いよいよ『選定』が始まった。
第一の試練は、各々試験官から選択問題を出され、その選択肢の中から問題に答えるという方式だった。
人志達は、早速試験官から選択問題を出された。
試験官は、まず最初に樹に問題を出した。
『お前は暗い美人と明るいブス、付き合うならどっち?』
『え!?え…ええと…その…うーん…。』
答えを出せずに戸惑う樹。
彼は恋愛事においては超が付くほど疎いのだ。
試験官は、そんな樹を見かねて次に陽菜に問題を出した。
『お前が重病を患い、手術が必要になった時…
A.麻酔ありの成功率5%の手術
B.麻酔なしの成功率95%の手術
さあどれを選ぶ?』
『………すみません……答えられません……。』
陽菜も答えを見出せずにいた。
次に試験官は、人志に問題を出した。
『お前が朝起きる時に中々起きれない時、起こされるならどっちに起こされたい?
A.世話を焼く幼馴染
B.血の繋がらない兄弟』
この時人志は、頭の中でこういった想像をしていた。
Aの世話を焼く幼馴染を陽菜に置き換えて、Bの血の繋がらない兄弟を怪童に置き換えて考えていた。
『B.の血の繋がらない兄弟に起こされたい。』
考えた結果、人志はB.の血の繋がらない兄弟を選んだ。
『ほう…それは何故だ?』
『幼少の頃、まだ『カモミール』で暮らしてた時に俺はいつもちゃんと朝起きれなくて、幼馴染に起こされてばかりの毎日だったから…血の繋がらない兄弟とやらに起こされる気分は、幼馴染に起こされるのとどう違うのか…離れ離れになる前に体験してみたかった…ただそれだけの事だ…。』
その答えを聞いて、陽菜は人志と同じようにもう戻ってこない過ぎ去った時を思い出しながら項垂れていた。
すると、試験官は答えを見出し、その答えに至った理由を的確に言い表した人志に対して興味を抱き、人志に向けて次なる問題を出した。
『では、お前に次の問題を出す。心してかかれよ…。』
『ああ…。』
『では…問題!!』
そう言い放った試験官は、突如、陽菜と樹を何かしらの超能力で縛り付けて、人志に問題を出した。
『お前は今、二人の仲間を私に人質に取られてしまった…。
捕らわれた二人の内、救えるのは一人だけ…
さあ誰を救う?言っておくがこの問題の答えを見出せなかった場合は、この場で二人諸共この私の手によって握り潰す…
さあ…どうする!?』
陽菜と樹、二人の命を天秤に掛けられ、どうすればいいのか、人志は呆然と立ち尽くしていた。
人志にとって、陽菜は自分が絶対に最期まで守らなければならない大切な人。
樹は、ザクロと戦った時に自分達を救ってくれた恩人のような存在。
どちらか一人しか救えないこの状況下で、無情にも時間だけが過ぎていく。
すると、答えを見出せずにいた人志の脳裏に、突如過去の記憶が鮮明に蘇った。
それは、かつて戦災孤児だった自分を救ってくれた『カモミール』の恩師、茜との記憶であった。
『この世を生きていく上で、人は様々な問題に触れる事になります。
人はその問題を解決する為に、思考を張り巡らせ、答えを見出す…これは人として生きていく上で最も避けては通れぬ道なのです…。
いいですか?人志…
大切なのは、『己の信ずる答え』を見出すこと。
これを肝に銘じて、一人の人間として精進して下さい…。
私との約束ですよ…。』
(己の…信ずる答えを見出す…)
かつての恩師の言葉を思い出した人志。
その時、人志の中の迷いが…止まった時が…
動き始めた。
人志は、己の生命エネルギーを極限まで高め、放出し、陽菜と樹の命を天秤に掛ける試験官に向かって攻撃を仕掛けた。
『お前をこの場で倒して、そして二人をこの手で救い出す!!
それが『俺の信ずる答え』だ!!!!』
試験官は、人志の答えに応じて、臨戦態勢に入った…
と思いきや、試験官は、満面の笑みで
『良し!!合〜〜格!!!!』
と高らかに人志達の合格を宣言し、陽菜と樹の拘束を解いた。
突然の合格宣言に、人志は唖然としていた。
『な…何故…』
『この第一の試練は、単なる選択問題ではあるが、真に試されるのは、出された問題の選択肢以外の『己の信ずる答え』を見出せるかどうか…という事を試すのがこの試練の真の目的なのだ。』
『え…あの…それじゃ答えられなかった僕や陽菜さんは…』
『なーに案ずるな。チームで受けた場合はその内の一人が正解すれば全員合格扱いだ。』
『そ…そうなんですか…良かった…ありがとうございます!人志さん!』
『ありがとう!助かったわ人志!』
(いや、俺は何も為せていない…あの時、茜先生が教えてくれたあの言葉が無かったら、俺は今頃…
ありがとうございます…茜先生…。)
『では、お前達は次の試練に進むといい。
健闘を祈るぞ。』
第一の試練を無事突破し、人志達は次の試練を受けに行った。
次なる第二の試練は、訓練施設の中の訓練場で、生き残りを賭けた本格的な戦いが待ち構えている。
訓練場に集まった者は、みな第一の試練を乗り越えた者達で、最初は数千人程の挑戦者がいた
のだが、今となっては数百人にまで数が減っていっていた。
ここから、『選定』を受ける者達の能力の真価が問われる事になる。