冥次元ゲイムネプテューヌ   作:ロザミア

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戦わなければ…生き残れない!!(挨拶)


ミラーラビリンス攻略 中編

実験は続いた。

私はよく分からないまま、何かを手にいれた。

鏡だった。

綺麗な鏡を手にいれた。

でも、何だかイライラしてその鏡を石で叩き割った。

 

男の子が近付いてくる。

少し怖がってる様子だけど、私はこの子にまで当たるつもりはない。

名前…つけてあげないと。

 

「大丈夫、私は平気よ。」

 

「パンドラ…へいき?」

 

「平気!」

 

手をそっと触れる。

もう、温かさも感じない。

寒さも感じない…でも、触れることは出来る。触れたかすら分からなくても、この目が触れていることを肯定する。

 

男の子からぎゅっと握ってくれて、驚く。

 

「へいき、パンドラ。」

 

「…うん。そうだ、貴方に名前をつけてあげるわ。」

 

「なまえ…?」

 

「私のように、自分だけの名前よ。私はパンドラでしょ?」

 

「パンドラ…なまえ……なまえ、ほしい…!」

 

楽しみになってきた様子の男の子が微笑ましく感じる。

ああ、この子は光だ。

…私が、守らないと。

私にとっての、光を…

 

そうだ。

 

「貴方の名前は、フォスよ。」

 

「ふ…おす?」

 

「フォスよ、フォ・ス。」

 

「ふぉ…す…ふぉす、フォス!フォス、パンドラ、へいき?」

 

「気に入ったのね。それと、平気、じゃなくて──」

 

暖かいと感じるのは…こういった時間でも同じ。

私にとって、お父様とお母様以外で暖かいと感じたのはフォスといるこの時間。

もう暴れることはしないし、私の事を慕ってくれている。

弟のような存在。

 

今はそれだけでいいの。

今はこの時間が私にとっての…光。

 

「フォス、いつか二人でここを出ましょうね。」

 

「フォス、パンドラ…でる…?」

 

「二人で、戻るの。お父様とお母様は優しいから…きっと、暮らせるわ。」

 

「かぞ、く?」

 

「そう、家族よ。私達は…家族!」

 

「かぞく…フォス、パンドラ、かぞく!」

 

嬉しそうにはしゃぐフォスとの時間。

 

それがどうか奪われませんように…そう、願った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼノヴィアさんと共に鏡の世界に再び来た。

けれど…トリスタンさんはいませんね。

 

「アーシア、気を付けろ。

相手は遠距離からの攻撃に優れているからな。」

 

「はい。」

 

「…それにしても、アーシアは変わったな。立派になったと言うべきなのか。」

 

「え?」

 

「強かになった。精神的に、皆を引っ張れる位にまでな。

その証拠が、先程の皆の反応だ。」

 

「…そうでしょうか。」

 

私は強くなれた自信がない。

ただ、救いたいだけで…私に出来るのはそれくらいですから。

 

ゼノヴィアさんはふっと笑う。

 

「自己評価が低いのは良くないな。私も、そんな時が…ないな、うん。私は常に私を見ている。」

 

「難しいこと言うんですね。」

 

「そうしないと、生きていけなかったからな。悪魔を討つことも、異端者を討つことも…楽ではなかった。」

 

教会の戦士の時よりもいくつか丸くなった…というより考えが柔軟になったんでしょうか。

気楽そうなゼノヴィアさんが羨ましいです。

何というか、いつも…そうなんだ、みたいな反応ですから。

 

「さあ、お喋りはここまでかな。」

 

「…いるんですか?」

 

「とても臭う。静かな殺気だ、相当な手練れだなトリスタンとやらは。」

 

周囲の警戒を強めるゼノヴィアさんに同調するように私も警戒を強める。

私に出来ることを常に考えていかないと…置いていかれる。

 

「──来る!」

 

いち早く察知したのかゼノヴィアさんが私を抱えてその場から飛び退く。その際、ゼノヴィアさんが刃物を投げた。

 

青い光…矢が私の先程の位置に突き刺さり、鏡の床が割れる。

 

それと交差するように飛んでいった刃物が弾かれる。

 

「…さて暗殺者、このまま私は時間稼ぎでも構わないが出てきた方が早いぞ?」

 

