冥次元ゲイムネプテューヌ   作:ロザミア

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ネプテューヌ、お前の真実を取り戻してみせろぉ!

というわけで更新です


二つの道がある

目を覚ます。

暗い空間に一人、自分だけが立っている。

何も見えない先のない空間。

ただ、暗くて寂しく、寒さすら感じる空間。

 

ふと、見覚えのある誰かが自分の前に現れて前を歩き出す。

 

「あ、待って!ここどこ?」

 

呼んでも聞こえていないように歩いて行く。

ついていこうとしても、目の前の誰かは歩いている筈なのに自分よりもずっと速く先へ行って、消えてしまう。

気付けば、同じように見覚えのある誰かがいっぱい周りにいて、自分より先へ進んでしまう。

 

「待って、待ってよ!」

 

置いていかれる。

…また、暗い空間に一人。

同じような事が何度も起きて、挑戦しても意味がなくて。

 

皆が皆、自分を見ないで置いていく。

 

無駄な挑戦だと嫌でも理解して、辛くなって座り込む。

 

「…一人は、嫌だよ」

 

そうして、本に座る小さい子が自分の目の前にやってくる。

見間違える筈もない。

いーすんが来てくれた。

 

ただ、顔はなんだか悲しそうで、自分の心をより不安にさせる。

 

「いーすん?」

 

「……ごめんなさい」

 

「え…?」

 

いーすんは自分に謝った後、皆と同じように自分じゃ追い付けない速さで何処かへ行ってしまう。

自分はそれが嫌で、必死に手を伸ばす。

 

「待って、待って!!いーすん!!」

 

やっぱり、いーすんには声が届いてないようで。

見捨てられた訳じゃない…まるで、これで最後というような、そんな…

呆然といーすんの行った方を見ていると、そこから誰かがやって来る。

 

「…」

 

「ヴァー…リ…」

 

「……」

 

あれ…どうして自分の前でそんな悔しそうな、やりきれないような顔をしているの?

待ってよ…その花は何?

何でそんな辛そうなの?

 

「…守りきれなかった。俺は、お前を…」

 

「ま、待って…」

 

花を自分の足元に置いて、去っていく。

待って、とようやく腕を掴めたと思ったら。

スッと手がすり抜けた。

 

え…?

どうして?どういうこと?

…花、ヴァーリやいーすんの顔……

 

まさか、と思ってようやく後ろを振り返る。

 

そこにあったのは──

 

 

 

 

─自分のお墓だった。

 

 

 

 

 

 

 

「───ッ!!ハァ…ハァ…うぐっ…うぅ…!」

 

目が覚める。

見覚えのある天井が目に入る。

慌てて起きて、周りを見渡す。

…自分の部屋だ。

何度か深呼吸をして気持ちを落ち着ける。

大丈夫…あんなのは夢…夢だから大丈夫…

 

どうして自分の部屋に寝かされて…?

それに、お腹の辺りを確認すると包帯がしっかりと巻かれている。

…あ、そっか、フリードと戦って…それで…

 

…シェアを、感じなくて。

 

暗い部屋に、自分一人。

怖い…冷凍庫に閉じ込められたんじゃないかって位寒さを感じる。

嫌だ…一人は嫌だ!

 

シェアを感じない…皆を感じられない。

当たり前のような物が分からない。

いーすんは?いーすんはどこ?

重い体を何とか起こして、ベッドから降りようと床に足を着く。

立ち上がろうとした時。

 

「っあ…!」

 

ガクン、と体が倒れて、大きな音が部屋に響く。

足に力が上手く入らない。

タンスとかで何とか体を立たせて、歩き出す。

一歩一歩が遅くて、シェアがどれだけ自分にとって重要か理解する。

ああ、もしかして死ぬのかな…

 

扉を開けようとして、気だるさが襲ってくる。

もう疲れてる…こんな当たり前の事すら出来ないなんて…

一旦背を壁に預けて座り込む。

膝を抱えて、これからどうすべきなのかを考える。

 

こんなんじゃ、戦うことだって出来ない。

自分じゃ…もう戦って誰かを諭せない。

言葉だけで止まってくれなかったから今まで戦って諭してきた。

皆を止められた。

でも…それが出来ない自分は?

