英雄当てゲーム、第二弾。
槍と刀がぶつかり合う。
曹操もいるのにあっちに痛手を与えられていない…かなり上手い戦い方だ。
こっちに恨みと殺意を乗せた視線をぶつけてくるのに攻撃は冷静。
カイネウスは確かに強い女性だった。
加えて、あの槍…普通の槍じゃない。
槍から水…ううん、海水が出てきたと思ったら渦を巻いてこっちに向かってきた。
英雄の武器って奴なのかな?
─カイネウスはポセイドンに男にされた後、海を操る槍も受け取ったと言われています。ですが…おかしいですね。カイネウス、カイニスは既に亡くなっている筈。
「前世の記憶持ちって事じゃない?ふっ!」
「やるじゃねぇかクソ女神…曹操もそうだが、俺の攻撃に耐えやがるとはな。」
「ネプテューヌ、カイネウスの槍もそうだが、単純に相性が悪い。奴の体はただの人間のものじゃない。文字通り不死身だ。」
「一々解説入れねぇと気がすまねぇのか曹操!オラァ!」
槍による一閃。
曹操は後ろに下がる。
カイネウスはそのまま自分の方まで来て槍を振るう。
シェアで生成した刀でよかった。
これがただの刀ならとっくに折れてる。
暴力とも呼べる位荒々しい槍捌き。
─カイネウスの不死身の体…確かに、物理による攻撃は効果が薄いでしょう。
(なら魔法?)
─恐らくは。シェアによる魔法現象ならば効果もある筈です。
「なら…!」
ポセイドンは海神…海の力を使えるなら、昔から属性相性はこうでしょ!
刀にシェアの雷を纏わせる。
「なにっ…!?」
振るわれる槍を逸らして、隙を作る。
油断したね、カイネウス!
「痺れるわよ、サンダーブレード!」
雷を纏った刀を振り下ろす。
不死身の体が本当なら、容赦はいらないね!
振り下ろす瞬間シェアで身体を強化する。
主人公たるもの、これぐらいの芸当は出来ちゃうんだな!
カイネウスの体に刀がぶつかる。
確かに…硬い!
けどカイネウスの顔が苦痛に歪んでいるところ見るにシェアによる属性攻撃は耐性を無視できる!
「ぐ、がぁぁぁ…!!馬鹿な、俺の肉体は不死身…!あの野郎の加護が…!」
「ポセイドンの加護…以前、聞かせて貰ったが海を渡る加護として魔力への抵抗もあるらしいな。だが…シェアは魔力じゃない。」
体が痺れている筈なのに槍を手放さずに握り、後ろに下がって距離をとる。
こっちへ向ける視線はより強くなってる。
「…ふざけるなよ…!俺はテメェをぶち殺す…!
ああ、憎い!
「貴女がそのポセイドンに何をされたのかは分からない。
けれど、それをポセイドンに向けるのならいざ知らず、他を巻き込んでまでやることではないわ。」
「三勢力の女神様の分際で随分とお利口じゃねぇか…なぁ?
女神ネプテューヌ…三勢力が今まで人間に何をしてきやがったか知らない訳じゃねえだろ!」
「…そうね、全てでないにしろ知っているわ。」
聖剣計画、悪魔の駒、神器保持者の殺害。
他にも色々としていると思う。
…悪いことをしてしまっている。
それは間違いない。
「彼らが償うべき罪よ。それでも…貴女がしているのは自分の正当化、テロでしかない。」
「黙れよ女神。綺麗事だけ述べて俺を見下してやがるのか?
テメェは全く知らない…悪魔が、天使が、堕天使が、神器が!
