色々と忙しくて投稿が遅れました。
許し亭許し亭…
前半はシャルバ、後半からねぷ子です。
黒帯が動き、襲い掛かる魔獣どもを凪払う。
所詮、獣といえど煙は煙。
そして、神器による力ならば我が敵ではない。
これは神器を封殺することを目的として作り、改良を重ねてきた道具なのだからな。
あの超越者を真似るようで苛立たしいが力は力だ。
うまく使いこなしてやろうとも。
「厄介な道具…」
「貴様ら神器保有者の成長は目に余る。故に封じるのは当然だろう?」
「まさか、悪魔に言われるとは思わなかった。
しかし、道具の勝負なら錬金術士の私が上ということを思い知らせてあげましょう」
「はっ、学芸会をしたいのなら穴蔵に戻ることだ」
次の一手などくれてやるものかと黒帯が魔獣を無視してパラケルススを突き刺しに伸びる。
「幻煙よ、盾となりなさい!」
「無駄だ」
魔獣が割り込んで来るがそんなもので止まる道具ではない。
紙切れと変わらないとばかりに魔獣を突き刺し、その奥にいるであろうパラケルススも突き刺す。
…手応えがないな。
それに、煙が視界を阻害するせいで見失った。
これが狙いか、錬金術士。
ならば強引に凪払うだけのこと。
黒帯が折れ目なく伸び、刃物がごとき鋭さを得る。
周辺ごと、斬り込んで見るとしよう!
「斬れ」
私の周辺を黒帯が一周して、斬る。
ただの生身ならば一撃だが…戻ってきた黒帯には血が付着した様子も無い。
そして、感知範囲を広げるかと思った直後。
地面が突然揺れだす。
「ぬ…!」
幸い倒れる程の揺れではないが、一体何が──
─瞬間、何かが私の姿を覆う。
影…?
上を見ると、そこには木の根が振り下ろされる瞬間だった。
「何っ…くっ!」
横に避けることで根の叩き落としから逃れた。
それにしても大きすぎる…
急激な成長か?
これが錬金術…ということか?
「一つではありませんよ」
「なるほどな…!」
環境を利用し、有利状況を作っていく。
じわじわと追い詰めてくるタイプか!
私とほぼ同じ戦闘スタイル…
ならば、こちらもその手に乗ってやるぞ…!
襲い掛かってくる木の根を避け続け、人差し指はあるだろうサイズの蝿を十匹召喚する。
貴様の熱を追う蝿だ、逃れられるかな!
「これは…!」
「ハッ、貴様の体力が、何処まで持つか…見物、だな!」
黒帯で時に斬りながら根の叩き落としを避ける。
しかし、根だけではない。
魔獣、四肢のある獣だけでなく空から襲い掛かる種類まで現れ、四方より攻められる。
確かに、この状況は他のメンツならば対処の難しい状況だ。
だが…私はあの女神を打倒することのみを考え鍛えてきた!
「嘗めるなぁぁぁぁ!!」
「っ…!?」
魔力の爆発。
私を中心として魔力が風となって煙を吹き飛ばす。
その神器の弱点は簡単だ。
霧と同じく風によって無力化出来ること。
それは衝撃波による風圧でも変わらん!
煙が晴れたことにより、三匹にまで減ったもののしつこく追い回してくる蝿を煙の魔獣で対処するパラケルススを見つける。
「捉えたぞ」
「っ、まだ!」
黒帯が迫り縛り上げようとした直後に蝿が魔獣に殲滅され、パラケルススが地面に手をつく。
すると、地面が隆起しパラケルススを持ち上げる。
馬鹿な、これも錬金術だというのか…!?
「貴方の黒帯は確かに厄介…ですが、動き自体は直線的!」
「ぬぅ…!」
隆起した地面に突き刺さり、抜け出そうとする黒帯が固定化されたように動けなくなる。
限定的な地面の操作…なるほど、過小評価をしていた…
そのせいで私は信頼する武器を一つ失ったのだ。
蝿も召喚できるが…さて、どう立ち回るか。
「黒帯が封じられたことは驚いた…だが、それで私に勝てると思ったのなら間違いだ」
無数の蝿を召喚し、円陣を組ませる。
黒帯の使用不可、これでようやく互角になった。
それだけだ、勝つのは私だ。
魔力の波動が煙を晴らし、パラケルススへと迫る。
煙の魔獣も意味を為さない。
それだけの魔力を込めているというのもあるが、そもそもがこういった手段に無力なのが災いしているのだ。
魔獣創造を模したのだろうが、比べるのも烏滸がましい程に維持が出来ていない。
「私は負けられない…!」
地面が隆起し、壁となって波動を防ぐ。
奴の行う錬金術…恐らく、消費する何かはある筈だ。
魔法使いのように魔力のようなものを消費する筈。
それまで耐えるか…?
