冥次元ゲイムネプテューヌ   作:ロザミア

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はい、お久し振りです。
ほんっとうに申し訳ない。
しばらく執筆に手がつかず、仕事に追われての日々を過ごしております。
年末は編集頑張って追い上げていきたいので何卒…

では、刮目せよ!


悪の胎動

冷たいのに温かいものに包まれている…気がする。

目をゆっくりと開けると一面が青く、そして下が暗い世界が広がっていた。自分はどうやら揺蕩っている…この海に。

何となく、落ち着くので丸くなって流れに身を任せていく。心地が良い。賑やかな一時も好きだけど静けさが支配しているこの空間も好きだ。

だって何も考えなくて良い、何も。

 

 

 

いいや、起きないとダメだ。

お前は主人公なのだから、逃げることは出来ない。

 

 

 

声が聞こえて、下を見る。

そこから伸びてきた手に捕まれて自分は下へと引きずり込まれていく。踠くことも許されない力で、深い闇に沈んでいって…

 

 

 

「───ぁ」

 

 

 

それを見た。

紅い瞳を向けてくる、形を見せないナニカを。

辛うじて口の輪郭だけが見える黒いナニカは、自分をじっと見て、自然な動作で。

 

口に運んで、首を千切──

 

 

 

 

 

──っ!!はぁ…はぁ…!」

 

がば、と体を起こした。自分の首を触って、付いていることに安堵した。呼吸が荒い、汗が酷い、異様に寒く感じる。

安堵しつつ、深呼吸。

 

「夢…」

 

何とか絞り出した第一声がそれで、現実は今だと認識してようやく落ち着いてきた。

あんな夢を見たのは初めてで、こんな気分になるのは二度目だった。シェアを遮断されて見た自分の墓の夢を思い出して、気分が悪くなる。

 

周りを見るといーすんが本になって寝ていて、あーちゃんが少し横で静かな寝息を立てている。

叫ばなかったのは…意地ということにしておこう。

まだ時間は深夜…一眠りしたくてもさっきの夢で目が覚めてしまった。嫌なイベントの前兆かな。

余計な思考を回す余裕が生まれてきて、ふぅ、と息を吐いた。

 

ゆっくりと立ち上がって、音を立てずに扉を開けた。

外に出て空気を吸おう…働きっぱなしで疲れてるに違いない。そう思わないと陰鬱さが心を支配しそうになる。

皆が起きる頃には、主人公らしく後光が見えちゃうくらいに笑顔でいないと。自分がどんな奴か皆知っていたとしても、だ。冥界の夜の風が髪を撫でる。涼しくて思考が落ち着いてきた。

 

「はぁ…」

 

「珍し…くもないか、溜め息なんて」

 

「主人公の溜め息なんてらしくないよね…ねぷぅ!?ヴ、ヴァーリ…居たの?」

 

「居た、というか先客が俺だったんだが。どうやら、悪い夢でも見たらしいな。陰鬱な顔、少し汗をかいて引っ付いた髪…寝苦しかった訳じゃないだろう」

 

「ごめん、シンプルに分析の仕方が怖かったよ」

 

「ネプテューヌ限定の分析だ…褒めても何も出ないぞ?」

 

「褒めてないよ!?どっちかというと非難だよ!?」

 

普通にビックリしたし普通にドン引きした。彼氏とはいえそれを本人に言うのは恐怖の対象だよ!お、おかしいな…普段はかっこ…しっかりしてるのに突然の自分専用の分析キャラになってる。

しかもやたら真剣に見てるから怖いし、何だったら一歩間違えたらストーカーのそれだよね?言いはしないけどさ。

 

ヴァーリの隣まで来て座り込み、外の空を見る。

やっぱり冥界は朝でも明るくなかったし、夜はより暗いものだったけど…落ち着く。いっそ暗い方が気分が落ち着く時もある。今の自分は特にそう…こうして振る舞ってるけど内心は不安でいっぱいだ。吐露するわけにはいかない、弱みを見せるとかじゃなく自分が弱気になりたくないから飲み込んで笑っていたい。

 

「ネプテューヌ、次は本格的だろうな」

 

「多分ね~またあの物量ならまだ楽なんだけど…あっちもストックはあるだろうしね。でも、ヴァレリーの為にも聖杯は早く奪還しないとだし、邪龍も倒さないとだし…やること多すぎだよ!グータラしていたいねぷ子さんに優しくないんじゃない?パパっと解決できる案件はいつになったら来るのさ!」

 

「まあお前が元気な内は無いな」

 

「現実は無情なり…」

 

