一話 見知らぬ地
「____ここは、何処だ?」
気付けば、見知らぬ場所にいた。直前の記憶は思い出せず。辺りを見渡せば見えるのは植物ばかり。更には殆どどこかへ消えてしまった妖魔の気配がそこかしこからする。中には強力なものもいるようだ。となればここは少々危険すぎる。さっさとここを離れてしまった方がいいだろう。そう思いはしたものの、どこに行けばこの森とも林ともつかない植物だらけの場所を抜けられるのか見当もつかない。かと言って無駄に動いて疲弊したところを強力な奴に襲われても面倒だ。どうしたものかと思案していると、小さいが妖魔の気配が複数こちらに接近していることに気づいた。どうやら囲まれているようだ。
しかし、この程度ならばどうということは無い。適当に魔法を放ってやれば何やら怯むような声をあげて奴らは退散する。
「あんまりいい案じゃないが...飛ぶしかねぇか。」
先程の襲撃のこともあり、おそらくこの森(?)の妖魔もこちらの存在に気づいているだろう。ともすればここにいれば確実に襲撃を食らうことはわかりきったことだ。これは地上を移動しても同じこと。それならば多少強めの奴と出くわす危険を考慮しても飛んでこの場を離れた方がいいだろう。
そう判断した俺は飛び上がり、木々の見えない方向に飛ぶ。
それなりにでかい森林だったらしく、眼下の木々がなくなるのに少々時間はかかったものの、森を抜けることはできた。目的は果たしたので地面に降り立つ。すると風に乗って。男のものと思しき叫び声が聞こえてきた。それはうわぁぁぁぁ!!!だとか、うぎゃぁぁぁ!!!だとかそう言った形の声で、おそらくは妖魔か獣の類に襲われているのだろうと推測できる。助ければついでに話も聞けるだろうと言う打算もあって、その声の方向へと飛んだ。
声の元へと到着すれば今まさに、男性が妖魔に食われそうになっていたところであった。これは不味いと急いで妖魔と男性の間に割り込み、妖魔の腹に蹴りを食らわせ強制的に距離をとる、妖魔が吹っ飛んでいる間に男性の安否を確認しようと声をかける。
「大丈夫か?」
男性は慌てながらも
「大丈夫だ!!それよりアイツをどうにかしてくれよ!!!」
と、頼み事とと共に無事を知らせてくれた。言い方は悪いが大事に情報源なわけだし怪我なんてさせるつもりは毛頭ない。
「ああ、わかった」
簡潔に答え、既に近距離に迫っていた妖魔の顔面に肘を叩き込む。それだけで妖魔は沈黙し、動くことはなくなる。とはいえ殺したわけではないのでその辺にぶん投げてこちらの姿を補足できないようにしとこう。
おそらくその様を見たようで男性は酷く驚いたようでこう話しかけてきた。
「あんたとんでもなく豪快だな...まぁ、何はともあれ助けて貰ったんだ、あんがとな!! 俺は弥助だ。近くの里に住んでる。あんたの名前はなんていうんだ?」
「礼には及ばん。こっちも打算あっての行動だからな。俺は札霧だ。俺は旅人だが...どうにもここに来るまでの記憶がなくてな?ここが何処なのか教えてくれると助かる。」
男性...もとい弥助の問にさしあたりないように答え、本来の目的も達成する。記憶喪失の設定になってしまったがそこは仕方ない。
その言葉を聞いた弥助は驚きを通り越して呆れたようにこちらの質問に答えてくれた。
「記憶がないって...そりゃ大変なことだろ。なんでそんな落ち着いてられんだ.... まぁいいや。ここは日永の国の無良九ってとこだ。別に大した謂れはないがいいとこだぞ」
なるほど。今の言葉を聞いて今の状況が全て理解出来た。日永の国の無良九。それは俺の元いた場所の数万年ほど前の呼ばれ方だ....。どうやら相当過去に俺は飛ばされているらしい。いますぐ頭を抱えたいところではあったが、そうも言っていられる状況でもない。とにかく今は拠点が欲しい。ということで....
「なるほど。答えてくれてありがとう。そして、もうひとつ頼みがあるんだが...俺を里まで案内してくれないか?今日の宿がなくてな。流石に野宿は...
勿論、里に行くまで護衛はする。」
と、割と本心から出た言葉も織り交ぜて頼んでみる。すると弥助は任せておけ、というような顔で
「あんたがいくら強いって言っても寝込みを襲われちゃ不味いだろうしな。いいぜ、こっちだ」
弥助はそう言って、里があるという方向へ歩き出した。俺も彼の後ろについて行く。
さて、里に着いたらどうするべきか......