…いや、それはない。
私の手で倒す。
こだわりのような物だが…こういうのは一つはあった方がいい。
「いつまで持つかな」
「くぅ…!どうして、私の想いに応えてくれないの…!」
悔しがるような声。
煙がこちらまで伸びないように心掛けながらその声に耳を傾ける。
なるほど、神器の成長…それがこいつにはないのか。
だから開発した。
魔獣創造のような能力を、例え劣化でもと求めた。
まるで私のようではないか。
神器使いを封じるために黒帯を作成した私と何も変わらぬ。
「貴様に迷いがあるから神器は応えない」
「迷いなんて…」
「ならば、貴様はなぜ戸惑う?私を殺そうと思えば薬品なり何なり使うだろう。貴様には殺意が足りん、戦う意思が足りん」
「…足りない?」
「貴様は戦いたいのではない。まずその段階から履き違えている」
「…私は…いいえ、私は戦わなくてはならない!
頼光達を止めることもせず、ついていき…あの子に絶霧を移植したあの時から!私は許されることを放棄した!
だからこそ、私は─」
「救ってほしかった」
「──っ!」
女の叫びは悲痛なものだった。
言葉を紡ぐ度に目が潤んでいくのだ。
見るに堪えないのではない。
私からすれば今ならば黒帯を拘束する地面を壊し、パラケルススの喉元を貫く。
…だが、私は今借りを返している最中でな。
殺すことは禁じられている。
痛め付ける事すら女神は許さないだろう。
「貴様はその一言を言えず、行き止まりを進もうとしていたに過ぎない。故に、成長などある筈もない。誤った道を進む者がどうして先に進めようか」
「なら、貴方は!?貴方は…誤ってないと!?」
ならばお前はどうなんだと逃げるように問い掛けてくる。
私に聞くのか?
「誤る筈がない、私は私の全てを肯定する」
「なっ…」
「神ロキを殺害したことも、魔王どもに反旗を翻したのも、女神を創造する禁忌を犯したことも…私の中では何一つとして間違いはない。全てが私を構成する事柄であり、自己肯定の素材だ」
傲慢と思うのならば思うがいい。
だが、私は正しい。
何故なら私が正しいと思う行動をしているからだ。
正しいと思うためなら借りを返すために倒したい女神に協力だってするし、誰かを殺すことも厭わない。
結局は誰もが好きなのは己だ。
自分が一番可愛いのだ、愛すべき者なのだ。
つまり、己を肯定できない者が成長できないのは必然。
己を好きでなくなっているのだから。
「ではこちらからの質問だ」
「ぅ…」
「貴様は己を肯定できるのか?正しいと思えているのか?
本当に、戦うことが貴様にとっての正しさなのか?」
「わた、しは…」
「願いも吐き出せない人間が、私やあの女神の前に立つんじゃない」
攻撃は完全に止んだ。
それは精神がそれどころではないということであり、この戦いの終わりを示していた。
…呆気ないと思いはしたが当然か。
この女はそもそも戦う人間ではないのだから。
表立って戦うのではなく、裏で懸命に戦う存在。
私には理解できんがそういうものなのだろう。
パラケルススは顔を歪めながら膝をつく。
「私は、どうすればよかったのですか…私は、止められなかった。
あの目を見て、止めましょうと言えなかった…加担してしまった私は戦うしかないのに…!」
「…知ったことか、己に傲慢になれよ人間。
願いのない人間などあるものか。貴様は、反対の方向を進んだ。
空回り等当然だったのだ。
故に、問おうか…貴様、何をしてほしいんだ?」
「私は…私は…──」
「─あの人を、助けて…!」
血を吐き出すようにして口から出た言葉は他者を思いやる言葉だった。助けてほしいと、救ってやってほしいと。
…私には叶えられるものではない。
ネプギア一人で手一杯なのだからな。
私は持ちきれない枷は持たない主義だ。
だからこそこう言おう。
「叶うだろうよ」
「どうして…?頼光は人外をあれほど…」
「関係ない」
「えっ」
「そんなもの、あの女神には関係無いのだ」
ふと、クルゼレイを思い出す。
奴も憎しみを抱えた悪魔だった。
利用してやろうと言う魂胆しか無かったが…それでも、奴の憎しみには共感はできた。
だが、そのクルゼレイにも女神の言葉は届いた。
戦うことをよしとせず、言葉での解決を第一とする女神の言葉は奴の憎しみを凌駕した。
…私の期待が大きすぎるか?