 

「役立たず……」

 

見限られても、仕方ない。

あの夢も、もしかしたら本当になるのかもしれない。

自分は…もう駄目だ。

 

「…やだ、なぁ…」

 

自分の体が今までと違って重くて、鉛でも詰まってるんじゃないかと錯覚する程言うことを聞いてくれない。

シェアが自分から消えてしまった…のかな? 

 

…皆との繋がりがどれだけ自分の支えになっていたかが分かるね。

本当の自分は…こんなにも立つのに力が要る。

赤ちゃんなんかよりよっぽど弱い。

窓を見れば、夜空が見えて…とっても綺麗だなとぼんやりと思う。

いっそ、あの星になれればどれだけ楽なんだろう。

苦労も何もかも捨てて、あの空へ行けたらどれだけ…

好き勝手したかもしれない。

けど、自分なりに皆と接して、頑張ってきたつもりだった。

…その結果がこれかぁ。

何だろうね、自分は何のために生まれたんだろう。

自暴自棄になりかけているのは分かっていても、全てを否定された気分で背負っている物全てを誰かに押し付けて逃げてしまいたいとすら考える。

 

自分は、間違ってたのかな………

膝を抱えて、顔を俯かせて気弱な考えしか生まれない自分に嫌気が差す。

本物のネプテューヌは、どうするんだろう。

諦めないで、手を伸ばすのかな。

所詮偽物の自分だからこうなったのかな。

本物なら上手くやれたのかな。

 

そうやって思考の沼に沈んでいると、ガチャ、と扉が開く。

 

「…ネプテューヌさんしだいです」

 

「そうか…」

 

「…あ…!っ……」

 

やって来たのは、いーすんとヴァーリだった。

 

いち早く気付いたいーすんが嬉しそうな顔をしたと思えば自分の現状を目の当たりにして涙を流しそうな程顔を歪める。

ヴァーリも、それに気付いて焦ったような顔でこっちに来る。

 

「ネプテューヌ、起きたのか?

何故座り込んでいるんだ…」

 

「あ、はは…二人とも…よかったぁ」

 

思ったよりも心が摩りきれているようで、乾いた笑いと声しか出ない。負の感情が沸き上がってしまう。

…ああ、二人ともいる。

よかった…自分は見捨てられてないんだね…

 

「…立てないのか?」

 

「分かっちゃうんだ」

 

「…ベッドに寝かせるぞ」

 

「うん、ごめんね」

 

「いや、いいんだ」

 

優しく抱き上げられて、ベッドに寝かされる。

鉛のように重いのに、軽々と持たれたからこう感じているのは自分だけなんだ。

 

布団を掛けられて、いーすんも近くに来る。

 

「…いーすん、私死んじゃう?」

 

「そんなことっ!…そんなこと、ありません。ゼッタイにさせません」

 

「ネプテューヌ…痛みは?」

 

「……無いかな。体は重くって歩けないけど」

 

事実だけ伝える。

見栄を張っても仕方ない。

いーすんの反応を見るに、多分そういうことだから。

泣きそうないーすんに重い体に鞭打って手を差し出す。

 

「いーすん…大丈夫だよ。私、主人公だから」

 

「ネプテューヌさん…」

 

「他の皆は?」

 

「…兵藤一誠はお前の現状を知ってアザゼルと行動している。他も同様だが、アーシア・アルジェントとネプギアだけはここに残っている。シャルバは…分からない」

 

「一誠…暴走してないといいけど…ネプギアやあーちゃんは残ってくれたんだ~嬉しいなぁ」

 

「イッセーさんにはなんとかおちついてもらいました。

…ネプテューヌさん、はやめにおつたえします」

 

「もう長くない?」

 

「まだダイジョウブです」

 

ああ、そうなんだ。

まだこの状態のまま生きてるんだね、自分。

寝た状態のまま、夜空を眺めていーすんの話を聞く。

 

「ネプテューヌさんのなかにシェアはありません。

シャダンされているしまいました。おそらく、うたれたときに…」

 

「そっか。ねえ、いーすん」

 

「はい」

 

「あんまりにも重荷になるようなら─」

 

 

 

「それいじょうさきはいわないでください!」

 

 

 

「……うん、ごめん」

 

いーすんの辛そうな叫びに、発言の選択を間違えたと自分に呆れる。いーすんは泣きそうな顔で自分の顔に手を添えてくる。

 

「ネプテューヌさんしか…ワタシのあいぼうはいないんです。

ワタシのあいぼうは、アナタだけなんですよ!