どれだけ人間を弄んできたのかをな…怖いんじゃねぇか?その汚さを見るのがよぉ…綺麗なだけの自分が汚されるようでなぁ!」
「カイネウス。それ以上口を開けば…その頭、貫くぞ。」
「やれるのか、曹操!テメェに、
安っぽい理想を掲げてたテメェにその覚悟があるってのか?」
「…ああ、あるさ。」
「ハッ、どうだかな…!」
カイネウスの恨みは自分に向けるのはお門違いかもしれないけど、それは理屈じゃないんだと思う。
神が心底憎い、海神の名前が心底憎い。
その要素だけでも許容できないんだと思う。
憎悪を失くせばどうすればいいか分からない。
そういうのもあると思う。
…これ、ポセイドンに一度会って文句言っても許されるんじゃないかな。
それに、やっぱり神器保有者は迫害とかの対象になりやすいらしいね。
カイネウスは痺れが取れてきたのか槍を再び向ける。
「所詮は女神。人間ごっこしてるだけの女神様に人の心が分かるとは思えないねぇ…守護女神だか何だか知らねぇが、俺達は必ず人外を滅ぼす…!」
「まだやる気?」
「ハッ、俺は死んでねぇぞ。やめさせたきゃ俺を殺せ!」
「ネプテューヌ、どうする。」
「…私は諦めない。それでも駄目だったのなら…私の手で。」
「…分かった。無力化するぞ!」
曹操がカイネウスへと聖槍のオーラを解放しながら接近する。
自分もそれに続くようにカイネウスへと向かう。
「来るかよ…なら!」
槍に海水が集まる。
さっきの比じゃないデカさ!
これはまずいね。
「渦に飲まれて溺れ死ね!」
曹操と自分の二人を飲み込んで余りある程の渦潮。
それが放たれた。
「曹操!」
「ああ、任せろ。聖槍よ、その輝きを─!」
聖槍の尖端が青白い輝きを放つ。
曹操がそれを大渦に対して薙ぐ。
輝きがより一層強まると同時に大渦が切り裂かれる。
これが最強の神滅具…これが向けられてたらヤバかったかも。
─海神の槍もまた神の力…神滅具によって神を越えたという事ですか…
「流石ね、曹操。」
「半ば賭けではあったが、信頼してくれる女神がいるからな。」
「チィ…!」
やっぱりあの大渦は溜めがいるみたいで歯噛みするカイネウスの姿が。
そのまま二人で接近する!
そうして斬りかかろうとして─
静かな殺気を感じ取って、横に刀を振るう。
「っ!」
何か斬ったけど…おかしい。
何もない。
「気を付けろ、ネプテューヌ!絶霧にどう干渉したかは知らないが…敵が入り込んでいるぞ!」
「何か斬った感覚はしたわ…」
「チッ…あの陰険が邪魔しやがる!」
「暗殺を得意とする…
─放った後も軌道を変えられる神器です…探知、急いでいます。
「お願い。…干渉したということはカイネウスを含めて三人。」
どうする?
このままだとカイネウスと他二人を相手する…
曹操が禁手をして自分も全力を出したとしても勝てるかどうか。
隣の曹操は誰が干渉したか納得したのか苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「カイネウス…どういうつもりだ!子供だぞ!?」
「ハッ!俺が知ったことか。俺にいうんじゃなくてあの餓鬼に言えよ!」
「くっ…!」
こうしてる間も変則的な動きをする青い矢が飛んでくる。
カイネウスも攻めに転じてくるせいで対処が追い付かない…!
「っ…ゲオルグ!ペルセウスとヘラクレスを!」
カイネウスの攻撃を一人で捌いている曹操がゲオルグに指示を飛ばす。
結界の維持をしながらだろうし、ゲオルグは過労死枠だね…
しばらくして、結界の空から二人が落ちてくる。
「ど、どおぁぁぁぁ!?」
「ゲオルグ、もう少しマシな送り方は出来なかったのですか!」
─『仕方ないだろう。緊急だ。』
ヘラクレスとペルセウス。
二人が何とか着地してから状況を把握する。
「カイネウスじゃねぇか!曹操、そういうことかよ?」
「ああ。頼めるな?」
「任せろ!前々からやりあいたいとは思ってたぜカイネウスゥ!」
「ヘラクレス…!女神を殺す邪魔をするならかつてアルゴー船にいた仲とはいえ容赦はしねぇぞ!!」
海神の槍をその頑丈な拳で応じる。
それと同時にヘラクレスの神器
