける…。」

 

「さあ!私の可愛い子供達!思う存分楽しんできなさい!!」

 

赤ん坊達は、母親であるヒスイの命令通りに鋭い歯牙を剝き出しながら人志達に襲い掛かってきた。

 

「来るぞ!」

 

応戦する人志達。

 

だが、赤ん坊達はヒスイの血を引いている故に底無しの再生能力と完全耐性を持っており、応戦する人志達の攻撃・能力を喰らいながらも再生して耐性を得ていき、苦戦してしまう。

 

「クソッ…!!あの親にしてこの子ありという事か…!!」

 

防戦一方に強いられる人志達に、凍哉は一つのメッセージを伝える。

 

「俺の視界に映るな…。」

 

その言葉を聞いた人志達は瞬時に凍哉の後ろに回り、凍哉は雪華の眼を開眼し赤ん坊達を凍らせ塵にし、無数の氷の花びらを舞い散らせた。

 

「流石だな、凍哉。」

 

「た、助かった…。」

 

「相変わらずあんたの眼の能力は壊れてるね…敵じゃなくてよかったって心の底から改めて思うよ。」

 

「まだ安心するには早いぞ…。」

 

凍哉が安堵する人志達に注意すると、ヒスイは無数の赤ん坊の軍勢を産み出し再び襲撃にかかった。

 

「まだあんなものを産み出せるのか…!?」

 

「人志、陽菜、樹、愛菜…お前達は先に行ってヒスイに向かえ…。俺はこいつらを一人残らず塵にする…。」

 

「凍哉…無茶だ…!いくらお前でもあれだけの数をたった一人で…!!」

 

「あの赤ん坊達はヒスイの無限の再生能力と完全耐性を引き継いでいる…半端な攻撃や能力では無理だ…。だが俺なら、奴らの能力の機能を全て停止させて塵にする事が出来る…。だからこの場は俺に任せてくれ…そして、お前達に迷惑をかけた償いをさせてくれ…。」

 

「凍哉…。」

 

「そんなの絶対ダメ!!」

 

「陽菜…!」

 

「貴方の雪華の眼…確かにとてつもなく強力だけど、何回も連発してしまえばいずれはその反動で失明してしまう…。貴方の力はここで潰えさせてはいけない!!それに、そうやって自分から独りになろうとしないで!!私からしてみればそっちの方が大迷惑!!」

 

「…!!」

 

「確かに陽菜ちゃんの言う通りだよ!あたし達、付き合いはそんなに長くないけど今までこうして力を合わせてどんな壁をもぶち破って来たんだ!今回だって、きっとやっていける!!だから凍哉、いつまでもそうやって一人で抱え込むなよ!あたし達が付いてるからさ!!」

 

「愛菜…」

 

「僕も愛菜さんと同意見です!」

 

「そういう事だ凍哉…この戦いは、お前だけの戦いじゃない…俺達で乗り越えなければならない戦いなんだ…!!」

 

仲間達の言葉に熱い思いを感じ取った凍哉は、深く頷き返事をした。

 

「ありがとう…皆!!」

 

凍哉の返事を聞いた人志達は笑顔で応えて、皆で力を合わせて眼前の無数の赤ん坊の軍勢に立ち向かっていった。

 

まず最初に陽菜が始祖の力で赤ん坊達の再生と耐性を弱体化させ、人志は炎と雷二つの性質変化を併せ持つ“火雷”を繰り出し、樹は生命エネルギーを媒介に巨大な大木を錬成しそれを愛菜が触れて強度と硬度を強化させて振り回し、最後は凍哉の雪華の眼で敵を全て凍てつかせ塵にするという連携を見せた。

 

「よっしゃ!!あとはあのイカレ女をぶっ飛ばすだけだ!!」

 

残すところあとヒスイのみとなった戦況で、ヒスイは不敵の笑みを見せながら数多の黒い炎を発現させ放った。

 

「まずい!!来るぞ!!」

 

だが、黒い炎は身構える人志達を通り過ぎて行った。

 

妖怪の始祖であり、その力で能力を弱体化させる陽菜の存在を消す為に、ヒスイは人志達ではなく陽菜に標的を定めた。

 

「まずは一人、悪く思わないでね?陽菜ちゃん…。フフフ…」

 

「陽菜!!!」

 

「陽菜さん!!!」

 

