曹操VSカイネウスとなります。
さあ、戦いの行く末は?
一体どれほどの時間が経ったのか。
いや、実際は10分も経っていないのだろう。
互いからすれば長く、周りからすれば短い様子見。
下手に動けばそれが隙となって死ぬ。
馬鹿正直に禁手を使うのでもいいが…さて、目の前の相手がそれを馬鹿正直に見ているだけだろうか?
答えは否だろう。
受けてたつというのもありえるが、今回に限っては無いだろう。
「テメェとこうして槍を正面切って向け合うのはいつぶりだったか」
「さてな。5ヶ月前じゃないか?」
「ハッ、良く覚えてやがる。そんなに俺に槍で負けたのが悔しかったか?」
「ああ、悔しかった。だから、次はない」
次はない。
二つの意味での言葉だ。
もう負けないというよくある宣言、そして…
もう、互いに槍を交わすのはこれで最後になる。
どちらかが倒れ、どちらかが立ったまま。
…俺は、お前のようには出来ない。
手を取り合えないと思ってしまう。
カイネウスは獰猛な笑みを隠そうともせずに話しかけてくる。
「一つ聞かせろ」
「構わない、なんだ?」
「テメェはどうして今もあの女神といやがる。
それ相応の理由があんだろ、あの時俺たちに語ったことが全部じゃねぇんだろ。今いるのは、その理由があるからだろ」
「…先に言っておくが、あの時語ったことはあの時の俺の全部だった。俺たちは救われたんだ、ネプテューヌにな」
そう、救われた。
それだけなら、よかったのだが。
ネプテューヌは俺を信頼している。
護衛としてではなく、もっと近い存在。
仲間、友として俺を心から信じてくれている。
その信頼からか、イストワールたち程ではないにしろ弱みを見せてくる。
俺が裏切ると本気で考えていないのだろうな。
…そして、最大の弱みまで見せてきた。
『曹操にも、言っておこうかと思って!』
笑顔で言うことなのか、とその話を聞いて疑問に思った。
だが、彼女は乗り越えたのだろう。
己の存在、その問題を。
「恩を返すまで…それが俺の理由だった。
それを終えたと言われ、実際にここまでしてやる義理はないでしょ、ともな。
…だがな、俺たちは馬鹿なのだろう。それ以外、何をすればいいのか分からなかった」
「だから今もいるってか?」
「半分はそれだ。
もう半分は…弱っちい人間の彼女を支えてやりたかった」
「…俺の耳が腐ったか?今、人間って単語が聞こえたが」
「嘘は言ってないとも」
半分人間で、半分女神。
そう表現するのが正しいだろうな。
カイネウスは訝しむ。
「ありゃ女神だろ?人間じゃねえ」
「そうだな、確かに彼女は女神だ。
…カイネウス、お前は輪廻転生のような形で今のお前がいる。
記憶を保持し、力も保持したままのお前。
ならば、誰かが憑依してしまったというのもあり得ない話ではあるまい?」
「…おいおい、冗談だろ?」
半信半疑といったカイネウスに俺は諦めたように笑ってみせた。
おかしな話だ。
女神パープルハートの体に、今のネプテューヌの魂…つまり人間の魂が憑依したなど。
だが、信じるに値した。
俺は信じると決めたんだ。
「じゃあなんだ、あの女神は人間の魂を持ちながらあそこまでやってるってか?」
「ギリシャでは無いわけではないだろう。
実際に神の血を半分宿した英雄などごまんといるんだからな。
ならば、10割女神の血、10割人間の魂があってもおかしくはない」
「おかしいだろ…どんな確率だよ。
つまり、俺は既に死んでる女神に対して喧嘩吹っ掛けたも同然じゃねぇか」
「そもそもポセイドンとの関わり何ぞ名前位しかないだろうに。
完全にお前の見当違いな恨みだ」
「…」
気が削がれた。
そんな様子だった。
流石の俺も、それを隙として突く気にはなれなかった。
この話は終わってないからな。
「…そりゃあ人間を守るとか宣って矢面に立とうとするわな。
神の癖に何言ってるんだと思ったがそういう裏があったのかよ」
納得した様子でカイネウスは頭を掻いた。
何だか、罰が悪そうだったが気を取り直したように槍を構える。
「話は終わりだ。
後は生きるか死ぬかの戦い。
つまり、戦士としての戦いだ…」
「こうして再び槍を交わすこと、光栄に思う」
「ハッ、死ぬ準備はいいようだな」
殊更死ぬつもりなど無いが、死なないという確証はない。
だが、この戦い…勝てる戦いではある。
ならば前進あるのみ。
命を賭ける価値が生まれるというもの。
拮抗した状況を作るなど、馬鹿馬鹿しい。
勝負は動かねばならない…そうだったな。
動き出したのは、意外なことに同時だった。
槍を振るい、ぶつけ合う。
膂力はあちらが上…多少の無茶の通る体でもあるからな、遠慮などしてこないか。
さて、こちらが突破しなくてはならないのはポセイドンの槍、そして加護のある体か。
「女神の時みたく、俺の耐性を突破できるかな、テメェに!」
「出来る出来ないではない、やるんだ」
…そうだ、俺はそこだけは変わらない。
必ずなってみせる。
仲間と共に歩み、高みへと。
そしてその果てに、俺は!
