てな訳で前編です。
ああ、ようやく京都編も終わりが近い
目を覚ますと、そこは旅館だった。
一体どういうことなの、説明してよ苗木ぃ!
今までのは夢だったというんですか!?
と思ったけどそうじゃないみたい。
腕とか包帯巻きにされてるのを見るに、戦ったのは現実だったっぽい。
夢オチ展開じゃなくてよかった!
「いーすーん!」
「はい、どうかなさいましたか?(・_・?)」
「あ、普通に本の状態だったんだ」
呼んだら本が光ってヒトガタいーすんが現れた!
よかったよかった。
「おはようございます、ゲンキそうですね」
「うん、いーすんが運んでくれた…訳じゃないよね?」
「できればそうしたかったのですが…ヨリミツさんもイッショにイッセーさんたちにカイシュウしてもらいました」
「なんで旅館?」
「みなさん、ここにいますよ。イマはやすんでいるかと」
「頼光達は?」
「ヤサカさんにしばらくあずかるとのことで、おいてきました」
「ええ!?」
そんな!折角誰も犠牲にならなかったのにもしかしたらがあるかもしれないじゃん!?
責任取りとかで首を~とかそういうヤクザ物の定番があり得ちゃうよ!?
慌てる自分にいーすんは困ったように微笑む。
「ワルいようにはしないといっていましたし、アンシンしてよろしいかと」
「そう?」
「あそこまでがんばったみなさんのイシにそむくほどヒドイかたではありませんよ」
「…それもそっか。えっと、ネプギアやシャルバは?」
「ギリははたしたといっていってしまいました。
ネプギアさんはまだいたかったようですが…」
「そっか…」
でも、助かったのも事実だし、シャルバをぶっ飛ばすのは今度にしておこう。
立ち直ったとはいえロキの分はしっかりとした場で一発殴るよ!
ねぷ子パンチが炸裂するよ!
ネプギアともまた会いたいし、ちゃんと二人で話したいなぁ。
…それにしても、頼光達は大丈夫かな?
皆無事っぽいし、シャルバもパラケルススを殺したなんてことはしなかったみたいだね。
義理堅いっていうのかな…?
にしても、いーすんと二人だけなんだけど…あーちゃんとかは?
「それじゃ、起きよっか!今何時?」
「あさの6じですね。」
「ねぷっ!?早起きしすぎ…ってそっか、あの後寝ちゃったもんね」
「シンパイしましたよ、あれからおきなかったんですから」
「ありゃりゃ、ごめんね?」
「ブジおきたのでよしとします」
うーん相棒。
いーすんは流石理解力Aってところかな。
にしても、流石に起きてる人少ないよね…?
いや!ここは、出撃します!!
いーすんは平気そうだと判断したようで自分の中に光になって入る。
─出るのはよろしいですが、しっかりと歯磨きと着替えはするように
「え?あ、ほんとだ!パジャマじゃん!だ、誰が私を!?」
─リアスさんと朱乃さんがノリノリで体を拭いて、着替えさせてましたよ
「あーよかった!無いとは思うけどもしかしたらを想像しちゃったよ!」
─他にも報告すべき事が幾つかありますが、取りあえず朝の支度だけしてください
「はーい!」
というわけでしっかりと朝の調子整えていこうね!
皆はそういうことを普段からやってるかな?
やっておかないと色々と大変だからね!
はい、カットカットカットカットぉ!!
いつもの服装に着替えたので部屋から出る。
え?洗ってないのかって?
やだなぁ~何着か同じの持ってるだけだよ?
ねぷ子さんは清潔な女神なのだよ、君。
「起きていたのか」
「あ、曹操だ!出て
「…」
─……
…あ、うん、ごめんね。
今咄嗟に出してみたダジャレなんだけど、ウケないよね。
少し死んだ目をし始めた曹操に慌てて話しかける。
「おはよう曹操!今日もいい天気ぃ!」
「ああ、おはよう。ところで、今のは?」
「忘れて?」
「了解した。早起きだな、昨日は激戦だったんだろう?
もう少し休んだらどうだ?」
「いやぁ…何か二度寝する気にはならなくて!プリン食べたい!」
「ああ、朝食が食べたいのか」
「あ、今ので分かるんだ…」
「まあ、何となくだよ」
軽い会話をしながら、食事の場まで歩く。
曹操が前を歩いて先導してくれるから迷う心配もないね!
プリンが待ってる!自分という選ばれし者を待ってるんだよ!
