女神パープルハート。
今のネプテューヌの女神化であり…神の死後、多くの神器保有者を殺してきた存在。
その力は歴代の二天龍にまで迫る。
「私は
初めまして、私を救ってくれた誰かさん。」
ネプ、テューヌ…!?
そんな馬鹿な、魂は消えたっていーすんが言っていた筈じゃ…
「流石のいーすんも混ざりすぎた魂は分からないようね。
ええ、本物の魂はほぼ消えかけよ。私という闇がいるくらいじゃないかし」
「ネプテューヌに、闇?」
「当たり前でしょう?だって私は
言われてみれば…でも、それだと…自分はネプテューヌとほぼ同化している事になる。
両方の闇を併せ持っているのにここまで形を保っているのはその証拠に他ならない。
「本物に闇がないと思ったら大間違いよ。」
「え、だって…本物の私は機械的だって…」
「そう、機械的
けれど、他ならぬアナタが感情を宿したお陰で消えかけの魂にも影響が出たのよ。」
「それで、闇が…?」
「人を守るために、人を殺す…まるで道化ね。
得たばかりの感情が爆発して闇が生まれるのは当然だった。
人を救っても、誰かから感謝されることもない。
被害を抑えて、四六時中戦っても労ってくれたのはただの1人だけ。」
「それ、は」
「絶望したのよ。夢なんか持っても仕方がないと判断した。
光は闇に飲まれ、残ったのは私ただ1人。
でも、アナタはそれでもと足掻き続けた…出来ることがあるから、ここが終わりじゃないから、そんな合理性の欠片もない自己犠牲でね。」
心に、闇だけが残っちゃったんだ。
何人も、何回も…人を殺して、人を守ったっていう現実を直視したから。
きっと、機械的になって感情を殺していたのもその為だったんだ。
矛盾を抱えた機能不全を起こすから。
パープルハート〔カオス〕は肩に突き刺した刀を抜いて、離れていく。
仕切り直し、それを感じさせる。
「でもアナタのその頑張りを誰が真に理解してくれたの?
上辺だけの感謝を受けて嬉しい?本当は、自分の全てを理解してくれる人を求めていたんじゃないかしら?
自分という、ネプテューヌであってネプテューヌでないただ1人の誰かとしての頑張りを、見て欲しかった。」
「そんなこと、ないよ。」
「その心が軋んで、私が顕在化したのに?
辛いことばかり、悲しいことばかり。
じゃあ振り回されてばかりでうんざりとしているのに、それでも頑張る理由は何なの?アナタが、そこまで自分を殺す意味はあるの?
今でもアナタを慕って、好いてくれる人はいるのに?」
哀れみの目は未だに自分を射抜く。
…ああ、この目は。
自分じゃない、彼女の視線だ。
自分には、出来ない。
こんな冷たい目は…出来ない。
でも、優しいと感じてしまった自分はやはり…どこか、壊れてるんだろう。
だって、肩を突き刺して、手を踏み抜いて自分を否定してくる相手に優しいなぁって思うのは狂ってないと出来ない。
それだけは、ネプテューヌであっても出来ない筈だ。
きっと親しい相手ならそれは出来たんだろう。
でも、それでも…似ている誰かから否定されたら嫌悪感を覚える筈。
何でだろう。
元々、こんな人だったのかもしれない。
「…私の目指す終わりは、私がいないといけないんだ。
だって、それは他ならぬ
今じゃまだ、足りない。
だって、終わってない。やれることが、まだある。」
冷たくなってきていた心に活を入れる。
何をしているんだ。
目の前にいるのに、倒れたままでいいのかと。
それでいいのか主人公。
─いいや、駄目だ。
だってこの想いは自分だけのもの。
目の前のネプテューヌに完全に理解されてたまるか。
これは、自分の見出だした夢だ。
「止まれないよ、ここじゃ。私は
目を背けないで、手を伸ばす。じゃないと…倒せない人が出来ちゃったもん。」
「私に全部任せる…という気はないのね。」
「誰かに委ねた夢を、口授できる程私は女神やれてないよ。
ねぷ子さんは、ねぷ子さん!何度でも言うよ!」
「私が目指すのは完全無欠なハッピーエンド!!
私が歩む道を、誰かに委ねることは一度だって許さない!!」
強く願う。
力じゃない、希望を。
誰かと手を繋ぐ未来という希望を夢見る。
その夢が、自分を強くする。
奮い立たせてくれるんだ、この心を。
目の前が自分が会いたかったネプテューヌ…その闇だというのなら!
