樹に窮地を救われ、奮起した人志は今一度ザクロに立ち向かう。
「図になるなよ…人間!!」
それを迎え撃つ為に、ザクロは自身の能力で重力エネルギー弾を作り出し人志に向けて連発する。
しかし、人志はそれらを全て弾き飛ばしザクロに拳による渾身の一発を鳩尾に打ちかました。
「ッ…ぐはッ…おのれェ…」
「嘘だろ…あの人間…ザクロ様を…」
「押してる…」
吐血し苦しむザクロは、人志を強敵と認め遂に本気を出した。
「はあっ!!!!」
本気を出したザクロは、自分を中心にした広範囲を圧倒的な重力で人志や陽菜、樹だけでなく他の捜査メンバー達諸共潰そうとしていた。
「ぐはっ…」
「お…おやめ下さい…ザクロ様!!」
「ぐっ…」
「あぁ…」
「このままでは…押し潰されてしまう…」
「これで思い知っただろう!所詮貴様ら人間共はどんなに頑張っても我々には到底敵わんという事がな!!」
絶体絶命の窮地に立たされた人志達。
だが、人志はこの窮地を打破すべく己の生命エネルギーを限界以上に高め、ザクロの超重力を打ち破ろうとしていた。
「はあああああああっっ!!!!」
「フンッ!!今更何をしようと無駄だ!!この私の超重力を突破する事など!!絶対に無理なんだ!!!!」
「…人志さん…もうそれ以上エネルギーを消費したら…ぐっ…」
「身体が…持たなくなる…」
「そんな事は言われなくても分かっている…!!だが、今ここであいつを倒さないと…俺はまた大切な物を失う事になる!!俺はもう二度と…あの時のような悲劇を繰り返させる訳にはいかないんだ!!!!」
そう言い放った人志は、更に己の生命エネルギーを高め、今まさに限界を越えようとしていた。
「この俺の生命の炎が燃え尽きるその時まで…俺は己の内に定めた鉄則に従い…最期までそれを貫き通す!!それが俺の戦だ!!!!」
限界を超えた人志は、自身の生命エネルギーの性質を極めて強大な炎に変化させザクロの超重力を押し退けて焼き尽くし、遂に打破した。
「な…何だと…!?そんな馬鹿な…!!」
自身の本気の超重力を打ち破られ、驚愕するザクロ。
「ザクロ!!今この場でお前を倒す!!!!」
追い詰めた人志は、真紅の生命の炎を身に纏いながらザクロに突っ込んでいった。
もう勝負は着いたと誰もが思った…だがその時
「もういいザクロ…そこまでだ。」
「はっ…!こ…この声は…まさか…バサラ様!?」
「何!?」
羅刹一座の大妖怪のバサラが、テレパシーのような物でザクロに命令した。
「お前は充分活躍してくれた…妖怪殺しの件は他の者に任せる…今すぐ俺のアジトに帰ってこい…。」
「……分かりました…。」
ザクロは、バサラの帰還命令に従い、その場を去った。
「ま…待て…!!まだ勝負は…ウッ…」
ザクロとの戦闘でとうに限界を超えた人志は、能力(ちから)の反動で倒れてしまった。
倒れた人志の元に、陽菜と樹はすぐに駆けつけた。
「人志!!人志!!しっかりして!!」
「さっきの戦闘でかなりの生命エネルギーを消費してしまっている…早急に手当てをしましょう!!このままでは人志さんの生命が危ない!!」
「は…はい!!」
傷つき倒れた人志を、樹と陽菜は霊能力で急いで回復作業に入った。
しばらくして一方その頃、ザクロはバサラのアジトに帰還し、治療を受け、バサラの元へ辿り着いた。
「バサラ様…ただいま帰還致しました…。」
「おう…御苦労。」
「例の"妖怪殺し“は未だに見つかりませんでしたが、今回の捜査で分かった事は、今現在この妖怪社会を震撼させている"妖怪殺し”の正体が、過去の"あの施設”の襲撃事件の3人の生存者の内の1人だった事が判明しました。
隻腕の霊能力者の人志と、それに寄り添っている陽菜という小娘…そして、"妖怪殺し“の怪童。」
「ほう…。」
「今後は、この3人を徹底的に調査し、そして次こそは怪童諸共、あの隻腕の小僧と小娘の首を獲ってまいります…。」
「ふむ…よろしい。ザクロ…お前も長いことこの俺の"右腕“をやってきているから、分かってはいるとは思うが一応言っておいてやる…。
次は無いぞ。」
バサラに威圧され、首を垂れるザクロ。
「……はっ!!」
「しかしまあ、あの小僧共も随分立派に成長したものよな。人志とかいう隻腕の小僧は、小娘を守りながらも妖怪達に戦いを挑み、もう1人の怪童という小僧は、今となっては"妖怪殺し“と呼ばれ、世の妖怪達に恐れられる程の存在にまで昇華させている…。
ククク…久方振りに面白くなってきたな。そうは思わねえか…?ザクロ。」
そう言い放ったバサラは、ただ不適な笑みを浮かべた。
かつて『カモミール』を襲撃し、人間と妖怪との如何ともし難い実力の差を思い知らせ、その生き残りと後に死闘を繰り広げる事になることを予感しながら…。