「ちなみに、和食だぞ」
「わーい!」
「プリンは…出ないな、うん」
「わー……え?」
「俺を責めるなよ。後で外で買って食べればいいだろう?」
「あ、そっかぁ!賢いね!」
「普段のお前は馬鹿だな」
「なにをぅ!?あ、ところでゲオルグは?」
「寝かせてやってくれ、死ぬ程疲れてる」
「ああ…うん…」
ゲオルグ、相当働いたんだね…南無南無。
今日一日は放っておこう、そうしよう。
そういえば、和食といえば何だろう?
ねぷ子さん的には朝に天ぷらは勘弁してほしいかなぁって。
そんなこんなで食堂についた自分達。
座布団に座ってると旅館の人がメニュー表を持ってくる。
「えーと…あ、お蕎麦だ」
「個人的にありがたいな」
「あれ、蕎麦好きなの?」
「最近、コンビニ弁当生活だったからな…」
「Oh…料理できないんだ」
「やれなくはないが、楽な方を選んでしまうんだ。
何というか…近くにコンビニがあると、そこでいいか、となってしまう」
「で、ついつい甘いものも買っちゃうと」
「そうそう」
会話をしながら、適当に決めて注文をする。
全部おっちゃん持ちだから問題ないね!
ありがとう、おっちゃんの財布!
「頼光達は大丈夫かな…」
「…頼光の訴えは間違っていない。
やり方は間違えたのかもしれないが、それは三勢力の責任でもある。傷を作ったのは三勢力だからな」
「うん…」
「もしこれでトップの面々が何かをするでもなく都合のいいように隠蔽するのであれば…見捨てても誰も文句は言わないぞ」
「うーん…それはないと思いたいなぁ」
「どこまでも信じることをやめないな」
「まあ、ねぷ子さんは信じるのをやめない系主人公女神ですから!」
「ついでにヒロインと」
「ヒロインも出来てこそ完璧な主人公と言いますか!」
「そうか。それで?何処までいった?」
「黙秘で」
「初々しいようで結構」
すっごいからかわれてる!?
というか、もしかして曹操が来たのってヴァーリの差し金?
…いやいや、まっさかぁ
「ヴァーリに頼まれた時は何事かと思ったが…終わってみれば、また巻き込まれたといった感じだったな?」
「え、ほんとにヴァーリに頼まれてたの?」
「…おっと、分かってなかったのか」
「えええええ!?何でヴァーリ!?
しかも頼まれたって事は知ってたの!?」
「いや、ヴァーリ曰く」
『とても不安でな、共にいれない俺の代わりに頼む』
「とのことで、先にゲオルグを行かせてから同行したということさ」
「何でヴァーリは私達が京都に行くのを知ってたのさ!」
「いるだろう、よくつるんでる黒猫が」
黒歌の仕業だったのか!!
なるほどなぁ…それなら納得いった。
でも、黒歌もズルいよね。
ヴァーリ達と連絡とれるなんてさ!
自分だってヴァーリや美猴、アーサーって人と話したいのに!
ぶっちゃけると気軽に会って話したい!
うー、何だかハメられた気分だよ!
そんな感じでうーうーと唸っていると注文した蕎麦が来た。
取りあえず会話をやめて食事に集中する。
夕飯も食べてないからお腹ペコペコだよー!
こうなったらこの後プリンを二個位買って食べてやるんだからね!
あ、ところで読者の皆は蕎麦を食べるときってネギとか山葵って入れる?
自分は入れたり入れなかったりラジバンダリなんだけどそういうところも人の自由だよね~
流石にプリン入れようとか考えたこと無いからね?
閑話休題!
蕎麦を食べ終えて取り敢えずしばらく曹操と話すことに。
いーすんは流石に出せないからね~…
「カイネウスは倒したんだよね?」
「ああ、殺してはいないさ」
「でもでも、私の事まだ色々言ってたでしょ?」
「誤解だと説明したらあっさりと引き下がったよ」
「へ?女神なのは事実なのに…って、もしかしてだけど話した?」
「すまん、ああ説明する他無かった。お前の秘密を暴露したことには変わらない」
「いやそれはいいんだけど…そっかそっか~!」
「もし会えたら、謝罪するように言っておいた。
今は頼光達と一緒だろうが…また会えるさ」
「うん、そうだよね!」
よかったよかった!懸念事項がどんどん無くなってくよ!
嘘、私の味方…色々と優秀すぎ…?