「陽菜ちゃん!!!」

 

「クッ…!!間に合わない!!」

 

絶体絶命の刹那、突如数多の黒い炎が雷鳴轟く漆黒の雷によって全てかき消されてしまった。

 

「これは…黒雷…!!まさか…!?」

 

守天豪傑最後の一人 伊達恭次郎が、重傷を負いながらも奇跡の復活を遂げて陽菜を窮地から救ったのである。

 

「伊達さん!!」

 

ヒスイは少し驚きながらも、あの時黒い炎に被弾する前に全身に黒雷を帯電させ致命傷を負わないよう防御していた伊達の状態を見て感心しクスリと笑った。

 

「流石は元守天豪傑屈指の霊能力者…簡単には死なないわね…。」

 

人志は伊達が生きていた事を知った途端、早急に生命エネルギーを譲渡し伊達を回復させようとするが、伊達は人志の手を止めて指示をした。

 

「やめろ人志!そのエネルギーは奴を仕留める事だけに使え…無駄な事に労力を注ぐな!」

 

「伊達さん…!でもそんな状態じゃ…!!」

 

「何度も同じことを言わせるんじゃねえ…俺を誰だと思ってやがる…てめえらガキ共とは潜った修羅場の数が違うんだよ…さっさと行け…。」

 

「伊達さん…分かりました…。無理はしないでくださいよ…?」

 

人志に先を行かせた伊達は、過去に長寿館の慰霊碑の前で生前の橘茜との最後の会話のやり取りをした事を思い出した。

 

「恭次郎…随分見ない間にやつれていますが元気ですか…?ちゃんとご飯食べて眠れていますか…?」

 

「親戚の婆かてめえは…業務中だってのに連絡もなしに来やがって…。それで、何しに来たんだ?くだらねえ世間話なら聞かねえぞ…。」

 

「恭次郎…私からの最後のお願いです…。」

 

「あ?」

 

「私が死んだ後、子供達をよろしくお願いします…。」

 

「急に何を言い出すかと思いきやガキ共のお守りだと…てめえも遂に焼きが回ったか?」

 

「私は今日まで、先の戦争で親を亡くした孤児達を救い育ててきました…。ですが、私にはもう死期が迫ってきています…根拠はありませんが、私には分かるんです…自分がどのような最期を遂げるのかが…。」

 

「…橘…お前何を言って…」

 

「私からは以上です…。業務中だというのに私との時間を取ってくれてありがとうございます…それでは、さようなら…恭次郎…。」

 

過去の戦友との約束を胸に、伊達は最後まで人志達を護る為に死力を尽くす意志を持って戦う。

 

戦況が激化していく中、樹は己の生命エネルギーで木の種を錬成しそれをどさくさに紛れてヒスイに当て、鋭利な木々による防御不可の内部攻撃を繰り出した。

 

(よし!決まった!!)

 

それに続いて愛菜も身体能力の全てを倍以上に強化させ、更に己の中に眠っている鬼の力を全て引き出した渾身の一撃を以てヒスイを叩き潰した。

 

「いい加減にくたばれよ…この…クソイカレ女があああああああああああ!!!」

 

二人の強い殺意を込められた攻撃を喰らいながらも、ヒスイは瞬く間に再生し高揚し狂ったように笑っていた。

 

「アハハハハハハハハッ!!!いいわ貴方達!!本当に素晴らしいわ!!!だけどこんなんじゃまだまだ全然足りない!!もっとよ!!もっと私と一緒に楽しく激しく戯れましょう!!!心ゆくまで!!!命果てるその時まで!!!!」

 

「クソッ…!!ここまでやってもまだ殺せないのか…!!」

 

「こいつどうやったら死ぬんだよ!!」

 

ヒスイの底無しの再生能力と完全耐性の前に、樹と愛菜は改めて激しい絶望を感じてしまう。

 

「まだ諦めるには早いわ!!」

 

そこに、陽菜が頭に血を流しながらも始祖の力でヒスイの再生能力と完全耐性を限界まで弱体化させようと試みる。

 

「陽菜!!無茶をするな!!!」

 

「…私の事は大丈夫よ人志…それよりも、早くヒスイを…!!」

 

「…分かった!!行くぞ凍哉!!」

 

「ああ…!!」

 

陽菜を信じ、凍哉と共にヒスイ打倒を目指すべく行動する人志。

 