目をつけられたのは仕方無いし、自分に矛先が向くのは構わないんだけど…周りを巻き込まれるのは困るよ。人間界の方にはまだ侵攻はないみたいだけど、実はひっそりと…なんて事もあり得る。自分の手が届く距離は短いから、起こるにしても目の届く範囲で起こってほしい。悪辣さを持つリゼヴィムがそれをしないのはどうしてなんだろう、と考える。

 

それだけ冥界を落としたい?自分がいるから全戦力を向けたい?冥界にはリゼヴィムが隠したい、守りたい何かがある?分からないことだけど…思考をやめることはしない。やめてはいけないと自分の勘が告げている。こういう時の勘が外れたことはないから、しっかり考える。

思考の海に潜ろうとしていると頭を撫でられた。ワシャワシャと乱れることも気にしない撫で方は、けれど優しくて温かい。

 

「もー、なーに?」

 

「いや、考えに耽っていたからな。お前の悪いところが出る前に止めておこうかと」

 

「悪いところって…」

 

「一人で考え込んでネガティブな方向に行くのが目に見えているからな。考えるなら俺や頭の良い奴らを加えておけ」

 

「さらっと自分も頭が良いと言ってる?」

 

「そういうことじゃない…どうせなら、頼ってほしいだけだ」

 

そう言われて少しだけ言葉に詰まった。

頼りたいのは本当なのに、何でか少しだけ返答に困ってしまって。

ヴァーリが少しだけ悲しそうな顔をした後にふっと笑った。

 

「ちが、ヴァーリの事は頼りにしてるんだよ!本当に…んっ…」

 

弁明をしようとして、口を塞がれた。抱き寄せられ、熱を感じながらそっと目を閉じる。

不安や苦しさが出ていくような、そんな錯覚を感じながら自分からも押し付けて…口を離した。

 

「落ち着いたか?」

 

「…うん、眠気も消えちゃったや」

 

「俺が一緒に寝てやろう」

 

「そういうところ、大好きかも。…うん、これからも頼りにさせてね。どうしようもなかったら、助けてね?」

 

「ああ、任せろ」

 

こういうところに安心する。駄目だなぁ…皆の女神なのに自分は個人に愛されてる事に喜んでしまう。

自分は、やっぱり完璧な女神ではいられない。

そう、先代のパープルハートのように…機械ではいられない。システムでいられたら、なんて何度思ったのか分からない。感情的だからこそ駄目だった時はあった筈、機械的だからこそ救えたものもある筈。

でも…ああ、でも

 

自分はきっと、何度生まれ変わっても感情的()を選ぶ。

確かな繋がりは心があったから得られた。

…この人と、一緒に在りたいって想いもそう…あ、ごめん恥ずかしい。内心なのに恥ずかしいよ!

やめやめ!さっさと寝るに限るよ!

 

「ところでネプテューヌ、寝る前にやりたいことが」

 

「何かあったっけ?」

 

「そろそろ好感度的に抱いても「ダメダメダメダメ…ストップ、ここは健全な小説です!そういう場面は駄目!」む…」

 

何口走ってるのかなぁこの人!が、我慢させちゃってるのかな…やっぱりプロセッサ変えようかな…いーすんに頼んだら、やってくれるかな…

余計寝られなくなったじゃん!ヴァーリの馬鹿ぁ!

 

部屋に戻った後一緒にベッドに入ったものの自分は全く寝付けなかった。

だというのにヴァーリは自分を抱き締めて寝てしまった。

ヴァーリの馬鹿ぁ!!

 

本当に、もう…!

ちょっと、期待した自分が馬鹿みたいじゃん…もぅ…

…寝てる、よね?

 

「ちょ、ちょっとだけ…」

 

期待させた罪として、寝てるヴァーリにキスをする。

温かい…これ駄目だ、もうやめないと沼みたいにハマりそう。

 

「ん…えへ…も、もう少し…したいかな…」

 

駄目だった、もう少しって欲しくなっちゃった。

ヴァーリが悪いんだからね?

女の子を期待させて、何にもしないなんて…罪深いんだからね?ちゃんと、分からせてあげないとだよね。

本当に、大好きなんだから。

 

 

 

自分がただの人間だったら、くっついて離れてあげないし…キスの先まで、積極的にしちゃってたかもしれないくらいに、大好きだよ。

だから、もう少しだけ。

 

 

 

 

 

──

────

──────

 

 

 

 

 

…そ、そんなこんなで次の朝!気付かれてなかったようで、ヴァーリには何も言われなかった。ホッとした…

 

冥界の拠点で皆がせっせと準備するなか、自分は黒歌を膝に乗せながら座っていた。

リーダー、なんだけどなぁ…

 

『座ってろ』『温存ってことで!』『パープルハート様の手を煩わせる訳には!』『ひょろひょろのお前がいても変わらねぇよ』『お姉ちゃんはゆっくりしててねっ』

 

等々、適材適所を出されたら自分はなにも出来ない、返せないわけでして。

おかしいなぁ、いーすんだっておっちゃん達と話し合ってたりしてるのにね?

