冥次元ゲイムネプテューヌ   作:ロザミア

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マジギレねぷ子、必ずしもいい方向に進むとは限らない。



ネプテューヌ、サガシテ 

光の剣とシェアを纏った刀がぶつかり合う。

力はあちらが上だけど、足りない部分はシェアで補う。

だから、力、速さ共に互角だ。

 

コカビエル…戦争をするためにこの町を巻き込むなんてとてもじゃないけど許すことはできない。

その以前に、一誠達をここまで傷付けた奴を…どうして許せるのか。

 

湧き上がる怒り…憎しみ。

 

「でぇい!」

 

「ハハハ!面白い!どんどん力が出てくるではないか!?

どこにそんな力を隠していた!」

 

「そんなことどうでもいい、重要なことではないわ。

これなら…貴方を倒すことが出来る!」

 

─ネプテューヌさん!それ以上は…!

 

「俺は楽しいぞパープルハート!貴様のような強者に巡り会えた事、運命とやらに感謝しよう!」

 

「黙りなさい!」

 

「ぬぅ!」

 

力に任せて刀を振るい、剣を弾いて更に詰め寄る。

駄目だ、まだ足りない。

後、もう少しの所に手が届かない!

 

今ここで倒しておかないと…こいつは!

 

そう思うと、また力が湧き出る。

もっと!

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

「おぉぉッ!」

 

コカビエルが後ろへ後退し、無数の光の槍を放ってくる。

 

自分はコカビエルへと飛びながら槍を弾く。

 

「32式エクスブレイド、三連射!」

 

「何…!」

 

「ここ!」

 

上空から32式エクスブレイドをそれぞれ別方向、挟む形で落とす。

コカビエルは直撃はマズイと判断したのか上手く避ける。

けど、それこそが狙いだ。

 

そこへ更に速度を上げて接近して腕を切り落とすつもりで刀を振るう。

 

「っ、甘いわ!」

 

「ぐぅ…!」

 

光の剣で逸らされて腕を少し傷付けるだけに終わり、蹴り飛ばされる。

 

「楽しいなぁ!この一時、この闘争の瞬間こそが生きていると実感できる!いいぞ、もっとだ!」

 

「まだ…まだ足りないのね…」

 

「もっとだ、俺達の猛争はまだこんなものではないだろう!」

 

怒りがトリガーで力が溢れ出るようになった。

 

そっか、そうだったのか。

シェアが人の信頼の証であるなら自分の感情もまたシェアになり得る。

…なら、自分がもっと強い感情を持てば。

一誠を守れる。

 

「…ふふ。」

 

「む…?」

 

「下らないわ、戦争なんて…そんなもの。」

 

黒い感情が滲み出る。

怒り、憎しみ…

いけないと心のどこかで分かっていても、止められない。

だって、痛かった筈なんだ。

苦しかった筈なのに。

なんで笑ってるの?

 

自分はそれを許容できない、認められない。

やっぱり、守ってあげないといけない。

力がある自分が皆を、一誠を。

 

元凶は分かりきってる。

だからこそ、対処だって理解してる。

そんなことを言う奴、やる奴を倒せばいい。

甘かったんだと思う。

最初は堕天使陣営に送り返して反省させればいいと思ってた。

だから倒そうって。

 

でも、それじゃ駄目なんだ。

だって、何百年何千年も生きてる相手が自分のような小娘に一度倒された程度で諦めきれるのか、なんて分かりきってた。

 

「堕天使に、教え込まないといけない。」

 

「ん?」

 

「私が、守らなきゃいけない…その為にも──」

 

「何ッ─ぐあぁ!?」

 

コカビエルからしたら、突然目の前に自分がいて刀を腹に刺されて蹴り飛ばされた…そんな感じかな。

 

体勢を何とか整えたコカビエルは腹を押さえながら光の槍を投げてくるけど、そんなのは通用しない。

弾いてすぐに刀をもう一度振るう。

槍の後ろにもう一本の槍を隠してることくらい分かってる。

 

