冥次元ゲイムネプテューヌ   作:ロザミア

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さあて、作戦会議は終わったかい?



お互いの状況…ってはわわ、何が起きてるの!?

吸血鬼の女性を治療してから一時間程が経過した。

私はアーシアさんと一緒に女性を看ている。

魘されるような呻き声をたまに発する所から酷いことをされたのかな…

 

他の人は話しすぎて看護の邪魔だからと別の部屋に移された。

 

「こうして二人で話すのは初めてですね」

 

インスタントだけどココアを淹れてくれたようで、アーシアさんに話しかけられて手渡される。

甘い味が緊張感を和らげて、温かさが心に余裕を持たせてくれる。

私のほっとする様子を見てなのか、微笑みを浮かべるアーシアさんは吸血鬼の女性よりも綺麗に見えた。

 

「はい…ココア、ありがとうございます」

 

「ルーマニアに来てからずっと肩に力を入れすぎているようでしたから。

こういう時は、甘いものや温かいものを口にするといいんですよ」

 

「…私、そんなにカチコチでした?」

 

「はい、とても」

 

「あははは…はぁ…」

 

駄目だなぁ、私。

落ち込む私にクスクスと笑うアーシアさんは何処か大人びてる…というより慣れてるのかな。

 

アーシアさんは苦しそうにしている女性の手を優しく握る。

すると、苦しそうだった女性の表情が和らいで静かな寝息をたてる。

 

「すいません。前のイッセーさんを思い出して、つい」

 

「一誠さんを?」

 

「凄かったんですよ。

ネプテューヌさんを守るって躍起になって頑張って…」

 

今も凄いんですけど、と遠い目をするアーシアさんに納得する。

この人は、色々と経験してるんだなぁ…

お姉ちゃんの近くにいて、色々な所を見てたみたいだし。

多分、お姉ちゃんが信頼する人の中でもかなりの位置なんじゃないかな。

 

その話が気になって、聞くことにした。

 

「ずっと走って、がむしゃらに頑張って…でも、折り合いを付けることが出来たんです」

 

「折り合い、ですか?」

 

「ヴァーリさんです」

 

「…えっと、赤龍帝と白龍皇の…」

 

「はい、引き分けでしたけどね」

 

引き分け、勝ちでもなければ負けでもない。

中途半端といえばそれまで。

でも、私はそうは思わなかった。

その話をするアーシアさんは清々しいような、そんな顔だった。

中途半端と思う人がそんな顔をするわけがない。

 

だから…いい戦いだったんだと思います。

 

「イッセーさんはヴァーリさんが嫌いだった。

自分の欲しい物を全部持ってたから」

 

「全部ですか?そんなこと…」

 

「ない、と思いますよね。

私もそう思ってたんです」

 

「アーシアさんも?」

 

「だってそうでしょう?絶対に何か1つは重なる部分があると思ってましたから。でも、そうならなかった…あの戦いまでは。

ようやく、1つの共通点を得たんです」

 

「…それは?」

 

「ライバル。高め合う…という点において神器のこともあって抜群でしょうけど…多分、そうじゃないんですよね」

 

無茶はしないで欲しいんですけど、と困った顔のアーシアさん。

私は、よく分からない。

ライバルなんていないし、そんな戦いもしたこともなければ見てもいないから分からない。

 

「あの二人は背中を預けられるから…ライバルなんだと思います」

 

「それは仲間じゃないんですか?」

 

「ちょっと違うんです。

あの二人は普段はいがみ合いの方が多いんですけど…ここ一番の時は絶対に手を取り合うんです」

 

「絶対に?」

 

「ええ、絶対に」

 

羨ましい。

そんな感情がアーシアさんにはあった。

まるで、一誠さんと一緒に戦いたいようで。

 

「あの…」

 

気になることがあって、聞こうとしたその時。

部屋の扉が開いて、そこからパンドラちゃんが入ってきた。

静かな面持ちでこちらに歩いてきて、吸血鬼の女性を一瞥した後私たちの方に顔を向ける。

 