いっぱいいるってのもそうだけど、やっぱり皆凄いや。
自分なら秘密話せないよ~…
「なあ、ネプテューヌ」
「どったの?」
「お前は寂しさとかはないのか?」
「へ?ホントにどうしたの?誰かいなくなった訳じゃないのにさ」
「…いや、すまない。忘れてくれ」
「言ってよ~」
向かい側に座る曹操の足をテーブルの下で痛くない程度に蹴る。
ほれほれ、ねぷ子さんに言ってみんしゃい?
ちょっとくらいなら答えられるかもよ!
少し迷ったような顔をしてから曹操は話をしだす。
「事が済んだ今、聞くのはどうかと思ってたんだがな。
お前は女神だろう?」
「うん、そうだね」
「しかも、他の神話に属さない、ただ一人の女神だ。
だからこそ考えるんだが一人の女神というのは寂しくないのか」
「うーん?うーん……」
寂しいかぁ。
どうなんだろう?
曹操の中ではネプギアはカウントしないみたい。
まあ、分かるといえば分かるけども。
ネプギアは造られた女神だから、そういう感じなのかな。
聖書勢力って訳でも無いしね、神様から言われたし。
…自分だけ、かぁ。
「まあ、例え話なんだけどさ」
「ああ」
「私だけじゃなくて…あと三人くらい?自分と同じような変身する女神がいて、違う性格だとしたらさ。
んー…今よりもずっと衝突もあったかもしれない」
「何故だ?同じ存在なら手を取り合う選択の方が早いだろう」
「合う合わないはあると思うなぁ。
いやまあ、ねぷ子さんは強引に手を取るけどね?ただ、その三人が仲良いかって聞かれたら別の話だもん。
それに…」
未来を想像してみる。
お母さんやお父さんは人間。
100年とかは生きられない。
知ってる人がいなくなって、でも知らない人を知っていく。
自分はその別れと出会いを繰り返して、生きていくんだと思う。
「いつか別れが来ても、それまでの日々が楽しければ私は嬉しいなって」
「…俺や英雄派の皆は人間だ」
「うん」
「悪魔も、堕天使も、天使だって何時かは天命が来る」
「うん」
「それでも、お前は生きるのか」
「そうだね」
「強いな、お前は」
「ううん、皆がいるから強くなれるんだよ」
この理想は、ずっと抱えなきゃいけない。
実現が難しくても、自分はそれをしてみせる。
頼光に言った言葉を嘘にしたくないし、誓いだって守りたい。
それに縛られてるって言われたらそうかもしれないけど…でもさ、それはその人との繋がりでもある筈。
自分は繋がりを感じられるから、それを大切にしたい。
神様だって、いなくてもシェアは感じるんだ。
「寂しさはいつか来るよ。それをバネにしてどう跳ぶかだと思うんだよね」
「バネにして、か。…なら、お前の理想を少しでも叶えられるように俺達もより一層努力するとしよう」
「そろそろ恩返しもいいと思うんだけどなぁ…
私に付き合うこと無いよ?」
「馬鹿言うな」
曹操は手を伸ばして自分の額を小突いてくる。
何するのさと見ると、呆れたように笑っていた。
「俺達に見せてくれ、その理想の果てを」
それがきっと英雄になる道だ、と曹操は言った。
…何だ、自分の目的のためについてきてくれてるんだ。
よかった、縛ってる訳じゃなかったんだね。
うん、でも…あー、これはまだ言わないでおこうかな。
「うん、じゃあこれからもよろしくね!」
「ああ」
そんな感じの話をして、曹操との絆が深まった気がした。
・
・
・
時間は少し飛んで皆起きてきて、一誠が嬉しそうに向かってきたのを小猫ちゃんに襟首掴まれて止められて落ち着いて部屋で談話してた時。
「おーっす」
おっちゃんが戻ってきた。
後ろを見ると、サーゼクスさんとミカエルさんもいた。
ミカエルさん、羽消せたんだ…あ、でもそれくらい出来なきゃ現代厳しいよね。
「おっちゃん!」
「アザゼル、お兄様、それに天使長まで…どうかしましたか?」
「固くならないでいいよ。…時間を取るようで悪いんだけど話があるんだ」
「何!?まだ働けと言うのか!?」
「どうどうゲオルグ…寝てていいから、ね?」
「助かる。結果は後で聞かせてくれ…今日一日は堕落の限りを尽くしてやる…」
ゲオルグはそれだけ言って寝ちゃった。
おっちゃん達も理解してるようで申し訳なさそうにそれを見た後に部屋に入ってくる。
大部屋でよかった~
「まず、皆さんには謝罪を。私達の責任だというのに戦わせてしまったこと、申し訳なく思います…」
「あはは、いいよいいよ!気にしたってしょうがないもん!
