刀と刀がぶつかり合う。
また、同じ真似。
技量と力、両方において負けている筈。
また打ち払い、その隙をついて必殺の一撃を叩き込めばいいだけ。
今度は外さない。
─そう、決めつけていた。
(なに…これは…!?)
変わった、全てが変わった。
あの一瞬で何が起こった!?
刀を振るう。
弾かれる。
…槍だった。
光の槍を、刀を握っていない手で振るった。
「堕天使、の…」
「束ねるのは、仲間達の絆。私は、常に皆と共にある!」
あり得ない。
その槍の振るい方は記憶を覗いた私もよく知っている。
何故、何故堕天使総督の動きを!
「シェアで繋がった皆が、私に力を与えてくれる。
その経験を、私は垣間見たのよ!」
無茶苦茶だ。
そんなこと、出来る筈がない。
信仰を介してその者の力を自分に引き出すなんて…そんな芸当、それこそ神の御業!
「これが…貴女の戦闘スタイル…!」
「そう、私の戦闘スタイル…それは!」
「全部乗せよ!!」
それは、技量なんて物は関係ないとばかりの戦法。
他者の力、経験を再現し、その場での最適解を導き出す。
当然、常に最適解を得られる訳じゃない。
だけど…これは、まるで…
力の差が、離れていっている!?
・
・
・
─よお、力が必要か?
うん、お願い。
必要なのは同調する意思。
その力を引き出すために、その情報を覗く。
不完全ゆえに自分は更にシェアとの同調が強くなっているからこそ使える裏技。
あり得ない事象を、あり得ないこの姿だからこそあり得させる。
同格なんかじゃない。
圧倒的に経験と力の差があるなんて思わない。
思うことはただ一つ!
有利なのは、自分なんだ!!
槍を振るい、刀を振るい、カオスへと迫っていく。
確実にその力に迫っている。
この精神世界において、自身への鼓舞はそれこそ力の源となる。
だってそれが反映されないのはおかしいから。
槍で弾き、刀が体を捉える。
正確に撃ち込んで、吹き飛ばす。
追撃の為にすぐに接近する。
おっちゃんの力が、自分を支えている。
少し覗いただけで分かる総督に相応しい戦闘技量。
それを自分に流し込む。
当然ながら負荷は尋常じゃない。
けれど、それを踏み越えてこそこの人を打ち破れる!
「調子に乗って…!」
「押されているのは事実でしょう?」
「そうね…だけど!」
カオスを中心に衝撃波が走る。
咄嗟に槍と刀で防いだけど槍が砕けて、吹き飛ばされた。
「くっ!」
「ハァァァ!!」
迫り来る突き、あまりにも速いそれは自分の首を狙っている。
強化された五感はまだ継続している。
なら…
シェアを介して…!
お願い、力を貸して!
─仕方ない、上手く使え
流れ込んでくる堅牢なそれの知識。
シェアを消費し、それを再現する。
頭痛が酷くなる。
引き出せば、引き出す程負荷は重なる。
だけど…それを気にして勝ちは拾えない!
突きは首へ到達する前に目の前のそれに阻まれた。
「これは…結界!ゲオルグ…!?」
「っ、くぅ…!」
新たに切り替える。
駄目になる前に、攻めきる…!
その為の剣、そして力を…!
─無茶をする。
─倒れんじゃないわよ。
─使ってください、先輩!
三人分を自身へと流し込む。
求めるのは剣、速さ。
頭痛が更に酷くなり、視界が一瞬ぐらついた。
右の視界が、赤い。
あまりの負荷に脳がパンク寸前になっている。
やれてあと二人。
それ以上は…死ぬ。
ふらつきそうな体を気合で言うことを聞かせて地を蹴って、結界を消して斬りかかる。
言葉を紡ぐことすら惜しい。
ぐらつく視界を何とか固定し、剣を創造する。
結界に阻まれていたカオスは斬りかかりに若干対応が遅れる。
「速い…!」
「っ…!」
有無を言わさぬ連擊、あの刀を砕くつもりで刀と剣を振るい続ける。
舞うように、されど激しく。
ゼノヴィアとジャンヌのその部分だけを借りた。
カオスの顔が焦りで歪む。
「何がそこまでアナタを駆り立てると言うの!