だが、ヒスイは自身の能力の全てを弱体化させる陽菜を邪魔だと感じ、人志と凍哉よりも陽菜を優先して黒い炎で焼き殺そうとするも、伊達の黒雷によって阻まれてしまう。

 

「フフフ…よく頑張るわね…。」

 

「こちとら腐れ縁の女にめんどくせえ仕事を頼まれてんだ…これ以上余計な仕事を増やすんじゃねえよ…!!」

 

伊達の必死の行動に続き、人志と凍哉も動き出した。

 

凍哉は無数の氷剣を生成しヒスイに向かって放ち、人志は気炎万丈にも劣らない程の激しい炎で燃やし尽くそうとした。

 

「嗚呼…凍哉君…素敵…見事なまでの攻撃だわ…。」

 

「まだ終わりじゃねえ…凍哉!!」

 

猛攻は止まる事を知らず、人志と凍哉はヒスイを挟み撃ちして攻めていった。

 

「オオオオオオオオオオオオオッ!!!」

 

「これで…終わらせる!!!」

 

炎と氷、相反する二つの力をヒスイの肉体に激しくぶつけ合い、跡形もなく完全に消し去った。

 

「や…やった…やったんだ…!遂にヒスイを倒したんだ!!」

 

「やっと終わった……あたし達の…勝ちだああ!!!」

 

「人志…樹さん…愛菜ちゃん…凍哉…伊達さん…よかった…みんな無事で…!!」

 

死力を尽くした仲間達は勝利に喜び、人志も凍哉と勝利を喜び合う為に固い握手を交そうとする。

 

「凍哉…やったな!」

 

「ああ…それと、すまない…お前達には、本当に迷惑をかけてしまった…。」

 

「おいおい、今頃何言ってんだよ…これはお前だけの戦いじゃないって言っただろ?」

 

「…ああ…そうだな…。」

 

人志は優しい笑顔で凍哉に接し、凍哉もそれに応えるように硬い表情を解き、人志と握手しようとする。

 

だがその時、突然槍状の黒い炎が凍哉の心臓を貫き、凍哉は吐血し倒れた。

 

「ぐっ…!?がはっ…」

 

「…凍哉…!?凍哉!!!」

 

“超越者”ヒスイは、まだ生きていた。

 

「嗚呼…良い…凄く良かったわ…貴方達の攻撃…。」

 

「そ…そんな…そんな事が…ああ…あああ…」

 

ヒスイの底無しの再生と生命力に絶望の深淵に叩き落された人志達は、一人ずつ、一人ずつとヒスイの手によって薙ぎ倒されてしまう。

 

そして、ヒスイは陽菜の喉元に手が届く程の距離にまで近づき、残った始祖の能力を全て奪おうとする。

 

「人志…凍哉…みんな……」

 

「そんなに怖がらなくてもいいのよ陽菜ちゃん…事が済んだ後は、私は凍哉君と共に…永遠に生き続けるのだから…。フフフフフ…アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」

 

ヒスイに全てを奪われそうになり深く絶望し恐怖に震える陽菜に、一つの小さな炎が守らんとする。

 

「…人…志…」

 

「あら、人志君じゃない…。よくもまあそんなボロボロな身体で私の前に立てたわね…そんな状態になってまで、陽菜ちゃんを守る為に必死に立ち上がるだなんて…素敵…素敵ね…。」

 

満身創痍になりながらも陽菜を守る為に懸命にヒスイに立ち向かおうとする人志に、陽菜は涙を流しながら止めるよう言った。

 

「人志…ダメ…私に構わず早く逃げて…!このままじゃ…このままじゃ…本当に死んでしまう…!!だからお願い…!!早く逃げて!!!!」

 

「……それは無理な話だ…。」

 

「…え…?」

 

「ここで逃げちまったら…俺は…死んだ茜先生や子供達…そして樹や愛菜…みんなに合わせる顔がなくなっちまう…。そんで何より、誓ったからな…俺自身の生き様に…。」

 

「…人志…」

 

「フフフ…素晴らしい心構えね…。でも、陽菜ちゃんだけを守っていいのかしら?貴方のお友達や師匠、それに凍哉君はもはや虫の息よ?彼らは助けてやれないの?それとも、人一人を守るのが精一杯なのかしら?」

 

「確かに…俺は大勢の人間を守れる程強くはない…万人を守るヒーローでも、巨悪を倒す正義の味方でも何でもない…片腕を失くしたちっぽけな人間だからな…。

けどな、俺の手の届く範囲の者達は…何が何でも最後まで守り通す…!!どんなに傷尽き果てようともな…!!