一誠でも運んだりなんだりしてるよ?っかしいなぁ…

 

「にゃおぅ」

 

「あー、黒歌は癒しだね…女神化したら手伝えない?」

 

「シェアの無駄ね」

 

「手厳しいなぁ…」

 

皆、自分の扱いを心得てきた?

というか、多分何か言わないと動くと思われてる?心外…でもないのがねぷ子さんクオリティ。

 

「あの」

 

「にゃ?」

 

「うん?あ、パンドラ!」

 

「ごきげんよう、女神様」

 

とっても手入れされた金髪、赤と青のオッドアイが特徴のパンドラが静かに話しかけてきた。

頼光の近くにいないし、パラケもいないね。

順調に自立してきてる、のかな?

 

「どうかしたの?頼光なら…」

 

「用があるのは、あなた。これをどうぞ」

 

「これは…鏡?」

 

「御守り…正しい道を写しますように」

 

御守りとして渡されたのは手鏡というには小さすぎる鏡。

何かを感じ取ったのかな?分からないけど…お礼を言わないとね。

 

「ありがとっ、パンドラ!」

 

「…疑わないんですね」

 

「御守りなんでしょ?疑うなんて失礼だよ!ポケットに入れておくね!」

 

「…はい」

 

パンドラは相変わらず表情を変えないで頷いて、それから周りの皆にも同じものを配り始めた。

わざわざ手作りの御守りをくれたんだもん、嬉しくないわけ無いよね。 

これはしっかり持っておこう!

 

黒歌も受け取っていたけど、もしかしたら何かあるのかも?パンドラは勘が良いっぽいし、良い方向に働くかもね。

鏡をポケットに入れ終えて皆の方を向く。

するとパンドラではなく別の子が立っていた。

あれ、何気に久々だね?

 

「…ネプテューヌお姉ちゃん」

 

「およよ、今度はレオナルド?どうしたの?」

 

「…戦いって、いつ終わる?」

 

「んー…」

 

いつ終わる、かぁ。自分が知りたい…シリアス満点過ぎてつらたにえんの無理茶漬け…

っと、レオナルドがこう訊くって事は不安なんだね。

自分の隣の床をぽふぽふと叩いて、こっちに座るように促すとレオナルドは頷いて隣に座った。

自分からしてもレオナルドは小さくて、子供らしい活発さが見えないのは寂しくはあるけど…最近は色々と遊んでるもんね。静かだけど、楽しむ心はしっかりとある。

レオナルドとパンドラはよく一緒にいるし、これから感情豊かになったら嬉しいね!

 

っとと、質問に答えないとね…

 

「大丈夫、すぐ終わらせるからね。皆頑張ってるの、見てるよね?」

 

「うん」

 

「うんうん、偉いぞー。皆がああして協力して一丸になってる…ねぷ子さんはね、それが嬉しいし頼もしくて…なんだってやれるって思えちゃうんだ」

 

「じゃあ、お姉ちゃんがすぐ終わらせる?」

 

「うん!まっかせて!最強主人公であるねぷ子さんにかかればすぐ終わっちゃうから!だからレオナルドは安全な場所にいてね?」

 

「…僕も、戦う。お姉ちゃんがすぐ終わらせられるように僕も戦いたい」

 

真っ直ぐと自分を見つめるレオナルドに自分は目を丸くする。

驚いた、あの大人しいレオナルドが激情とまではいかなくてもやる気に満ちている…レオナルドも英雄派の一人、戦うことが危険なことは分かっている筈だ。

だからこそ、自分は頷かない。

いいよ、という許可を出す程自分は偉くないし、何より心が決めたことなら止めるのは困難だって分かっている…けど、1つだけ聞いておきたかった。

 

「レオナルド、戦うことは怖いことだよ。私だって戦うのが怖い…それでも戦う理由はあると思う。私を理由にして戦うなら嬉しいけどやめて欲しいのが本心かな」

 

「…」

 

レオナルドは静かに首を横に振った。

 

「僕は、嫌だ。僕と同じくらい小さなパンドラが戦っていて僕が戦わないのは…嫌だ。パンドラを一人にしたくないから、戦う」

 