 

 

 

 

「─そのようです。嘆かわしいことに、私の腕では貴方を射殺す事は出来ないようで。」

 

声の主が天井の鏡から出てくる。

ああ、やっぱり…イッセーさんの読みは当たったんですね。

 

天井の鏡が潜伏場所だった…

 

赤い長髪の男性はその目を包帯で閉ざしながらも正確にこちらの方を向く。

 

「流石は教会の戦士、一筋縄ではいきませんか。

だから私もパンドラに進言したというのに…嘆かわしい。」

 

「トリスタン、ですね?」

 

「ええ、当たっていますよ。

お強い心をお持ちのようだ。」

 

「…あ、トリスタンといえばアーサー王伝説の騎士トリスタンか!」

 

「今更ですかゼノヴィアさん!?」

 

「…教会の出とは思えないほど学が無いのですね。

私はあったかもしれない祖先などどうでもよろしいのですが。」

 

得心がいったとばかりに手をポンと叩いたゼノヴィアさんに私とトリスタンさんは呆れた。

こんな時に緊張感が無さすぎます。

 

「では、貴女方の排除…させていただきます。」

 

「そう容易くやれると思わないでもらおうか。

アーシア、ここは…」

 

「退きませんよ。邪魔にならないように動きますから安心してください。」

 

もう役立たずの私ではいられない。

私は次のステージに進まなければならない。

それが最後の成長だとしても…私はその扉をこじ開ける。

 

私は癒す者、救う者でありたい。

その願いを通すために…私は戦場を歩きます。

怪我人も救いを求める人も、大小あれどそこにいるのです。

 

貴方のお陰で気づけました。

私が戦うのは人でなく、『傷』なのです。

 

なら、手術と変わらない。

 

「貴方を救います。貴方の心を、洗いましょう。」

 

「…聖女ではなく、悪女ですね。」

 

「何とでも。私は私の為に他者を癒します。あの人の隣にいられない私には…それがやるべきことですから。

ゼノヴィアさん、手術開始です。」

 

「スイッチが入ったな。悪くない切り替え方だアーシア。

なら、久々に張り切るか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一手、二手、三手と拳と斧の攻防が続く。

悪魔の俺と、人間のあっちだとしてもずっと戦ってた呂布の方が強さの基準が高い。

俺のは誤魔化しに過ぎないのを忘れちゃいけない。

 

強さを誤魔化し続けて、越える。

それが俺にとっての『赤龍帝の籠手』だ。

 

ただ予想外だったのが…!

 

『Boost!』

 

「私も。」

 

あっちの()()()()が光を発する。

呂布の圧が高まり、力強さも増した。

 

あり得るっていうのか、これが…!

 

 

 

「俺の神器とまんま同じかよ!」

 

「こっちは禁手でこれ。そっちは元から、差はある。」

 

「ねぇよ反則が!!」

 

『おのれ…似た性質だと…!?』

 

戦闘が始まったのと同時に呂布が禁手を解放した。

龍の手の倍加をきっちり使った後にだ。

それがあの籠手。

 

龍哭の魔篭手(ドラグニティ・ギア)

 

赤龍帝の籠手と何も変わらない能力。

倍加し続ける力。

 

けど、おかしい…だとすれば…

 

「なんで、体がもつんだ…!」

 

「私は特別。限界を知らない。」

 

「出鱈目が!!」

 

倍加する。

木場の奴、正解だよまったく!

俺じゃなきゃ、こいつは無理だ。

 

余波だけで周囲の鏡が割れ、貼り変えられる。

俺とこいつの戦う余波でこれだ。床の鏡が何度割れたか…

それも分かってるのかわざと割って行動を阻害してきやがる。

 

「一誠さん!」

 

「!」

 

背後から声がかかり、横に跳ぶ。

 

俺の背後から全てを貫かんとばかりにレーザーが通り過ぎたのは同時だった。

 

「無駄……!?」

 

斧で打ち消そうとしたのか呂布が斧を振るう。

しかし、ここでも信じられない事態が起こった。

 

「私だって…女神なんです!!」

 

「っ、はぁ!!」

 

ガクン、と呂布の膝が曲がりかけた。

何だ?これはどういうことなんだ…?