「っぬぅ…ここまでやるか。」

 

 

 

「─貴方を、殺す。」

 

刀に付いた血を少し見て、意外と何とも思ってない自分がいた。

…なら、やれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ケルベロスを何とか倒してコカビエルに挑んだものの、まるで赤子の手を捻るように俺達はボロボロにされた。

だけど、ねぷ姉ちゃんは怒涛の勢いでコカビエルの腹を刺すというダメージを与えていた。

 

その様子に皆が希望を持つ。

だけど、この中で俺だけは違った。

 

違う。

 

「凄い…あのコカビエル相手に…!」

 

「勝てるかもしれませんわ…」

 

「結界はソーナ達に頼んだけど…」

 

「…一誠君?」

 

違う。

 

「違う…!」

 

今戦ってるのは…ねぷ姉ちゃんなのか?

あんな、戦ってる時も元気でネタを忘れないねぷ姉ちゃんがあんな…人を殺すような目をしてるなんて。

 

違う、俺には分かる。

あれは、正気じゃない!

仲間をやられた時の俺に似てる…怒りに呑まれてるんだ。

 

─聞こえますか、一誠さん。

 

「え、この声は…」

 

周りを見渡しても…皆以外人はいない。

 

…人?

もしかして、浮かんだままの本…いーすんに近付いて手に持つ。

 

「いーすん、なのか…?」

 

─よかった。急ピッチで貴方だけにパスを繋げました。

 

『…お前がイストワールか。』

 

─そうです。いえ…それよりもこのままでは危険です!

 

「どういうことだよ?」

 

─今のネプテューヌさんの状態は非常に危ない…シェアとは別の負の力…いえ、混沌に近い力に呑まれかけています!あれが行きすぎると…ネプテューヌさんの人格を保証できません!

 

「何だって!?ねぷ姉ちゃんじゃなくなるっていうのかよ!」

 

─今、この場でネプテューヌさんを止められるのは一誠さん。貴方だけです!どうか、女神様を…ネプテューヌさんを!

 

「止めるったって…俺にどうすりゃ…」

 

そこまで言って、言葉を止める。

 

…そうだ、きっとねぷ姉ちゃんは自分の感情に自分が追い付いていないんだ。

今まで、こんなことになる前に何とか出来たからなっちまった状況なんだ。

 

だったら、俺が止めないと。

 

「任せてくれ、いーすん!俺がねぷ姉ちゃんを止めて見せる!」

 

『相棒、今の状態で向かうのは危険だぞ。』

 

「だからって放っておけねぇよ…俺のたった一人の姉ちゃんなんだぞ!弟の俺が助けないでどうすんだよ!」

 

『まあ、聞け。今の相棒の想いの強さは十分伝わった。

だから、そろそろ解禁の時だと思ってな。』

 

─まさか…禁手化(バランスブレイク)ですか?

 

禁手化…確か、世界のバランスを覆せちまう程の神器の進化だったっけか。

それがあれば止めれるのか…?

 

「…ドライグ、俺はねぷ姉ちゃんに暴力を振るわねぇぞ。」

 

『阿保が、相棒にやれるとは思っとらんわ。少し位力がないとあの二人に巻き込まれて死ぬだけだ。だからこそ、禁手をしろと言ってるんだ。だがな、相棒。』

 

「…?」

 

『禁手化することは、相棒が世界に巻き込まれる事を早めることだと思え。三勢力含め、世界の全てに巻き込まれる…酷かもしれんが、俺達の二天龍は特にそういう存在だ。お前の姉である女神も巻き込む覚悟が、お前にあるか?』

 

─ドライグさん、今そのような問答をしている時では…!

