戦の鉄則   作:並木佑輔

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第8話 負けん気

激闘を繰り広げている人志とキング、ジャックに突如乱入して来た二本角の少女。

 

その少女は、愛菜という人間と鬼の間に生まれた半人半鬼の少女であり、自ら名乗り出た。

 

『このデカブツを倒した後、次はあんたらの番だからね!!』

 

そう言い放った愛菜は、ジャックを更に金棒で吹っ飛ばし、一対一の決闘に持ち込んだ。

 

『やれやれ…とんでもねえじゃじゃ馬が割り込んできたが、しょうがねえ…

こっちもこっちで存分に楽しもうや…

なあ?隻腕の。』

 

事態は人志対キング、愛菜対ジャックの構図となった。

 

愛菜は、自身の全ての身体能力と触れた物の硬度や強度を倍に強化する能力で、体術と金棒の怒涛の猛攻を仕掛けジャックを圧倒する。

 

愛菜の圧勝かに見えたが、ジャックの秘められた能力が覚醒し、形勢逆転した。

 

それもそのはず、ジャックは戦争時代に同族諸共殺戮の限りを尽くした最凶の鬼。

 

そう簡単に勝利出来るような相手ではない。

 

ジャックは幼少の頃、霊能力者に母を殺され、それが原因で理性を失い怒りのままに暴れ回っていた。

 

そして、彼を恐れていた同族の鬼達によって捕縛され、首を刎ねられ死亡した…はずだった。

 

首を刎ねられた後も、止まる事を知らず更に暴れ回り、手が付けられなくなり、その後ジャックは永久的に牢獄に入れられた。

 

彼の死後発動した能力『怨念』による物である。

 

そこにキングが現れ、彼の能力で制御され操られていた。

 

ジャックが覚醒し、劣勢に立たれた愛菜。

 

しかしその一方で、人志とキングの戦いも熾烈を極めていた。

 

両者互いに同じ生命エネルギーを扱い戦う者同士なのだが、二人の能力には決定的な違いがあった。

 

人志は自身の生命エネルギーを高め放出し、他者に分け与える事が出来る。

 

対するキングはその真逆で、自分以外の他者から生命エネルギーを奪い、自分の物にする事が出来る。

 

人志にとっては相性最悪の敵。

 

『ほらほらどうしたどうした?

どんどん動きが鈍くなってきてるぜ?

人志さんよぉ!!』

 

生命エネルギーをどんどん奪われて絶対絶命の危機に陥った人志。

 

しかし、人志はキングと同じタイプの能力者であるが為、戦い方を充分に予測・把握出来る。

 

そこで人志は、ある策をキングに試す事にした。

 

それは、キングにあえてありったけの生命エネルギーを与えるという策だった。

 

早速人志は、キングに向かってありったけの生命エネルギーを与えた。

 

『おいおい正気か?

俺に生命エネルギーを贈るなんてのは自殺行為に等しい事だぜ?

追い詰められすぎて気でも狂ったか?』

 

『…今に分かるさ…。』

 

すると間もなく、キングの様子に異変が生じた。

 

『ぬっ!ぐぁ…あぁ…!!』

 

『やはりな…お前も俺も同じ生命エネルギーを扱う者同士なら、導き出される答えは一つ。

それは…俺にもお前にも"容量の限界“があるって事だ!

俺に生命エネルギーを高め放出する限界があるように、お前にも生命エネルギーを奪える量の限界があるって事だ!

もしお前が満遍なくありったけの生命エネルギーを奪う事が出来るのなら、俺も陽菜も樹もあの時既にやられていただろう…。

だがそうしなかったのは…お前の容量の限界があるという事!

ならば!このままお前にありったけの生命エネルギーを与えて、お前の容量の限界をパンクさせ破裂させるまでだ!!』

 

『チ…畜生ォォォォォォ!!!!』

 

キングの能力の弱点を見破った人志は、エネルギーの容量をパンクさせ破裂させ、遂に倒した。

 

キングを見事倒した人志は、陽菜と樹の元に急ぎ向かうのであった。

 

一方、愛菜は覚醒したジャックの暴走により、絶対絶命にまで追い込まれてしまった。

 

だが、愛菜は諦めずさらに倍に強化させて、己の限界を超えてジャックに立ち向かう。

 

自分の守るべきものを守り通す為…そして己に負けぬ為に…。

 

愛菜は、人間の父親と鬼の母親の間から生まれた半人半鬼で、下に妹が一人、弟が二人いる。

 

お互いを愛し合い、順風満帆な家庭で生きていたのだが、妖怪社会には『人間と妖怪の交際は全面禁止』という法律があり、それを破った愛菜の両親は見せしめに処刑された。

 

戦争時に妖怪達に無様に負け、媚びを売る事しか出来なくなった非力な人間達を、妖怪達は劣等種族のレッテルを貼り、そんな劣等種族と交際する事など断じて許さない姿勢を持つ為、妖怪が支配する社会となった時にそのような法律が作られたのだ。