否、否である。
奴ならばそれくらいは出来る。
そう決めたと言ったなら、やるのが奴だ。
「それで?続けるつもりか?」
「……本当に、女神は…頼光を救ってくれますか?」
「さあな、未来を見ることは私には出来ん」
なぜ私はここまで奴に執着しているのか。
心の底からそれを理解しているからだ。
奴は私を止めるだろう。
私の目的は変わらん。
冥界を我が物とし、新たなる魔王として新たなる世界を築く。
それは変わらない。
だが、その過程において女神は必ず止めに来るだろう。
故にこちらもその戦いを楽しむのだ。
今は関係ないことではある。
だが、こいつらの目的を聞き、現状を見ると他人事とは思えなかった。
私もこいつらと同じになるのではないか?
…否、勝利の栄冠は私にある。
生温い場所にいすぎたか。
ネプギアの戦闘訓練もそろそろレベルをあげないとならんな。
今回の戦いは経験値をかなり得られたことだろう。
ならば、レベルも二、三段階程上げても問題はあるまい。
「…貴方はもう先を見据えている。強いのですね」
「…勝たねばならない相手だからな。考えることは、山ほどある」
パラケルススに戦闘の意思はもうない。
この戦いは終わった。そちらはどうだ?
死を以て終わる筈の戦い…貴様はそれをどう変える?
・
・
・
刀同士のぶつかり合う金属音が響く。
腕に伝わる力強い振動は想いの強さを教えてくれているかのようで、生半可な覚悟では受けきれない程の物だと知る。
きっと、さっきまでの自分なら駄目だった。
殺意に殺意で応えるのが戦いなんだと諦めるところだった。
違うんだよ、そうじゃない。
欠けちゃいけないんだよ、自分の目指すハッピーエンドは!
それは頼光も同じこと。
出来る領分じゃないのかもしれない。
頼光の覚悟を踏みにじるような戦いをしようとしているのかもしれない。
でも、死んでしまったら全部おしまいなんだ。
夢を語ることも実現することも託すことも出来ない。
聖書の神様が、自分に託しきれなかったような…そんな辛い事はあっちゃいけない。
自分の見える範囲であったとしても、そんなちっぽけな悲劇だって許さない。
「夢は夢でしかない、現実を見ろ!人外どもが何をして来たか、何を隠してきたかを知ったいるだろう!」
頼光は声を大きく張り上げて自分に言う。
無駄な理想だと、大きすぎる理想など身を滅ぼすだけだと。
刀を振るう力がまた強くなる。
それでも、自分はそれを弾く。
「何度お前が平和を叫ぼうと愚かな人外どもは争いを求める!
お前の努力は何の意味も為しはしない!故に、その理想を砕き、俺自身の手で人外どもをこの国より排斥するのだ!」
「例え私のしていることが小さな事だとしても…ただ排斥するだけで終わるなんて事にはしたくない!どんなに小さいことでもきっと実ってくれる。
何度だって手を差し出して、何度だって立ち向かう!
それが私という女神よ、今一度しっかりと記憶することね!」
互いの刀が砕け、生成する。
…あの時はジャンヌがいたから一手が届いた。
間違いなく、頼光は強い。
単純な強さだけじゃなくて、精神的な強さも兼ね備えている。
絶対にそれを為さなきゃいけないっていう強い意思を視線だけでも感じ取れる。
仕切り直し、距離を取って出方を窺う。
「高尚な願いだ、理解できるよ。
だが、お前は知っているだろう。あいつらの醜悪な姿を、下らない行いを!一体どれだけの無力な人々が騙され、食い物にされ、弄ばれた!?これも元を辿れば全て聖書の神が仕出かした大きすぎる負債だ!何が神器だ…そんなもので人間が強くなれたとでも!?」
「確かに、あの人がしたことは人間からすれば迷惑かもしれない。
そこに否定する材料はないわ。
なら、私がそれをどうにかする」
「どうにかならないから今があるんじゃないのか!」
「だから、匙を投げるの?
それは違うでしょう?無理だと投げ出して、諦めたら何も進めない!そこに未来は訪れない!」
「なら、お前はどれだけの犠牲を払うつもりだ。理想の実現に、犠牲は伴うもの。それをお前は─」
「犠牲を出すつもりはないし、出させもしない。
そんな常識、私が壊して進む!」
「綺麗事を!」
頼光が駆け出す。
自分もそれを応じて頼光へと飛翔する。
休む暇のない剣戟が始まる。
砕けても即座に生成して振るっての繰り返し。
埒が明かないけど、それでも…やる価値は自分達にはあった。
「綺麗事だけでは変わらない!どれだけ尽力しても、犠牲は出るものだ!お前は怖いだけだ、誰かが消えることが怖いのだ!」
「そうよ、怖いわ。怖いに決まってる!