レーザーと斧が拮抗した。

 

…すげぇよネプギア!

一秒にも満たない拮抗だったがそれで十分だ!

 

一際大きな声を出して振るわれた斧によってレーザーが打ち消された。

 

そしてその振り終えたタイミング、それを狙ってた!

 

拳を握り、床を蹴る。

割れる音を気にせずに一瞬で呂布の懐へと。

 

「ぶん殴る!!」

 

「っ、まだ!」

 

「そうはさせないよ!風よ、切り刻め!」

 

殴る俺を蹴ろうとした呂布に木場の魔剣の暴風によって足の力が緩まる。

ぶつかった足の威力は俺が吹き飛ぶには及ばない。

 

さあ、ようやく捉えたぜ。

 

「痛いのいくぜ!」

 

拳が鳩尾に突き刺さる。

うっそだろ…殺す気はないとはいえ硬い。

だけど、殴り抜ける。

 

「くぁっ…!」

 

吹っ飛ばすには至らず、けれど何mか後退させた。

 

ダメージはある筈だ…じゃなきゃ人間じゃねぇよ。

あっちとこっちの倍加は未だされてる。

まだまだ油断はできねぇな。

 

「イッセー君。」

 

「そりゃ、パンドラ直々に動く必要もねぇよな…こいつ、間違いなく曹操と同レベルかそれ以上だぜ…!」

 

「っ…ふぅ…」

 

ネプギアを見ると、女神化したのかビームソードが銃と剣の役割のあるビームランチャーへと変わっていた。

シェア…ってより魔力か?

 

分からねぇけど、ネプギアの地力の高さが窺える。

呂布と数瞬とはいえ拮抗したんだ。

実力は高い。

 

「…油断した。そこの女神、強い。」

 

「なら覚えとけ。俺たちに弱い奴なんていねぇ!」

 

「私達は負けません!どれだけ強くなっても…力を合わせれば!」

 

「─私は、呂布。強くないと…いけない。」

 

静かに暗示をかけるかのように独り言。

そして、取り出した薬品のような物を見て、嫌な予感がして呂布へと駆ける。

 

「やらせるか!」

 

「残念。」

 

俺が止めるより先に呂布は迷うこと無くその薬品を飲み干した。

 

そして、蹴り飛ばされてネプギア達の方に倒れる。

 

「一誠さん、大丈夫ですか!?」

 

「大丈夫だけど…くそ、嫌な予感がしやがる。」

 

呂布は斧をダラリと持つ。

目が本気の殺意をぶつけてくる。

 

 

 

 

 

「ここからが本番。」

 

「っな!?」

 

 

 

 

 

その一言の後に、呂布が消える。

違う、消えたと思うほどの速度…!

ドーピングかよ!?

 

どこだ、何処から来る!

今の速さなら…!

 

「後ろか!?」

 

後ろを振り向くが、いない。

頭上に影が差す。

上をすぐに見ると振り下ろす準備が整った呂布の姿があった。

 

速いなんてもんじゃねぇ…これは、瞬間移動のレベルだ!

 

ネプギアと木場が巻き込まれる…!

それだけはさせるか!

 

「二人とも!」

 

「きゃぁ!?」「イッセー君!?」

 

二人を突き飛ばして、掌を呂布へと向ける。

くっそ、こういう時だけ速くて助かるぜ俺の体!

 

『Boost!』

 

「ドラゴンショット改め、ドラゴンインパクト!!」

 

掌に赤い魔力が集まる。

時間が遅く感じる。もう振り下ろされる斧が死神の鎌にしか見えない。

けど、俺がやられて…誰が二人を守る!

 

男の子にはな、意地があるんだよ!!

 

 

 

 

 

「撃ち抜けぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「…落とす!!」

 

 

 

 

 

俺の倍加した魔力全部を乗せた魔力球を呂布に放つ。

殺す気でいかないとこっちが死ぬ!

呂布は更に倍加した力で斧を振り下ろす。

 

頼むから、くらってくれ…!!

 

 

 

 

 

「私の、勝ち。死ね。」

 

 

 

 

 

その願いは裏切られ、斧はいとも容易くドラゴンインパクトを切り裂くと共に俺の胴体を斜めに裂く。

縦にまっぷたつにならなかったのはドラゴンインパクトの反動で俺の体が退いたからか…?