 

愛菜以外にも人間と妖怪のハーフは少なからずいて、そのハーフ達は人間としても妖怪としても見てもらえず、異物汚物として見られ、集団リンチや強姦の被害にいつも遭われた。

 

愛菜は、自分の両親の命を奪った妖怪社会を心の底から恨んでいたが、大切な妹や弟達を守る為にその恨みや憎しみ、怒りを乗り越えて一生懸命仕事をしてきた。

 

建築関係の仕事をやっているが、自分が人間と鬼のハーフであるが為、周りから差別を受け、本来の貰える給料の半分以下しか貰えないという有様がずっと続いていた。

 

そこで愛菜は、自分の名を世に轟かせ、妹や弟達の為にたくさんお金を稼ぐ為に選定を受けた。

 

『…こんな所で死んでたまるか…!!

下の子供達の為にも…父さんや母さんとの約束の為にも…

 

絶対負けん!!!!』

 

愛菜は、今一度己の身体能力の全て、そして金棒の硬度や強度を限界以上に倍に強化させ、ジャックに渾身の一撃を喰らわせた。

 

『ダアアアアアアアア!!!!』

 

凄まじい衝撃音と破壊力と共に、ジャックの肉体は愛菜の金棒に完全に潰された。

 

愛菜は戦いに勝利した…かに見えたが、ジャックの能力『怨念』により、精神と肉体を支配されてしまった。

 

キングを倒して、陽菜と樹の元に急いで向かう人志は、ただならぬ気配とエネルギーを察知し、愛菜の元に向かう。

 

怨念によって精神と肉体を支配された愛菜は、暴走状態に陥ってしまったのだ。

 

このまま野放しにしてはまずいと感じた人志は、愛菜の暴走を止める為に戦う事を決意する。

 

だが、人志の攻撃は愛菜にかすり傷一つ付ける事すら出来ず、防戦一方の状態が続く。

 

『グオオオオオオオ!!!!』

 

『くっ…攻撃が全く通らないし、奴の攻撃を一発でも貰ったら確実に死ぬ…!!

どうすれば…!!』

 

打開策を打てない人志は、愛菜の情報を探りながら応戦する。

 

そこで人志は、愛菜に纏わり付いている怨念に気付き、その怨念を取り除く為に自身の生命エネルギーを愛菜に分け与えた。

 

徐々に愛菜の暴走は抑えられ、そして愛菜自身もジャックの怨念に負けずに抗う。

 

その際、愛菜は両親から教わった言葉を思い出す。

 

『どんなに辛い事や悲しい事や酷い目に遭っても、最後まで絶対に負けない気持ちを大切に持って、強く生き抜いて。』

 

愛菜は両親から教わった『負けん気』で、ジャックの怨念を吹っ飛ばし、正気を取り戻した。

 

『ハア…ハア…

よし…!これで邪魔な奴がいなくなった…!!

さあ!隻腕の男!相手になってもらうよ!!

あのザクロを敗北寸前まで追い詰めたあんたを

ぶっ倒して…あたしの名を……』

 

正気を取り戻した愛菜は、その勢いで人志と戦おうとするが、疲労と負傷で倒れてしまった。

 

その後、人志が愛菜を安全な場所に運んで、彼女に生命エネルギーを少しだけ分け与えて傷を癒してから、陽菜と樹の元へ急いだ。

 

その頃、陽菜は樹の回復作業がまだ終わっておらず、その場に止まっていた。

 

そこに、遂に人志が到着した。

 

『人志!!無事だったのね!!』

 

人志の無事を喜ぶも束の間、何故か人志が陽菜の首に手刀を叩き込んだ。

 

『…あ…』

 

それは人志本人ではなく、『絵札の四銃士』最後の一人、エースの相手のビジョンを投影する能力『イマジン・アイ』による物であった。

 

陽菜に怪童の幻覚を見せたのも、エースの仕業である。

 

エースは、気絶させた陽菜の身柄を捕縛し、バサラの元へ向かおうとする。

 

ところが、突如エースの前に謎の少年が現れた。

 

その少年は、白銀の髪に、眼を閉じていて、白く透き通った肌に、白銀の衣装を着ていて、凍え死にさせるようなとてつもなく強い妖気を放っていた。

 

『な…何者だ貴様…!!』

 

その少年は、この選定の参加者ではなく、突如乱入してきた者である。

 

『な…何で…何で今こんな時に…!!』

 

『間違いない…あいつは…"氷華の一族“!!

もう既に、あの時我々が全戦力を挙げて滅ぼしたはずなのに!!』

 

その少年は、かつて妖怪社会が恐れ、全戦力を挙げて滅ぼした『氷華の一族』と呼ばれる極めて強大で特質な妖怪の一族…その末裔である。

 

この少年の突然の乱入により、選定は更に過激の一途を辿るのであった…。

 

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