「…容態は安定、ですか?」

 

「はい、頼光さんに頼まれたんですか?」

 

「いいえ。私の意思、です」

 

「他の皆さんは?」

 

「この人が起きるまでは待機」

 

「そうですか…」

 

この人が鍵を握ってるんだよね。

 

早く起きて欲しいって気持ちもあるけど…こういう時こそ焦っちゃ駄目だ。

この人だって辛いことがあったんだろうし…

でも、ルーマニアで何があったんだろう。

吸血鬼…教会がやったとかじゃなさそうだし。

 

「吸血鬼…血を吸わないと生きられない神様に逆らう種族。

そして、強くて…哀れな人達…」

 

「哀れ、ですか」

 

パンドラちゃんの言うことは難しい。

神様に逆らうって言うことも分からないし、どうして哀れなのかも分からない。

分からないことが多すぎて、私で大丈夫なのかなって思ってしまう。お姉ちゃんなら上手い返しが出来るのかなとも。

 

「どうして哀れなんですか?」

 

「強いのに、怯えているから」

 

「ネプギアさん、吸血鬼は凄く強い代わりに弱点が多いんです。

ニンニクや、十字架等…それらを使われたら如何に強い吸血鬼でも負けの目が出てきてしまう」

 

「そうなんですね…」

 

弱点が多い…太陽とかも苦手なんだっけ。

太陽の下で歩けない。

どんな思いなんだろう、それは。

私には分からない。

もし、太陽の下で歩きたい吸血鬼がいたら、どうするんだろう。

死んじゃうのを承知で外に出るのかな。

それとも…何か方法を見つけるのかな。

 

「ぅ、うん…」

 

「あ…!」

 

女性から声が発せられる。

どうやら起きるみたいで、アーシアさんが私に顔を向ける。

 

「部長さんと頼光さんを呼んできてください。パンドラさんは何かあった時の為にお願いします」

 

「はい!」

 

「分かりました」

 

パンドラちゃんは頷いて鏡を展開して、私は急ぎ足で部屋を出てリアスさんと頼光さんのいる部屋に向かう。

ノックしないのは失礼だけど、ガチャリと開ける。

少し驚いた様子のリアスさんと平然とした様子の頼光さんが話し合ってたようで座ってた。

 

「どうしたの?」

 

「例の女性が起きました!」

 

「そうか…まずはリアス嬢と俺だけでいいだろうな…行こう」

 

「そうね」

 

三人で急いで女性のいる部屋へと向かう。

その途中で…

 

ガシャン、という音が聞こえた。

鏡の割れる音…!

もしかして、暴れてるの!?

 

部屋の前について、扉を開く。

 

「貴女の攻撃は確かに強い。でも、私の鏡はそれを通さない」

 

「小癪な…!」

 

女性が鋭い爪を振るって鏡を割る。

本来ならそこから倍返しの衝撃が出る筈だけどパンドラちゃんが意図的に使ってないみたい。

あくまで盾として…凄い。

 

「そこまでよ!」

 

リアスさんが悪魔の羽を出して、女性の前に出る。

女性はリアスさんを攻撃しようとしたけど、羽を見て目を見開いて動かない。

 

「…悪魔?」

 

「一部は人間だけどね。

私はリアス・グレモリー…お互い、争いは無しにしない?

私たちが倒れてる貴女を拾って治療した。事情を聞きたくてね」

 

「……ごめんなさい、そうとは知らずに。貴族の名折れね…」

 

意外と素直に戦闘態勢を解除した女性はまだ疲労があるのかベッドに座り込む。

捕まったと勘違いしたのかな。

 

頼光さんと一緒に椅子を用意して私たちも座る。

 

「私はエルメンヒルデ・カルンスタイン。

カーミラ派…といっても分からないわね。まあ…そんな派閥があるとだけ知って」

 

「俺は頼光だ。

それでエルメンヒルデ殿、なぜあの場で倒れていたのか?」

 

「…裏切りがあった」

 

「裏切り?」

 

暗く沈んだ面持ちでエルメンヒルデさんはそう言った。

裏切り…他の吸血鬼から?