 

鎧を砕き、俺の体を斬った。

 

「─ご、ぼぁ…!」

 

 

 

「一誠さん!!」

 

 

 

「駄目だ!」

 

ネプギアの悲痛な叫びが聞こえた。

木場が飛び出すのを止めてくれてる。

それでいい。

 

…倒れるわけにはいかない。

 

女相手に意地を通すのも…男の子だよな。

 

「いってぇ…なぁ…!」

 

さっさと退場するようじゃねぷ姉ちゃんの弟は務まらねぇ。

俺の憧れは消えちゃいない。

まだだ、まだ俺は生きてる。

たかが体が斬られただけだろうが。

 

『transfer!』

 

振り下ろしたばかりの呂布の腕を掴む。

動くだけで体が痛む。

 

血が噴き出す。

勝手に出てろってんだ。

 

「まだ動ける…?無駄なこと。」

 

呂布の驚愕した顔が見える。

イッセーさんをあんなんで倒したと思ってんのかこの野郎。

 

拳が迫る。

 

『Boost!』

 

「お前、に…教えてやる!」

 

「っ!?」

 

拳を掴む。

何とか掴めた。

くそ程痛い。

これは…手の骨逝ったな。

 

「あんなんで俺が死ぬ…?

ふざけんな、俺はあんなんで死ぬならとっくに死んでる!!

俺は…俺の憧れに追い付くまで死ぬか!」

 

 

 

 

 

「俺はネプテューヌの弟、兵藤一誠だぞ!!やるならもっと潰す勢いでやれよ!!」

 

 

 

 

その言葉と共に、俺は頭をぶつける。

いわゆる、頭突きだった。

頭に振動が響く。

 

「気持ち、悪い!」

 

「がぁっ…!」

 

蹴られて、仰向けに倒れる。

意識が朧気になっていく。

倒れてる、場合か…!

 

俺は、まだ…!

 

呂布が斧を振り上げる。

 

何だよその顔、俺が怖いのか?

流石はイッセーさんだぜ…あの呂布を怖がらせるなんてな。

 

…くそ、もう、無理か…?

 

ああ、やべぇ…前が、暗く…

後は頼んだぜ…ネプギア……木場…!!

 

 

 

 

「─私が、倒します。」

 

 

 

 

最後に聞いたのは凛とした、覚悟のある声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

斬られた。

一誠さんが…!反応できずに、庇われた…!

慌てて駆け寄ろうとして、木場さんに止められる。

 

「放して!」

 

「冷静になるんだ!」

 

「一誠さんが…!」

 

「…いってぇ…なぁ!」

 

一誠さんの痛みに耐える声が聞こえた。

嘘…あの傷で意識が…?

 

木場さんから一誠さんに視線を移す。

そこには、呂布の腕を掴んで、拳を止める彼の姿があった。

血が止めどなく出て、今にも倒れそう…でも、倒れないって意思が背中から伝わってくる。

 

「お前に…教えてやる!」

 

振り絞るような声で、苦しさを感じさせない声で。

彼は頭を振り上げる。

 

 

 

「俺はネプテューヌの弟、兵藤一誠だぞ!!やるならもっと潰す勢いでやれよ!!」

 

 

 

その言葉と共に、彼は呂布に渾身の頭突きをぶつけた。

 

その言葉は、私の心にも響いた。

お姉ちゃんの弟であることを誇るように。

負けてたまるかって意地を感じるようで。

 

私は、焦っていた気持ちが落ち着いていく。

…そうだ、私も戦わないと。

私も女神なんです。

例え、生まれが歪だとしても…受け入れてくれた。

 

この力は、守るために。

誰かを守るために誰かを倒す。

そんな当たり前を私はまだ理解してなかった。

MPBLを握る力が強くなりすぎていたから緩める。

 

一誠さんが蹴られて、仰向けに倒れる。

これ以上は、看過できない。

 

ここからは─

 

 

 

「─私が、倒します。」

 

 

 

この行動に、もう迷いはありません。

退くことだけは出来ない。

この場をどうにか出来るのは私だけなんだ。

 

一誠さんに振り下ろされる斧をMPBLで弾く。

 

「一誠さん…お疲れ様です。」

 