─それすら救って見せろ、女神。
「─!」
自分と目の前のパープルハートしかいない筈の空間に声が聞こえた。
たった一言。
でも、それだけで十分だった。
受け入れて、救って、笑い合うんだ。
それがどんなに困難な道でも…今までの誰かの為の行いは間違いなんかじゃなかった。
こんな自分が、ネプテューヌという君に頼ってしまった形でも誰かを救って夢を見れた。
だから、その夢で繋ぐ。
女神化の前に、あるものを取り出す。
ここに来る時にそれを介するなら…きっとこの絆はある筈だから。
パープルハート〔カオス〕が目を見開いた。
その表情、崩れると思ったよ。
「正気?」
「正気も正気だよ。」
「それを得るために、ここに来たのに?私を倒せばそれを制御できるというのに?」
「違う、倒すから制御するんじゃない。
…ネプテューヌの心の闇を、倒すだけなんて出来ないよ。」
「─アナタは。」
紫色の駒にシェアを流し込む。
前なら、出来ない事だった。
全てを抱えて、落ちていくだけの自分だったから出来なかった。
でも…今なら。
絆が、自分を保たせる。
導いてくれる。
信じる心がシェアなら、自分も皆へ
紫の光が、自分を包み込む。
「刮目してよ、これが私の!」
「カオスフォーム…起動!!」
視界を光が包まれる。
そして、闇へ染まっていく。
心が蝕まれていく。
どこまでも堕ちていく。
深い深い闇に、沈んでいく。
…そう、前までなら。
手を引かれる感覚。
─姉ちゃんは、1人じゃねぇよ
─ネプテューヌさん、行きましょう!
一誠、あーちゃん。
─ほら、迷っちゃ駄目よ
─あらあら…ほら、こちらです
リアスちゃん、朱乃ちゃん。
─先輩、ファイトです
─今度こそネプテューヌ先輩を助けます
─考え無しめ、嫌いではない。
─た、大変ですぅ!こっちですよぉぉ!
小猫ちゃん、木場君、ゼノヴィア、ギャー君。
─突っ込む癖、どうにかならないのか?
─考えてそれか、全く…
─それでこそ。
曹操、ゲオルグ…英雄派の皆。
─ねぷっち、そっちじゃないわ
─迷ってんじゃないぜぃ
黒歌、美猴。
─ネプ子ォ!テメェまた無茶しやがって!
─流石というべきかな
─魔王少女もビックリな勢いね☆
おっちゃん、サーゼクスさん、セラフォルーさん。
─ん、まだ約束果たしてない
─…ほら、行くぞ
オーフィス、ヴァーリ。
─ねぷちゃん
─ネプテューヌ
─行ってらっしゃい
お父さん、お母さん。
…神様。
─いきましょう、ネプテューヌさん。
うん、いーすん。
皆を感じる。
暖かい光を。
皆のシェアが、導いてくれる、引っ張ってくれる。
自分は一人じゃないことを、教えてくれる。
…確かに、自分は失望していたのかもしれない。
それは、押し付けだ。
身勝手で、こうあってほしいという願望。
もうそれは、とっくに消えている思いだ。
でも思ってしまったのは事実。
だから、反省はしないと。
『さあ、次のステージに立つ時だ、女神…いや、ネプテューヌよ。』
うん、ありがとう、ロキ。
もういない筈の友達が、繋いでくれた希望。
だから、ここからは一人で大丈夫。
目を開ける。
姿は変わっていない。
けれど、闇のオーラを確かに感じる。
これが、カオス化。
目の前のパープルハートは驚いている様子だ。
「不完全とはいえ…制御したというの…」
「これが私達の絆の力。そして…貴女を救う力よ。」
「…いいわ、流石と言ったところね。
なら、私も本気でアナタを始末させて貰うわ。
その儚い幻想を、儚いまま散らせてあげる。」
力の制御は良好、多分…今までで一番の出力だ。
それでも、目の前のパープルハートは自分よりも強い。
当たり前だよね、だって歴代最強の二天龍を相手取って勝ってるんだから。
それまでも、神滅具の神殺しの可能性をはね除けて来たんだ。
だから、ここからは自分の意地。
「アナタがどれだけ足掻いても私には届かない。」
「その位覆して見せるわ。だって私は…主人公だもの。
待ってる人がいて、待たせている人がいる…帰る理由が私にはある。
貴女には無いでしょう?」
「下らない理屈ね!」
「試してみる?」
何故か分からない。
でも、負ける気はしない。
一人だった彼女とは違う。
寄り添う相手が居たのに、機械だったが故に共にいれなかった彼女とは。
自分の胸に、多くの人の想いが宿っている。
それが、女神の…自分の力になるんだ。
一人だけの感情で強くなるよりも、皆の絆で強くなる。
それがあの人の望んだ女神!
なら…負ける筈がない!!
刀と刀がぶつかり合う。
鍔迫り合いの形になり、確信する。
拮抗している、相手は本気…つまり、絆の力がネプテューヌ1人の闇に迫っている!