ヘラクレスの戦闘センスは本当にすごい。
当たる寸前に巨人の悪戯を発動できるのは難しい筈だもん。
ペルセウスも
「この矢の精度…間違いありません!」
─探知できました。
いーすんの声と一緒に脳裏に正確な位置が表示される。
「とりあえず、あぶり出すわ!」
上空にシェアを溜めて、巨大な剣にする。
32式エクスブレイドでいーすんの探知してくれた位置へ落とす。
地面にぶつかり、爆発したけど…
油断なく構えていると青光矢が飛んできて、それを弾く。
「…そろそろ出てきなさい。物陰に隠れても無駄よ。」
「─そのようです。虚言の類いではないようだ。」
出てきたのは両目を包帯で隠した長い赤髪の男の人。
何て言うかな…見えない筈なのに見透かされてるみたいな…そんな感じ。
「貴方が青光矢を放っていた人ね。もう一人は何処かしら。」
「教える義理はありません。ですが…自己紹介はしておきましょう。
私はトリスタン。かつて騎士王に仕え、襟を分かった者。
その生まれ変わりです。」
─アーサー王伝説に出てくる騎士の一人ですね。
「貴方も、人外を?」
「恨む、とまでは。しかし、私や他の者が受けた迫害を無視されるのも癪に障りましたから。」
「…そう。」
「今、手を取り合えないかな、と思いましたね。」
「っ!心が読めるの?」
確かに、今思ったけど…吃驚した…
トリスタンは自分の問いにふっと悲観的な笑みを浮かべる。
「読めるとは違います。貴女の音を耳が拾ったに過ぎません。」
「…そう、厄介ね。」
「貴女が曹操達を洗脳した女神ですね。」
「洗脳?」
「貴女の言葉で曹操達は心が変わった。…恐ろしいものを見ました。女神とはこのような芸当も出来るのかと。
自覚なく人の心を操るとは恐れ入りました。
所詮、神…女神に人の心は分からないのですね。」
─出鱈目です。ネプテューヌさんにそのような能力はありません。惑わされないように。
(分かってるよ。)
「誰と会話してるのですか?」
あーもう面倒臭い!
いーすんとの会話も聞き取れるの!?
耳とかの問題じゃないでしょ!?
目が見えないから耳が発達してるって言っても限度があるよね?
「貴方が何と言おうと私はこの絆を信じるわ。一時の物であり、いずれ離れていく物だとしても…共にいた時間は嘘じゃないもの。」
「…驚いた。本心からの発言とは。」
「トリスタン…あの子は?」
「おや、曹操ですか。お久しぶりですね…ええ、悲しい事ですが彼がいる以上、依存している彼女もついてくるでしょう。
どんなことだろうと頼まれればする…報われませんね?」
「来ているんだな…」
「あの子って?」
「ああ…ゲオルグの絶霧の一部を接合するなら相性自体はいいだろうからな。恐らく、その子がそれを行使した結果だろう…気を付けろ、ネプテューヌ…いるぞ。」
曹操の言葉に精神を研ぎ澄ます。
トリスタン、曹操…あっちにはペルセウスとヘラクレスがカイネウスの相手をしてるね。
…何だろう、不透明な感じだけど…
一人、いる。
思わず、刀を振りそうになって何とか止める。
だってそこにいたのは…
「っ、子供…!?」
「…」
目の前に鏡のようなものを展開していた少女だったから。
金髪の幼い少女。特徴的なのと言ったら…その赤と青のオッドアイ。
少女は鏡を周りに展開しながらトリスタンの元へと歩く。
曹操も槍を振るわなかった。
…もしかして、あの鏡、何かある?
─
「…貴女は?」
「…私は、パンドラ。何にでもなれる鏡の存在。希望にも、絶望にもなれるの。」
こ、これはこれで…掴み所がないね。
パンドラ…うん、何となく分かるよ。
パンドラの箱の人?
開けちゃ駄目な箱を開けた人、だっけ?
ゲーム知識ばっかりだから何とも…
─間違っていませんね。パンドラ…しかし、生まれ変わりは勿論、子孫というのは無理があります。
「私は名前だけのパンドラ。
「…パンドラに絶霧を接合させたのか。」
「ええ、彼女が望んだことですので。」
「魂に等しい神器に別の神器を組み込む…それがどれだけ苦痛で歪な事か分かった上でパンドラは了承し、彼はやらせた、か…」
こんな子供が…どうしてそこまで?