回復魔法をかけて、労りの言葉をかける。

一誠さんは気を失ってて聞こえてないだろうけど…貴方のお陰で目が醒めました。

 

「木場さん、一誠さんをお願いします。」

 

「援護は?」

 

「隙があったら、お願いします。」

 

「分かった。…ごめんね、僕が弱いばかりに。」

 

「そんなことありません。ここに弱い人はいませんよ。」

 

彼の言っていた言葉を反復するようで申し訳ないけど、無力さを感じる必要はない。

木場さんのお陰であれを使わせることが出来たんです。

 

あれほどのドーピング…きっと時間制限がある筈。

 

お父さんを傷付けて、一誠さんを傷付けた。

私の弱さが招いた結果です。

それでも、どんな理由があろうと…傷付けた貴女達を許しません!

 

「女神じゃ、私は倒せない。」

 

「決めつけが早いですよ。私はまだ、戦える。

それに、貴女がどんなに強くても…勝つのは私です。」

 

まだお姉ちゃんのいつかの記憶に頼るときがある。

ロキという神様の核から溢れる魔力に頼るときがある。

 

…でも、これも私の力です。

 

「MPBL、最大出力…!」

 

MPBLのロックを外し、出力を最大にまで引き上げる。

 

それに…私には後一つ使える物がある。

機械も、魔力も、女神の力も…凄い力です。

でも、これも凄いんですよ?

 

「…女神も潰す。消えろ。」

 

斧が振るわれる。

凡そ常人だと捉えられない早さの横振り。

殆どがこの段階で一閃されるだろう一撃。

 

でも、私は捉えられる。

 

「ふっ!」

 

「無駄!」

 

横振りに合わせてMPBLをぶつけて弾く。

一撃を弾くだけで腕が痺れそう。

弾いてすぐに拳を叩き込む。

けど、片腕でガードされて斧が振り下ろされる。

 

片腕だけであの斧を振るうなんて…!

 

横に体を逸らして振り下ろしを寸でで躱す。

 

あの斧だけは避けないといけない。

このタイミングでもない。

何処かで大きな隙を…

 

そう思案しているとすぐ目の前に斧を振るおうとする呂布の姿が。

 

「っく!」

 

上に飛んで斧から逃れる。

何発かビームを発射しても弾かれてしまう。

反応速度も尋常じゃない。

 

「…なら、あっちから…!」

 

木場さんの方を向いた直後、呂布の姿が消える。

しまった…!

そうだ、相手は武人とかでもない。

一対一はこっちから捨ててるんだからそんな手もあるのに!

 

飛ばなければまだ注意を寄せれたのに…!

 

急いで木場さんの方へと駆けつける。

 

けど、それよりも速い呂布が木場さんへと斧を振り下ろす。

 

「これで、二人目…!」

 

「木場さん!!」

 

一誠さんを背にする木場さんは鋭い目付きをしながら呂布を見て─

 

 

 

 

 

 

 

─ニヒルな笑みを浮かべた。

 

 

 

「君がそうすることは──読めていた。」

 

斧を振り下ろし、木場さんは受け止める暇もなく斬り裂かれる…

そう、思っていた。

 

でも、結果は違う。

 

私の視線の先には…

 

 

 

木場さんが一振りの剣で斧を受け止めていた。

 

 

 

「!?なんで…!」

 

「君がイッセー君を斬ったそのすぐ後。

イッセー君は自分の意地とは別に僕に託していた。」

 

「…あっ!」

 

思わず声をあげる。

もしかして、あの時の…

 

『transfer!』

 

あれの事…?

 

でも、あれって何の…?

 

力を入れても押し切れていない呂布に木場さんは今までよりも獰猛な笑み。

まるで、チャンスを待っていたとばかりだった。

 

「譲渡。君のそれにはない、イッセー君の力だ。

倍加していた力を、誰かへと渡す。そして、当然その倍加先は…」

 

「っ、お前…!!」

 

「一度だけなら、聖魔剣でこの状況まで持ってこれる。

だから、譲渡された僕はさっきまで無力な僕を演じていた。」

 

そして、と一筋の汗を額から流した木場さんから視線を感じた。

私は、それに頷いてMPBLを呂布へと向ける。

 