すてるだとか、そういうことだけは…いわないでください」

 

「…少しネガティブになりすぎだ」

 

「…ごめんね。私も、相棒はいーすんしかいないって思ってるよ」

 

その後は、ずっと起きてるより寝た方がいいって事でさっきの夢の事もあって怖かった自分は二人に一緒に寝て欲しいって頼んだ。

二人とも、お安いご用という風に一緒に寝てくれた。

 

人の温もりっていうか…安心する。

 

シェアを感じられない今だと、これが繋がりを感じられる。

皆からのシェアを感じられないことが、満足に体を動かせないことが…こんなにも怖い。

 

「死にたく、ないなぁ……」

 

「…」

 

自分の呟きは、天井に吸い込まれて消えてしまった。

ただ、ヴァーリの腕が自分を抱き締めてくれたことが何よりも嬉しかった。

自分は、こんなにも脆い。

 

主人公なのになぁ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝になって、目を覚ます。

えっと、昨日はお姉ちゃんを治療して、それで…

アーシアさんが一誠さんの部屋を使いましょうって言ってくれて一緒に寝たんだった。

アーシアさんはもう起きたのか部屋にいない。早起きなんだ。

 

お姉ちゃん…大丈夫かな。

 

取りあえず、下に降りようと思って部屋の扉を開ける。

 

「あ、ネプギアさん」

 

「いーすんさん、おはようございます」

 

「はい、おはようございます」 

 

いーすんさんが廊下にいたから挨拶をする。

いーすんさん…大丈夫かな。

昨日は凄く焦った様子だったし…それに、お姉ちゃんのシェアが無いって言った時は血でも吐いちゃうんじゃないかって位辛そうだった。

 

「ネプテューヌさんがキノウのよるにめをさましました」

 

「本当ですか!?アーシアさんもこの事は…」

 

「はい、おつたえしました。オカルトけんきゅうぶのみなさんをよびにいったのでじきにもどるかと」

 

「それで、お姉ちゃんは…」

 

「…シェアあってのメガミサマです。それがないせいかホコウすらコンナンなジョウタイです」

 

「そんな…」

 

「ですが、あきらめてはいけません。きっとネプテューヌさんをなおすシュダンはあります」

 

「…そうですよね、頑張りましょう!」

 

そうだ、お姉ちゃんは諦めなかった。

だから皆がいるんだから。

お父さんが好敵手だって嬉々として語っていた時を思い出す。

 

きっと、諦めなければ先へ続く筈!

 

「お姉ちゃんは起きてますか?」

 

「はい。ヴァーリさんがイマようすをみてます」

 

「…二人の時間ですもんね」

 

「おりてくるまで、そっとしておきましょう」

 

それから、お姉ちゃんのご両親とお話をしてどれだけお姉ちゃんが愛されているのかを知った。

…大丈夫、私頑張るからね。

優しい人達が悲しむのは間違ってる。

だから、私は戦います。

 

「ネプギアちゃん、無理はしちゃ駄目よ?」

 

「ネプギアもネプテューヌの妹なら家族みたいなものだ。

無理のしすぎで、倒れるなんて事が無いようにしてくれ」

 

「はい!」

 

心配そうな顔からもう二度とあんなことが起きて欲しくないって願いが理解できる。

でも、私に出来るかな…お姉ちゃんみたいに、手を伸ばせるかな…

 

…でも、昨日の一誠さん…

 

『どうしようもない悪か』

 

あの時…一瞬だけ感じた殺気。

あのカイネウスさんよりも鋭い殺気は始めてだった。

…後で話せたら話そう。

多分そのままにしていたらよくないと思う。

 

「おい、ネプ子が起きたって本当か!?」

 

「お、お邪魔します!」

 

「あら、皆来てくれたのね…アザゼルさんも、お忙しいのに」

 

「あー問題ねぇ…です。それより、ネプ子は…」

 

「今は、そっとしておいてあげてください。降りてくるまで…」

 

「…そうか」

 

オカルト研究部の皆さんが来てくれたけど、少し待機ということに。

 

「アザゼルさん、シャルバさんとはあいましたか?」

 

「会ったぜ、アイツから来てくれたよ。

ただ、独自に動くってのと、ネプ子を撃ったのは何かを教えられた。ネプギアの事も頼まれたが…平気か?」

 

「はい、お父さんなら大丈夫だと思います。

それで、お姉ちゃんの事ですけど…」

 

「シェアがねぇんだよな…サーゼクス達魔王やセラフ連中にもミカエル経由で伝えておいたが…くそ、遮断だとかやりやがって…」

 

「で、おっさん。姉ちゃんを撃ったのは何だよ」

 

「…魔弾の射手って知ってるか?」

 

「知らねぇ」

 

魔弾の射手?