 

『歴史の。今多少なりとも覚悟を固めておかねばいずれ同じことが起きるぞ。いいか、これは相棒の為でもありあの女神の為でもあるんだ。答えろ、相棒。お前は、今まであの女神に守られてきたお前は!世界の混沌の渦に巻き込まれる覚悟はあるか!?』

 

ドライグの言葉は尤もだ。

遅かれ早かれ、俺に突き付けられていた問答。

ねぷ姉ちゃんを助けるには禁手が必要だ。

でも、禁手をすれば…いや、しなくてもだが。

俺や周囲は世界中の厄介事により巻き込まれていく。

 

…俺のたった一人の大事な姉。

いつだってその強さに憧れて、明るさに憧れて、優しさに憧れた。

ねぷ姉ちゃんは俺にとって永遠の憧れだ。

誰よりも優しいからああなっちまったんだ。

 

コカビエルを殺して、正気に戻ったらいーすんの言う混沌の力に呑まれるのは確実だ。

それは嫌だ。

 

巻き込むのだって嫌だ。

日常で笑っていてほしいし、こういう事にだって手を出してほしくない。

本来なら俺や部長たち皆で解決するべき事なのに。

 

…でも、それでもそれしか方法がないなら。

 

「ああ、やってやる。やってやるよ。」

 

そうすることでしか俺の憧れを助けられないなら!

 

「聞けよドライグ!」

 

いつか誓ったんだ。

守られてばかりじゃ嫌だ。

今度は俺が守るんだって。

 

そんでもって、シスコンかも知れねぇけど…「ありがとう、よく頑張ったね!」って言って貰いたい!

 

 

 

「世界の何が来たって俺がねぷ姉ちゃんを、皆を守る!だから力を寄越せよ!赤龍帝(ウェルシュ・ドラゴン)!!」

 

 

 

俺の声に、ドライグがニヤリと嬉しげな笑みを浮かべた。

そんな気がする。

 

『その意気や良し!ならば、存分に俺の力を使え!』

 

「ああ、いくぞ!」

 

「『禁手化(バランスブレイク)!!』」

 

WELSH DRAGON BALANCE BREAKER!!

 

そんな声が聞こえて、俺の全身を龍を模したプレートアーマーが包み込む。

そして…

 

BoostBoostBoostBoostBoostBoostBoost!!

 

倍加が俺の限界ギリギリまで一気に来た。

力が溢れる。

でも、そんなことは些細な事なんだ。

 

「イッセー、その姿…!」

 

「部長、俺…ねぷ姉ちゃんを助けてきます。」

 

「そんな無茶を…いえ、そうね…大事な姉だものね。」

 

「大丈夫です、信じてください!」

 

部長は笑顔で頷く。

俺はドライグの制御で龍の翼を使って上空のねぷ姉ちゃんとコカビエルの下まで飛ぶ。

殺しなんて、絶対にさせねぇ!

 

─一誠さん、どうか頼みます…!

 

『相棒、飛行に関しては俺に任せろ。相棒は女神に声を届かせることに集中しろ!後一発はあの堕天使をぶん殴れ!』

 

「ああ、分かった!」

 

俺だって、主人公…ねぷ姉ちゃんの弟なんだ!

やってやれないことはねぇ!

 

馬鹿みたいなスピードで二人に…いや、コカビエルに近付いた俺は不意打ち気味に蹴りを叩き込む!

 

「テメェは、落ちろぉぉ!!」

 

「むっ、ガハァァ!?」

 

「っ!?」

 

見事決まった俺の蹴りはコカビエルを地面へと叩き落とす。

ねぷ姉ちゃんは刀を構えて、俺を見捉える。

 

─一誠さん、気を付けてください!

 

「ねぷ姉ちゃん、俺だ!」

 

「一…誠…?私、は…そう、そうよ。コカビエルを、敵を…皆を、町を守るために…その姿は…」

 

赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)。俺の禁手…進化した神器だ。」

 

「赤、龍帝……あ、うぐ…!?」

 

「ねぷ姉ちゃん!?」

 

ねぷ姉ちゃんがぼそぼそと呟いたと思えば頭を押さえ出す。

俺は思わずねぷ姉ちゃんに近付く。

だけど

 

『相棒!!』

 

「ッ!?うおっ!」

 

「…」

 

俺の顔を貫くように突き出された刀を間一髪で避ける。

あ、危ねぇ…ドライグのおかげで反応できたぜ…

顔を俯かせたねぷ姉ちゃんから、黒いオーラがうっすらと見える。

これが、混沌…カオスの力か!

