『そんな…あのザクロが…』
(ザクロ程の実力者をこうも簡単に破ってしまうとは…もうそこまでの領域に達しているというのか…今のあいつは…。)
(怪童…)
「おい樹!!すぐに本部に来い!!緊急会議が開かれるぞ!!」
「えっ、あっ、はい!!了解しました!!
すみません人志さん、陽菜さん…これから僕は緊急会議に出席しなければならないので、僕の寮で休んでおいて下さい。」
「ああ、分かった。行こう陽菜。」
「う、うん…。」
樹は、本部に直行した。
本部に到着すると、そこには樹と同じような様々な霊能力者達や妖怪達が集まっていた。
そこに妖怪殺し対策本部の本部長である若茶(にゃちゃ)が着き、遂に緊急会議が開かれた。
「諸君も知っての通り、羅刹一座の大妖怪バサラ様の右腕であるザクロ様と多くの名を馳せた実力者達が、"妖怪殺し“に惨殺された…。
そして、我々が追い続けている"妖怪殺し“の正体は、かつてバサラ様とザクロ様が引き起こした『カモミール襲撃事件』の僅か3名の生存者の1人、怪童という人間の少年である事は、ここにいる者なら周知の事実だろう…。
怪童は、両手で"対象“を空間ごと削り取る能力
を有しているが、『他にも何か隠された能力』があるかもしれない…。今以上に厳重に警戒し、対策を練り、速やかに事件を解決させなければならない!!
これ以上犠牲者を出させない為に、皆覚悟して捜査に取り掛かれ!!」
「はっ!!!!」
緊急会議が終わった後、対策本部から一通の連絡が来た。
"羅刹一座“の大妖怪の一人であるバサラが、今から本部に来るという内容だった。
若茶本部長と捜査員一同は、すぐにバサラの出迎えの準備をした。
その後間もなく、バサラは本部に来た。
バサラの大妖怪特有の威厳、圧倒的な妖気に、本部に張り詰めた空気が流れる。
「バサラ様…本日はどんなご用件でしょうか…?」
「何…大した用件じゃないんだが、人志という隻腕の小僧と、ちょっと話がしたくてね…。」
「あ…あの…人志さんなら、私の独身寮におります。あ…案内…しましょうか…。」
「そうか…じゃあ案内よろしく頼むぜ。」
樹は、バサラに自分の独身寮に案内した。
寮の中にいる人志と陽菜は、外の異様な妖気を察知し、それがバサラによるものだとすぐに把握した。
「よう…4年振りだな…随分成長したじゃねえか…隻腕の小僧。」
上から見下し、不適に笑うバサラ。
それを鋭い眼光で睨みつける人志。
今にも衝突しそうな二人を見て震える陽菜と樹。
「俺達に何の用だ…バサラ…。」
「成長したお前と二人っきりで話がしたくてね…悪いが、少しだけ時間をくれねえか?」
「……分かった……場所を変えよう…ここじゃ他の二人に迷惑がかかるからな…。」
「ひ…人志さん…!」
「人志…!」
心配する二人に人志は大丈夫と言い放ち、バサラと共に独身寮から出て、本部の屋上に向かった。
そして、二人は話を始めた。
「話とは何だ…。」
「まあまあそんな怖い顔するなよ。本当に少しだけだから、そんなに時間は取らねえよ…。
早速本題に入るが、お前には『選定』を受けてもらう…。
大妖怪であるこの俺直々の命令だ…この妖怪社会では俺のような大妖怪が掟…言わば鉄則なんだよ。」
「…嫌だと言ったら…?」
「お前の女の身柄をこちらに引き渡してもらう…この言葉の意味…言われなくても分かるよな?」
「一つだけ聞きたい事がある…お前の言うその『選定』というのは一体何なんだ?」
「年に一回行われる一大イベントさ…この妖怪社会に役立つ人材を見出し、様々なテストをさせる…そして、それに合格した者共は俺達"羅刹一座“の大妖怪達が選定し、配下に付いてもらうって魂胆だ…。
つまり俺が言いたいのは、あのザクロを敗北寸前まで追い詰めたお前には俺の新しいより優秀な右腕になってもらう為にも、『選定』を受けてもらう…それだけの事だ…。」
「…分かった…その『選定』とやら、引き受けよう…ただし、俺が合格した暁には、お前は…いやお前らは、二度と陽菜に危害を加えないという事を約束しろ…。」
「フフフ…まるで自分は絶対に合格出来ると確信しているような物言いだな…まあ、いずれ思い知る事になるぜ…あれはお前が思っている以上に険しく、そして難解な物だという事をよ…。
明日の午後13時、魔都東京の妖魔軍訓練施設で開催される…楽しみに待ってるぜ…隻腕の小僧…。」
バサラは、人志の肩に手を置き、高笑いしながらその場を去っていった。
その後人志は、陽菜と樹の元に戻り、明日に開催される『選定』の事を話した。
そこで陽菜と樹は、人志をサポートする為に共に『選定』を受ける事を決意する。
三人は、明日の『選定』に備える為に、英気を養い、眠りについた。
そして次の日、遂にその時は来た…。
準備を整えた人志達は、魔都東京の妖魔軍訓練施設へと足を運んだ。
開催場所の訓練施設には、様々な霊能力者や妖怪、鬼、吸血鬼達が集まっていた。
「皆様、本日はお集まり頂き誠にありがとうございます!
只今より、『選定』を開催いたします!!」
魑魅魍魎が渦巻く戦場に、人志達は覚悟を決め、足を踏み入れた。
今までの戦いは、ほんの始まりに過ぎない。
もう、後を退く事は出来ない。