「英雄になる!!」
必ずそこにたどり着く、必ずだ。
その為の障害は打ち砕くのみ!
俺の想いに応えるように聖なる光が刃となる。
そうだ、延びろ。
より強固になり、あらゆるものを浄化する光となれ。
「分かるか、カイネウス!」
「根性論か。嫌いじゃないぜ」
聖槍が壊れる心配はない。
心配すべきは今も打ち合えている俺の体か。
単純に弾くだけでなく逸らしているからこそ打ち合いのように出来ているだけだ。
俺が弱っちい人間であることは変わらない。
「魂が叫ぶ…!俺が超えるべき壁だと!」
「ハッ!ここがテメェの終点だよ曹操!」
カイネウスの槍に水が集まる。
ポセイドンの槍、水がない場所でもこれほどの力が振るえるとは…
カイネウスが槍を振るうと海水が俺を囲う。
まずい、カイネウスの姿が視認できない…!
水の壁から槍が突き出される。
攻撃する瞬間、必ず殺気は感じ取れる。
感覚に頼りながら聖槍で海神の槍を防ぐが、このままではまずい…
ならば、こちらもそれを超えるまで。
「聖槍よ、力を見せろ…!」
聖槍が光輝く。
俺は、水の壁を一閃し壁を切り裂く。
その際に光によって矛先を伸ばしていたが…無駄だったか。
だが、水の壁は突破した。
「ハッ、これくらい突破できなきゃリーダー出来ねぇだろ!」
「ぐっ…!」
突破して早々、槍と盾によるラッシュ。
避けるなり弾くなりは出来るが…やはり自力が違うか。
だが、魔法を使えるわけでもない。
ましてや、ポセイドンの加護を超える神意が聖槍に残っている筈もない。
覇輝は…俺には過ぎた力だ、使えないだろう。
相手のペース。
しかし、俺の右には森…か。
「光よ…!!」
もう一度聖槍の光を解放する。
今度は攻撃でなく、目眩まし。
死なずの体とはいえ視覚は守れない。
「ぐおっ!?」
ここで槍を振るうのは悪手だ。
そもそも聖槍で突破できる体ではない。
そう、神器は神の造り出した物であっても神の加護があるわけでもない。
聖書の神の遺志が宿るといわれても、それは神自身の力でない以上は突破できないのだ。
よって、ここは森に入る。
一度息を整える。
俺に出来ることは槍を振るう事だけだ。
だが…それは聖槍の力を引き出しきれてないが故。
ならばその力を引き出せれば力の差は埋まるだろう。
「…禁手、か」
今一度、己に問う。
俺に出来るのか?…出来る。
俺にやれるのか?…やれる。
恐らく、これに関してはネプテューヌが関わらなかった場合の俺…つまりは外道の俺の方が一歩上だろう。
他は俺が上だが。
今の俺に問われるのは力ではない。
覚悟だ。
そこまで至れるかの精神を問われている。
ただの禁手…というのは間違いかもしれないが、今求められるのはそれではない。
禁手の亜種とされるもの…それが俺に必要だ。
─ふと、彼女の言葉が脳裏に浮かんだ。
『例え誰かを倒したとしても、誰かを救えたから英雄になるんじゃないの?