他者の経験を自身の体に組み込む…自殺行為に等しい事を何故やれるの!」
焦りかは知らないが喋っている。
何故、どうして。
そんなものは聞き飽きた。
何度でも同じ事を言う。
「誰もが手を伸ばして、戦っている。
それを、私だけが才能に胡座をかいている訳には、いかない…!」
「くっ…!?」
完全に気迫という面においてこの場を制しているのは自分だ。
流石、主人公なねぷ子さんだ。
負けられない戦いは、決めないとね。
刀で防ぎ続けるカオスは反撃の隙を見つけようとしている…けど、このスタイルは近接戦闘の面だけじゃない!
魔法現象を再現するシェア。
だけど、自分にはカオスのようには出来ず、物に纏わせる事が精一杯だった。
けど…!
─どうぞお使いください。
右の目が使い物にならなくなる。
現実には影響はない…筈。
ぶっちゃけやりたい放題してるけど、大丈夫かはまだ不安だよ。
「ちょっと見えにくいわね。」
「っ、まだよ!」
防いでいたカオスが先程のように黒い雷を放ってくる。
ほぼゼロ距離に近い…けれど、それを通す訳にはいかない。
雷同士がぶつかり合い、相殺される。
「なっ…」
驚く表情。
朱乃ちゃんの雷光を再現する。
光の属性もあるそれはカオスエナジーで造り出される雷に相性が良かった。
驚愕と共に防御が薄くなる。
シェアも残り少ない。
カオス化を保てるのも時間の問題。
初めから短期決戦するつもりで猛攻を仕掛けているからいいけど…
「これが…アナタの意思の力…?」
「いいえ、私の意思の力なんて微弱な物…
これは、私達の絆の力よ!!」
断言すると共に二つの武器を同時に振るい、刀を弾き飛ばした。
そう、弾くではなく、弾き飛ばした。
これが一番の狙い。
弾き飛ばされた衝撃でカオスの腕はすぐには機能しない。
好機だった。
ここを逃せば、もう次はない。
だから、全ての力をここに注ぐ!!
「ネプチューン・ブレイク!!」
初擊。
それを完全に決めるために少しのシェアだけを残して全てを脚力強化に回す。
視界を、音すら越える速さで以てカオスを斬り上げる。
反応される前に、全てを叩き込む…!
続けて浮いたカオスに四方八方から駆けて何度も刀で斬る。
「く、ぁぁあ!!」
カオスが斬られながらも向かってくる自分を捉え、拳を振るう。
その殺気だけは今までのそれを凌駕していた。
でも、それが届くことはあり得ない。
体を強引に捻り、その拳をかわす。
すれ違い様に更に一撃。
「っが…!まだ、よ!」
カオスがカオスエナジーを全て使ったのか巨大なビームを放つ。
追い詰められている証拠だった。
着地する。
本当は最後にもう一撃与えて終わるつもりだった。
けれど、今の自分はもう足も限界だった。
立って構えるのでやっとだった。
でも、気合いであと一歩動く力と刀を振るう腕力は残っていた。
"勝つ"のは自分だ、絶対に。
─後で、お説教ね。
ごめんね。
情報を取得する。
痛みというものが体から失われる。
一瞬だけ意識が飛びそうになった。
刀に、残りのシェアを使って再現する。
刀が纏ったそれは紅かった。
迫り来る"黒"。
「ふぅー……───」
息を吸って、吐く。
精神世界においてそれは無駄な動作かもしれない。
でも、自分には意味ある行為だった。
紅を纏った刀を強く握り、構える。
突きの構え。
心を落ち着けて、"黒"を見つめる。
…ううん、正確には"黒"の先にいるカオスを。
「これが、最後──」
一点を貫く、それだけをイメージする。
