=教室
???
「しっかし、なんなんやろうなあ、この教室」
「色もどッぎついし。なんやこのセンスのなさ、ヒョウ柄の天井て!」
???
「人間が自己顕示のために好む獣柄……」
「醜いねえ、人間なんて道具がなければ獣以下なのに」
「そこまでして、欲望を満たしたいのかな? そう思わない?」
???
「へっ………?」
「は、はあ。……そうかもしれへんな」
???
「ちょっと黙っててくれる?」
「もえは今、宇宙とお話してたの」
???
「そりゃあ……、えらいすんまへん」
江戸川
(今のは会話……なのか?)
恩田
「今のは……随分一方的な会話だね」
江戸川
(しかも、あの白い服の人はもしかして……)
+
(会話を終えて、気まずそうに目線を逸らした彼と僕の目がバチッと合う)
???
「おおぉおぉ! 自分ら!」
「兄さんらも学園の生徒か? な?そうなんやろ?」
江戸川
「はい……まあ」
???
「ようやく、他の人に会えた! もうごっつ感激や!」
「ボクの名前は諸星太陽! どうかひとつ、よしなに頼むな!」
【 諸星・太陽 / モロホシ・タイヨウ 】
【 超高校級の漫才師 】
恩田
「よろしく、諸星くん。君の噂はかねがね聞いているよ」
江戸川
「やっぱり、諸星さんですよね? 僕、ネット動画の時からずっとファンだったんです!」
「クラスメイトになれるなんて、本当に光栄です!」
(やっぱりそうだ、制空チャンネルの諸星太陽さん、本人だ!)
+
(諸星太陽……。数年前、動画投稿サイトにアップした自作の漫才が大ヒットして…)
(最近では、テレビや雑誌なんかにも出るようになった、今一番勢いのあるお笑い芸人!)
(ずっと、同年代として応援してたけど、ここで会えるとは思えなかったな)
諸星
「どうも、応援おおきにな」
恩田
「なあ、諸星くん。あっちの彼女は一体誰なんだい?」
諸星
「ああ、あそこの姉さんな」
「いつまでああしてるんやろ。ほれ、帰ってこんかいな」
_ツンツン
+
(諸星さんが、軽く彼女の肩を叩く)
(すると……)
???
「…………?」
「なあに?」
諸星
「おたくの名前が知りたいねんてさ」
「ついでに、ボクにも聞かせたってくれんかなー」
???
「名前なんて、仮の姿に隷属する一時的な物なんだよ?」
「加速する世界において、遅延しているように見えるだけなのに……」
「どうして、その一瞬の存在のあり名について知りたがるのかな…。もえ分かんないよ」
江戸川
「えっと……」
恩田
「…………」
江戸川
(さすがの恩田くんも、フォローしきれないか…)
諸星
「遅延やらなんやらは電車だけで十分や! スッと名前言うてくれたらええねん!」
草壁
「もえは草壁もえだよ」
「もえは超高校級の庭師なの」
【 草壁・もえ / クサカベ・モエ 】
【 超高校級の庭師 】
恩田
「草壁もえくん、超高校級の庭師……」
「再生不能と言われた汚染地域も、君の手にかかれば緑化は難しくないって噂らしいじゃないか」
「実際、実現したんだろう?」
草壁
「別に難しいことはしてないの。地球と交信しただけ」
「キミたちが言語や感覚器にコミュニケーションを依存させてしまったように…」
「今では交信するのも難しいんだね」
「うふふっ、気持ちわるーい」
江戸川
(突然の毒舌!?)
「あの………」
草壁
「………………」
江戸川
(あれ、どうしたんだ? 急に黙っちゃったぞ?)
「あの、草壁さん…」
諸星
「自分の世界入ってもうてん、そっとしといた方が身のためやで」
恩田
「草壁くんか。噂に違わぬ個性的な人物のようだな」
「しかし、驚いた。とっさのことで何も話すことができなかったよ」
江戸川
(なんだか、恩田さん楽しそうだな)
諸星
「とにかく、兄さんらのおかげで、ようやくここ出れるわ」
「2人っきりやと部屋から出にくかったからな」
「ほな、ありがとうなー」
+
(諸星さんは流暢な関西弁と共に、手を振って逃げるように教室を後にした)
草壁
「……………」
「……………………………」
恩田
「この様子じゃあ、彼女は何も答えてくれなさそうだな」
「次に行こうか、江戸川くん」