「──はは」
自然と、笑いが漏れた。
そうだ、そうだったな。
俺は何を悩んでいたんだ。
今更だろう、そんなものは。
覚悟など、とうに出来ている。
この槍、この身は女神のために。
俺たちを救い、俺たちを導いてくれた貴女のために。
ありがとう、ネプテューヌ。
諦めていた俺を、またお前は救ってくれた。
お前の言葉は響くな。
「誰かの手を取れる人間、そして誰かに認められてこその英雄。
俺がなりたいのはそれなんだ」
カイネウスが来る。
その槍はまた俺を殺しに振るわれるだろう。
だが、それを超えよう。
今、ここで。
「聖槍よ、我が心に応えろ。
その光は我が女神の為に捧げよう」
聖槍が呼応するように光輝く。
そうか、中にいるだろうお前も頷いてくれるんだな。
…ああ、そういえば親だった。
俺の内より光が七つ、球体となって外へと出てくる。
俺の考えていた禁手、それがこれだ。
調整が済んでいないが…いいだろう。
今のまま、超えてみせよう。
七つの光、『七宝』は静かに俺の背後へと浮かぶ。
今ここに聖槍は新たなる扉を開いた。
これが俺の英雄になるための力。
「|極夜なる天輪聖王の輝廻槍《ポーラーナイト・ロンギヌス・チャクラヴァルティン》」
…長いな。
今考えたにしては長すぎる。
しかし、入れたい単語が多すぎてこれでも厳選したんだがな…
俺自身が転輪聖王となることだ、といった発想から前々から考えてはいたんだが…ううむ、こうなったか。
「おいおい、光りすぎんだろ…」
カイネウスが森に入ることなく話しかけてくる。
…確かに。
これでは見つけてくださいと言っているようなものだ。
いや、この光自体も聖なる光だから悪魔には効くが…あいつには効かないな。
「にしても、テメェの禁手がそれか」
「そうだ」
「派手さはねぇが…テメェが至った禁手だ。それだけの強さはあるんだろうな?」
「退屈はさせないさ。だが…これで俺がお前に優位に立った」
「へぇ…そりゃつまり、この体を貫けるようになったのか」
「今からそうなる」
「はっ──」
『七宝』の一つ、
といっても目眩ましにならない程度の光だ。
だが、これでいい。
「これよりは互いに死地、一撃がお前の体を貫くだろう」
「…俺が言うのもなんだが、様子を見るのもよくねぇもんだな」
「慢心したな、英雄カイネウス」
「ほざけよ、半人前」
『七宝』を体内へと戻し、その力を聖槍に回す。
聖槍は今までよりも強く輝く。
この光は悪魔だけでなく、天使、果ては神すら焼くだろう。
その確信がある。
「疾ッ…!」
聖槍を振るう。
光の刃が聖槍の間合いを伸ばす。
海神の槍との打ち合いが始まる。
先ほどまでならば俺の力が及ばずに終わっただろう。
だが、それは先ほどまでの話。
ここからは俺が優勢だ。
カイネウスの膂力は俺よりも少し弱い程度にまでなっていた。
これにはカイネウスすら驚く始末。
「ッ!?さっきの光か!」
「女宝、『七宝』の一つであり…女限定ではあるがその異能を封じる光だ。その身は既に不死身ではなくなった、俺の槍…受ける覚悟はあるか!」
「ハッ!加護なしだぁ…?加護だけで戦ってる訳じゃねぇんだよ!!」
先程よりも鋭さは消えたもののキレは変わらず。
聖槍を盾で受け止め、槍の突きが迫る。
「
「ハアッ!?」
球体の一つが俺の体から槍の一撃を守るように出現し、それを受け止めたと思えば別の場所…俺の隣の地面にまるで槍の突きが刺さったかのような跡が出来る。
誰かに受け流せるが…俺の修行不足だな、他人にはまだ無理だ。
「驚くのはまだ早い。
その盾、壊させてもらうぞ!」
聖槍を突き入れるが、盾に防がれる。
しかし、それこそが狙い。
俺からまた珠宝と入れ替わる形で球体…
嫌な予感がしたのかカイネウスは盾を放棄し、その場から後退する。
盾は輪宝によって無惨にも破壊される。
「チートじゃねぇか!?」
「弱っちい人間なんでな、これくらいはハンデだろう?」
「ふざけんな、俺も人間だ馬鹿が!」
ついでに余波も威力はあるため貫く力はあるが…期待はできないな。
さあ、盾の失くした今が好機。
「急に人間やめたような力使いやがる!」
「焦りが生じてきたな?」
「ハッ!馬鹿を言うのも休み休み言え!」
海神の槍の機能は封じた。
しかし、それでもカイネウスは強い。
ここまでされれば戦意喪失、或いは気勢が削がれても仕方がないというのにそういった様子もない。
苦境であれ獰猛な笑みは曇りもしない。
動揺があれどそれはそれと出来るのは素晴らしいことだ。
ああ、ヘラクレスもそんな感じだった気がする。
やはり、気の合う相手なのだろうか。
槍を振るう姿、自分が盾を破壊されようと加護を打ち消されようと戦えると吼える一騎当千の戦士のようであった。
「傷一つまだついちゃいねぇぞ!いつになったら俺を殺せるんだ!?」
槍で以てそれに応える。
既に何度も行われた打ち合い。
ここまで来れば互いの槍の手は知り尽くしたも同然だった。
聖槍の光はそれでも海神の槍を破壊するには至らず、輪宝も避けられる。
しかし海神の槍もこちらの聖槍を砕くに至らない。
だが、輪宝でなければ手はこちらにある。
故に、終わらせよう。
「一撃で終わらせよう、英雄よ!!」
「来いよ、半人前!!」
球体を二つ、俺の内より出す。
「
槍を振るい、避けられた瞬間一つの光球を飛ばす。
その瞬間、カイネウスの姿が消える。
…否、飛ばしたのだ、俺が。
馬宝の能力は対象の転移。
何処へ飛ばすも俺の自由、そこを俺が正確に把握していればだが。
今回は飛ばすのは容易だった。
何故なら…
「チッ、今度は転移か!?」
飛ばしたのは俺の上だ。
そして、最も無防備となった。
ならばこれで事足りる!
