???
「………………………」
???
「……………あ…れ」
=保健室
???
(目覚めた僕の視界に広がったのは……)
(知らない部屋の天井、そしてベッドの上に横たわる自分の姿だった)
???
「…………ここは?」
(見たところ、保健室っぽいな。……かなり異様な雰囲気だけど)
(ここは一体? どうして、こんな所に……
???
「うッ………!?」
+
(何かを思い出そうとした瞬間、僕の頭を激痛が走り抜けていった)
???
「な、なんだ? 急に頭が……」
+
(最悪の気分だ、頭の中がヒリヒリ痛む。まるで、ひどい火傷みたいだ)
???
(とにかく落ち着いて、何か手がかりになる物を探すんだ)
「ん? なんだコレ?」
=電子生徒手帳
???
(スマホ型の携帯電話に見えけど、僕の物なのか?)
「……電源を入れてみるか」
=画面に才宝学園のロゴが表示される
???
「これは、才宝学園の校章? どうして、僕の持ち物に才宝学園の電子生徒手帳が…?」
「江戸川……これが持ち主の名前か。どこかで聞いた事があるような……」
???
「……………違う」
江戸川
「江戸川敬慎。僕の……名前だ」
(僕は才宝学園の入学式に向かうために、学園へ向かっていた。そして………)
(……あれ、どうなったんだ?)
+
(頭の中を全てひっくり返して、どうにか原因になりそうな物を思い出そうとした)
+
(だが、それどころか……)
+
(家族、友達、ここに来るまでの事…。あるはずの記憶が全て……)
江戸川
「思い…出せない……!?」
+
記憶があった事は覚えているのに、それがどんな内容だったのかが思い出せない。
そんな事、あり得るのか?
_ガラガラガラ
江戸川
「うわぁッ!?」
+
(突然開いた扉に驚いて、僕は思わず声をあげた)
???
「おっと、すまない。驚かせるつもりはなかったんだ。どうか許してくれ」
「俺は恩田礼六。超高校級の催眠術師と呼ばれている者だ」
【 恩田・礼六 / オンダ・レイロク 】
【 超高校級の催眠術師 】
江戸川
(超高校級!? この人がそうなのか…)
(そう言われてみると、僕なんかとは全く違う世界のオーラが出てるような……)
恩田
「さっきは、急に倒れたから驚いたよ」
「どうかな? 少しは気分が優れたかい?」
江戸川
(倒れる? なんの話をしてるんだ?)
(……いや待てよ)
(もしかすると、僕は学園に入った途端、気を失ったのか?)
(記憶が抜けていたのも、そのせいかもしれない)
(……かなりぶっ飛んでるとは思うけど、あの才宝学園の入学式だからな。緊張しすぎたって可能性もあるし……)
(と、すると、この先輩っぽい恩田さんが保健室まで運んでくれたのか)
江戸川
「あの、恩田さん」
恩田
「おいおい、同じ新入生だろ? さん付けは堅苦しくていけない。恩田くんとでも呼んでくれ」
「もっとも、君の好きなように呼んで構わないが」
江戸川
「じ、じゃあ、恩田くん……。ここまで運んでくれたのは、貴方ですか?」
恩田
「ああ、そうだよ。急にぶっ倒れたものだから驚いたよ」
+
(そう言って、恩田さんは明るく笑った)
江戸川
(笑ってくれてはいるけど、申し訳ないな…)
「……すいません。迷惑かけて」
恩田
「気にする事はないよ。……なにせこんな非常事態なんだからね」
江戸川
「え? 非常事態……?」
+
(恩田さんの表情は相変わらず笑っていた。だが、目には険しい色が混じっている)
恩田
「混乱しているのは君だけじゃないさ。記憶が抜けているのは俺も同じなんだからね」
江戸川
「えっ? どうして、その事を?」
恩田
「ただの憶測さ。その様子だと正解みたいだね。……最悪な状況には変わりないが」
「俺は気がつくと、隣の教室で気を失っていたんだ」
「学園の前に立ったところまでは覚えているんだが、それ以降の記憶が一切ない。もちろん、なぜ教室で眠っていたのかも」
「とにかく、人を探そうと廊下に出た時、そこに立っている君を見かけたんだ」
「どこかで見た顔だったし、声をかけようとしたら、君がぶっ倒れちまってね」
「あとは、さっき説明した通り。そういう、いきさつさ」
江戸川
(なんか、尻の座りが悪くなる話だな……。いや、それより!)
(同じ場所にいる2人が同時に記憶喪失? そんな事があり得るのか?)
(………………)
(いや、まさか、ありえない。超高校級の絶望はもういないんだ)
+
ありえないばかりで疲れた僕の口から出たのは、思いの外冷静な口ぶりだった。
江戸川
「僕と恩田くんだと、覚えている記憶の範囲が違うみたいですね」
恩田
「君はどこまでを覚えているんだい?」
江戸川
「僕は……家族の事も、どんな家に住んでいたのかも思い出せなくて。自分の名前も、ついさっき思い出したんです」
「才宝学園に入学した事は覚えているんですが、どうやって向かったかも……」
恩田
「そりゃあキツイな」
「心配だとは思うが、人間がそう易々と全ての記憶を失うものじゃあない」
「きっと、名前を思い出した時のように、案外簡単なヒントで全て思い出すはずだよ。不安に感じる事はないぜ」
江戸川
「……そうですね」
(恩田さんも記憶を失っているのに、優しいな)
(もしかして、これが超高校級!?)
恩田
「失った記憶には、少し心当たりがあってね。君だけじゃなくて、俺のでもあるんだが」
江戸川
「心当たりですか?」
恩田
「少し廊下に出ようか。その方が理解が早いだろうしね」
江戸川
「は、はい……」
(廊下に何があるんだ? たしか、僕が倒れていたのも廊下だった)
(……それは、僕が気を失うような物なのか?)