派閥って言ってたし、別の派閥からだと裏切りとは言わないから…

 

「同じカーミラ派の吸血鬼に、ツェペシュ派の者がいた。

そして…昨日の夜、クーデターが始まったの。

反逆…それをした者の中に家族、友人までいた。

それで、何をするでもなく逃げてきたのよ」

 

…どう言葉を投げ掛ければいいんだろう。

裏切り、それも家族や友達からなんて酷い…

何かしてしまったとしても、クーデターなんて…

 

リアスさんも何か思うことがあるのか何かを言う様子はない。

 

「なるほど。吸血鬼の町…それがあるということでいいんだな?」

 

頼光さんが代わりというように話を続ける。

エルメンヒルデさんは頷く。

 

「ならば話は早い。

そこまで案内してくれないか」

 

「何を無茶なことを。

カーミラ派は終わったのよ…ツェペシュ派のせいで全てが…」

 

「ツェペシュ…か。

ただ案内するのが不安ならば何かしようじゃないか」

 

「…何をしてくれる?」

 

「さあ、そちら次第だな」

 

そう言われて、エルメンヒルデさんは考え込む。

私たちも、ルーマニアに詳しいわけでもないから出来ることは少ない。無茶なことじゃなければいいんだけどな…

エルメンヒルデさんは思い付いたようで話を切り出してくる。

 

「なら、働ける場所をちょうだい」

 

「いいのか?」

 

「…どのみち、裏切り者がいると分かってまた同じ派閥を作るなんて無駄よ。今までの自分の価値観を壊された気分…なら、別の道を歩むわ」

 

「…だそうだ、リアス嬢?」

 

「端から丸投げする気満々だったわね…?」

 

「さて、何のことやら」

 

リアスさんはため息をついて、仕方ないわね、と言う。

そっか、リアスさんなら魔王の人の家族だし、そういう伝手があるよね。

 

エルメンヒルデさんは了承されると思ってなかったのか少し驚いている。

 

「まさか、了承されるなんて…」

 

「それくらいならお安い御用だ。

俺達も、急いでいるからな」

 

「何が必要なのか、聞いても?」

 

「…聖杯。ヴァレリー・ツェペシュが持つ聖杯だ」

 

「ヴァレリー……そう、それなら行かなければならないわね…」

 

エルメンヒルデさんはそう言ってから横になる。

ただベッドに横たわっただけなのに、それだけでも1つの芸術のようで…自然と魅了される。

疲れたというように目を閉じたエルメンヒルデさんは一言。

 

「少し寝るわ。その後、案内する」

 

「分かった」

 

また寝息を立て始めたエルメンヒルデさんをそっとしておこうと思い、五人で部屋を出る。

アーシアさんはホッと安心した後、パンドラちゃんの頭を優しく撫でた。

 

「…?」

 

「パンドラさんが守ってくれなかったら、私は危なかった…ありがとうございます」

 

「…仲間、ですから」

 

「ふふ、はい」

 

「エルメンヒルデの協力は得られたわね。けれど…まさかクーデターが起こってるなんて…」

 

「ああ、これは少し対策をしておかないとな」

 

「皆を呼びましょう」

 

リアスさんの集合の言葉に皆従って、広い部屋に集まる。

リアスさんがエルメンヒルデさんが起きたこと、協力してくれること、吸血鬼の町でクーデターが発生したことを話す。

ギャスパーさんの顔が青くなったのを私は見逃さなかった。

近くにいたこともあって、肩に手を置く。

 

「大丈夫、これから皆で向かいますから」

 

「は、はい…ヴァレリーは…大丈夫なのかな…」

 

大丈夫とは言えない。

そんな無責任な発言を私は出来ない。

皆が事を理解して、ゲオルグさんが手を挙げる。

 

「1ついいか。ツェペシュ派とカーミラ派…というのは?」

 

「ギャスパー…知ってる?」

 