 

「赤龍帝…ドライグ…そうよ、貴方が一誠に憑くからこうなったんじゃない。おかげで一誠は堕天使に殺されそうになって、悪魔になって、戦わなくちゃいけなくなって、あんなにボロボロになって!」

 

「ねぷ姉ちゃん、しっかりしてくれよ!」

 

『無駄だ、相棒!今の女神は力を抑えきれていない!』

 

「最初からこうすればよかった…ドライグを、神器を一誠から切り離せばもう戦う必要もなくなる!」

 

俺の声も虚しく、ねぷ姉ちゃんは笑って刀を構え直す。

ドスの効いた怖い声。

聞いたことがない、こんなねぷ姉ちゃんの声は。

怒った時だって…こんなんじゃなかった。

 

「大丈夫よ一誠。痛みはあるかもしれないけど、すぐだから。

私に身を委ねて。そうすれば守って上げるから、貴方もお母さんもお父さんも…皆も、この町も。」

 

「くっ…!」

 

そんな優しい声で話さないでくれよ。

優しい声なのに…ねぷ姉ちゃん、分かってないのか?

ねぷ姉ちゃんから感じるのは言葉通りの優しさじゃない。

 

濃すぎる殺意だ。

 

殺してでも守る。

そんな矛盾を感じた。

そうだ、俺からドライグを切り離すなんて出来ない。

アーシアの時は特別だったから出来たんだ。

 

魂と深く結び付いた神器を、ドライグを切り離す。

それは俺を殺すってことだ。

 

…姉に殺される弟でいられねぇよ。

 

「ねぷ姉ちゃんは間違ってる。確かに俺は最初望んで得た力じゃなかった。でも、ドライグは俺に戦いを強要しなかった!俺の想いに応えて力を貸してくれたんだ!だから、もうこれは俺の望んだ力なんだ!」

 

『相棒…』

 

「反抗期かしら。」

 

「ああ、反抗期だよ。随分と遅くなったけど…ねぷ姉ちゃんを助けるための、初めての反抗期だよ!」

 

「お仕置きが必要ね!」

 

俺の倍加した速度と同等…いや少し上位の速さで詰め寄ってきて刀を振るってくる。

戸惑いがねぇし殺意がすげぇ!

 

反撃…い、いや!なに考えてんだよ!?

ねぷ姉ちゃんを殴れるわけないだろ!

 

─一誠さん!

 

(な、なんだよいーすん!今攻撃を避けるので精一杯…!)

 

─信じてください。

 

(信じる…?)

 

─はい、信じてください。ネプテューヌさんを!

 

「…そうか、そういうことか!」

 

今のねぷ姉ちゃんは感情の制御が上手くいかないせいでシェアよりもカオスの力が勝ってるからこうなってるんだ!

なら、シェアの力を強めることが出来れば…!

 

でも、どうやって…シェアは信じる心だろ?

俺はねぷ姉ちゃんを全面的に信じてるけど…

今から皆を説得しようにもかえって危険に晒しちまう。

 

くそ、シェアも倍加できれば…

 

ん?倍加?

 

ねぷ姉ちゃんの攻撃を避けたり弾いたりしてるが、強い!

こんなに強いのかよ、ねぷ姉ちゃんは!

 

「ドライグ!」

 

『何だ相棒!!』

 

「ねぷ姉ちゃんを倍加できねぇか!?」

 

『…そういうことか。ならば相棒。強く想え!』

 

「簡単に言うぜ…!」

 

けど、分かりやすい!

俺はねぷ姉ちゃんを助けたい。

その為にもねぷ姉ちゃんがカオスの力に勝たなきゃならねぇ!

 

それなら、俺に出来るのは…シェアに働きかけることくらいだ。

頼む、俺の想いに応えろよ!