あの日いた誰かがいなくなるなんて、そんなの怖くないわけが無い!それでも敵も味方も関係無い!手を伸ばし続ける、取ってくれるその日まで…私は戦う!
理想の実現には犠牲が伴う?そんなもの!」
「犠牲がでなくても、ハッピーエンドは迎えられると、私の手で革新する!してみせる!」
全てを壊して、救ってみせる。
頼光の刀を砕き、がら空きの鳩尾に拳を叩き込む。
「カハッ…!」
「一人で駄目なら、二人で。二人でも駄目なら…皆で!
私は一人じゃない、私の理想は私だけの理想じゃない!」
「パープル、ハートぉぉ!!」
刀を生成し、叫ぶ頼光の振るった一撃を刀で防ぐけど…今までで一番の力強さに負けて砕け散る。そして、その隙を逃すまいと続けざまに横腹を蹴られて、吹き飛ぶ。
「あぁッ!」
「なら、お前は俺にすら手を差し出すのか!?」
「そんなの…当たり、前よ」
ちょっと呼吸がしづらい。
でも、それもすぐ直る。
─ネプテューヌさん、大丈夫ですか?
(平気、ありがとねいーすん)
─いえ
「私は、貴方とも手を取り合いたい」
「俺とお前は相容れない」
「いいえ、それは違うわ。私達は相容れないんじゃない…相容れようとしなかっただけ。決めつけて、もう無理だって諦めてた。
でも、気づいたのよ。貴方と私は、全く違うわ」
カオスピースを取り出す。
力を貸して、ロキ。
今の自分に、頼光を…例え強引にでも手を取るための力を。
「ここからは、本気のさらに本気よ」
カオスピースにシェアを注いで、カオスフォームへ変身する。
「刮目しなさい、更なる可能性を!」
格好がどうとか今は関係ないよ!
どんな力でも、きっと希望に繋げられる。
混沌の力とか言われてるカオスフォームだって、その筈なんだ!
頼光は目を見開いて、自分を見る。
「これは…!なるほど…新たな可能性…進むための力を手にしたか!」
「そう。この力を使って、私は進む。
過去も、今も受け入れて未来へ!」
「…恐らく、俺の想像もつかないほどの試練があったのだろう。
そして、乗り越えたからこそその力を手にしたのだろう」
「…ええ、私自身に決着をつけたわ」
「そうか。その力は…お前一人の力なのか?」
「いいえ─」
分かっていて尚問い掛けてくる頼光に自分はしっかりと答える。
一人の力で、ここまでいける訳がなかった。
だって、シェアは皆の信じる心。
それはきっと誰にでもある強く優しい力で、自分に勇気と希望を与えてくれる力。
それがあるから自分はここに立てている。
「─これは、皆で掴み取った明日への希望よ」
「…なるほど、な」
何かを見出だしたかのように穏やかな笑みを浮かべるも一瞬の事で、闘志の籠った瞳が自分を捉える。
「お前ならば、或いは─」
「…」
「パープルハート…その力、その心嬉しく思うぞ。敵ながら天晴れといったところか…ならば、俺もそれに応えよう!
そして、お前のその力と俺の力…どちらがより明日を照らす陽となるか、それを決めようではないか!」
嬉々とした表情の頼光に自分も頷いて応じる。
紫に光る刀が生成され、それを握る。
ここからが正念場、それがはっきりと分かる。
「力と力のぶつかり合い…となれば、俺も解放させて貰おう」
頼光もまた、真の力を解放する。
つまり、禁手。
きっと、凶悪な性能なんだと思う。
けど…頼光は自分の理想を叶えたいが為に手にいれた禁手。
自分はそれを打ち破らないといけない。
自分こそが、それを。
頼光の刀が毒々しい色となっていく。
「毒を食み、俺もまた新たなる可能性を手にいれた。
そして、お前という存在が俺の覚悟をより確固たる物としてくれた…その礼をこの禁手で以てさせてもらう…──」
「
龍をも屠る毒が女神、お前をも蝕む」
刀が毒々しい色の光を纏う。
…ううん、違う。
頼光も、それを内包している?
─解析開始します。…食らうのは危険です、お気をつけて
龍をも屠る毒…きっとヤバイやつだよね。
なら、立ち回りを考えないといけない。
カオスフォームなら多少の無茶も通るから…しっかりと様子を見ないと。
「やろうか、パープルハート」
「ええ、第二ラウンド開始よ」
駆け出すのは、同時だった。
さあ、ここからが本番…全部を乗り越えて、進むために!
証明をしなくちゃいけない。頼光を相手に、自分の覚悟を。
この時だけは、覚悟が必要なんだ。
頑張ってくれた皆のため、待ってくれてる人達のため。
そして、自分の夢のために!
手を伸ばそう!!