リアスさんが聞くと、ギャスパーさんは頷く。

 

「男性の真祖を尊ぶのがツェペシュ派で女性の真祖を尊ぶのがカーミラ派なんです。

ずっと昔から対立を続けてる…ってことだけ…」

 

「十分だ、感謝する。俺からは以上だ」

 

ゲオルグさんの感謝の後、今度はゼノヴィアさんが手を挙げる。

 

「どうして今更反逆が起きたのかは?」

 

「分からないわ。

ただ、私たちの現状と今回の騒ぎ…何だかほぼ同じ日に起こっているのが気がかりね」

 

「リゼヴィムが関わってる可能性はあるということだな、理解した。私も以上だ」

 

それから、色々な質問があった。

吸血鬼への対策はどうするか、とかエルメンヒルデさんは信用できるのか、とか。

色々あったけど、頼光さんとリアスさんが答えていった。

吸血鬼への対策を考えようってなったけど…

 

「いやもう襲ってきたら殴ればよくね?」

 

「清々しい程の脳筋だが間違ってない」

 

え、いいんですか?と思ったけど現状だと十字架とかは用意できない。

一誠さんの取り敢えず襲われたら応戦しての数の暴力。

正直いいのかなぁと思ったけどそれでいいっぽいし…大丈夫かなぁ?

 

「行き当たりばったり上等!

どのみち、時間はかけてられねぇんだ!

俺達で無理矢理にでも切り開けばいけるさ!」

 

一誠さんの鼓舞とも取れるしいい加減とも取れる言葉に、皆さん別々の反応をしていたけどそれでも、まあそれでいいか、といった反応が多かった。

ちなみに一番賛同していたのは呂布さんだった。

 

うーん…皆がいいのなら、それでいいのかな…?

 

─ネプギアさん、そこは否と言う勇気が必要ですよ?

 

ずっと静かにしていたいーすんさんがツッコミを入れてきた。

やっぱりそうだよね…でも、そういう手しか今はないし…仕方ないよね!

 

─ネプギアさん!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネプテューヌ、落ち着け」

 

ヴァーリの言葉が自分を諌める。

分かってるよ?分かってるけどさぁ!

うー…でも、心配だなぁ…皆大丈夫かなぁ…

 

自分の部屋でうーうー言いながら皆の心配をするしか出来ない自分が恨めしい!

 

「大丈夫かなぁ…」

 

「あの面子で駄目なら諦める他無いだろうな」

 

「それって大丈夫ってこと?」

 

「さて、どうだろうな?」

 

意地悪な顔をするヴァーリに自分はジト目を向ける。

そういう時は彼女を安心させる言葉を送るべきだよね?

妙なところで困らせてくると言うか、何というか。

 

「ねぷっち、してほしいことがあったら言うのよ?」

 

寝かされている自分の手を握って黒歌が心配そうに言ってきて、自分も握り返す。

うーん、起きるのも大変なねぷ子さんの明日は皆に懸かってるのだ…

 

「大丈夫だよ。皆が傍に居てくれるだけで嬉しいなぁ」

 

「もう…こういう時は甘えていいんだにゃん」

 

「優しいね、黒歌。

私が撃たれた事を気負ってるなら気にしなくていいんだよ?」

 

「…ごめんね、ねぷっち」

 

「仕方がない。魔弾の射手なんてどう防ぐか分かるわけがないんだ」

 

よしよしと撫でたくても腕が少し重い。

結局、シェアがないとこんなだなぁ…駄目だなぁ。

シェアが戻るまでどうしよう。

 

「ゲームは出来そうに無いな」

 

「うー…辛い!私からプリンとゲームを取ったら主人公性を失うようなものだよ!」

 

「儚さは生えたにゃん」

 

「うわぁぁぁぁそれエンドで死ぬやつ!」

 

イヤだー!死にたくなーい!死にたくなーい!!