 

『いいぞ…!怒涛の勢いじゃないか相棒!この成長度、凄まじいぞ!』

 

「マジで成功したのか!?」

 

『何でも、とはいかんがな。たまたま条件に見合った形があったに過ぎん。それよりも、相棒!これならば女神を救えるやもしれんぞ!』

 

「本当か!っとぉ!」

 

ドライグの言葉で希望が見え始めた!

 

『相棒の今の倍加している力を譲渡する力。

その名も赤龍帝の贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)だ!』

 

「なるほど…大体分かった。」

 

「さっきから喋ってばかりね、一誠。…お姉ちゃんよりも大事なことがあるの?」

 

「悪い、ねぷ姉ちゃん。」

 

刀を避けて、弾いて。

それでも隙がない。

譲渡しようにもこうも攻撃に隙が無いんじゃ難しい。

 

「なら…ここは!」

 

鎧があって助かったかもしれないな。

体に向けて振るわれる刀を敢えて受けることにする。

斬られた部分が砕けるものの…捉えた。

 

「捕まえたぜ、ねぷ姉ちゃん!」

 

「こ、の…放しなさい!」

 

刀を握る腕を掴んで抵抗される前にさっさと使う!

今のねぷ姉ちゃんは、見てられねぇ。

そんな怖い顔よりも笑顔が似合うんだからさ。

 

だから頼む、これで戻ってくれ!

 

『Transfer!』

 

「何を…!」

 

力を譲渡する。

対象はねぷ姉ちゃんだけど、違う。

ねぷ姉ちゃんのシェアに対して譲渡する!

 

シェアの力がカオスの力を上回れば元に戻る筈なんだ!

 

「これは…シェア、が…っ、あぁぁぁぁ!!」

 

「ねぷ姉ちゃん!」

 

刀を手放して、再び頭を押さえて暴れるねぷ姉ちゃんに近付く。

 

─倍加されたシェアとカオスの力が拮抗してます!

 

『相棒!』

 

ドライグの呼び掛けに頷く。

暴れるねぷ姉ちゃんを抱き締める。

力が強くてやばいけど…でも、今なら助けられるんだ!

 

「いっ…せ…!」

 

「俺は信じてる!強くて、優しくて、自由奔放な姉ちゃんに戻るって信じてる!」

 

「う、ぅぅぅ!?」

 

「俺達はどんなことがあっても家族だ!」

 

だから、戻ってくれ、ねぷ姉ちゃん!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いたら、そこは暗い空間だった。

 

「あれ?」

 

ここはどこだろう?

確か、自分は…

 

そうだ、怒りと憎しみに任せて、コカビエルを…!

そこまで考えて、頭をぶんぶんと振る。

違う、あんなの自分じゃ…!

 

あの黒い感情、あれが自分なの?

 

自分は呑まれたんだ、あの感情に。

 

こんな暗くて広いだけの空間に、ただ一人。

 

「…嫌だよ。」

 

そんなの嫌だ。

皆と笑っていたい、遊んでいたい。

黒い感情にもう呑まれないって約束するから…だから帰りたい。

 

自分、このまま消えちゃうのかな。

…精神的な死、なのかな、これは。

 

「そうよ、私。」

 

「え…?」

 

後ろから声をかけられて、振り向いた。

 

そこには、自分がいた。

いや、少し違う。

 

パープルハートがいたんだ。

 

「わ、私!?」

 

「ええ、パープルハートよ。…尤も、カオスって付くけどね。」

 

怖い笑み。

少し、装備も違う。

何でそんな最低限の部分しか隠してないの!?

現実の自分もそうじゃないよね!?