俺は戦い続ける…!!この生命の炎が燃え尽きるその時まで!!!」

 

そう言い放った人志は片手で己の胸を貫き心臓を握り、咆哮を上げながら己の生命とその身を極限まで燃やし尽くさんとしていた。

 

「ハアアアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!!」

 

ヒスイは人志の行動を見て、かつて妖魔帝国本部にて“鬼神”ヒノマルとの戦いで見せた怪童のあの奇行と重なりデジャヴを感じた。

 

そして瞬く間に、人志から凄まじい巨大な炎がそびえ立ち天を覆い尽くした。

 

「人志…!!」

 

陽菜はそびえ立つ巨大な炎を見て、妖魔帝国本部にて人志がバサラと単独で戦った時のあの光景と重なるように見えた。

 

そして、天をも覆い尽くす凄まじい炎が消えた直後、人志は変わり果てた姿と化した。

 

黒髪が逆立ち己の手で貫いた心臓に位置する胸と片腕が黒く焼き焦げ、バサラと対峙した気炎万丈とは激しく異なる姿となっていた。

 

「…人…志…!!」

 

「……何なの…その姿は…!?」

 

あまりに変わり果てた姿となった人志を見て、陽菜だけでなくヒスイも驚愕していた。

 

そんな事を横目に、人志は掌から太陽のような炎の塊を陽菜や凍哉、傷付き果て倒れた仲間達に与え、生命エネルギーを譲渡し回復させ致命傷を避けた。

 

「…この燃えるような生命エネルギーは…人志さん…!?」

 

「…何とか助かったけど…あれ、本当に人志なのか…?何だか…まるで別人のような…」

 

樹や愛菜だけでなく、凍哉と伊達も変わり果てた人志の姿を見て少なからず驚いていた。

 

「陽菜…樹…愛菜…凍哉…伊達さん…俺から離れてくれ…。

俺の事は大丈夫…すぐに終わらせる…。」

 

「…人志…!?」

 

人志は陽菜や仲間達に離れろと警告し、たった一人でヒスイと戦おうとする。

 

「随分変わり果てた姿にはなっているけれど、それで私に勝てると高を括っているのかしら…?

だとしたら、本当に残念としか言えないわ…。」

 

ヒスイは人志の異変に気付きながらも無数の赤ん坊の軍勢を召喚し、人志だけでなく全てを吞み込んで一気に戦いを終わらせようとする。

 

「戯れはここまで…充分楽しめたわ…さようなら…フフフフ…。」

 

「このままじゃまずい!!人志をこっちまで避難させろ!!俺の眼で奴らを…ぐっ…!!」

 

「凍哉さん!!駄目だ…あれだけ雪華の眼の力を使ったんだ…もう限界だ…!!」

 

「人志!!早く逃げて!!!人志!!!!」

 

絶体絶命の危機に、人志は顔色一つ変えずに陽菜達にある言葉を投げかけた。

 

「大丈夫。」

 

そして、人志は黒く焼き焦げた片腕を上げて真紅の炎で燃やし、焔の剣を顕現させゆっくりと振り下ろした。

 

「気炎万丈“焔威”」

 

焔の剣が振り下ろしたと同時に、一瞬で無数の赤ん坊の軍勢が跡形もなく焼き殺され、ヒスイも片腕を斬り裂かれた。

 

「嘘だろ…!!?」

 

たったの一撃でヒスイを圧倒する人志の焔に、陽菜達は驚愕する。

 

(何…!?一体…何が起こったというの…!?熱い…熱い熱い熱い熱いッ…!!)

 

己の命を賭し、遂に炎の性質変化の極致“気炎万丈”を完成させた人志の一撃を喰らい、底無しの再生能力と完全耐性を持ってしてもヒスイは耐性を得られず、斬り裂かれた片腕は再生出来ずにいた。

 

「貴方…一体、何者なの…!!?」

 

人志はヒスイの問いかけに、何の躊躇いもなく黒く鈍い眼光を発しながらこう答えた。

 

「お前を殺す者だ…。」

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