私も知らないかも…そういう人?

でも、人の気配はしなかったらしいし。

 

「使用者の望む物に必ず当たる7発の弾を放つってやつでな。最後の一発は使用者の望まない物を撃ち抜くんだが…それを用いたらしい」

 

「待ってアザゼル。それってつまり、魔弾の射手は人ではなく、物ということ?」

 

「シャルバ曰く技術の類いだって話だ」

 

「……ネビロスかしら」

 

「ネビロス…姉様に続いてここでも…」

 

…えっと、この場合って発言すべきなのかな。

そっと手を挙げて、発言の許可を貰おうと思います…

 

「どうしたの?」

 

「えっと…ネビロスって『番外の悪魔』のネビロスさん…ですよね?」

 

「ええ、そうだけど…」

 

「その、ネビロスさんとは一度だけ話したことがあります。

生みの親みたいなところもありますし…」

 

「…え、本当?」

 

「じゃあシャルバの奴はネビロス経由でネプギアを造ったって事かよ」

 

一度だけ、本当に一度だけ話したことがある。

お父さんに頼んで、話してみたいと言って話させてくれたことがあった。

 

『感性が備わったね。やあ、僕はネビロス。フルネームは伏せさせて貰うよ』

 

柔らかい声だった。

それから、少し話して機械とかの事で盛り上がった。

それで分かったのは…あの人は悪い人じゃない。

多分、根っからの技術屋なだけなんだと思う。

報酬をくれるなら技術提供して使った感触を聞いたりするけど、それだけ。

仲良くもするけど、技術の方を優先しちゃう。

そんな人だと思う。

 

「悪い人じゃないと思います。

お父さんも、ネビロスさんと今回の事で話したのかもしれません」

 

「…解決法はシャルバに一任すべき…いえ、こちらでも手は打たないと。天界なら…」

 

「いや、シェア自体ネプテューヌにしか備わってない機能だ。

天界に行って修復できるかは一割も無いだろうよ。

俺もまだまだ分かってないことが多いから下手に手出し出来ん」

 

「となると…直接リゼヴィムを倒した方がいいのかしら」

 

「魔弾の事も考えると、な…」

 

皆が話し合ってるけど、ご両親はよく分かってない様子。

私といーすんさんで補足しながら説明するとなるほどと納得してくれた。

日常の人なのに理解あるなぁ…お姉ちゃん達のお陰かな。

 

そうして、方針を話し合っていると階段を降りる足音が聞こえた。

 

「あ、皆。えーっと…おはよう?」

 

ヴァーリさんに背負われて、力無い笑顔で挨拶をしてくるお姉ちゃんが来た。

 

皆、何も言わない。

ううん、何も言えないんだ。

…だって、こんなの酷い、あんまりだよ。

 

あんなに元気だったお姉ちゃんが元気の無い顔をしている。

それが何よりも心に突き刺さる。

自分でこれなんだから、アーシアさんや一誠さん…他の皆さんは…

 

「…姉ちゃんさ」

 

「あ、一誠。どうかした?」

 

「俺さぁ、大切な家族がここまでなってて許してあげてって言われて許せる程聖人でも無いんだわ。悪魔だし」

 

「…」

 

「母さんや父さんがいるけど…俺は言わせて貰う。

俺からすれば俺の仲間、家族を傷付ける奴は皆許せない。

今回の奴は…どうしようもない悪だ。手の付けようのない屑だ」

 

「…!」

 

一誠さんの目を横から見て、確信した。

駄目だ、言わせたら駄目。

それを言わせたら、一誠さんは戻れなくなる。

きっと、それを肯定する人が出てしまうからこそ、言わせられない。

だから、私は咄嗟に

 

「一誠さん!杖か何かありませんか!?」

 

「…ネプギア」

 

「ほ、ほら、お姉ちゃん立てないくらいだって聞きましたから…ヴァーリさんもずっと背負ってるのは辛いだろうし、ね?」

 

「…そう、だな。おっさん、外だっけ」

 

「お、おう。この大人数だから外に畳んである」

 

「あざっす」

 