そう騒げる元気は出たけど、やっぱり体は重い。

うーん、これはもうじっとする他無いのかなぁ…

 

コンコン、と扉がノックされる。

 

それからガチャリと扉が開き、入ってきたのは…

 

「ん、いた」

 

「お、オーフィス!!?」

 

「まあ、そうなるよね」

 

入ってきたのはオーフィスとジークだった。

何食わぬ顔で入ってきたオーフィスに皆驚く。

何てこったい…どうして?

 

オーフィスは無表情で顔を膨らませる。

 

「久し振り、寂しかった」

 

「ご、ごめんね!」

 

「美猴から聞いて、飛んできた」

 

「ええ…」

 

「何をしてる、あいつは…」

 

ヴァーリが呆れるけど、少し嬉しかった。

心配してくれてるんだなぁって分かるから。

ジークは多分、来たオーフィスを発見して連れてきたんだね。

 

「…大丈夫?」

 

「…うーん、ちょっと辛い?」

 

「我、助けられない?」

 

「そうにゃ、無限の力なら呪いを解除とか…」

 

「…ごめん、我解呪は出来ない」

 

俯いて謝ってくるオーフィスの頭に何とか手を伸ばして置く。

 

「大丈夫、一人じゃ駄目でも皆がいるよ」

 

「協力プレイ」

 

「そう、協力プレイ!私達なら絶対治せるよ!皆いるんだから!」

 

「…うん」

 

よしよしと撫でる。

すると、オーフィスも手を伸ばしてきて、よしよしと撫でられる。

ありゃ?自分も?

 

「辛いのは、ネプテューヌ。撫でられるべき」

 

「ハハハ、その通りだね。皆いるんだ、大丈夫さ」

 

「もー…」

 

照れるなぁもう。

そういうのキャラじゃないんだよね。

でも、うん…甘えとこうかなぁ。

何か、心地いいしね!

 

そうして、少し寝ようかと思っていると。

 

 

 

 

 

─部屋、というか家が揺れる

 

 

 

「わわわ!?」

 

「っ、奴か!!」

 

何々!?襲撃!?

奴って?コブ…リゼヴィムが来たの!?

ええ、またラスボス突撃してくるの?

もう何番煎じか分からないネタやってくるボスなの?

 

ヴァーリが行こうとした時、ジークが手で制する。

 

「君はネプテューヌを。僕が行く。

黒歌とオーフィスもここにいるんだ。いざとなったら…逃げるんだよ」

 

「分かったわ」

 

「ん、頑張って」

 

「ジーク…頑張ってね」

 

「はは、死ぬ気でやらせてもらうさ」

 

ジークが行った後、ヴァーリは顔を歪める。

…そうだよね、行きたいのはヴァーリの方なのに。

自分のせいで…

 

「…お前のせいじゃない。

俺が二人いればいいのにと思っただけだ」

 

「…そっか」

 

…自分は…私は…どうすればいいんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結界が貼られて、隔離された兵藤家の前で戦いが始まっていた。

だが、かなり一方的な展開だ。

何せ…

 

「おいおいおい、どういうことだよ。神器が使えねぇぞ!」

 

「…そう、だからあのくそったれは余裕な訳!」

 

「くっ…」

 

英雄派の殆どは神器があればこそ強さを発揮する。

だが、それを封じられた今、俺達は…!

 

「ん~中々どうしてよく避けるねぇ。

感動的だねぇ、友情って奴?でも残念かな、俺との差は歴然って奴なんだな、これが!」

 

十二枚の黒翼、魔王が着ることを許された衣装、そしてヴァーリに似た銀髪…間違いない。

この男こそがリゼヴィム!