それで、頼光達は?」
「京都の妖怪達からならまだしも我々三勢力が彼らに罪を問うことが出来るわけがない。故に、天照大神及び九尾の八坂殿に一任することとなった」
「えっと、それで…?」
「結果として、日本神話は頼光達に今日一日妖怪達に馬車馬のように働かせてる…で終わり」
「それで終わりっすか?」
「あっちの決め事だ。俺達に口出しは出来ねぇし資格もねえ。
俺達としては、これからの方針が決まりだしてるって事だな」
「方針…」
三勢力が取るべき方針…想像できるけど、ちゃんと聞こう。
サーゼクスさんは悪魔の駒を一つ取り出した。
「悪魔の駒…これとそれを生み出した我々が元凶だ」
「お兄様、それは…」
「遠くない未来、我々はこれを消さねばならない。
そして…終わるか分からない贖罪の日々さ」
「俺達堕天使も神器保有者を殺しすぎた。
神器の解明、保有者の保護…やることが大積みだ」
「…人の時代、そう神は仰りました。
我々天使は人に寄り添っていこうと思います。
具体的な案はまだですが…」
「ミカエル様」
「貴女は、アーシア・アルジェントですね。なんでしょうか」
「信者の方々に…真摯であってください。
私はもうよろしいのです。ですが、他の方は違います。
全てとは言いません、ですが…一部の真実を告げるべきです」
「…そうですね、ありがとうございます」
…頼光の叫びは届いたんだね。
三人とも、決めかねていた事を決めようとしている。
ミカエルさんは迷っていたのかもしれない。
神様の言葉に従うのはいいけど、どうすればいいのかを。
だから、あーちゃんの言葉が道を照らしてくれたらいいな。
「……天使長ミカエル、一つだけいいだろうか」
「あれ、ゲオルグ?寝てたんじゃ?」
「ああ、寝てやるとも。だがその前に一つ済まさねばならない」
布団から起きたゲオルグは立ち上がって、拳を握り締める。
そして、ミカエルさんの顔を殴った。
それも思い切り、全力だった。
ミカエルさんも何処か察していたようにそれを受けた。
「ゲオルグ、何を!?」
「黙れ!!いいか、天使長。
その痛みを忘れるな、忘れたら必ず殺してやる。お前だけの不手際とは言わん、だがお前はトップだ。
だからお前を殴った。…俺の生徒とその弟の苦しみを忘れるな!」
「…はい、一生忘れません」
「ふん…以上だ、寝る」
ゲオルグは用は済んだとばかりにまた寝始めた。
…パンドラの事かな、多分。
ゲオルグも、優しいね。
「じゃあ…この話は終わりでいい?今日くらい、自由時間!」
「…だな、悪かったな時間取って。
各自、好きにしてくれや」
「はーい!よーし、一誠、あーちゃん!プリン買いに行くよ!」
「よっしゃ行こうぜ!」
「待ってください、部屋に取ってくるものが…」
「塩飴ですか」
「はい、油断はいけません!」
「んじゃ、アーシアと行くからねぷ姉ちゃんは出口で待っててくれ」
「了解!曹操はどうする?」
「ん?ああ、俺はここにいる。
もう心配はないだろうしな」
「そっか!」
じゃあ、兵藤家三人で行動だね!
よーし、今日くらいはしっかり満喫するよ!
そう決めて、部屋を出た。
その後、リアスちゃん達も部屋を出る。
「ネプテューヌはこのまま外ね?」
「うん、皆は?」
「うーん…旅館でのんびりしてるわ。ずっと外を歩くのも疲れちゃったもの」
「ですね、偽物四人と一緒は気疲れしましたわ」
「OK!他は?」
「僕は今度こそ引きこもりますぅぅぅ!」
「木場先輩、ゼノヴィアさん、私は行きたいところがあります」
「食べ歩きかな?じゃあ付き合うよ」
「くっ、昨日で金を結構使ってしまった!だが行く!」
「あ、ゼノヴィアはミカエルさんに何もないの?」
「ん?…んーーーー…無いな、うん、無い」
「そ、そっか」
なんか羨ましいなぁそういうメンタル。
ゼノヴィアだけ一貫してそんな感じだよね。
そういうとこ強いや。
じゃあ、小猫ちゃんの組と一緒に行動しようかな。
何といっても小猫ちゃんはスイーツのリサーチは凄まじいからね。
ふっふっふ…自ずと素晴らしいプリンにも会えるって寸法よ!