「あ、わ、私も行きます!言い出しっぺだし!」

 

一誠さんと一緒に外に出る。

気まずい…けど、言わせたら…お姉ちゃんだけじゃなくて誰も望まない結果になってたかもしれない。

 

「あ、これじゃないですか?」

 

「…何で止めた?」

 

「…一誠さん、それだけは言っちゃ駄目です」

 

「お前に何が分かるんだよ…!」

 

「あっ…!」

 

肩を強く掴まれて壁に背中を打ち付けられる。

ぶつけた痛みはそんなにないけど、肩を掴む手が食い込んで痛い。

でも、それ以上に気になるのは一誠さんの怒りと悲しみ、憎しみが混ざった目。

 

「お前に、姉ちゃんをその場にいなくて守れなかった俺の何が分かるんだ!?」

 

「…」

 

「姉ちゃんが撃たれて、辛そうな顔で寝てて、起きたらあんな元気の無い姿で!それを見たときの俺の気持ちが分かるのかよ!!」

 

「…分かりません」

 

私に怒りをぶつける一誠さんは悪くない。

その場で怒鳴ってもよかったのに、我慢してたんだから。

 

「…私には分かりません。多分、お姉ちゃんにも分かりません。

でも、あの場で、お姉ちゃんだけじゃなくて皆さんにも言うのは…駄目だと思いました」

 

「……」

 

「リゼヴィムって人を殺すって言おうとしたんですよね」

 

「当たり前だろ…!今回ばかりは許しておけるか!

姉ちゃんが撃たれただけじゃなく、シェアを消されたんだぞ!!

繋がりを大切にする姉ちゃんが、それを奪われたも同然だろうが!」

 

「今のお姉ちゃんに、それを言おうとしたんですか!」

 

「ッ!」

 

けど、お姉ちゃんやご両親に堂々と言おうとしたのは駄目。

それは亀裂を生んでしまう一因になってしまうから。

止めないといけないと思った。

お姉ちゃんは長く喋る気力は無さそうだった。

ご両親も…一誠さんの気迫に圧されてるようだった。

 

家族にそんな圧で話すのは良くないと思うんです。

 

肩を掴む力が弱まる。

 

「そんなことを今のお姉ちゃんにも、立ち直った後でも言って欲しくないです!」

 

「……」

 

「一誠さんも戻れなくなっちゃいますよ!

誰かのために、そんなことを背負わないでください…!」

 

「…ごめん」

 

謝った後一誠さんは手を離した。

その道は…きっと辛いから。

殺しが手段になっちゃうとそれを選んで、一誠さんがどんどんと孤独になっていくのは…嫌だったから。

 

だって、呂布の時の一誠さんはあんな辛い状況でも輝いていた。

だから…その輝きを失ってしまうのは、よくない。

 

「リゼヴィムを許せないのは私も同じです。

でも、その前にお姉ちゃんを治さないと」

 

「…だな、止めてくれてありがとなネプギア」

 

「はい!」

 

「っていうか、さっさと運ばないとな!」

 

一誠さんが持って、私が扉を開ける。

何もなかったような感じで戻って、車椅子を展開してお姉ちゃんを乗せる。

 

「姉ちゃん、どうだ?」

 

「おー…折り畳み式なのにリモコン操作だぁ…」

 

「これが堕天使技術だぜ。ちなみにこのボタンを押すとぉ!

高速移動が出来る!!」

 

「おっさん、後で説教な」

 

「あふん」

 

「やはり駄目ですわね、この人をリーダーに動くのは」

 

「泣きそう」

 

「泣くといいわ」

 

「どうして君たちはそうやって一つ仕組み付けただけで怒るかなぁぁぁ!」

 

「あはは」

 

お姉ちゃんが笑った。

けど、いつもみたいな快活な雰囲気はなくて、やっぱり元気と言うか…活力みたいなものが無さげだった。

 

「やっぱ体が重いか、ネプ子」

 

「あー、うん…歩くのも辛いかな。妙に気だるいし、食欲も沸かないし…プリン食べたいっ!みたいなのが無いんだよね…キャラじゃないなぁ…」

 

「そうか…イストワール、遮断されてるって言ってたよな。

もう一度パスを繋げ直すのは…出来ねぇのか?」

 

「すでにやりましたが…こちらもネプテューヌさんにカンショウできないんです。パスをつなげようにも、それをはじかれる…いうなれば、フタのようなものでさえぎられているんです」