輪宝と被るかと思ったが、こちらは少し違ったな。
残りの一つをカイネウスへと向ける。
「対象を砕け…!」
「しまっ…!」
「
将軍宝の能力。
それは単純な破壊力。
恐らく、二天龍の鎧すら突破できる破壊力を持っている。
それは寸分違わずカイネウスへと発射され、カイネウスは咄嗟に海神の槍を盾にそれを防ごうとした。
だが。
「ガ、ハッ…!!」
将軍宝を防ぐには足りず。
聖槍の一撃ならば耐えられるだろう海神の槍を、粉々に砕いた上でカイネウスへと直撃した。
幸い、防がれた分威力が抑えられたのか腹に穴が空くなんて事にはならず、上空からカイネウスは落下した。
油断なく槍を仰向けに倒れているカイネウスの首へと突き付ける。
「終わりだ」
「……の、ようだ」
「随分あっさりと認めたな」
「ハッ、足掻いて届くならやったんだがな。
…敗者は敗者らしく、大人しく首を差し出すさ」
「その意気やよし」
目を瞑り、死を待つカイネウスに槍を突き出す─
─事もせずに、禁手を解除し槍を収める。
カイネウスは殺してくれると思っていたからか、怒りの視線を俺に飛ばす。
「どういうつもりだ、テメェ。生き恥を晒せってか!?」
「敗者は勝者によって一つ位は言うことを聞かねばならない。
そうだろう?」
「…何だ、生きて罪を償えとか言うつもりなら…」
「ああ、そう言うつもりはない」
だが、殺すつもりはない。
最初はあったが…失せた。
殺すしか止める手立てはない。
そう思っていた。
だが…今は違う。
「お前にはついてきてもらう。そして、謝ってもらわねばならない」
「は──マジで言ってんのか」
「本気と書いてマジと読む。
「じゃあ、何だ。テメェは俺を生かして、生かされた俺はあの女神…ネプテューヌに頭下げろってか!」
倒れていたカイネウスが起き上がる。
今にも俺に襲いかかりそうな語気の強さ。
俺はそれに頷き、従えと視線で訴えるしかない。
殺す機会を自ら手放したのだ。
後はこれくらいしか出来ない。
「…ハッ、ハハハハハ!!面白ぇ」
しかし、カイネウスは自身を打ち倒した相手に従わない者ではない。
良くも悪くも、弱肉強食思想なのだ。
「いいぜ、テメェが勝者なんだ。俺はそれに従うさ」
「…ありがとう」
「嫌で嫌で仕方がねぇが改めて考えてみれば…女神だからと決めつけすぎていた」
だから、これから見極める。
そんな言葉と共にカイネウスはついてくることを俺に言う。
…これでいいんだろう。
貴女についていくと決めた俺が、その夢を壊すのはあってはならない。
誰一人欠けないハッピーエンドを目指すのなら、俺もそれについていく。
「さて、では戻るか」
「さっさと案内しろよ」
「何だお前図々しいな…」
「ハッ、生かしたのはテメェだろ。
ああそうだ、テメェの禁手…あれの名前何だ?」
「ああ、あれは──やめておこう」
「は?」
あれは一々口に出す名前じゃない。
だからやめておく。
舌を噛みそうな名前だとか、思い付きとはいえあんな名前にしたのが恥ずかしいからとかではない、断じて。
さて…後は、二人か。
ネプテューヌ、お前はどう選択する?
頼光を殺すのか、生かすのか。
手を取り合える未来を、手繰り寄せてくれるのか。
俺はどんな選択であれついていこう。
頼んだぞ、主人公。
カイネウスを倒し、殺さずに謝罪会見へ連行。
・『???』ルート解放の条件を一つクリアしました。
1.パンドラ、カイネウスを殺さない
2.??を???
3.???へ??