 

パープルハート[カオス]は自分に近付いてくる。

そして、なにも出来ない自分の首を掴んで持ち上げる。

 

「うぐっ!?」

 

「貴女が望んだから私がいるのよ?コカビエルを殺したいって思ったから。そこから立て続けにドライグとか堕天使自体に憎しみを抱いた。その混沌とした感情から私は生まれたのよ。」

 

「あ、ぐ…!」

 

「いいのよ、私。貴女が消えても私は私だもの。

女神として、姉として一誠を守ってあげるわ、私なりの方法でね。」

 

違う。

殺される。

これに任せたら、一誠達が殺されちゃう。

 

「いいじゃない、憎しみ。あんな光景を見れば抱いて当然だものね?正当な権利って奴よ。」

 

「ぅ…!」

 

「だから、殺してもいい。殺そうとしたんだもの、殺されても文句はないでしょう。」

 

「駄目、だよ…!私、は…皆を…!」

 

「何も出来なかった癖に。」

 

「ぅぐ…!」

 

握る力が強くなる。

苦しい。

辛い。

嫌だ。

死にたくない。

殺されたくない。

生きていたい。

皆といたい。

 

「貴女が弱いからこうなったのよ。」

 

「ぁ、ぎ…!」

 

「でも、私は強い!私なら皆を守ってあげられるわ。

貴女にとっても悪い話じゃないでしょう?貴女は私だもの、これも一つの貴女よ。ふ、ふふふ…!さあ、体を寄越しなさい!」

 

「ぃ…」

 

「まだ抵抗するの?無駄にショッキングなことはしたくないんだけど…」

 

意識が、もうろう、と…

 

もう、なにをかんがえてるか、わから、なく

 

み、んなのもとに…かえ…

 

助けて

 

 

─ねぷ…ちゃ…!

 

 

「…?」

 

こえ、が…?

このこえ、は…

 

 

─ねぷ姉ちゃん!

 

 

この、声は…!

 

「…私、が!」

 

「えっ…!?」

 

首を掴む手を掴む。

一誠の声だ。

聞こえた、聞こえたんだ。

 

シェアを感じる。

 

心から信じてくれるシェアを感じるよ!

 

「私は私を譲ったりはしないんだからね…私は、主人公だからこの程度の危機…!」

 

思い切り、腕を蹴る。

痛みを感じたのか手を握る力が緩んだ。

その隙に拘束から逃れる。

 

「往生際の悪い…!」

 

「足掻けるところはしっかり足掻かせて貰うよ!というわけで逃げる!」

 

声のした方へ逃げる!

この空間じゃ勝てないから、これが得策なんだ。

全力で走るよ!

 

「逃がすとでも…!」

 

「それが逃げられるんだな、これが!何故なら主人公ですから!」

 

あんな危ないお姉さんな自分に任せてられるか!

絶対R-18方面にやらかすに決まってるよ!

そんなの無理!無理ったら無理!

 

全力で走ってると、小さな光が見える。

 

カオスな自分が向かってくるけど、この距離なら…!

 

「手を伸ばせ、ネプテューーーヌッ!」

 

光に手を伸ばす。

 

光に手が触れる。

温かい光だ。

シェアの光!

 

─俺は信じてる!

 

…もう、一誠はシスコンだなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…一誠。」

 

「ねぷ姉ちゃん…!」

 

抱き締めてくる一誠を、自分も抱き締める。

温かい。

嬉しくなって、頭を撫でる。

 

「ありがとう…一誠のおかげよ。」

 

「ねぷ姉ちゃんの弟だからな…!」

 

でも、喜ぶ時間もそんなにない。

 

「パープルハートォォォ!!」

 

「空気読んでくれねぇな。」

 

「余裕出てきた?」

 

「当然!」

 

コカビエルが叫びながらこっちに来るけど、もうさっきみたいな出力は出せない。

でも、あんなの自分じゃないしね。

 

─ネプテューヌさん!よかった…!

 

「いーすん、ごめんなさい。」

 

─いえ、私の事は…

 

いーすんにも迷惑をかけちゃった。

ドライグにも。

 

助けて貰った手前、これ以上カッコ悪いところは見せられないね! 

 

「今度こそしっかり決めるわ!」

 

「俺達二人でな!」




やっぱり暴走しちゃったけど、むしろよく耐えてたと思うんだ。

まあ、ここでカオスを一回だしたのにはしっかりと訳がありますから許して!なんでもしますから!
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