 

「なら、その蓋を壊すとか出来ないのか、いーすん」

 

「むずかしいです。ネプテューヌさんにどんなアクエイキョウがおよぶか…ヘタなてだしはヨケイなジタイをまねくかと」

 

「ネプテューヌさん…女神はシェアがずっとないとどうなりますか?」

 

「えっと…死んじゃう、とか?」

 

「…あー、そうだな。

シェアなくして女神はねぇ。聖書の神への信仰心が昔のネプ子の力になってた時と、記憶もなにもかも失ってリスタートした時もその時は少なからずシェアが体を満たしてた。

だが、今はその時のどれにも該当しない。

供給されたシェアも消え、供給も無し。…燃料がない車は動けねぇだろ?」

 

アザゼルさんの説明は分かりやすかった。

お姉ちゃんはこのままだと消えちゃう。

だから、その前にシェアとの繋がりを復活させないといけない。

 

「でも、蓋ってどんな?」

 

「…のろい、みたいなものでしょうか」

 

「呪い?」

 

「ソウトウつよいのろいがネプテューヌさんをむしばんでいる。

そんなかんじです」

 

「…お祓いとかの次元じゃなさそうだよなぁ」

 

「俺がリゼヴィムって奴ならそんなんで終わるようにはしねぇな。

やれるとしたら相当高位な神なんだが…天照大神には頼れねぇしな…」

 

どうすれば…そう皆で考えているものの良い案は浮かばない。

私も、何も思い付かない…お姉ちゃんが消えるのだけは阻止しないとなのに。

私、こんなにも無力なの…?

 

そう沈み込んでいると、携帯が軽快な音を鳴らす。

 

「あ、ごめんなさい、私です。

…お父さんからだ!」

 

「何!」

 

急いでお父さんからの電話に出る。

 

「もしもし、お父さん!?」

 

『ネプギア。女神は起きたか?』

 

「はい…でも…このままだと…」

 

『消滅、か。…スピーカーに変えてくれるか?』

 

「分かりました」

 

スピーカーに変えて、携帯を机に置く。

 

『聞こえるか、女神。ついでに他の連中』

 

「ついでかテメェ!」

 

『悔しければこれから馬車馬のように働け。

さて、イストワールだったか、詳細を聞かせろ』

 

「はい、ゲンザイ──」

 

そこから、いーすんさんの説明が始まる。

こっちとしても状況整理になるから有り難かった。

お父さんは説明を聞いて、やはり、と言った。

 

「やはりってこたぁ薄々分かってたのか」

 

『まあ、半々だが。ならば、これで解決するな』

 

「本当なのね!?」

 

『安心しろ、グレモリー。だが…おい女神』

 

「うん?何?」

 

『…まずは称賛を。貴様はよく頑張った。ここまで敵味方問わず絆を紡ぐ…誰にも成し得ない偉業と言える。

好敵手と定めた私としても、貴様が高みへ向かうのは喜ばしかった。だが、貴様はリセットされた』

 

「…だね」

 

『では、ここからが提案だ。

貴様には二つの道がある。

一つは”困難だが未来を切り開く道”

貴様は女神の力を取り戻し、新たな可能性を手にいれる』

 

「おい、待て。それで良いじゃねぇか。

どうしてもう一つを用意してやがる」

 

『ほう、では何か。

このまま直してこれからもよろしくと?

ならば、いっそこの道も提案してやるのが面白い』

 

お父さんはくつくつと笑いながら、アザゼルさんへそう言った。

アザゼルさんは苛立った様子だけど、携帯ということもあって手出しできない。

 

「いいよ、おっちゃん。…それで、もう一つって?」

 

『もう一つの道は”安寧と自由の道”──

 

 

 

 

 

 

 

──その体を捨て、女神ではない人間の形を得る事だ』

 

その言葉は、甘美な誘いだった。

お姉ちゃんを見れば、そうとしか思えなかったから。

だって、それを聞いたお姉ちゃんは…

 

 

 

「…女神を、やめる……」

 

かなり、動揺をしながらもその言葉を聞きたかったかのような…

そんな印象を私に抱かせる表情をしていた。

…これは、私の口出しすることじゃない。

多分、お父さんは試しつつもお姉ちゃんを想っての発言なんだ。

 

お姉ちゃん、どれを選ぶの?




さて…この二つの選択肢、どう選ぶのか。
次回はそこを見て欲しいですね。
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