騒がしくなる心を鎮める。
「─貫け…!!」
そうして、突きと共に放たれた紅の一条の光。
"黒"に比べたら、あまりにも小さく、細いそれはそれでもただ真っ直ぐに突き進む。
"黒"と"紅"が衝突する。
拮抗は一瞬だった。
"紅"は、"黒"を越えた。
鋭い"紅"は止まらず突き進み、そして──
「─っ、ぁ……!」
この先にいたカオスを貫いた。
カオスが落ちてくる。
ドサリ、と落ちたカオスはそれでも立ち上がろうとしていた。
胸に、決して小さくはない穴を開けながらも。
女神化が解除される。
歩けない筈の足が、勝手に動いた。
背中を、押されるような感覚がする。
ゆっくりと、確実に。
倒れるカオスへと歩いていく。
そうして、辿り着いた。
見下ろす形で、カオスを見る。
「…私の、負けね。」
諦めたように、けれど清々しそうな表情で立ち上がることをやめた。
「…それが、アナタの答えね。」
「……うん、これが私の覚悟。
だから、いいんだよ。私に代わろうとしなくて。」
「…辛くないの?」
「辛いよ。」
「怖くないの?」
「怖いよ。」
返事は全部肯定。
だって、辛いものは辛い。怖いものは怖い。
嘘は、言えない。
「なら、どうしてまだ頑張るの?アナタはもう、十分背負っているわ。私から見ても…ずっと。」
それでも何故と聞かれる。
さっきも答えたけど、それとはまた違う答えを問われている気がした。
どうして頑張れるのか、どうしてそこまで傷付くことを厭わないのか。
そんな視線の問いを感じた。
立てなくなって、膝をつく。
「辛いし、怖いし、苦しいし、悲しいよ。
頑張っても頑張っても…足りないんだって実感させられる。
本当はこんなことせず、非日常から目を背けるべきだったかもしれない。」
「なら、何故?」
「それでも、私は。」
「
知っているのに、見えているのに。
それから逃げることを自分自身が許さない。
例えそれが残酷な真実だとしても、それから目を背けることをしてはいけない。
「それを背負ってでも、皆と手を繋ぎたいんだ。
私って、我儘だから。」
自分の言葉に、カオスはそっと目を閉じる。
「…苦難が多い方を選ぶ。心を得た私じゃ出来ない事ね。」
「気付いてあげられなくて、ごめんね。」
「今更よ。ずっと、心が芽生えた瞬間からこんなだったから。
遅かれ早かれ私は一度表に出たもの。」
もう一度目を開いて、自分の頬に手を添えてくる。
自分はその手を拒まない。
「試練は合格よ。私の力、アナタが使って。」
「うん、これからは…一緒だよ。」
「…苦労しそうね、それは。」
「それどういう意味!?」
「何人に心配と苦労をかけさせてるか、思い出しなさい。」
「うぐっ!」
ふふっ、とカオスが笑う。
何処かやりきったような笑みだった。
「…でも、その輪に私も入っていいのなら。連れていって。」
願うような言葉。
そんなこと。
手を握って、笑いかける。
「言われなくてもそうするよ!」
「…ああ、よかった。」
そうして、カオスは紫の光となって自分の中へと入っていった。
…空間に、一人になって座り込む。
どっと疲れが出てきた。
も、もう無理…シェアも気力もすっからかん…
「あー…しばらくは、刀握りたくない気分だよ~…」
眠くなったきた。
精神世界で眠くなるっておかしいかもだけど、眠くなってきた。
多分、戻るってことかな。
あれ、そういえばおっちゃん達見てるって言ってたような…
こ、これは…やばい…?
言い訳を今のうちに考えておこう!