「よーし!そうと決まれば観光開始!!」
「ゴーゴー、です」
「ついていけるか…この金額で…?」
「いや、それよりもイッセー君とアーシアさんを待とうね」
木場君の言う通り、一誠達を待つこと数分で来たので暑い京都を満喫すべく外へと出るのであった!
・
・
・
「んで、何で残ったよ」
堕天使総督が残った俺に問い掛けてくる。
何だ、こっちから切り出そうと思っていたんだがな。
「シャルバ・ベルゼブブと造られた女神…ネプギアはどうする?」
「…シャルバはいずれ確保するつもりだ。彼なら色々と知ってそうだしね。ただ、ネプギアという女神に関しては僕たちも決めかねているんだ」
「…なるほどな。まあ、聞きたいことはそれだけだ」
「頼光達の事で聞きたいことはもうないのか?」
「これからあいつらがどうするのか…それはあいつらの決めることだ」
だが、と続ける。
頼光、お前は俺とは違う希望を見出だしたんじゃないか?
ネプテューヌはお前が手を取ってくれたと言った。
なら、お前は…
「もう、新たな道を見つけてるのかもしれないな」
話はそれで終わりだ。
ネプギアをどうするのかも俺が決めることではない。
きっと、ここのトップ三人でもなく。
決められるのは、親であるシャルバか…それとも。
ただ、今日はもう、頑張った皆が楽しむ日であればいい。
悩むのは、それからでも。
・
・
・
相も変わらず忌々しい太陽だ。
睨み付ける気にもならないとはこのことか。
あの後、私はネプギアを連れて拠点に戻った。
京都の観光は…別の日にしておくことにした。
「お父さん」
「どうした」
「お姉ちゃんは…強いですね」
ネプギアの言葉は何を意味するのだろう。
姉である女神が強いことに憧れを抱いているのか、嫉妬しているのか。
ただ、表情を見ればそれは解決した。
とても、やる気に満ちている。
いつか超えたい、そんな気持ちが伝わる。
「そうだな、あれでこそ私が倒したいと願う女神だ」
「もっと強くなります。お姉ちゃんを超えられるように!」
「その意気だ」
頭を撫でてやると嬉しそうにするものだ。
…今回はいい経験になった。
私がまだ未熟ということ、ネプギアの成長に繋がる要素。
まだ足りない。
あの女神を倒し、果ては冥界を我が物とする。
その為にも、強くならねばならない。
特異点たる貴様はどこまで強くなるのやら。
楽しみでしかたがないが…さて、私はどこまで高みへ至れるか。
分かるのは一つだけ。
相対する日は近いということ。
それまで、死んでくれるなよ。
私が超えるその日までな。
「さて、今日はどうする?」
「そうですね…今日は──」
それまで私もこの日々を楽しませてもらおうか。
・
・
・
「負けたか、頼光よ」
目覚めて早々その言葉を聞いた時、俺は改めて理解する。
俺は負けたのだな。
俺の理想は届かなかった。
一度負け、折れてしまった俺が再び理想を掲げる…そんなことは出来ない。
恥さらしにも程がある。
それに、俺は女神の手を取ってしまったのだ。
心から敗けを認めた。
故に、俺は
「はい」
そう答える他無かった。
天照大神は再び謁見する機会をくださった。
他のメンバーも一緒だった。
カイネウスは…今にも噛み付きに行きそうだったが止められていた。
「だが、見事であった。
お主の覚悟、理想を見せてもらった。
…故に、その生かして貰った命を無駄にすることは許されぬ。
情けとして生かされたのではなく、共に歩みたいが為に生かされた命。どう使うか、よく考えよ」
「…御意」
他も同じ反応だった。
まあ、カイネウスだけはケッとだけしか言わなかったが。
けれど、次に見た人物達には激情を抱かずにはいられなかった。
そこにいたのは、魔王、堕天使総督、天使長。
刀を出せば斬れる。
そんな距離だった。
「…すまなかった」
魔王に頭を下げられた時。
俺はどうすべきだったんだろう。
怒りのままに斬り伏せればよかったのか?
それとも、菩薩のように許してやればよかったのか?