 

「はっ、玩具で遊んでたテメェらじゃそれが関の山だろ。

代わりな!」

 

「カイネウス…だが、お前も!」

 

「あぁ?関係ねぇよ、神器じゃねえし…それに、差があるだとかはそれこそ関係ねぇだろ」

 

カイネウスが前に出て、槍と盾を構える。

海神の槍と盾ならば確かに対抗はできるが…奴は悪魔の中でも最上位だぞ…!俺達が邪魔なのは分かるが、一人で行くのは無謀そのものだ。

 

カイネウスはニヤリと獰猛に笑い、リゼヴィムを目で捉える。

 

「テメェら半人前に見せてやるよ。

これが英雄の姿って奴だ!」

 

勇猛…俺にはそう見えるカイネウスに、しかしリゼヴィムは嘲笑を浮かべる。馬鹿馬鹿しいとばかりに。

 

「へぇ?人間一人…ああいや、混ざりもん?まあ人間。

一人でレイドボスな俺に向かってくる感じ?笑えまくりなんだけどなぁ」

 

「ハッ、笑えるのはこっちだぜ蝙蝠野郎」

 

「ほ?」

 

「これからテメェはその人間様にぶち殺されるんだからなぁ!」

 

海神の槍を手にリゼヴィムへと向かっていくカイネウスにリゼヴィムもまた夥しい程の魔法陣をカイネウスにのみ向ける。

そこから放たれる黒い波動はカイネウスを貫かんとするが…

 

「刃も魔法も届かない、俺には決して!!

ハハハ、その首戴くぞ蝙蝠野郎ォ!!」

 

「珍しい、神の加護かい?なら、これでどうかなぁ!」

 

魔法をその加護と盾によって弾き、そのままリゼヴィムの元へ跳んで槍を振るわんとする。

しかし、何処からともなく鎖が飛び出しカイネウスの足に絡まって地面に叩きつける。

 

「ガッ、まあそう上手くいかねぇよなぁ」

 

「無事か、カイネウス!」

 

「黙ってろ曹操!」

 

安否を確かめる俺に吼えるカイネウス。

こ、こいつは何故協調性がないんだ…!

というより、俺に対してか?

 

「このままじわじわ攻めるのもいいかなぁ。

ほら、耐えてくれよ英雄様さぁ!」

 

またしてもリゼヴィムの魔法がカイネウスに向く。

放たれた黒の波動、その数は先程よりも数倍多い。

流石のカイネウスもこれを受けきれない!

くそ、聖槍があれば…!

 

 

 

 

 

「削り取れ、バルムンク!!」

 

 

 

 

 

「おおっとぉ!?」

 

突如、竜巻状の破壊の渦が黒の波動を消し去りリゼヴィムにまで向かっていく。

リゼヴィムは驚きと共に十二枚の黒翼で自分を覆い耐える。

…翼に傷も付かんか。

 

だが、今の攻撃は…!

 

「苦戦してるね、カイネウス。魔剣ならあるけど、ご所望かい?」

 

「ジーク…そうか、魔剣は神器じゃなかったな!」

 

「早く来やがれよジーク!」

 

「そうよそうよ!」

 

「どうして戦えない二人にこうも言われなきゃいけないんだろう…」

 

呆れた様子でヘラクレスとジャンヌを見るジークはリゼヴィムに振り返って魔剣ノートゥングを構える。

そういえば、以前魔剣の取り出しをしやすくしたとアザゼルと語っていたな…

 

だが、ジークは生身の人間だ、龍の手がなければ…

 

「…神器が使えないか。なら、信じれるのは自分と武器だけかな」

 

「ハッ、テメェついてこれんのかよ?」

 

「やりようはある。君こそその加護でいけるのかい?」

 

「言いやがる。…駆けるぞキザ野郎」

 

「お好きに、突進女」

 

カイネウスはより獰猛に、獣のように突進し。

ジークもまた駆ける。

リゼヴィムは少し面白そうに、けれど侮蔑するような視線と魔法を二人に向ける。

 

「人間が二人なったねぇ。

でも、俺には勝てないよ、残念だけど」

 

「さて、どうかな?