「そん、な馬鹿な…シェアを新たな境地へ昇華しようというの!?」
「何の事か分からないけど…これは、決して変わることの無い皆の想いよ!!」
「っく!」
力を込めて、彼女の刀ごと切り払う。
攻撃力どころか、切れ味も上がっている…これなら。
というか、肩の痛みがなくなってる?
見てみると、傷が塞がっていた。
…そういう恩恵かな?
いつ飲み込まれてもおかしくない現状、皆のお陰で意識を保ててるようなもの。
不完全なカオス化による侵食をシェアで防いでいるに過ぎない。
…でも、そういうリスクを背負わないで勝てる相手?
いいや、無理だ。
「やるじゃない…さっきまで大違いね。
想いを糧に女神は強くなる。私には、出来なかったこと。」
パープルハート…ってもう流石に二人いるからカオスって呼ぼう。
カオスは嫉妬の視線をぶつけてくる。
それに刺激されて心の中の闇が溢れそうになる。
感情、に敏感だなぁ!
確かに、これは厄介だ。
早々に決着をつけないといけない。
「…認めましょう。アナタは今の私とほぼ同じ境地にいる。」
「なら─」
「─何もない試練なんて無いのよ、ネプテューヌ。」
「!」
「前座はおしまい。
ここからが本番と知りなさい。」
雰囲気が変わった。
闇を纏った雰囲気から、清廉なそれに。
…これは、まずい。
カオスは、深く腰を落とし刀の切っ先を相手に向け、その峰に軽く右手を添えた。
これは○突の構え…!
「覚悟、したわね?したのかしら?したようね。」
「…ええそうね。」
ずっと戦い続けてきた彼女は自分とは比べ物にならない程の実力だ。
技量だってそう。
ただ力任せに戦うだけじゃ生きられなかった筈だ。
本気の構え…
自分も、刀を握り直して深呼吸。
ここからは、死地。
「…アナタの力、その全てを出し切りなさい。」
「─継承の儀を、始める。」
カオスの姿が消えた。
いや、消えたんじゃない…!
「っ!」
「チッ…」
瞬時に狙いに気付き、向かってくる刀に合わせてこちらの刀を添える。
突かれたカオスの刀は寸分違わず自分の首へと向かってきた…けれど、自分の刀がそれを逸らす。
刃と刃の擦り合う音が木霊する。
見えなかった…!
今のは偶然…自分も殺す気でいくなら首を狙うから。
その直感が上手く働いただけ、次はない。
全部を出し切らないといけない…なら!
シェアを使い、五感全てを強化する。
初擊に失敗したと分かるとカオスは刀を手放して拳を振るってくる。
武器を、捨てた!?
対処するために片手で振るわれる拳を強化された視覚で捉え、掴もうとし…防ぐ方に切り替える。
自分の手のひらにぶつかった拳は、その細い腕からは想像をつかない程の威力を発揮した。
パァン、と凄まじい音を立てながら自分は手のひらで拳を受けながら数メートル後退する。
…これは…
一撃一撃が、必殺そのもの。
これが戦いの日々を生き抜いてきたパープルハートの力。
「くっ、うぅ!なら…32式エクスブレイド…6本展開!!」
手数で補うしかない。
自分の背後に自分の刀と同じサイズの6本のエクスブレイドを展開し、駆ける。
「クロス…コンビネーション!!」
地を蹴り、その速度を上げてカオスへと迫る。
それと同時に、3本のエクスブレイドを射出する。
カオスはエクスブレイドを避け…ないで拳で3本全てを破壊した。
力業もヤバイでしょ、それは…!
迎え撃つ姿勢のカオスに刀を水平に振るう。
当然、避けられる。
避けた瞬間にエクスブレイドを射出、動きを更に封じる!
「甘い。」
黒い雷がエクスブレイドを破壊する。
魔法まで…!?
すぐに距離をとる。
「アナタの殆ど私には出来るのよ。
そう、アナタのそれは私がこのスタイルを確立する前のスタイル…半端者に相応しいわね。」
「っ…!いいえ、ならば新しく作るだけよ!」
今までの戦闘スタイルが通じないなら…全く別のスタイルをこの場で確立する!
今までイメージしやすいものが刀だった。
それはパープルハートが使い続けてきた武器だったから。
体が覚えていたんだ。
…けど、それなら、他の武器ならば。
一手足りないなら、その一手を。
二手足りないなら、その二手を造り出す!!
まだまだ…ここからだよ!
ネプテューヌの今までの戦闘スタイルはパープルハート〔カオス〕には通じない。
ネプテューヌが新たに作り出すスタイルとは!
絆を繋げ、ネプテューヌ!
次回、継承の儀 後編!