"羅刹一座“の大妖怪の一人であるバサラの右腕のザクロとの死闘を乗り越えた後、人志は自身の能力の反動によって気絶してしまった。
疲弊しきった人志を治癒する為に、陽菜と樹は回復作業に入った。
その間、人志は夢を見ていた。
かつて、共に『カモミール』で暮らし、人間と妖怪が共存するこの世界の未来の在り方を師から学び合い、語り合った戦友…"妖怪殺し“の異名で恐れられている怪童の姿を見た。
それは、数え切れない程の妖怪や鬼、吸血鬼達の屍の山を築き上げ、妖怪達の血で赤く染まった傷だらけの怪物が人志を見下ろしていた。
人志は、その妖怪達の屍の山に立ち尽くしている戦友を見上げて、その名を叫んだ。
その後、夢から醒めるとそこは樹の所属している"妖怪殺し対策本部“の独身寮の中であった。
「あっ、目が醒めましたか!よかった…一時はどうなるかと思いました…。」
「人志…!!よかった…無事で…。」
「…ここは…。」
「ここは、僕の所属している"妖怪殺し対策本部“の独身寮です。あの後、僕と陽菜さんで貴方の回復作業を終えた後、ここに運んだんです…。」
樹は、回復しきった人志にこれまでの経緯を説明した。
「あっ、それと申し遅れましたが、僕は"妖怪殺し対策本部“所属の樹です。よろしくお願いします。」
「ああ…こちらこそよろしく。俺は人志だ。」
「陽菜です。よろしくお願いします。」
「あっ、そうだ。何かお腹空きませんか?よろしければ僕が何か料理を作りますが…。」
「えっ…いいんですか…?」
「ええ大丈夫ですよ。今回の事件とは全く無関係の貴方達をこんな形に巻き込んでしまったんですから、寧ろこれくらいのお詫びはしないと…。」
「すまないな樹…何から何まで…。」
「いやいやとんでもないですよ。ははは。よし、早速作るぞ〜。」
樹は、意気揚々に料理をし始めた。
「よし、出来ました!!」
出来上がった料理を食卓に運び、樹は人志達に焼きそばを振る舞った。
「おお…。」
「す…凄い。私なんかより断然上手い…。」
「いや…ぶっちゃけ僕はこれくらいの物しか作れませんから…大して凄くないですけど、でも味の保証は出来ます。どうぞ召し上がってください!」
「では、お言葉に甘えていただきます。」
「いただきます。」
人志と陽菜は、樹が作った焼きそばを口の中に入れた。
「美味しい…。」
「ああ…味付けも丁度良い。」
「喜んでくれて…何よりです。」
人志と陽菜は、樹の作った焼きそばを十分に味わい、完食した。
その後、樹は人志と陽菜にある質問をした。
「完食したばかりで悪いんですが、今現在この妖怪社会を震撼させている"妖怪殺し“の怪童と、人志さんと陽菜さんの関係性や、過去に『カモミール』を襲撃された後、どうして怪童と袂を分かったのかを、今後の捜査の為に聞いておきたいんですが…よろしいでしょうか?」
人志は、その質問に応え、これまでに起きた事を全て話した。
「怪童は、かつて俺と陽菜と共にカモミールで育ち、この人間と妖怪が共存する世界の正しい在り方や、この世界で生き抜いていく為に大切な事を学び、語り合った戦友なんだ…。
そして、あの時…カモミールが襲撃され、茜先生や共に育ってきた仲間達が殺され、俺達3人だけが生き残った…。
その後しばらくして、怪童は俺と陽菜に突然別れを告げてきたんだ…。
『俺が…この世から妖怪共を1人残らず殺し尽くす…。』と…。
俺は、怪童を止める為に一対一の決闘を申し込んだ…。結果、俺はまるで歯が立たずに惨敗し、この右腕を持ってかれ、そしてあいつは、俺達の前から去って行った…。」
「……そうだったんですか……。すみません…辛い事を思い出させるような質問をしてしまって…。」
「いや、気にするな…。俺はお前の質問に応えたまでだ…。それに、4年も前の事だからな…。」
「それで私達2人は、怪童を探す為に色んな所に行ってきました…。そしたら、その途中で樹さん達と出会してしまって…。」
樹は、人志と陽菜と怪童の関係性や、過去にカモミールを襲撃された後の事の全てを人志から事情聴取した後、本部と連絡を取り、引き続き"妖怪殺し“を見つけ出す為に捜査を続行する事になった。
そして、人志と陽菜は、今後の捜査の為の重要参考人として、本部に保護される事になった。
だが、突如本部から緊急の連絡が来た。
"羅刹一座“の大妖怪のバサラの右腕であるザクロが、怪童に惨殺されたという情報が入り、本部だけでなく妖怪社会全体に激震が走った。
それは、人志と陽菜が"妖怪殺し対策本部“の独身寮で、樹に事情聴取を受けた同時期に起きた事であった。
ザクロは、人志との戦いの後、本格的に"妖怪殺し“を見つけ出し殺す為にたくさんの実力者揃いの妖怪や鬼、吸血鬼達を連れて、捜査を続行していた。
そして、ザクロ達は、遂に"妖怪殺し“の怪童を見つけ出す事に成功し、一斉に畳み掛けようとした。
だが、怪童の能力や強さはザクロ達を遥かに上回っており、怪童は自身の右手でザクロ達を空間ごと削り取り、1人も残さずに殺し尽くした。
そして、怪童は己の手で築き上げた妖怪や鬼、吸血鬼達の屍の山に立ち尽くし、雄叫びを上げた。
「化け物共がいくら束になってかかろうが…恐るるに足らん…。
俺は怪童だ」