「…そっか、男の子だね」

 

よしよし、と頭を撫でる。

パンドラは静かな様子ながらもレオナルドを気にかけているのは知っていた。きっとレオナルドもパンドラを放っておけない…ううん、守りたいんだね。

女の子のために戦う男の子を止める程無粋なことはないよね。

それに魔物による後方支援だから、そこまで危険もない。

 

「それならパンドラを守ってあげてね、レオナルド!」

 

「…うん…!」

 

レオナルドは強く頷いてから曹操のところへ行った。

多分、戦うことを伝えたんだろう。曹操はレオナルドの肩に手を置いてから抱き締めていた。

曹操は改心する前はともかく今は責任感が強い。

頼光の事も自分達だけで何とかしようとしていたくらいで…レオナルドをこうして引き込んだことにも負い目を感じていたのかもしれない。

他の皆は戦うことにどうあれ賛成したけど、レオナルドは意志が希薄だったから。

 

だから、安心したのかな。

レオナルドの戦いたいって意志を聞いて抱き締めるくらいには。感極まった顔しちゃって…

 

「何だか、可愛いなぁ」

 

「ねぷっち、親みたいな感想だにゃん」

 

「んー?そうかな…でも、うん、そうだ」

 

 

 

 

「それが人に対する女神なんじゃない?」

 

 

 

 

 

───

──────

─────────

 

 

 

 

 

「なあなあドライグよぉ」

 

『何だ相棒』

 

おっす、オラ一誠。

前哨戦なのかもしれないけど、戦いの後に運ぶものだとか怪我人の運搬とかして休憩中。

おっさんの施設で座って休んでる時にドライグに話し掛ける。

あんだけ酷い相棒だとかクソシスコンとか言う癖にしっかり話をしてくれる辺りこいつやっぱり俺の事大好きだろ。

ということでかねてより気になっていた事を聞くことにした。

 

「俺には禁手より先があるってドライグ言ってたじゃん?あれってどうやればいいんだ?」

 

『む…そうだな。これから邪龍どもと戦うのだから力はないといかないからな…だが相棒、結局はお前自身の意志次第だ』

 

「俺の意志ねぇ…今からでもなれるか?」

 

『それは無理だな。普段の相棒はそこまでの気迫はないから応えんだろう。戦いの中でしか進化できないとは哀れな男だな』

 

「なんだぁ…テメェ…?」

 

最近のドライグはチクチク言葉が多い。

俺なんかやったっけ?…やったな、うん。

とはいえ戦わないと進化しない、か…窮地に立たされるとか命懸けだからとかそういう状況じゃないと駄目なのか。

 

「だからストラーダさんとの特訓の時に覚醒しなかった…」

 

『そうだ相棒』

 

「俺ってもしかしてダメダメ?」

 

『今更すぎるんだよなぁ』

 

「あ、そっかぁ…」

 

俺は泣いた。もちろん心の中でだけど一筋の涙が流れたのは言うまでもない。誰がこんな体質にしろと頼んだ!

まあそれはそれとして。

 

「でもよ、流石に次もピンチでって訳にはいかねぇよ」

 

『ふっ、そういうと思ったので特別サービスで用意してやったぞ』

 

「マジ?」

 

『その名も!真紅の赫緋─「あ、却下で」何故だ相棒!?』

 

「どんだけ赤くしたいんだよ、赤好きすぎだろ」

 

『仕方ないだろう!俺は赤龍帝だぞ!より赤へと変わっていくのは当然だろ!?』

 

「なんで?(当然の疑問)」

 

もうこいつに名前考えさせるのやめよ。

絶対全部赤になるじゃん。全ては"赤"になるとか言い出してもおかしくない。もう絶対俺が考えておこう。

 

『相棒!おい!聞いているのか相棒!AIBOOOOO!!』

 

「うるせえから切るぞ」

 

いつの間にか使えるようになった通話切断機能でドライグの喚く声をシャットダウンした(後に聞いたら俺のシスコン発言を自らカットするためにつけたらしい)

何て名前にするかなぁ…男らしい名前にしてぇな。

ここは木場とかに相談すっかなぁ。

 

そうして俺は立ち上がり、木場達がいる場所へと向かう。

 

 

 

 

 

──

────

───────

 

 

 

 

 

しかし、安堵も束の間。

悪意は更に範囲を広げ、蝕もうとしていた。

自らが悪であると誇示するかのように、高笑いし、襲来し、蹂躙するために。

そうして増大した負は、悪は、■■は───

 

 

 

 

 

───人間界へと魔の手を伸ばす。

 

 

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