分からない。
分からないから、俺は斬ることをしなかった。
「もう、君のような被害者を出さないと誓おう」
「…言葉ではなく、行動で示してくれ。俺は…貴様らを信じない」
信じられるものか。
裏切ってきたのは貴様らだった。
だから、その誓いが本当だったと判断できたなら。
改めて、その目を見て話してやる。
そう思った。
敗者だが、俺が敗けたのはネプテューヌだ。貴様らではないのだから。
だから…俺が信じたいと思わせる位の行動をしてくれ。
もう、安易に何かを信じたくはない。
「…?」
ふと、隣のパンドラを見ると震えていた。
天使長を見て震えていたのだ。
…そうか、そうだろうな。
「天使長、彼女が分かるか」
「…以前、襲撃を受けた教会でセラフにも悟られずに神器覚醒の実験をしていたという情報は聞いていました」
「…パンドラ、言いたいことがあるなら、言うべきだ」
パンドラは震えて、天使長を見ていた。
睨み付けるでもなく、泣くでもない。
けれど何かを溜め込んでいるようだった。
意を決したようにパンドラは口を開いた。
「私は、お父様とお母様との絆を奪った教会を許しません」
ただ、許さないという感情。
それを口に出せたという事実に俺は驚いた。
憑き物が落ちたようだった。
…ああ、そうか。
歩みを、始めたんだな。
「…はい」
天使長は謝罪も何も言わなかった。
言ったところで、意味はない。
これからの行動が全てを決める。
どうしていくかは、こいつら次第だ。
…俺はもう、負けた身だ。
ネプテューヌに負けた今、再び挑んでも意味はない。
これからどうすべきなのだろう。
どうしていくべきなのだろう。
堕天使総督は、何を言うでもなく真剣な表情だった。
真剣に、俺を見ていた。
俺もまた、その目を見る。
何かを決めているような、そんな目だった。
そこからは、理解はすぐだった。
この男もまた、ネプテューヌという女神の掲げる希望を支える男なのだ。
所業は別としてこの男もまた戦士だ。
それに支えると思わせるお前は…やはり、強いな。
負けるべくして負けた…そう実感した。
「…神器保有者は、玩具ではない。その事を理解してくれ」
「…分かった」
この男から聞けた言葉はこれだけだった。
きっと、もう決めているのだろう。
ならば、これ以上は要らない。
さて、これからどうなるのか…
それまでを黙ってみていた九尾と思わしき女性が伏せていた目を開く。
何という圧か…これが九尾か。
妖怪とは、恐ろしいな。
「では、お主らの罰を決める。天照大神はお主らを許容したが、妾は違う」
「如何なる罰も受ける次第です」
「その潔さや良し。では、お主らは…」
「裏京都で一日働いて貰う。以上じゃ」
「…それだけ、ですか?」
拍子抜けにも程がある罰だった。
いいのだろうか、そんなもので。
最悪、俺一人で全てを背負って死ぬ覚悟が無駄になった気分だ。
九尾は可笑しそうに微笑む。
「何、十分してやられた様子じゃ。妾達はそれで許そう。
その後は、生きるも死ぬも自由よ」
「…ん、終わり?」
「終わりではありませんよ。これから大仕事のようです」
「…黙って聞いてたがよ、生かされて働いて後はポイなんざ屈辱っちゃ屈辱だぜ。殺してくれりゃ楽だったってのに曹操の野郎…」
「パンドラ…私に仕事押し付けていいからね」
「ありがとう、パラケルススさん。でも、私、頑張ります」
…何だろうか、納得がいかない。
それでいいのか?
俺達は、それで許されるのか?
モヤモヤとした感覚が頭から離れない。
その様子を見て九尾はケラケラと笑った。
「それだけで良いのかと思っておろう?」
「…まあ」
「ならば、その後どうすればその感覚が抜けるか…考えることじゃ。ほれ、座っとらんで仕事じゃ!今日一日寝られると思わぬことじゃな。ああ、そこの娘は妾の娘と遊ぶので許す」
「え…は、はい」
パンドラにまで重労働がなくて良かったと安堵すべきか、それとも今後に悩むべきか。
…いや、そうだな…もう、決まってるか。
俺は、手を取ったんだ。
安易に信じることはもう出来ない。
けれど、お前を信じることは容易くはなかった。
…また会えるだろうか、あの女神に。
裏話とかは次話でしたいと思います。
つまり、次話でこの章は終わりです。