その彼っていうのは手段を選ばない人なの?それとも…
苦渋の末にそれが出来てしまう人種なのかな。
何にしても…知らないことが多すぎるね。
曹操が聖槍をトリスタンとパンドラに向ける。
「退け、トリスタン。大方、カイネウスを連れ戻しに来たんだろう。」
「流石は曹操。洗脳されたとしても頭は回るようだ。
ええ、そちらの女神はよろしいので?」
「…ええ。」
了承する。
多分、曹操にも思うところがあるんだと思う。
…うん、もっと強くならないといけないって実感する。
「見逃してくださるようですので、一言だけ。
三勢力の罪…それをしっかりと認識することです。」
「そうね、ありがとう。」
「…少し戸惑いますね。敵の言葉なのにしっかり信じられてしまうと。」
トリスタンはパンドラの名前を呼ぶ。
すると、パンドラは頷いて、周囲の鏡にトリスタンとパンドラ…後、あっちのカイネウスを入れて鏡ごと消えた。
瞬間、絶霧の結界も消えた。
今の戦いの終わり。
それを感じ取って、女神化を解除する。
「…ふぅ。」
「曹操、その…大丈夫?」
「ん?ああ…平気さ。それよりも、ネプテューヌ…これから荒れるぞ。」
「うん…私だけじゃなくて、他の皆も危ないね。
ねえ、リーダーが誰か知ってるんじゃない?」
「あの6人でリーダーになれる人物、か。
そうだな、もう話すべきだろう。…部屋に戻ろう。」
少し、暗い表情をした曹操。
「カイネウスが消えちまった!決着はまた今度になっちまったじゃねぇか!」
「ネプテューヌ様、遅れてしまい申し訳ありません!」
「あ、あはは…いいよいいよ。守ってくれただけでも十分だから、ね?」
「くっ…ありがとうございます!」
「ヘラクレスは平気?」
「おう、俺の体は頑丈よ!カイネウスが来た時は呼んでくれ、アイツとの決着は俺がつけるからよ!」
ワハハと笑いながらそう言うヘラクレスがちょっと羨ましいかも…
ペルセウスは何だろう、忠誠心が凄いのかな。
自分ってその忠誠心向ける程の人なのかなって思っちゃうけど…うーん、ペルセウスがいいならいいのかな…?
─流石はギリシャ英雄の魂を継いでるだけあって割り切ってますね。
(あれ多分、考えてないだけじゃないかな…)
「じゃ、戻ろう!」
「おうよ。」
「はい。」
曹操を元気付けたいなぁ…どうすればいいんだろ?
悩みながら、曹操の部屋へと戻る。
三勢力の罪…一体、どんなものなのかも調べなきゃ。
やっぱり、皆でハッピーエンドを迎えたいもんね。
・
・
・
「狭い!!」
「そう言うなよゲオルグ!俺達の仲じゃねぇか。」
大の男が4人もいるとアパートの一室は狭く感じる。
ヘラクレスは巨漢だから余計にそう感じるのかも?
まあ、自分は小さいから特に気にしないけどね!
「曹操、大丈夫?辛いなら…」
「いや、話す。」
倒すべき相手を確認するような曹操。
辛そうなのは仕方ない。
だって、かつての仲間だったんだもん。
本来なら、戦いたくもないと思う筈。
それでも、カイネウスを相手にした時に槍を向けた。
その時の曹操はとても頼もしく見えた。
でも…うん、リーダーだもんね。
「俺が確認しなかったのが悪いんだ。だから、これは俺が…俺達が解決すべき問題だと思っていた。
だが、アイツらはネプテューヌを狙った…
苦楽を共にした仲間だ。それは間違いない…それでも、お前は俺達に希望を見せてくれたんだ、救ってくれた。
だからこそ、俺はその身を守ると誓った。」
自分を見ながら、曹操はそう言う。
曹操は、揺れやすいんだ。
とても揺れやすい。
だけど、絶対と決めたことを通してくれる人だと思う。
うん、辛いと思う。
それを飲み込んで自分を守るって言ってくれるのは凄い嬉しいよ。
でも…
自分は曹操の手の上に自分の手を置く。
「曹操。」
「何だ?」
「きっと、手を取り合えるよ。」
「…」
「全部知ってる訳じゃない。もしかしたら、差し伸べた手を弾かれるかもしれない。でもね、それでも怖くても、苦しくてもそれをやめたら駄目なんだ。
自分が辛くなるとしても、私は手を繋ぎ合いたいよ。
…こんな私だけど、ついてきてくれる?」
遅くなった確認。
それでも、これからもしないよりはずっといい確認。
曹操は、ふっと微笑む。
「そんなお前だからついていきたい。」
「…うん!」
他の皆も…そうみたい。
面倒だなって言ってくれてもいいのになぁ。
正直、馬鹿なことしてるとは思うけどさ。
「…よし、じゃあ、話すぞ。」
曹操は今度はしっかりとした目で自分に残りのメンバーの事を今度こそ話し出す。