0はない、君が生きてる命ならね」

 

「喉元かっ捌いてやるよ!!」

 

魔法を二人で弾きながら進み、鎖をノートゥングで粉々に引き裂いて再び距離が詰まる。

けれどリゼヴィムの余裕な態度は崩れない。

 

「我が女神の未来のため、斬らせて貰う!ティルヴィング!!」

 

「海神の槍よ、敵を飲み込め!!」

 

槍から海水が発生し、リゼヴィムを飲み込む。

そして、破壊力重視のティルヴィングが振り下ろされる。

 

しかし…

 

「よいしょっと」

 

「っ!」

 

リゼヴィムは飲み込まれながらもティルヴィングを掴み、ジークを叩き落とし海水の拘束を翼で払うだけで無効化した。

叩き落とされたジークはバルムンクに持ち替え、渦を生成して体を浮かしてから着地する。

 

これでも届かないか…!

 

黒翼を展開しながら地面に着地し、パチパチと拍手をするリゼヴィム。

 

「流石は英雄様だ、俺もすこーーし肝を冷やした。

死んじゃうかな?生きてましたぁ!ってねぇ!

あー残念、俺ちゃん生きてまーす」

 

「一々腹立たしいな…」

 

「女神ちゃんの様子を見に来ただけなのに皆ったら歓迎してくれないからおじさん張り切っちゃったね。

年寄りに厳しい世の中になったもんだ」

 

疲れた様子もなければ撤退の気配もない…どうする…オーフィスを頼るか…?だが、俺の勘がやめておけと言っている。

取り返しが付かなくなると。

 

そうして拍手を終えてから態度を変えたようにため息をついたリゼヴィム。

 

「にしたって女神ちゃんの仲間の口から出るのは未来、未来、未来!はー夢見すぎかよ?」

 

「夢を見て何が悪い。

僕達は彼女の見せてくれる未来が心地いいんだ。

それについていくのが悪いのかい」

 

「未来ねぇ…

キミ達は何でそんな不確かなものを守ろうとする?

因果も、運命も、理も、物理の法則さえこのくっだらねぇ世界の作り出した都合の結果に過ぎないのに!

未来の色は明るいかい?」

 

「だとしても、それを切り開くのが僕達という今を生きる者だ。

僕達の女神の理想を叶えるのが、僕達のやるべきこと。

それを否定させない」

 

「別にキミ達の理想を否定してる訳じゃない。

尊いと思うし?あーそんな未来もありっちゃありとも思う」

 

けれども、とリゼヴィムは嘲笑を浮かべて話を続ける。

 

「人間と女神の差は歴然だよぉ?

先に死ぬのは君らだし、生きるのはあの女神ちゃんだけ。

今理解者が居たとして、百年、千年先は誰がいる?

悪魔かい?天使かい?堕天使かい?違うだろう?

真に欲してるのは人間の理解者だろう?」

 

嘯くように、嘲るように。

どうせ今だけだとあり得る可能性を羅列していく。

リゼヴィムの言うことは間違っていない。

 

そう、悪魔や堕天使、天使でさえも女神の寿命よりも先に消える。

 

残るのは彼女だけなのだ。

 

「言っておくけど俺はそれを指摘しようが女神ちゃんは諦めないって分かってるぜ?でもさぁ…それは主人公本人の話。

他の仲間は?どうするのかな?

いつか消える命を、そんか不確かな未来のために燃やすのは如何な物かと思うのよねぇ」

 

「…ああ、そうかよ」

 

「ん?」

 

カイネウスが納得したような声を出す。

リゼヴィムは気になったようで視線をカイネウスに向ける。

 

「テメェの言葉は薄っぺらだ。

可哀想だなんざ微塵も思っちゃいねぇだろ?」

 

「はい正解」

 

「んな…」

 

先程までの憂いの顔は何処へやら。

再び嘲笑を浮かべるリゼヴィムに俺達は唖然とする。

カイネウスだけは下らないとばかりに吐き捨てた。

 

「テメェは所詮嘘まみれだ。悪魔らしいねぇ、契約以外での嘘まみれ…反吐が出る」

 

「嘘が堕天使の専売特許とでも?

馬鹿馬鹿しいねぇ…そもそも、事を仕出かしたのだって1つだけだよ?再認識して貰うためさ」

 

「再認識…?」

 

「そう!」

 

 

 

 

 

 

 

「─悪魔は、悪でなければならない。誰よりもね」

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