「君の馬鹿力は確かに驚異だ。生半可な罠も、実力も通じない。

だからこそ、君の注意はネプギアちゃんとイッセー君に向いた。

この二人が君を打倒しうる相手だ、それは間違いない。」

 

聖魔剣を持つ手が徐々に震える。

まだ、まだその時じゃない。

木場さんのあの目は…違う、すぐに撃てじゃない。

 

機会を待て、そんな目だった。

 

「けど……残念だったね三国志最強。

騙し合いは僕が一歩上だった。」

 

「この…!!」

 

聖魔剣が弾かれ、怒りのままに呂布の蹴りが木場さんにぶつけられる。

木場さんは腕でガードしつつ吹き飛ばされる…

 

でも、ここだ。

 

ここが一番の好機!!

 

 

「この瞬間を待っていました!!」

 

「っ、無駄って言ってるのに!!」

 

無駄じゃない。

これは、木場さんと一誠さんが作り出した最大の隙!

無駄なんかにさせません!

私は、お姉ちゃんの妹なんです…ここで、失敗するわけにはいきません!!

 

 

 

「マルチプルビームランチャー…出力最大!貫いて!!!」

 

 

 

私の魔力、全てを使います!

 

そうして放たれたビームは今までで一番の輝きと威力を叩き出す。

呂布はそれを斧一本で迎え撃たんと構える。

籠手が光り、また倍加したことを告げる。

 

「私の方が…強い!!」

 

斧とビームが拮抗する。

嘘…全力なのに!?

 

でも、ここで負けるわけにはいかない!

勝たなきゃいけないの!

 

「全部…裏切られて死ね…!!」

 

「お願い!!」

 

 

 

 

 

「─裏切られるのは、君だ!」

 

 

 

 

木場さんの声がまた聞こえる。

 

「っあ!?」

 

呂布の苦しそうな声が聞こえた。

何が…?

よく見ると、呂布の足に一つの剣が刺さっている。

 

え…でも、一誠さんの拳ですら受け止めれる硬さだったのに…?

 

木場さんの方を見ると、そこには…

 

「ネプギア…流石だぜ…」

 

何かを投げる動作をした一誠さんとそれを支える木場さんの姿があった。

 

一誠さん…!

 

「なん、で…今の私に、こんな剣が…!?」

 

「アスカロン。」

 

「それは…!」

 

「龍殺しの聖剣、その一つがこれだ。

グラムじゃねぇが…その力は折り紙付きだろ!」

 

「……負ける?私が…?曹操、以外に…!」

 

アスカロンが刺さり、思うように立てなくなった呂布が顔を歪ませる。

そして、膝を折ったその瞬間─

 

 

 

 

 

─拮抗は無くなり、私のビームが呂布を呑み込んだ。

 

 

 

 

 

鏡の床に降りて、女神化が解除される。

呂布が倒れ、斧は呂布からかなりの距離がある場所に転がっていた。

 

「……倒した…?」

 

「…死んで、ねぇな。」

 

気絶してるようで、倒れ伏してる。

よかった…頑丈なのが功を奏しましたね。

 

勝てたのと、一誠さんが無事とはいかずとも立てるくらいの余力があるのが嬉しくて駆け寄る。

 

「お疲れ様です!!」

 

二人に抱き付いて、勝ったことを喜ぶ。

 

「いだだだだだだだ!?」

 

「あ、ご、ごめんなさい私!」

 

「あはは、ネプギアちゃんもっとやってあげなよ。無茶すると痛いって教えてやるんだ。」

 

「テメぇ木場!?」

 

「ハハハ、まあ、何はともあれ。」

 

木場さんが一誠さんをしっかりと支えながら笑う。

 

「勝てたね、僕たち。」

 

「…はい!」

 

「だな…しばらく、戦いは懲り懲りだ…」

 

お姉ちゃん…勝てたよ!




呂布撃破!
あっさり勝てたように見えるじゃろ?
この三人だから勝てたところあるんですよね。

まず前提として倍加と譲渡が出来てアスカロンのある一誠がいないと初手で詰みますね…そんな呂布でした。

ちなみに曹操とジークフリートで10:0の試合が出来ます。
やっぱ魔剣いっぱいマンと禁手やべぇ奴は強い、はっきりわかんだね。
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