そう思いながらも、目を閉じて、眠りについた。
・
・
・
キィィィン。
そんな機械的な音が聞こえて目を開ける。
…あれ、ここどこだっけ。
カプセルみたいな…ああ、そうだった。
おっちゃん達が秘密で作った場所だった。
右目は見える、精神的疲労は凄いけど体は動く。
よかったぁぁぁぁ…これで右目さようならだったら笑えなかった。
安堵しつつ、カプセルから出て紫の駒を台から取る。
「…ありがとう、ロキ。」
また助けてくれた友達に、お礼を言う。
にしても疲れた。
あの戦いから学べたことは多くある、けども!
うん、また明日にしようかなぁ…
扉を開ける。
すると…
「姉ちゃぁぁぁぁぁん!!」
「ネプ子ぉぉぉぉぉぉ!!」
「ネプテューヌさん!(;´Д⊂)」
めっちゃ泣いてる三人が自分の方に雪崩れ込んできた。
当然こうなると思ってなかった自分はそのまま床に下敷きになる訳で…
「ねぷぅぅ!!?」
め っ ちゃ 痛 い。
あ、痛覚ある!
痛覚、ヨシ!
それより、号泣してる三人だよ!
いーすんもなんでそんなに泣いてるのさ!?
「見せてもらったぜお前の覚悟ぉぉ!」
「ごめんな姉ちゃん!俺達が不甲斐ねぇばっかりに!!」
「ああ、ぶじでよかった…!」
「く、苦しいから…離れて…!」
し、死ぬ…帰ってきて早々これは死ぬ…
精神的にキツイ所にこれは辛い…ツライさんなのだ…!
おいおいと泣く三人。
その後、何とか宥めて解放してもらった。
ちなみに、おっちゃんのあんなに泣いた様子は初めてだった。
休憩室のような場所で皆でプリンを食べながら話をすることになった。
うん、プリンあるなんて分かってるね!
「生き返るよ~!!」
「んな大袈裟な…大袈裟でもねぇか。
本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ、多分、カオス化も危険なく使えるようになったと思う。」
「イストワール、どうなんだ?」
「カオスフォームはみちなブブンがおおすぎます。ワタシもわかりません…ですが、あのたたかいをみるに…ダイジョウブかと。」
「そうかい。…何はともあれ、お前の覚悟と想いはしっかりと理解したぜ。悪かったな、知らず知らずの内に背負わせちまった…」
おっちゃんが本当に申し訳なさそうに頭を下げてくる。
慌ててスプーンを置いて頭を上げるように言う。
「い、いいって!自分も突っ込む癖があったから!
ほら、それよりも皆で仲良くしようよ!」
「…そうだな、言葉だけじゃ何度でも言える。
ネプ子、何かあれば絶対に力になるぜ。
堕天使一同…は無理かもだが、俺は必ずな。」
「ワタシも、よりサポートにちからをいれさせていただきます。」
「ああ、俺もだぜ。」
「…あはは、皆ってば。」
その言葉がどれだけ嬉しいことか。
繋げられたんだって、実感できることがどれだけ励みになるか。
「うん、頼りにしてるね、皆。」
そうして、絆がより強くなったことを感じられた。
うん、これからも皆と共に、未来を目指そう!
Here we go!Good to go!ネプテューヌ!
だよね、皆!
カオスフォームを取得しました。
教えて、いーすん!
カオスフォームとは、ネプテューヌさんの新たなフォームであり、女神化の次の分岐点の一つです。
悪魔よりの性質となっており、女神状態よりもより攻撃的な性能になっています。
属性による攻撃も強化されており、今までよりも強力な技も使えるでしょう!
シェアによる経験のコピーはあの精神世界だけの特別なスキルです。
現実よりも心がよりシェアと近くにあるお陰で使えただけなので試しても無駄ですよ、ネプテューヌさん。
「ええい、何故使えん!?」
ネプテューヌはネプチューンブレイクを覚えた!
ネプテューヌは混沌次元一閃を覚えた!(カオスフォーム限定)
ネプテューヌはカオスバインドを覚えた!(カオスフォーム限定)